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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成27年10月

租税特別措置(法人税関係)の適用状況等について


2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

会計検査院は、平成14年度決算検査報告において、特定検査対象に関する検査状況として「租税特別措置法(法人税関係)の実施状況について」を掲記している。この中で、①法人税に関する措置法の適用状況について、中小企業者等を対象としたものなど適用件数及び適用金額のいずれにおいても多く適用されている条文が見受けられた一方、適用の少ない条文も見受けられたこと、利益計上法人が主に措置法を適用している状況について述べ、措置法の適用状況の把握に努めていくことが望まれることや、②税制改正の際の特別措置の検証及び政策評価による検証については、より一層内容を充実することにより、施策の実効性を高めていくことが望まれることなどを記述している。

そして、会計検査院は、22年次の検査においては、中小企業者に適用される特別措置の適用状況等に着目して検査したところ、大企業の平均所得金額を超えるなど多額の所得を得ていて財務状況がぜい弱とは認められない中小企業者が、中小企業者に適用される特別措置の適用を受けている事態が見受けられたことから、中小企業者に適用される特別措置の適用範囲について検討するなどの措置を講ずるよう、22年10月に、財務大臣及び経済産業大臣に対して、会計検査院法(昭和22年法律第73号)第36条の規定により、意見を表示したところである。

少子・高齢化の急速な進展等経済社会の構造が大きく変化している中で、持続的な経済社会の活性化の実現を図る取組として税制改革に期待が寄せられている。特に調査対象特別措置については、適用実態報告書によれば、適用法人数、適用件数及び適用総額のいずれも過去3回の適用実態報告書で増加の傾向が見受けられる状況にあり、また、26年税調報告においては、グローバル経済の中で、日本が強い競争力を持って成長していくためには、法人税も成長指向型の構造に変革していく必要があるとされ、そのための具体的改革事項として、法人税関係の特別措置の見直しが取り上げられたところである。

さらに、震災特例は、福島復興再生特別措置法(平成24年法律第25号)の制定に伴う措置等、近年、復興のための新たな税制上の措置が追加されるなどの拡充が図られており、税制以外の他の復興支援施策とともに、東日本大震災からの復興に向けた取組の一層の推進が図られている。

そこで、会計検査院は、政府税制調査会の議論等を念頭に置きながら、法人税関係の特別措置等の適用状況並びに関係省庁及び財務省による検証状況について、有効性等の観点から、次の着眼点により検査した。

ア 法人税関係の特別措置等の適用状況

法人税関係の特別措置等の適用状況はどのようになっているか、特に、企業支援を政策目的とする法人税関係の特別措置等の状況はどのようになっているか。また、各関係省庁が所管する政策を実現するための手段として基礎的な単位となる事務事業ごとの状況はどのようになっているか。

イ 関係省庁及び財務省による法人税関係の特別措置等の検証状況

(ア) 関係省庁において、適用実態調査情報等が有効に活用されているか。

(イ) 関係省庁において、減収額が減収見込額と開差がある調査対象特別措置について、減収額と減収見込額との比較の検討等に当たり適切に検証が行われているか。

(ウ) 関係省庁において、幅広い業種や企業を対象としながら、適用が特定の企業に集中している調査対象特別措置について適切に検証が行われているか。

(エ) 関係省庁において、創設後長期間(20年以上)を経過した調査対象特別措置について適切に検証が行われているか。

(オ) 関係省庁において、関係省庁が拡充の要望等を行った調査対象特別措置が適用実態等からみて必要最小限の措置となっているかについて、適切に検証が行われているか。

(カ) 財務省において、関係省庁から提出を受けた要望書等に基づき、法人税関係の特別措置等の効果等について適切に検証が行われているか。

(2) 検査の対象及び方法

23年度適用実態報告書の調査対象特別措置の適用件数1,254,869件、24年度適用実態報告書の調査対象特別措置の適用件数1,323,396件、25年度適用実態報告書の調査対象特別措置の適用件数1,443,402件、計4,021,667件及び震災特例の23年度から25年度までの適用件数267件を対象として検査した。

検査に当たっては、適用実態報告書を分析したほか、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)等に基づき、全524税務署から国税収納金整理資金徴収額計算書の証拠書類として提出されたe-Taxデータ(注2)による法人税確定申告書(以下「e-Taxデータ」という。)、23事業年度52,342法人、24事業年度57,202法人、25事業年度49,382法人、計延べ158,926法人について調査対象特別措置等の適用があった延べ98,487法人のe-Taxデータを分析するなどして検査を行った。

そして、内閣府本府等13府省庁(注3)において、税制改正要望の際に財務省に提出した要望書等や事前評価書等の関係資料における法人税関係の特別措置等の検証状況及び各関係省庁において所管する政策を実現するための手段として基礎的な単位となる事務事業の別に区分した場合の状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。 また、財務省において、適用実態調査の内容を聴取したり、法人税関係の特別措置等の検証状況等を確認したりするなどの方法により会計実地検査を行った。

(注2)
e-Taxデータ  国税電子申告・納税システム(e-Tax)により提出された法人税確定申告書のうち、「計算証明規則」、「電子情報処理組織を使用して処理する場合等における計算証明の特例に関する規則」(平成15年会計検査院規則第4号)等に基づき会計検査院に証拠書類として提出されたもので税務署の規模に応じて資本金や税額が一定額以上の法人税申告書のデータ
(注3)
13府省庁 内閣府本府、金融庁、復興庁、総務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省