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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(3)簡易公募型プロポーザル方式及び簡易公募型競争入札方式により建設コンサルタント業務等を発注しようとする場合の手続開始の公示に当たり、継続する必要性が乏しくなった日刊業界紙への参考掲載を行わずに、ホームページ等による公示のみを行うこととするなどして、新聞参考掲載業務の発注を行わないよう改善させたもの


会計名
一般会計(支出委任分を含む。)、財政投融資特別会計(支出委任)、労働保険特別会計(支出委任)、特許特別会計(支出委任)、自動車安全特別会計、東日本大震災復興特別会計(支出委任)
部局等
99地方整備局等
新聞参考掲載業務の概要
簡易公募型プロポーザル方式及び簡易公募型競争入札方式により建設コンサルタント業務等を発注しようとする場合に、その業務の名称や担当部局等を日刊業界紙に参考掲載するもの
契約の相手方
株式会社日刊建設工業新聞社、株式会社日刊建設通信新聞社、株式会社日刊建設産業新聞社
契約
平成26年4月~27年3月、27年4月 随意契約(単価契約)
日刊業界紙への参考掲載件数及び支払額
44,678件 7億2378万余円(平成26、27両年度)
必要性が乏しかった日刊業界紙への参考掲載件数及び支払額
44,678件 7億2378万円(平成26、27両年度)

1 制度の概要

(1) 建設コンサルタント業務等の発注手続の概要

国土交通省の大臣官房官庁営繕部、国土地理院、国土技術政策総合研究所、地方整備局及び北海道開発局(管内の事務所、開発建設部等を含む。以下、これらを総称して「地方整備局等」という。)は、同省が所掌する土木事業及び建築事業に係る調査、設計等の建設コンサルタント業務等を毎年度多数発注している。

そして、地方整備局等が発注する建設コンサルタント業務等のうち、予定価格が「政府調達に関する協定」(平成7年条約第23号)等で定められた基準額(平成26、27両年度における邦貨換算額は6000万円)未満のものなどを発注しようとする場合の手続は、国土交通本省(以下「本省」という。)等が発出した「簡易公募型プロポーザル方式に基づく建設コンサルタント等の選定・特定手続について」(平成8年建設省厚契発第38号等)、「簡易公募型競争入札方式に基づく建設コンサルタント等の選定手続について」(平成8年建設省厚契発第39号等)等の通達(以下、これらを総称して「簡易公募型プロポーザル通達等」という。)によることとなっている。

(2) 新聞参考掲載業務の概要

簡易公募型プロポーザル通達等によれば、地方整備局等は、簡易公募型プロポーザル方式(注1)及び簡易公募型競争入札方式(注2)により建設コンサルタント業務等を発注しようとする場合には、建設コンサルタント等から、参加表明書の提出を求めることとされている。そして、参加表明書の提出を求める場合には、発注しようとする業務の内容や書類の受領期限等の必要事項を公示(以下「手続開始の公示」という。)することとされており、簡易公募型プロポーザル方式の場合は11事項を、簡易公募型競争入札方式の場合は14事項を庁舎の玄関等に設けられた掲示板等への掲示及びホームページへの掲載により公示(以下、両者を合わせて「ホームページ等による公示」という。)することとされている。

また、簡易公募型プロポーザル通達等によれば、地方整備局等は、当分の間、ホームページ等による公示に併せて、日刊建設工業新聞、建設通信新聞及び日刊建設産業新聞の日刊業界紙のうち、当該地方整備局等の管内において発行されている全てのものに、上記の11事項又は14事項のうちの4事項(①業務名、業務内容及び履行期限、②担当部局、③説明書の交付期間、場所及び方法、④参加表明書の受領期限)を参考掲載(以下「日刊業界紙への参考掲載」という。)することとされている。そのため、地方整備局等は、上記の日刊業界紙を発行する株式会社日刊建設工業新聞社、株式会社日刊建設通信新聞社及び株式会社日刊建設産業新聞社のうち当該地方整備局等の管内において日刊業界紙を発行している全ての会社に、毎年度、上記の4事項を日刊業界紙に参考掲載する業務(以下「新聞参考掲載業務」という。)を随意契約により発注している。

新聞参考掲載業務に係る契約は単価契約となっており、26年度以降の日刊業界紙への参考掲載に要する額は1件当たり16,200円となっている。そして、26、27両年度の契約に基づき日刊業界紙への参考掲載を行った件数及びその支払額は、計44,678件及び計7億2378万余円となっている。

(注1)
簡易公募型プロポーザル方式  建設コンサルタント業務等の内容が技術的に高度であるなどの場合に、建設コンサルタント等の参加を公示により募り、提出を受けた参加表明書及び技術提案書を審査して技術的に最適な者を特定する方式を公募型プロポーザル方式という。そして、公募をより簡易な手続により実施する方式を簡易公募型プロポーザル方式という。
(注2)
簡易公募型競争入札方式  建設コンサルタント業務等を発注しようとする場合に、建設コンサルタント等の参加を公示により募り、提出を受けた参加表明書を審査して入札参加者を選定する方式を公募型競争入札方式という。そして、公募をより簡易な手続により実施する方式を簡易公募型競争入札方式という。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

