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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(9)重要国際埠(ふ)頭施設における保安措置等を適確に実施するよう周知することなどにより、補助金の交付等を受けて整備された埠頭保安設備について、その効果が十分発現するよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)国土交通本省 (項)国土交通本省
(項)港湾事業費
(項)社会資本整備事業費
社会資本整備事業特別会計(港湾勘定)(平成19年度以前は、港湾整備特別会計(港湾整備勘定))
(項)港湾事業費
(項)沖縄港湾事業費
部局等
国土交通本省、8地方整備局等
事業の根拠
国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(平成16年法律第31号)、港湾法(昭和25年法律第218号)等
重要国際埠(ふ)頭施設における保安措置等の概要
制限区域の設定及び管理、埠頭指標対応措置の実施、また、当該措置を講ずるために必要な障壁等の設備を設置し、及び維持することなど
検査の対象とした重要国際埠頭施設の管理者等数及び施設数
41管理者等、339施設
上記の施設における埠頭保安設備の整備に要した事業費
250億1907万余円
上記に係る国庫補助金相当額等の額
109億2373万余円
設置された埠頭保安設備の効果が十分に発現していなかった施設の管理者等数及び施設数
27管理者等、70施設
上記の施設における埠頭保安設備の整備に要した事業費
35億9257万余円(平成15年度~17年度、19、21、26各年度)
上記に係る国庫補助金相当額等の額
17億3145万円(背景金額)

1 重要国際埠頭施設における保安措置等の概要

(1) 重要国際埠頭施設における保安措置

平成13年9月に米国で発生した同時多発テロを契機として、14年12月に「1974年の海上における人命の安全のための国際条約(International Convention for the Safety of Life at Sea)」(以下「SOLAS条約」という。)が改正され、条約加盟国は条約の改正が発効する16年7月までに国際港湾施設等の保安の確保のために必要な措置(以下「保安措置」という。)を強化することなどが義務付けられた。そして、我が国においては、国際港湾施設に対して生ずるおそれがある危険の防止を図り、併せてこれらの国際約束の適確な実施を確保するなどのための国内法として、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(平成16年法律第31号。以下「国際船舶・港湾保安法」という。)が制定された。

国際船舶・港湾保安法によれば、国際埠(ふ)頭施設の設置者及び管理者は、当該国際埠頭施設に対して行われるおそれがある危害行為を防止するために保安措置を講じなければならないとされている。そして、国際戦略港湾、国際拠点港湾又は重要港湾における国際埠頭施設(国土交通省令で定める基準に該当しないものを除く。以下「重要国際埠頭施設」という。)の管理者は、保安措置として、国土交通大臣が設定する国際海上運送保安指標に対応して保安の確保のために執るべき国土交通省令で定める措置(以下「埠頭指標対応措置」という。)を実施しなければならないとされており、また、埠頭指標対応措置を講ずるために必要な柵、壁等の障壁、門扉、照明、監視装置等の設備(以下「埠頭保安設備」という。)を設置し、及び維持しなければならないとされている。

埠頭指標対応措置は、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律施行規則(平成16年国土交通省令第59号。以下「施行規則」という。)等によれば、重要国際埠頭施設の保安の確保のために必要な制限区域(以下「制限区域」という。)を設定すること、制限区域への立入りにおいて、原則として、立ち入ろうとする者が身分証明書に記載された本人であること、立ち入ろうとする者の所属及び立入りの目的の確認(以下、これらの確認を「三点確認」という。)を実施することなどとされている。

(2) 埠頭保安規程

国際船舶・港湾保安法によれば、重要国際埠頭施設の管理者は、当該重要国際埠頭施設に係る埠頭指標対応措置の実施に関する事項、埠頭保安設備の設置及び維持に関する事項等について記載した埠頭保安規程を定めなければならないとされている。また、重要国際埠頭施設の設置者と管理者が異なり、かつ、重要国際埠頭施設の設置者が埠頭保安設備を設置し、及び維持するときは、埠頭保安規程のうち当該埠頭保安設備の設置及び維持に係る部分については、当該重要国際埠頭施設の設置者及び管理者が共同して定めなければならないとされている。そして、重要国際埠頭施設の管理者及び埠頭保安規程を共同で定めた重要国際埠頭施設の設置者(以下、これらの管理者及び設置者を「管理者等」という。)は、埠頭保安規程に定められた事項を適確に実施しなければならないこととされている。

(3) 重要国際埠頭施設に対する立入検査

国土交通省は、国際船舶・港湾保安法に基づき、原則として年1回、保安措置が適確に講じられているかどうかについて、全ての重要国際埠頭施設への立入検査を実施している。国際戦略港湾又は国際拠点港湾の国際コンテナ埠頭施設等を含む重要国際埠頭施設については国土交通本省が行い、これら以外の重要国際埠頭施設についてはその施設が所在する地方整備局等が行っている。

(4) 重要国際埠頭施設における埠頭保安設備に対する国の補助等

16年7月のSOLAS条約改正の発効に対応するために、多くの重要国際埠頭施設において埠頭保安設備を新たに整備することが必要となった。このため、国土交通省は、15年度補正予算に232億円を計上し、埠頭保安設備を整備する港湾管理者等に補助金を交付する埠頭保安設備整備事業を実施している。また、16年度以降においても埠頭保安設備を整備する港湾管理者等に対して港湾改修費補助、社会資本整備総合交付金等の補助金、交付金の交付、埠頭整備等資金貸付金の貸付けなど(以下、これらを合わせて「補助金の交付等」という。)を行っている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

