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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成27年10月

地域再生法に基づく事業の実施状況等について


4 所見

(1) 検査の状況の概要

国は、地域再生を総合的かつ効果的に推進するために、認定地方公共団体が認定地域再生計画に基づいて行う事業に対して、支援措置を適用するなどして地域が行う自主的かつ自立的な取組を支援することとしている。

そして、17年4月から27年3月までの間における認定地域再生計画数は、1,013認定地方公共団体の1,870計画となっており、支援措置数は、内閣官房等12府省庁の112件となっている。また、地域再生計画の認定が事業実施の要件となっている支援措置のうち、国の予算措置を伴う支援措置に係る17年度から26年度までの間の内閣官房等12府省庁の予算額は、毎年度多額に上っている。

また、国は、26年11月に創生法を制定し、併せて地域再生法を改正したことなどから、同法に基づく事業の実施は、地方公共団体における地方版総合戦略の着実な遂行においても重要なものとなっている。

そこで、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、内閣官房等12府省庁及び地方公共団体における地域再生法に基づく事業の実施状況等について、地方公共団体は地域再生計画を作成するに当たって、適切に地域のニーズを把握しているか、認定地域再生計画に記載された支援措置の適用を受けた事業は適切に実施されているか、交付金事業はその特徴が十分に生かされ、効果的・効率的かつ弾力的に行われているか、認定地域再生計画に設定された目標は達成されているかなどに着眼して検査及び調査を実施した。

ア 地域再生計画の作成及び認定状況等

認定地域再生計画に係る26年度末の状況をみると、1,870計画のうち、計画期間が終了したものは1,425計画、実施中のものは425計画、認定を取り消されたものは20計画となっていた。年度別の認定数をみると、17年度が703計画(1,870計画の37.5%)、21年度は256計画(同13.6%)、26年度は204計画(同10.9%)となっていた(リンク16~19ページ参照)。

全国の市町村について、人口規模が小さい市町村及び財政力指数が低い市町村は、認定市町村となっている割合が低くなっていて、地域再生計画を作成していない主な理由は、人口規模が小さいほど、また、財政力指数が低いほど、人員等が不足しているためとしている割合が高くなっていた(リンク19~23ページ参照)。

地域のニーズの把握状況をみると、地域のニーズを把握していないとしているものが157計画(1,756計画の8.9%)となっており、地域のニーズを把握していない地域再生計画に基づく事業の実施については、地域のニーズを反映した自主的かつ自立的な取組を推進することとはならないことが懸念される(リンク23、24ページ参照)。

対象区域に含まれている地方公共団体が作成主体となっていない主な理由をみると、作成主体が、地域再生計画の作成段階において、該当する地方公共団体と調整を行わなかったためとしたものが16計画(102計画の15.6%)等となっていた(リンク24~26ページ参照)。

調書の対象とした1,756計画から26年度末に認定を受けて間もない169計画を除いた1,587計画について、認定地方公共団体における認定地域再生計画の公表状況をみると、自らは公表していないとしているものは761計画(1,587計画の47.9%)となっていた。そして、認定地域再生計画を自らは公表していない主な理由をみると、認定地域再生計画の実施内容について公表する必要がないと考えたためとしているものが260計画(761計画の34.1%)、基本方針等において公表することとなっていないためとしているものが231計画(同30.3%)等となっていた(リンク26、27ページ参照)。

イ 支援措置の適用を受けた事業の実施状況等

支援措置112件は、①予算措置を伴うもの(92件)、②財政上の優遇措置(9件)、③規制の緩和(4件)、④その他(7件)に分類できる。予算措置を伴う支援措置の適用を受けて実施した事業に係る国の支出額をみると、総額8524億余円となっていた。支援措置別にみると、農林水産省、国土交通省及び環境省所管の交付金が計8089億余円(8524億余円の94.8%)と最も多く、次いで、厚生労働省所管の「実践型地域雇用創造事業」が計116億余円(同1.3%)等となっていた(リンク27~29ページ参照)。

支援措置数の推移をみると、地域再生制度が創設された17年度当初は16件となっていて、19年度末では52件、20年度末では56件と増加したものの、26年度末現在では34件まで減少している(リンク29~32ページ参照)。

所管府省庁において、地域再生計画と支援措置との関係及び配慮の内容を周知していない支援措置が見受けられたり、配慮の内容を具体的に定めていない支援措置が見受けられたりしており、これらについては、地方公共団体が支援措置を一つ又は複数選択して自主的に地域再生計画を作成する際の選択の幅を広げることに資する状況とはなっていない(リンク32~34ページ参照)。

