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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 予算経理

東日本大震災復興特別会計に返納させるべき預り災害復興住宅融資等緊急対策費補助金について使用する見込みのない額を一般会計に誤って返納させていて、会計法令に違反していたもの[国土交通本省](260)


会計名及び科目
一般会計 (部)雑収入 (款)諸収入 (項)弁償及返納金
東日本大震災復興特別会計 (款)雑収入 (項)雑収入
部局等
国土交通本省
補助金の名称及び交付額
災害復興住宅融資等緊急対策費補助金
18,300,000,000円
上記補助金の交付を受けて設置された預り補助金を取り崩すことにより実施された事業
独立行政法人住宅金融支援機構が実施する既往貸付者に係る返済方法の変更事業
前記の補助金が計上された予算
平成23年度一般会計補正予算(第1号、第3号)
東日本大震災復興特別会計に返納させる根拠
特別会計に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第15号)
一般会計に誤って返納させた額
8,386,313,263円(平成27年度)

1 事業等の概要

(1) 事業の概要

国土交通省は、東日本大震災からの復旧・復興事業の一環として、独立行政法人住宅金融支援機構災害復興住宅融資等緊急対策費補助金交付要綱(平成23年国住民支第24号。以下「交付要綱」という。)に基づき、独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」という。)が実施する既往貸付者に係る返済方法の変更事業(以下「変更事業」という。)の円滑な遂行を図ることを目的として、機構に対して、平成23年6月に平成23年度一般会計補正予算(第1号)に計上された災害復興住宅融資等緊急対策費補助金(以下「融資補助金」という。)3,400,000,000円、また、同年12月に平成23年度一般会計補正予算(第3号)(以下「23年度3次補正予算」という。)に計上された融資補助金14,900,000,000円、計18,300,000,000円を交付している。そして、機構は、融資補助金により、預り災害復興住宅融資等緊急対策費補助金(以下「預り補助金」という。)を設置し、これを財源として変更事業を実施している。変更事業は、機構から現に融資を受けている債務者のうち、東日本大震災により被災して今後の返済が困難となった者に対して、返済負担を軽減し、返済が継続できるように、り災割合に応じて1年から5年までの間の金利引下げの実施等の返済方法変更の特例措置を実施するもので、機構は、金利引下げの実施に伴い生ずる利息収入の減収額に相当する額について、預り補助金を取り崩すことにより充てることとしている。

交付要綱によれば、各年度末時点の変更事業の実施状況を踏まえて、預り補助金について翌年度以降に使用する見込みのない額があると国土交通大臣が認めた場合には、機構は、速やかにこれを国庫に返納しなければならないこととされている。

(2) 23年度3次補正予算に計上された復興費用に関する権利義務の復興特会への帰属

復興事業に係る歳入歳出については、東日本大震災からの復興に係る国の資金の流れの透明化を図るとともに復興債の償還を適切に管理するために、復興事業に関する経理を明確にすることを目的として、24年度から新たに設置された東日本大震災復興特別会計(以下「復興特会」という。)において経理することとなっている。そして、特別会計に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第15号)附則第3条の規定(以下「特会法改正法の規定」という。)によれば、23年度3次補正予算に計上された費用のうち「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号)第69条第5項の規定により国会の議決を受けた復興施策に要する費用(以下「復興費用」という。)に関する権利義務は、翌年度以降に繰り越して使用することとされたものを除き復興特会に帰属することとされている。これにより、23年度3次補正予算に復興費用として計上されて23年度内に交付された融資補助金等について、当該補助金等を活用した事業において使用する見込みのないなどの額を国庫に返納させる場合に、国は復興特会に返納させることとなる。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、融資補助金により設置された預り補助金について、使用する見込みのない額を国庫に返納させる場合に、特会法改正法の規定等に基づき適正に返納させているかなどに着眼して、国土交通本省が機構に送付した国庫への返納に関する書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、預り補助金について使用する見込みのない額を国庫に返納させるに当たり、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

国土交通省は、既往貸付者の返済方法変更の特例措置に係る申請件数が当初の想定よりも少なかったことなど26年度末の変更事業の実施状況を踏まえて、預り補助金について27年度以降に使用する見込みのない額のうち23年度3次補正予算に係る分を8,386,313,263円と算出し、28年2月に機構に対して同額を一般会計に返納させる納入告知書を送付しており、機構は、同年3月に同額を一般会計に返納していた。

しかし、上記の返納額は、23年度3次補正予算に復興費用として計上されて23年度内に交付された融資補助金に係る分であることから、国土交通省は、特会法改正法の規定に基づき一般会計ではなく復興特会に返納させるべきであった。

したがって、復興特会に返納させるべき預り補助金について使用する見込みのない額を一般会計に誤って返納させていた事態は、特会法改正法の規定に違反しており、ひいては復興債の償還の適切な管理に支障を来すおそれなどがあり、23年度3次補正予算に係る返納額8,386,313,263円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、国土交通省において、預り補助金について使用する見込みのない額のうち23年度3次補正予算に係る分を国庫に返納させるに当たり、特会法改正法の規定等についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。