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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 補助金

(7)学校施設環境改善交付金が過大に交付されていたもの[9県](31)-(42)


12件 不当と認める国庫補助金 273,802,000円

学校施設環境改善交付金(以下「交付金」という。)は、「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律」(昭和33年法律第81号)等に基づき、地方公共団体が作成する公立の義務教育諸学校等の施設の整備に関する施設整備計画によって実施される施設整備事業に要する経費に充てるために、国が地方公共団体に対して交付するものである。

交付金の交付額は、学校施設環境改善交付金交付要綱(平成23年文部科学大臣裁定)等によれば、当該地方公共団体の施設整備計画に記載された事業のうち、算定の対象となる事業(以下「交付対象事業」という。)ごとに文部科学大臣が定める方法により算出した配分基礎額に交付対象事業の種別に応じて同大臣が定める割合(以下「算定割合」という。)を乗ずるなどして得た額(以下「算定後配分基礎額」という。)の合計額と、交付対象事業に要する経費の額(以下「交付対象工事費」という。)に算定割合を乗じて得た額の合計額のうち、いずれか少ない額を基礎として算定することとされている。このうち、配分基礎額については、配分基礎額を算定する際の基礎となる面積(以下「配分基礎面積」という。)を算定して、これに交付対象事業の種別に応じて定められた単価を乗ずるなどの方法により算定することとされている。

本院が、17府県及び294市町村等、計311地方公共団体において会計実地検査を行ったところ、9県の12市町において、配分基礎面積を超える面積分の工事費を事業全体の工事費から除外せずに交付対象工事費を算定するなどしたり、前年度の事業の交付対象工事費に既に計上していた工事費を当年度の事業の交付対象工事費に重複して計上するなどしたり、適正な配分基礎面積を超える面積により配分基礎額を算定したりするなどしていたため、交付金計273,802,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、12市町において交付金の交付額の算定方法についての理解が十分でなかったこと、9県において12市町から提出された実績報告書等に対する審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、態様別に示すと次のとおりである。

ア 配分基礎面積を超える面積分の工事費を事業全体の工事費から除外せずに交付対象工事費を算定するなどしていた事態

交付対象事業のうち、不適格改築事業、構造上危険な状態にある建物の改築等事業(以下「危険改築事業」といい、不適格改築事業と合わせて「改築事業」という。)及び幼稚園の園舎の新増築事業に係る配分基礎面積は、事業を行う年度の5月1日における当該学校の学級数等に応じて計算される面積に基づくなどして算定することとなっている。

そして、「学校施設環境改善交付金に係る施設整備計画の様式について」(平成23年文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課長通知)等によれば、事業全体面積のうち配分基礎面積を交付対象面積とすること及び事業全体面積から交付対象面積を差し引いた残りの面積を交付対象外面積とすることとされている。また、工事費についても、面積の考え方と同様の取扱いをすることなどとされている。したがって、改築事業及び幼稚園の園舎の新増築事業において、配分基礎面積を超える面積の建物を建築する場合、配分基礎面積を超える面積分の工事費を交付対象外工事費として、事業全体の工事費から除外する必要がある。

さらに、交付対象事業のうち、学校水泳プール(屋外)新改築事業に係る配分基礎面積の上限面積は、水泳プールの水面積で400m2とすることとなっており、この上限面積を超える施設を整備する場合の交付対象工事費を算定する際には、上限面積を超える面積分の工事費を面積案分により算定し、これを事業全体の工事費から除外することとなっている。

4県の4市において、改築事業及び幼稚園の園舎の新増築事業の実施に当たり、配分基礎面積を超える面積の建物を建築していたのに、これを超える面積分の工事費を交付対象外工事費として除外しなかったり、学校水泳プール(屋外)新改築事業の実施に当たり、上限面積を超える面積分の工事費を除外する際の面積案分の計算を誤ったりするなどしていたため、交付対象工事費等が過大に算定されており、交付金計169,957,000円が過大に交付されていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

富山県小矢部市は、平成23年度から25年度までの間に、石動小学校の不適格改築事業等5事業を実施し、交付金計735,519,000円の交付を受けていた。

同市は、石動小学校の不適格改築事業4事業の実施に当たり、配分基礎面積5,648m2を超える6,310m2の校舎を建築し、交付対象工事費に6,310m2分の建築工事等に要した経費を計上していた。

しかし、交付対象工事費の算定に当たっては、配分基礎面積を超える面積分の工事費を交付対象外工事費として、事業全体の工事費から除外する必要があった。

したがって、当該交付対象外工事費を除外して配分基礎面積5,648m2に基づく適正な交付対象工事費等により交付金の交付額を算定すると計654,621,000円となることから、交付金計80,898,000円が過大に交付されていた。

イ 前年度の事業の交付対象工事費に既に計上していた工事費を当年度の事業の交付対象工事費に重複して計上するなどしていた事態

交付対象事業のうち、改築事業を複数年度にわたる工事全体で契約した場合の各年度の交付対象工事費は、工事全体の工事費のうち当年度分だけの工事費に基づいて算定することとなっている。また、改築事業と他の事業の共同で学校施設を整備する場合には、学校施設の整備に係る経費を改築事業の交付対象工事費と他の事業の経費とに案分して計上することとなっている。