支援措置112件について、認定地域再生計画1,756計画に記載された回数をみると、支援措置の中には、認定地域再生計画に1回も記載されていないものが49件(112件の43.7%)となっていた。また、49件の中には地方公共団体が地域再生計画を作成し、その認定を受けた時期には既に事業の公募期間が終了していて、認定地域再生計画に記載しても支援措置の適用を受けることが不可能であったものが5件見受けられた(リンク34~36ページ参照)。

認定地方公共団体における提案制度等の活用状況をみると、提案制度等を活用したことがないものは623団体(925団体の67.3%)となっていた。地方公共団体が提案制度等を活用していない理由をみると、提案制度等を知らなかったためとしているものが45団体(623団体の7.2%)、提案制度等を十分理解していなかったためとしているものが205団体(同32.9%)等となっていて、認定地方公共団体であっても、提案制度等を知らなかったり、理解が十分でなかったりする団体が多く見受けられた(リンク36、37ページ参照)。

ウ 交付金事業の実施状況等

農林水産省、国土交通省及び環境省が所管している交付金の予算額は、18年度から22年度までの間は1000億円を超える規模となっていたが、22年度以降は減少傾向となっていた。認定地方公共団体において、交付金以外の国庫補助金等を活用することによって交付金の対象施設を整備していることも交付金の予算額が減少している要因の一つとなっていた(リンク37~40ページ参照)。

調書の対象とした都道府県44団体のうち、交付金の活用がない沖縄県を除く43団体におけるワンストップ窓口の活用状況をみると、42団体がワンストップ窓口を活用していないとしている状況となっていた。活用していないとしている理由をみると、都道府県において交付金の対象施設を所管している部署が異なっており、部署間で連携を図ることができないためとしている都道府県が18団体等となっていた(リンク40、41ページ参照)。

年度間融通の活用状況をみると、26年度末までに計画期間が終了していて、交付金を記載していた816計画のうち、年度間融通を活用していないものは84計画(816計画の10.2%)となっていた。年度間融通を活用していない理由をみると、年度間融通を活用することを検討しなかったためとしているものが42計画(84計画の50.0%)となっていた。また、17年度から26年度までの間に年度間融通の対象となった2,062施設の初年度の年度間融通の活用状況をみると、交付決定の段階で年度間融通を活用することとして単年度交付額を超える交付金の交付を受けているものは100施設(2,062施設の4.8%)となっていた。施設別にみると、汚水処理施設整備交付金の対象施設に対して、交付決定の段階で年度間融通を活用することとして単年度交付額を超える交付金を交付している事態が多く見受けられた(リンク41~45ページ参照)。

他施設充当の活用状況をみると、他施設充当を活用していないものは296計画(816計画の36.2%)となっていた。他施設充当を活用していない理由をみると、他施設充当を活用することを検討しなかったためとしているものが49計画(296計画の16.5%)となっていた(リンク45~47ページ参照)。

前記816計画の計画変更の認定申請の状況をみると、計画変更の認定申請を行わなければならないのにしていないものは14計画となっていた。14計画の計画変更の認定申請を行わなかった理由をみると、計画変更に関する基準を知らなかったためとしているものが5計画(14計画の35.7%)、計画変更の認定申請を失念したためとしているものが7計画(同50.0%)となっていた。また、認定地域再生計画の軽微な変更の報告の状況をみると、軽微な変更の報告を行わなければならないのにしていないものは計240計画となっていた。240計画の変更の報告を行わなかった理由をみると、軽微な変更に関する基準を知らなかったためとしているものが59計画(240計画の24.5%)、軽微な変更の報告を行うことを失念したためとしているものが94計画(同39.1%)となっていた(リンク47~49ページ参照)。

エ 認定地域再生計画における目標の設定状況及び達成状況等

26年度末までに計画期間が終了している1,332計画における目標の設定状況についてみると、目標数は計3,514目標となっており、このうち、定量的な目標は3,428目標となっていた。3,428目標をアウトプット指標又はアウトカム指標に分類すると、アウトプット指標は355目標、アウトカム指標は3,073目標となっていた。また、3,428目標の達成状況についてみると、達成したとしているものは1,749目標(3,428目標の51.0%)にとどまっていた。そして、交付金を記載していた816計画に設定された2,227目標のうち、達成したとしているものは1,171目標(2,227目標の52.5%)、交付金以外の支援措置を記載していた495計画に設定された1,201目標のうち、目標を達成したとしているものは578目標(1,201目標の48.1%)となっており、交付金以外の支援措置を記載していた計画に設定された目標の達成率は50%を下回る状況となっていた。目標を達成していない理由をみると、関係者との調整に時間を要しているためとしているものが見受けられた(リンク49~52ページ参照)。

