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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成27年9月

政府出資株式会社等における事業及び財務の状況等について


2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

国が出資している法人のうち、独立行政法人については、運営の基本となる共通の事項や、財務諸表を作成するに当たって準拠すべき基準(以下「作成基準」という。)が、それぞれ独立行政法人通則法及び「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」」(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定)において定められており、共通の予算・会計制度や目標管理、評価制度等の下で運営されている。

一方、政府出資株式会社等については、会社法が政府出資株式会社に適用されるほかは、その運営の基本となる共通の事項を定めた法律や共通の作成基準等は設けられておらず、各法人の設置根拠法及びこれに基づく予算・会計制度等の下で運営されている。

そして、前記のとおり、その組織形態については、株式会社及び非株式会社があり、財政支援等や監督等を通じた国の関与や、適用される財務報告制度も各法人で異なっている。

国が出資している全法人の出資残高は、25年度末で計56兆1539億余円となっており、このうち独立行政法人94法人への出資残高が計24兆1152億余円となっているのに対して、前記の政府出資株式会社等43法人から国が直接出資する政府出資株式会社等が出資する間接出資法人5法人を除いた政府出資株式会社等38法人に対する国の出資残高は、計19兆5961億余円となっていて、1法人当たりの出資残高でみると、独立行政法人の出資残高よりも多額となっている。

また、国は、これらの政府出資株式会社等の剰余金や利益から国庫納付金や配当として収入を得るとともに、国に保有義務が課せられていない株式を売却して収入を得ており、これらの収入は国の貴重な財源となっている。そして、一部の政府出資株式会社の株式については、復興財源法により、その売却収入が東日本大震災に係る復興債の償還財源と位置付けられていることなどから、売却に向けて必要な検討を着実に行うことが求められている。

そこで、会計検査院は、政府出資株式会社等における事業及び財務の状況等について、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査した。

ア 政府出資株式会社等に対する国の出資及び国等によるその他の財政支援等の状況はどのようになっているか。

イ 政府出資株式会社等の事業の実施状況及び財務状況はどのようになっているか。また、国等の財政支援等は政府出資株式会社等の財務にどのような影響を与えているか。

ウ 政府出資株式会社等から国が得ている収入はどのようになっているか。また、政府出資株式会社に係る国の株式保有義務や株式売却等の状況はどのようになっているか。

エ 国は、政府出資株式会社等の事業の適正な実施を確保するためにどのような監督等を行っているか。

オ 政府出資株式会社等の財務報告の状況はどのようになっているか。

(2) 検査の対象及び方法

表1に掲げる政府出資株式会社28法人及び非株式会社10法人の計38法人(各法人の概要は別表1参照)を対象として、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき提出された21年度から25年度までの財務諸表等のほか、事業及び財務の状況、国等による財政支援等の状況等に係る調書等の提出を求め、これらを在庁して分析するとともに、38法人において会計実地検査を行った。

また、連結決算を行っている政府出資株式会社については、連結財務諸表も活用して事業及び財務の状況等について検査した。

表1 検査の対象とした政府出資株式会社等(平成27年3月末現在)

区分 法人名
政府出資株式会社等(38法人) 政府出資株式会社(28法人) 株式会社日本政策金融公庫
株式会社国際協力銀行 注(1)
東京地下鉄株式会社
中間貯蔵・環境安全事業株式会社 注(2)
成田国際空港株式会社
東日本高速道路株式会社
中日本高速道路株式会社
西日本高速道路株式会社
本州四国連絡高速道路株式会社
日本郵政株式会社 注(3)
株式会社日本政策投資銀行
輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社
株式会社産業革新機構 注(1)
新関西国際空港株式会社 注(1)
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 注(1)
株式会社民間資金等活用事業推進機構 注(1)
株式会社海外需要開拓支援機構 注(1)
中部国際空港株式会社
日本電信電話株式会社 注(4)
首都高速道路株式会社
阪神高速道路株式会社
日本アルコール産業株式会社
株式会社商工組合中央金庫
日本たばこ産業株式会社
間接出資法人(4法人) 北海道旅客鉄道株式会社 注(5)
四国旅客鉄道株式会社 注(5)
九州旅客鉄道株式会社 注(5)
日本貨物鉄道株式会社 注(5)
非株式会社(10法人) 沖縄振興開発金融公庫
日本私立学校振興・共済事業団
日本銀行 注(6)
日本中央競馬会
預金保険機構 注(7)
日本司法支援センター
全国健康保険協会
日本年金機構 注(1)
原子力損害賠償・廃炉等支援機構 注(1)
農水産業協同組合貯金保険機構 注(8)
注(1)
平成21年度から25年度までに設立された政府出資株式会社等は、株式会社産業革新機構(21年7月17日設立)、日本年金機構(22年1月1日設立)、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(原子力損害賠償支援機構として23年9月12日設立。26年8月18日名称変更)、株式会社国際協力銀行(24年4月1日設立)、新関西国際空港株式会社(24年4月1日設立)、株式会社農林漁業成長産業化支援機構(25年1月23日設立)、株式会社民間資金等活用事業推進機構(25年10月7日設立)及び株式会社海外需要開拓支援機構(25年11月8日設立)の計8法人である。
注(2)
平成26年12月23日以前は、日本環境安全事業株式会社
注(3)
日本郵政株式会社は、特殊法人である日本郵便株式会社の株式の総数を保有しており、同会社は日本郵政株式会社の連結財務諸表の作成対象会社となっている。
注(4)
日本電信電話株式会社は、特殊法人である東日本、西日本両電信電話株式会社の株式の総数を保有しており、両会社は日本電信電話株式会社の連結財務諸表の作成対象会社となっている。
注(5)
北海道旅客鉄道株式会社等4法人が発行した株式は、国が出資する独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(法人設立時は日本国有鉄道清算事業団)が保有している。
注(6)
日本銀行は、日本銀行法(平成9年法律第89号)に基づき、我が国の中央銀行として銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことなどの業務を行っている。同法によれば、日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならないとされており、また、同法の運用に当たっては、日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならないとされている。
注(7)
預金保険機構は、共に認可法人である株式会社地域経済活性化支援機構及び株式会社東日本大震災事業者再生支援機構に出資している。
注(8)
農水産業協同組合貯金保険機構は、認可法人である株式会社東日本大震災事業者再生支援機構に出資している。