重要国際埠頭施設に対して行われるおそれがある危害行為を防止するためには、国際約束である保安措置等が適確に実施され、制限区域への不正な侵入の防止を図ることなどが重要となる。

そこで、本院は、有効性等の観点から、保安措置等が適確に実施され、埠頭保安設備の制限区域への不正な侵入の防止等の効果が十分発現しているかなどに着眼して、51港湾の41管理者等(注)において、補助金の交付等を受けて埠頭保安設備が整備された重要国際埠頭施設339施設(これらの施設における埠頭保安設備の整備に要した事業費計250億1907万余円、これに係る国庫補助金相当額等計109億2373万余円)を対象として、調書の作成及び提出を求めその内容を確認するなどのほか、埠頭保安規程等の書類、現地の状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(注)
41管理者等  東京都、大阪府、秋田、愛知、三重、兵庫、鳥取、岡山、徳島、香川、高知、福岡、長崎、大分、沖縄各県、稚内、小樽、函館、室蘭、釧路、横浜、川崎、横須賀、大阪、神戸、坂出、北九州、福岡、佐世保、宮古島、石垣各市、石狩湾新港、苫小牧港、名古屋港、四日市港、境港、那覇港各管理組合、東京港埠頭、横浜港埠頭、名古屋港埠頭、阪神国際港湾各株式会社

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 埠頭保安設備が適確に設置及び維持されていなかった事態

施行規則等によれば、埠頭保安設備については、人が容易に侵入することを防止する十分な高さ及び構造を有する障壁等を設置し、及び維持しなければならないとされている。

しかし、障壁に人が容易に侵入できるほどの隙間が空いていたり、障壁に近接する建物、樹木等を足がかりにしての侵入が容易となっていたり、障壁が損傷していたりなどしていて埠頭保安設備が適確に設置及び維持されていなかった重要国際埠頭施設が19港湾の19管理者等において33施設(これらの施設における埠頭保安設備の整備に要した事業費計18億6253万余円、国庫補助金相当額等計10億1694万余円)見受けられた(表参照)。

また、国土交通省の立入検査において、同様の事態を指摘して是正させている箇所も別途見受けられたが、上記については立入検査において指摘されていなかった。

(2) 三点確認が適確に実施されていなかった事態

施行規則等によれば、制限区域を障壁で明確に区画すること、また、制限区域内に人又は車両が正当な理由なく立ち入ることを防止するために、制限区域への立入りにおいて、原則として三点確認を実施することとされている。

しかし、三点確認を実施する警備員等が門扉が設置された出入口に配置されておらず三点確認が実施されていなかったり、警備員等が配置されていたものの三点確認が実施されていなかったりなどしていて、三点確認が適確に実施されていなかった重要国際埠頭施設が5港湾の6管理者等において9施設(これらの施設における埠頭保安設備の整備に要した事業費計6億4093万余円、国庫補助金相当額等計1億6214万余円)見受けられた(表参照)。

(3) 障壁と貨物等との間隔が適確に確保されていなかった事態

施行規則等によれば、不正な侵入者等の早期発見等、保安の確保のために障壁の内側では障壁と貨物等との間に一定の間隔を確保しなければならないこととされている。

しかし、貨物、車両等が障壁に近接して置かれるなどしていて、適確な間隔が確保されていなかった重要国際埠頭施設が17港湾の16管理者等において35施設(これらの施設における埠頭保安設備の整備に要した事業費計14億9656万余円、国庫補助金相当額等計7億3164万余円)見受けられた(表参照)。

なお、(1)から(3)までの事態について、重複する施設があるため、合計数から重複分を除くと29港湾、27管理者等、70重要国際埠頭施設、これらの施設における埠頭保安設備の整備に要した事業費計35億9257万余円、これに係る国庫補助金相当額等計17億3145万余円となる。

表 (1)から(3)までの各事態に係る港湾数、施設数等

事態 港湾数 管理者等数 施設数 埠頭保安設備の整備に要した事業費 国庫補助金相当額等
(1) 埠頭保安設備が適確に設置及び維持されていなかった事態 19 19 33 18億6253万余円 10億1694万余円
(2) 三点確認が適確に実施されていなかった事態 5 6 9 6億4093万余円 1億6214万余円
(3) 障壁と貨物等との間隔が適確に確保されていなかった事態 17 16 35 14億9656万余円 7億3164万余円
29 27 70 35億9257万余円 17億3145万余円
(注)
複数の事態が生じている施設があるため、各事態を単純合計しても計欄と一致しない。

このように、埠頭保安設備が適確に設置及び維持されていなかったり、三点確認が適確に実施されていなかったり、障壁と貨物等との間隔が適確に確保されていなかったりしていて、重要国際埠頭施設の保安措置等が適確に実施されておらず、補助金の交付等を受けて整備された埠頭保安設備の制限区域への不正な侵入の防止等の効果が十分に発現していなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、重要国際埠頭施設の管理者等において、重要国際埠頭施設における保安措置を適確に実施しなければならないことについての理解が十分でなかったこと、また、国土交通省において、重要国際埠頭施設の管理者等に対する保安措置を適確に実施しなければならないことについての周知が十分でなかったこと、重要国際埠頭施設に係る立入検査について、埠頭保安設備等に関する是正の判断基準が一定でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、28年8月に保安措置が適確に実施されていない管理者等に対して指示を行い、前記事態の是正を図るとともに、全ての管理者等に対して事務連絡を発出して、保安措置を適確に実施しなければならないことについて周知徹底したり、重要国際埠頭施設への立入検査に係る是正の判断基準が適切となるよう担当職員への研修において指導を行ったりするなどの処置を講じた。