3県の3市町において、改築事業の実施に当たり、前年度の事業の交付対象工事費に既に計上して実績報告していた工事費を当年度の事業の交付対象工事費に重複して計上したり、他の事業と共同で整備したエレベータの設置工事費を改築事業と他の事業とで案分せずに両事業で重複して計上したりしていたため、交付対象工事費が過大に算定されており、交付金計76,118,000円が過大に交付されていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

福岡県田川郡福智町は、平成24、25両年度に、赤池中学校の危険改築事業等3事業を実施し、25年度に交付金計500,674,000円の交付を受けていた。

同町は、同校の校舎を改築するに当たり、24、25両年度にわたる工事契約を締結していた。

しかし、同町は、工事全体の工事費のうち24年度分の工事費について、23年度から24年度にかけて実施した事業の交付対象工事費に既に計上して実績報告していたのに、24年度から25年度にかけて実施した前記3事業の交付対象工事費に重複して計上していた。

したがって、重複していた工事費を除外して適正な交付対象工事費により交付金の交付額を算定すると計430,558,000円となることから、交付金計70,116,000円が過大に交付されていた。

ウ 適正な配分基礎面積を超える面積により配分基礎額を算定していた事態

交付対象事業のうち、大規模改造(質的整備)事業の一環として実施する空調設置工事に係る配分基礎面積は、空調設置工事の対象となる室等の面積の計とすることとなっている。

2県の2町において、大規模改造(質的整備)事業の実施に当たり、空調設置工事に係る配分基礎面積を空調設置工事の対象となる室等の面積ではなく校舎全体の面積等としていたため、配分基礎額が過大に算定されており、交付金計15,282,000円が過大に交付されていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3>

和歌山県伊都郡かつらぎ町は、平成25、26両年度に、大谷小学校の大規模改造(質的整備)事業等5事業を実施し、交付金68,230,000円の交付を受けていた。

同町は、大谷小学校の大規模改造(質的整備)事業等3事業の一環として実施した空調設置工事に係る配分基礎面積を校舎全体の面積計10,608m2としていた。

しかし、大規模改造(質的整備)事業のうち空調設置工事に係る適正な配分基礎面積は、校舎のうち空調設置工事を実施した室等の面積の計4,715m2となる。

したがって、当該室等の面積を超える面積を除外して適正な配分基礎面積に基づく配分基礎額により交付金の交付額を算定すると56,771,000円となることから、交付金11,459,000円が過大に交付されていた。

アからウまでの事態のほか、3県の3市町において、大規模改造(質的整備)事業等の実施に当たり、障害児等対策施設整備工事の配分基礎額を算定する際にエレベータの設置箇所数を誤って計上するなどしていたため、交付金計12,445,000円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・補助事業者別に示すと次のとおりである。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
交付対象事業の種別 年度 交付金の交付額 不当と認める交付金の交付額 摘要
          千円 千円  
(31) 宮城県 栗原市 学校水泳プール(屋外)新改築事業 24~26 59,365 12,023 交付対象の上限面積を超える面積分の工事費を除外する際の計算を誤って交付対象工事費を算定していたもの(アの事態)
(32) 千葉県 君津市 危険改築事業 25~27 150,567 21,784 配分基礎面積を超える面積分の工事費を除外せずに交付対象工事費を算定するなどしていたもの(アの事態)
(33) 富山県 小矢部市 不適格改築事業 23~25 735,519 80,898
(34) 射水市 大規模改造(老朽)事業 23、24 527,307 2,984 算定後配分基礎額が交付対象となる上限額を超えていたもの
(35) 和歌山県 伊都郡かつらぎ町 大規模改造(質的整備)事業 25、26 68,230 11,459 適正な配分基礎面積を超える面積により配分基礎額を算定していたもの(ウの事態)
(36) 東牟婁郡串本町 23 15,320 7,359 エレベータの設置箇所数を誤って計上して配分基礎額を算定していたもの
(37) 徳島県 阿南市 不適格改築事業、危険改築事業 25、26 216,538 2,873 前年度の事業の交付対象工事費に既に計上していた工事費の一部を当年度の事業の交付対象工事費に重複して計上していたもの(イの事態)
(38) 香川県 高松市 25、26 733,911 3,129 他事業と共同で整備したエレベータの設置工事費を他事業の経費と当該事業の交付対象工事費に重複して計上していたもの(イの事態)
(39) 仲多度郡まんのう町 大規模改造(質的整備)事業 23、24 731,787 3,823 適正な配分基礎面積を超える面積により配分基礎額を算定していたもの(ウの事態)
(40) 福岡県 田川郡福智町 不適格改築事業、危険改築事業 24、25 500,674 70,116 前年度の事業の交付対象工事費に既に計上していた工事費を当年度の事業の交付対象工事費に重複して計上していたもの(イの事態)
(41) 大分県 杵築市 幼稚園の園舎の新増築事業 25、26 130,737 55,252

配分基礎面積を超える面積分の工事費を除外せずに交付対象工事費を算定していたもの(アの事態)

(42) 鹿児島県 霧島市 屋外教育環境の整備に関する事業 24、25 41,387 2,102 配分基礎面積に変更が生じたのに算定後配分基礎額の再算定を行っていなかったもの
(31)―(42)の計 3,911,342 273,802