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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
  • 平成26年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(6)日本年金機構が保有している固定資産の状況について


(平成26年度決算検査報告2か所参照 リンク10299 20678

1 本院が表示した意見

日本年金機構(以下「機構」という。)は、平成22年1月に、日本年金機構法(平成19年法律第109号。以下「機構法」という。)に基づき設立され、その際、国の年金特別会計で保有していた固定資産を承継しており、その資産は国から出資されたものとされている。そして、機構法等によれば、土地及び建物といった重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、厚生労働大臣の認可を受けなければならないこととされている。しかし、上記資産のうち宿舎、事務所等の土地及び建物(以下「土地及び建物」という。)について、機構において長期間入居者のいない宿舎や他の宿舎に集約が可能な宿舎を保有し続けていたり、処分方針等が決まらない事務所等を保有し続けていたりしている事態及び厚生労働省において機構の土地及び建物が不要となった場合に、これを国庫に納付することができるような制度を整備しておらず、土地の一部を売却して得た資金が機構内部に留保されたままとなっている事態が見受けられた。

したがって、機構において、上記の長期間入居者のいない宿舎や他の宿舎に集約が可能な宿舎及び処分方針等が決まらない事務所等について処分等を検討したり、検討した結果保有する合理的理由が認められないと判断した土地及び建物について、国庫に納付することができるような制度が整備され次第、土地及び建物を売却して機構内部に留保されている資金と合わせて、確実に国庫に納付することができるよう備えることとしたり、個々の土地及び建物について保有の必要性を見直すよう資産管理責任者に周知徹底を図ったりするとともに、厚生労働省において、機構における検討等により上記の宿舎、事務所等を含む個々の土地及び建物の保有の必要性を見直した結果、機構が保有する合理的理由が認められない資産について、これを国庫に納付させるための適切な制度を整備するよう、厚生労働大臣及び日本年金機構理事長に対して27年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。

2 当局が講じた処置

本院は、厚生労働本省及び機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、厚生労働省及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 機構は、保有する合理的理由が認められないと判断した8宿舎、4事務所等を国庫へ納付する方針を固め、また、既に土地の一部を売却して機構内に留保している資金と合わせて、国庫に納付することができる制度が整備され次第、納付することができるよう備えていた。そして、28年7月に全資産管理責任者に対して指示文書を発出して、機構が保有する個々の土地及び建物について保有の必要性を継続的に見直すよう周知徹底した。

イ 厚生労働省は、機構が保有する合理的理由が認められない資産について、これを国庫に納付させることができるよう、28年3月に「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案」を作成した。同法律案は、同年3月11日に閣議決定されて、第190回国会(常会)に提出された。

なお、同法律案は、同年9月末現在、継続審議となっている。