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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第3 内閣府(警察庁)|
  • 不当事項|
  • 予算経理

外部の機関から支払を受けた委託費を国庫に納付せずにこれを別途に経理するなどしていて、受託研究に係る会計経理が会計法令に違反していたもの[科学警察研究所](4)


会計名及び科目
一般会計 (部)雑収入 (款)諸収入 (項)雑入
部局等
科学警察研究所
受託研究の概要
外部の機関から委託を受けて科学捜査、犯罪の防止及び交通警察に関する研究を行うもの
国庫に納付せず別途に経理するなどしていた委託費の額
135,210,050円(平成19年度~27年度)

1 受託研究の概要等

(1) 科学警察研究所の概要

科学警察研究所(以下「研究所」という。)は、警察法(昭和29年法律第162号)により設置された警察庁の附属機関であり、科学捜査についての研究及び実験並びにこれらを応用する鑑定及び検査を行うとともに、犯罪の防止及び交通警察についての研究及び実験を行っている。

(2) 受託研究の概要

研究所は、国立研究開発法人科学技術振興機構(平成27年3月31日以前は独立行政法人科学技術振興機構。以下「JST」という。)、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(27年3月31日以前は独立行政法人国立精神・神経医療研究センター。以下「NCNP」という。)及びJSTの委託先であるフルイドウェアテクノロジーズ株式会社(以下「会社」という。)から委託を受け、委託契約を締結して、研究開発の業務(以下「受託研究」という。)を実施し、委託費の支払を受けている。

(3) 国の会計法令

国の予算については、財政法(昭和22年法律第34号)第14条において、「歳入歳出は、すべて、これを予算に編入しなければならない。」として総計予算主義の原則が定められている。そして、予算の執行については、会計法(昭和22年法律第35号)第2条において、「各省各庁の長は、その所掌に属する収入を国庫に納めなければならない。直ちにこれを使用することはできない。」として収入支出統一の原則が定められている。また、国の収入の原因等となる契約に関する事務については、会計法により、各省各庁の長から当該契約に関する事務の委任を受けた職員が契約担当官として行うこととなっている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、外部の機関から支払を受けた委託費に係る会計経理が会計法令に基づき適正に行われているかなどに着眼して、19年度から27年度までの間に研究所が、JSTと締結した委託契約計3件(委託費計103,660,050円)、NCNPと締結した委託契約計4件(同計8,350,000円)及び会社と締結した委託契約計3件(同計23,200,000円)、委託契約合計10件(同合計135,210,050円)を対象として、警察庁本庁及び研究所において、委託契約書、実績報告書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

研究所においては、JST、NCNP及び会社から支払を受けた委託費を国庫に納付せずに、市中銀行に委託費を受け入れるための研究所長名義の口座を開設してこれを別途に経理して、当該口座から受託研究の実施に必要となる経費を支払っていた。

しかし、受託研究は国の機関である研究所の業務として実施されていることから、研究所は委託費をその所掌に属する収入として国庫に納付し、受託研究の実施に必要となる経費を歳出予算から支出すべきであった。また、前記の委託契約は、委託費の支払を受けることを内容とする収入の原因となる契約であることから、研究所の契約担当官が当該契約に関する事務を行うべきであるのに、研究所の他の部署において行われていた。

したがって、支払を受けた委託費を国庫に納付せずにこれを別途に経理しているなどの事態は、総計予算主義を定めた財政法や収入支出統一の原則等を定めた会計法に違反するものであり、支払を受けた委託費計135,210,050円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、研究所において、委託費に係る会計経理を行うに当たり、国の会計法令を遵守することの認識が欠けていたこと、警察庁本庁において、委託費に係る研究所の会計経理の状況を把握しておらず、研究所を十分に指導していなかったことなどによると認められる。