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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 補助金

(1)国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの[14道府県](51)-(71)


21件 不当と認める国庫補助金 275,658,253円

国民健康保険は、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関して、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等を行う保険である。

市町村が行う国民健康保険の被保険者は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、一般被保険者と退職被保険者(注1)及びその被扶養者(以下「退職被保険者等」という。)とに区分されている。国民健康保険の被保険者の資格を取得している者が退職被保険者となるのは、当該被保険者が厚生年金等の受給権を取得した日(ただし、国民健康保険の資格取得年月日以前に年金受給権を取得している場合は国民健康保険の資格取得年月日。以下「退職者該当年月日」という。)となっている。そして、退職被保険者等となったときは、年金証書等が到達した日の翌日から起算して14日以内に市町村に届出をすることなどとなっている。

(注1)
退職被保険者  被用者保険の被保険者であった者で、平成26年度までの間に退職して国民健康保険の被保険者となり、かつ、厚生年金等の受給権を取得した場合に65歳に達するまでの間において適用される資格を有する者

国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険の事業運営の安定化を図るために、同法に基づき療養給付費負担金(以下「国庫負担金」という。)が交付されている。

国庫負担金の交付の対象は、一般被保険者に係る医療費となっており、退職被保険者等に係る医療費については、被用者保険の保険者が拠出する療養給付費等交付金等で負担することとなっていることから、国庫負担金の交付の対象となっていない。

毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令」(昭和34年政令第41号)等に基づき、次のとおり算定することとなっている。

(1)国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの[14道府県](51)-(71) 画像

このうち、一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額と、入院時食事療養費、療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額との合算額とすることとなっている。

ただし、届出が遅れるなどしたため退職被保険者等の資格が遡って確認された場合には、一般被保険者に係る医療給付費から、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費を控除することとなっている。

また、都道府県又は市町村が、国の負担金等の交付を受けずに自らの財政負担で、年齢その他の事由により、被保険者の全部又は一部について、その一部負担金に相当する額の全部又は一部を当該被保険者に代わり医療機関等に支払う措置(以下「負担軽減措置」という。)を講じている場合がある。そして、負担軽減措置の対象者の延べ人数の被保険者数に占める割合が一定の割合を超える市町村については、負担軽減措置の対象者に係る療養の給付に要する費用の額、高額療養費の支給に要する費用の額等に、被保険者の負担の軽減の度合いに応じた所定の率を乗じて減額調整(注5)を行うこととなっている。

(注5)
減額調整  負担軽減措置により被保険者が医療機関等の窓口で支払う一部負担金が軽減されると、一般的に受診が増えて医療給付費が増加する(波及増)傾向があるとし、波及増に係る医療給付費を国庫負担対象費用額に含めると、負担軽減措置を講じていない市町村との公平を欠くことになるとして、この波及増に係る国庫負担対象費用額を減額するために行われる調整

国庫負担金の交付手続については、①交付を受けようとする市町村は、都道府県に交付申請書を提出し、②これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査した上で厚生労働省に提出し、③厚生労働省は、これに基づき交付決定を行って国庫負担金を交付することとなっている。そして、④市町村は、当該年度の終了後に都道府県に事業実績報告書を提出し、⑤これを受理した都道府県は、その内容を審査した上で厚生労働省に提出し、⑥厚生労働省は、これに基づき交付額の確定を行うこととなっている。

本院は、29都道府県の190市区町村において、平成21年度から26年度までの間に交付された国庫負担金について、会計実地検査を行った。その結果、14道府県の21市町において、負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったり、集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたりするなどしていたため、国庫負担金交付額計96,524,372,862円のうち計275,658,253円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、上記の21市町において制度の理解が十分でなく事務処理が適切でなかったこと、上記の14道府県において事業実績報告書の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

大阪府三島郡島本町は、平成25年度の国庫負担金の実績報告に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、高額療養費等の集計を誤り246,163,286円過大に計上するなどしていたため、国庫負担対象費用額を過大に算定していた。

その結果、国庫負担金が79,120,684円過大に交付されていた。

以上を部局等別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

  部局等 交付先
(保険者)
年度 国庫負担対象費用額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象費用額 不当と認める国庫負担金 摘要
        千円 千円 千円 千円  
(51) 北海道 函館市 21~25 58,727,889 19,503,616 80,461 26,777 負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったもの
(52) 帯広市 21~25 32,290,626 10,730,450 40,741 13,568
(53) 青森県 青森市 21~25 54,668,659 18,157,179 74,056 24,533
(54) 福島県 伊達市 21~25 13,083,370 4,342,702 32,915 10,850 負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったものなど
(55) 山梨県 甲府市 24、25 13,366,887 4,306,550 80,959 25,907 負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったもの
(56) 愛知県 尾張旭市 26 2,218,683 709,195 5,448 1,743 集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(57) 大阪府 松原市 26 5,618,271 1,797,215 32,205 10,305
(58) 箕面市 23~25 13,158,836 4,287,356 16,865 5,504
(59) 高石市 21、22、24、25 9,634,575 3,184,053 10,075 3,832 負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったものなど
(60) 三島郡
島本町
25 1,121,087 356,320 247,546 79,120 集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたものなど
(61) 泉南郡
岬町
26 884,002 282,818 4,805 1,537 負担軽減措置の対象となっている医療給付費に係る減額調整を誤っていたものなど
(62) 兵庫県 赤穂市 23 1,838,469 625,079 4,309 1,465 遡及退職被保険者等に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(63) 鳥取県 東伯郡
湯梨浜町
25 552,557 175,448 5,500 1,866
(64) 島根県 松江市 22~26 30,333,043 9,945,779 36,735 12,088 負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったもの
(65) 広島県 東広島市 25 4,778,253 1,517,935 5,041 1,702 遡及退職被保険者等に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(66) 愛媛県 新居浜市 21~25 20,757,822 6,876,601 89,844 30,079 負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったもの
(67) 四国中央市 21~25 15,274,719 5,045,675 15,131 5,027
(68) 福岡県 朝倉市 21~24 10,808,803 3,622,131 37,346 12,501 負担軽減措置の対象となっている医療給付費に係る減額調整を誤っていたものなど
(69) 遠賀郡
遠賀町
25 760,553 243,900 (注7)
2,472 計算を誤って国庫負担金を過大に算定していたもの
(70) 長崎県 南松浦郡
新上五島町
25 1,116,845 358,013 11,535 3,691 集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(71) 大分県 国東市 23 1,339,028 456,349 (注7)
1,079 計算を誤って国庫負担金を過大に算定していたもの
(51)―(71)の計 292,332,986 96,524,372 831,526 275,658  
(注6)
遡及して退職被保険者等の資格を取得した者
(注7)
遠賀郡遠賀町及び国東市は、計算を誤って国庫負担金を過大に算定していたもので、国庫負担対象費用額の算出には誤りはなかったことから、本表の「不当と認める国庫負担対象費用額」欄には計数を掲げていない。