地域再生制度における国と地方公共団体との連携に関する課題等について地方公共団体に対して調査したところ、様々な内容となっていた。このうち、地域再生制度に関する課題が数多く挙げられており、中でも「簡素化した使いやすい制度にしてほしい。」等の手続の効率化等に関する意見等が計47件となっていた。また、「活用したい支援措置が少ないので支援措置数を増やしてほしい。」等の支援措置の充実に関する意見等が計28件となっていた(リンク52~55ページ参照)。

(2) 所見

地域再生法によれば、国は、地方公共団体の自主性及び自立性を尊重しつつ、地域再生に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有するとされており、内閣府及び関係省庁は、認定地方公共団体が認定地域再生計画に基づき行う事業に対して、支援措置を適用するなどして地域が行う自主的かつ自立的な取組を支援している。

また、国は、26年11月の創生法の制定及び地域再生法の改正に伴い変更した基本方針において、「地方創生においては、地方が自ら考え、責任をもって取り組むことが何より重要であることから、都道府県及び市町村は、総合戦略を勘案して、地方版総合戦略を定め、推進することが強く期待されている」等としており、内閣府は、全ての地方公共団体が、27年度中に地方版総合戦略を策定することを期待するとしている。そして、地方版総合戦略は、地域の実情に応じた施策全般にわたる戦略を定めるものであり、地域再生計画は、個別の事業等について具体的に定める実施計画であるとしていることから、27年度以降実施される地域再生法に基づく事業は、地方公共団体における地方版総合戦略の着実な遂行においても重要なものとなる。

一方、「3 検査の状況」に記述したとおり、地域再生計画の認定数や支援措置数が減少傾向となっている事態や、認定地方公共団体において、地域再生計画の作成、認定地域再生計画に基づく事業の実施等の各段階において、地域再生制度を活用する上で留意すべき事態が見受けられた。さらに、非認定市町村を含め、地方公共団体は、地域再生制度の活用に関する様々な課題を抱えており、これに対する国への意見や要望を挙げている。他方、地域再生法において、国の責務は定められているものの、地方公共団体の責務については、地域再生が地方公共団体が行う自主的かつ自立的な取組を前提としていることから、定められていない。

したがって、内閣府及び関係省庁においては、地方公共団体が積極的に地域再生制度を活用して地方版総合戦略を着実に遂行できるよう、次の点に留意して、地域再生に関する施策の総合的な策定、及び実施をより一層推進して、地方公共団体における地域再生の総合的かつ効果的な推進に更に取り組むとともに、必要に応じて地域再生制度や交付金制度の見直しを検討することが必要である。

ア 内閣府は、地方公共団体に対して、地域のニーズを十分把握するとともに、地方公共団体間の調整及び連携を十分に図った上で地域再生計画の認定を申請するよう助言する。また、認定地方公共団体に対して、認定地域再生計画については、適時に公表することが望ましいことを助言する。

イ 内閣府及び関係省庁は、連携を一層強化して、地方公共団体が地域再生計画に記載して適用を受けることができる支援措置の充実を図ることを検討する。

ウ 内閣府並びに農林水産省、国土交通省及び環境省は、地方公共団体に対して、交付金の特徴を定期的に周知するなどして交付金のより一層の活用を促すとともに、国土交通省及び環境省は、各年度の交付額が単年度交付額を超えていないことを確認する。また、内閣府は、認定地方公共団体に対して、認定地域再生計画について変更認定等を伴う事態が生じた場合は、変更認定を適時適切に申請することなどについて周知徹底を図るとともに、農林水産省、国土交通省及び環境省は、認定地方公共団体における変更認定を申請する必要がある事態を認めた場合は、内閣府と連携して速やかに変更認定を申請するよう助言する。

エ 内閣府は、地域再生計画の認定に当たり、地域再生計画に設定された目標が認定基準に適合しているか十分確認するとともに、認定地方公共団体の認定地域再生計画に基づく事業の実施に当たり、認定地域再生計画に設定された目標の達成状況を把握し、必要に応じて目標を達成できるよう助言する。また、内閣府及び関係省庁は、地方公共団体に対して、地域再生制度、支援措置に関する情報、提案制度等について定期的に周知するなどして、地方公共団体等との連携を強化することにより地域再生制度の更なる活用を促す。

会計検査院としては、今後とも地域再生法に基づく事業の実施状況等について引き続き注視していくこととする。