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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • (1)補助金等により造成した基金等の使用が適切でなかったもの

森林整備加速化・林業再生事業費補助金により造成した基金を用いて実施した事業において、基金事業の対象事業費を過大に精算するなどしていたもの[林野庁](224)-(226)


(3件 不当と認める国庫補助金 13,632,760円)

森林整備加速化・林業再生事業費補助金は、間伐等の森林整備の加速化と間伐材等の森林資源を活用した林業・木材産業等の地域産業の再生を図ることなどを目的として、「森林整備加速化・林業再生事業費補助金交付要綱」(平成21年21林整計第82号農林水産事務次官依命通知)等に基づき、林野庁が都道府県に対して基金を造成させるために交付するものである。そして、基金を造成した都道府県は、間伐等の事業(以下「基金事業」という。)を実施する事業主体に対して、この基金を取り崩すなどして補助金(以下「基金補助金」という。)を交付している。

本院が、22道府県において会計実地検査を行ったところ、大阪府及び岩手、埼玉両県の3事業主体が実施した基金事業において、樹幹注入を実施した松を所要の手続を経ることなく無断で処分していたり、基金事業の対象となる事業費(以下「基金事業対象事業費」という。)を過大に精算していたり、仕様書の内容に適合した履行が確保されていなかったりしており、取り崩された基金計13,632,760円(国庫補助金相当額同額)の使用が適切でなく、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、3事業主体において基金事業の適正な実施に対する認識が欠けるなどしていたこと、大阪府及び埼玉県において実績報告書の審査及び確認が十分でなかったこと、大阪府及び岩手、埼玉両県において3事業主体に対する指導等が十分でなかったことなどによると認められる。

以上を事業主体別に示すと次のとおりである。

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(224) 林野庁 岩手県 紫波郡矢巾町
(事業主体)
森林整備加速化・林業再生 25 2,384 2,264 1,250 1,250

矢巾町は、平成25年度に、松くい虫(注)が運ぶ線虫による松の枯死を防止するために松118本に係る樹幹注入を事業費2,384,928円(基金事業対象事業費2,264,731円)で実施し、岩手県に対して事業実績書等を提出して、基金補助金2,264,731円(国庫補助金相当額同額)の交付を受けていた。

しかし、同町は、27年度に、上記118本の松のうち72本について、県知事の承認を得て基金補助金を同知事に納付する手続を経ることなく、無断で処分していた。

したがって、上記72本の松に係る樹幹注入の基金事業対象事業費1,250,614円に対する同額の基金補助金(国庫補助金相当額同額)が不当と認められる。

(注)
松くい虫  松の枯死の原因となるマツノザイセンチュウを運ぶマツノマダラカミキリをいう。
(225) 林野庁 埼玉県 協同組合彩の森とき川
(事業主体)
森林整備加速化・林業再生 22~26 36,826 33,061 10,498 9,982

協同組合彩の森とき川(埼玉県比企郡ときがわ町所在)は、平成22年度から26年度までの間に、施業面積計52.6haの間伐及び森林作業道11,611mの開設の事業を事業費計36,826,046円(基金事業対象事業費計34,759,300円)で実施したとして、埼玉県に対して実績報告書を提出して、基金補助金計34,759,300円(国庫補助金相当額計33,061,000円)の交付を受けていた。

しかし、同組合は、実際には支払っていない作業員の労務費等の経費を計上するなどして、経費を過大に計上していたことから、事業の実施に要した費用は上記の事業費よりも低額となっていた。

したがって、適正な基金事業対象事業費を算定すると計24,260,501円となり、本件基金事業対象事業費計34,759,300円との差額10,498,799円が過大に精算されていて、これに係る同額の基金補助金(国庫補助金相当額計9,982,146円)が不当と認められる。

(226) 林野庁 大阪府 信達郷共有林野組合
(事業主体)
森林整備加速化・林業再生 25 2,400 2,400 2,400 2,400

信達郷共有林野組合(大阪府泉南市所在)は、平成25年度に、既に被害を受けた松の中にいる松くい虫の幼虫等を駆除して被害の拡大を防止するための伐倒駆除を事業費2,400,000円(基金事業対象事業費同額)で実施したとして、大阪府に対して実績報告書等を提出して、同額の基金補助金(国庫補助金相当額同額)の交付を受けていた。

しかし、同組合から伐倒駆除の作業を請け負った施工業者は、40倍から60倍に希釈して使用する殺虫剤を50倍に希釈した上で使用したとしていたが、実際には、本来希釈せずに使用する殺虫剤を、誤って、50倍に希釈した上で使用していて、仕様書の内容に適合した履行が確保されていなかった。このため、松くい虫の幼虫等が的確に駆除できていなかった。

したがって、本件基金事業対象事業費2,400,000円に対する同額の基金補助金(国庫補助金相当額同額)が不当と認められる。

(224)―(226)の計 41,610 37,725 14,149 13,632