前記のとおり、簡易公募型プロポーザル通達等によれば、日刊業界紙への参考掲載を行うのは当分の間とされていて、その具体的な期間は明示されていないため、地方整備局等は、今後も新聞参考掲載業務を継続していくものと見込まれる。

そこで、本院は、経済性等の観点から、ホームページ等による公示に併せて地方整備局等が引き続き日刊業界紙への参考掲載を行う必要性があるかどうかに着眼して検査した。

検査に当たっては、26、27両年度中に新聞参考掲載業務を発注している99地方整備局等(注3)における前記の3新聞社への支払額計7億2378万余円を対象として、本省及び6地方整備局(注4)において、契約書、仕様書等の書類により会計実地検査を行うとともに、本省から残りの93地方整備局等に係る関係書類の提出を受けるなどの方法により検査した。

(注3)
99地方整備局等  国土交通省大臣官房官庁営繕部、国土地理院、国土技術政策総合研究所、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州各地方整備局、常陸、高崎、甲府、福井、福知山、姫路、豊岡、和歌山、紀南、徳島、香川、松山、大洲、高知、中村各河川国道事務所、利根川上流、利根川下流、霞ヶ浦、江戸川、渡良瀬川、下館、荒川上流、荒川下流、京浜、琵琶湖、淀川、猪名川、大和川、木津川上流、那賀川各河川事務所、利根川水系、日光、富士川、六甲、紀伊山地、四国山地各砂防事務所、八ツ場、足羽川、大戸川、山鳥坂各ダム工事事務所、中筋川総合開発工事事務所、霞ヶ浦導水工事事務所、東京、相武、首都、川崎、横浜、大宮、北首都、千葉、常総、宇都宮、長野、滋賀、京都、大阪、浪速、兵庫、奈良、土佐各国道事務所、国営常陸海浜、国営昭和記念、国営アルプスあづみの、国営明石海峡、国営飛鳥歴史各公園事務所、宇都宮、東京第一、東京第二、横浜各営繕事務所、関東、近畿、四国各技術事務所、東京外かく環状国道調査事務所、利根川、鬼怒川、九頭竜川、淀川、紀の川、吉野川各ダム統合管理事務所、相模川水系広域ダム管理事務所、二瀬、野村、大渡各ダム管理所、品木ダム水質管理所、札幌、旭川、室蘭、留萌各開発建設部
(注4)
6地方整備局  東北、関東、北陸、中部、中国、四国各地方整備局

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

地方整備局等は、20年1月に簡易公募型プロポーザル通達等が改正される前の同月23日以前においては、管内で発行される全ての日刊業界紙に前記の11事項又は14事項を掲載して公示する方法のみにより手続開始の公示を行うこととされていた。そして、当該改正の際に発出された通達によれば、最近におけるインターネットの普及によりホームページへのアクセス環境が大幅に改善されたことを理由として、同月24日以降は、当分の間、ホームページ等による公示に併せて日刊業界紙への参考掲載を行うこととされていた。

しかし、15年4月以降に同省が発注する建設コンサルタント業務等は電子入札によることが基本となっていて、建設コンサルタント等がこれらを受注するには、インターネットを利用できることが前提になっているとともに、上記の改正に係る通達が発出された20年以降、インターネットの普及はより一層進み、ホームページへのアクセス環境は更に改善している状況となっていた。

したがって、ホームページ等による公示のみにより手続開始の公示を行うことについて適切に建設コンサルタント等に周知すれば、地方整備局等が多額の費用を支払ってまで日刊業界紙への参考掲載を継続する必要性は乏しいと認められた。

このように、本省等が発出した簡易公募型プロポーザル通達等において、地方整備局等が手続開始の公示を行うに当たり、ホームページ等による公示に併せて日刊業界紙への参考掲載を行うこととしていることにより、地方整備局等が新聞参考掲載業務を発注していて、26、27両年度で計7億2378万余円(日刊業界紙への参考掲載件数は44,678件)支払っていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、20年1月24日以降の簡易公募型プロポーザル通達等において、日刊業界紙への参考掲載を行うのは当分の間とされ、その後相応の期間が経過しているのに、本省等において、日刊業界紙への参考掲載を取りやめることについて具体的に検討していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、本省等は、28年7月に簡易公募型プロポーザル通達等を改正して29年4月以降はホームページ等による公示のみにより手続開始の公示を行うこととするとともに、地方整備局等に事務連絡を発出して建設コンサルタント等にも周知徹底を図ることとした上で、29年4月以降は新聞参考掲載業務の発注を行わないこととする処置を講じた。