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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 環境省|
  • 不当事項|
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  • (1)補助金により造成した基金の使用が適切でなかったもの

再生可能エネルギー等導入推進基金により実施した事業において、設備の設計が適切でなかったり基金事業対象事業費を過大に精算したりしていたもの[環境本省](308)-(310)


(3件 不当と認める国庫補助金 16,119,717円)

再生可能エネルギー等導入推進基金(以下「基金」という。)は、平成24年度から26年度までの各年度に、環境省が東日本大震災による被災地域の復旧・復興や、原子力発電施設の事故を契機とした電力需要のひっ迫への対応の必要性に鑑み、再生可能エネルギー等を活用したエネルギーシステムの導入等を支援し、環境先進地域の構築に資する事業を実施することなどを目的として、都道府県及び政令指定都市(以下「事業主体」という。)に対して、二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金を交付して造成させたものである。

事業主体は、「平成24年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(再生可能エネルギー等導入推進基金)交付要綱」(平成24年5月環境事務次官通知)、「再生可能エネルギー等導入推進基金事業実施要領」(平成24年5月環境省総合環境政策局長通知)、「平成24年度再生可能エネルギー等導入推進基金事業の取扱いについて」(平成24年5月環境省総合環境政策局環境計画課通知)等(以下、これらを合わせて「要綱等」という。)に基づき、基金を財源として、災害時に避難所、災害対策本部等の防災拠点となる施設等(以下「防災拠点施設」という。)において、太陽光発電設備、蓄電池設備、LED灯等を設置するなどする事業(以下「基金事業」という。)を自ら実施するほか、管内の市町村等が実施する基金事業に対して、基金を取り崩して事業主体からの補助金(以下「県補助金」という。)として交付している。

要綱等においては、基金事業により設置される太陽光発電設備等は、地震等の災害が発生して、電力会社からの電力供給が遮断された際に、防災拠点施設において必要な機能を確保するためのものとなっている。また、基金事業の対象となる事業費(以下「基金事業対象事業費」という。)は、事業を実施するために必要な設計費、本工事費、附帯工事費等を合計するなどした額となっている。

本院が事業主体である15道県及び県補助金の交付を受けた58市町村において会計実地検査を行ったところ、神奈川、山梨、滋賀各県管内の3市村(注1)において、基金事業により実施した設備の設置工事において設計が適切でなく所要の安全度が確保されていなかったり、基金事業対象事業費を過大に精算していたりしたため、取り崩された基金計16,119,717円(国庫補助金相当額同額)の使用が適切でなく、不当と認められる。

(注1)
3市村  伊勢原、長浜両市、南都留郡道志村

このような事態が生じていたのは、県補助金の交付を受けた3市村において、設備の設置工事において所要の安全度についての検討が十分でなかったり、基金事業対象事業費の算定に対する理解が十分でなかったりしていたこと、3事業主体において、県補助金に係る実績報告書の審査及び市村に対する助言が十分でなかったことなどによると認められる。

以上を事業主体別に示すと次のとおりである。

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
実施年度 基金使用額 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める基金使用額 不当と認める国庫補助金等相当額
        千円 千円 千円 千円
(308) 環境本省 神奈川県 25 28,366 28,366 7,550 7,550

神奈川県は、伊勢原市に対して県補助金を交付しており、同市は、地震等の大規模災害に備えて、災害時に避難所となる伊勢原小学校校舎屋上等に、太陽光発電設備等を設置する工事を工事費31,468,500円(県補助金28,366,000円、国庫補助金相当額同額)で実施していた。このうち、太陽光発電設備については、校舎屋上の床面に設備の滑動を防止するゴムマットを敷設して、その上にコンクリート基礎9基を据え置いた上に、架台及び太陽光パネル52枚を設置するものである。

同市は、太陽光発電設備の設計を「太陽電池アレイ用支持物設計標準」(財団法人日本規格協会発行)等に基づいて行っており、これらの基準等においては、恒久的に加わる固定荷重を基に算出した基礎底面に作用する地震力が、滑動抵抗力を下回ることを確認することとなっている。

そして、同市は、太陽光発電設備の設計に当たり、基礎底面に作用する地震力が、基礎底面とゴムマットとの摩擦により生じる滑動抵抗力を下回ることから安定計算上安全であるとして、これにより施工していた。

しかし、同市は、上記の基礎底面に作用する地震力の算出に当たり、太陽光パネル52枚、架台及びコンクリート基礎9基全ての荷重118.1kNを固定荷重とすべきところ、誤って、太陽光パネル52枚のうち6枚分の荷重計1.5kNのみを固定荷重としていた。

そこで、全ての荷重118.1kNを固定荷重として改めて太陽光発電設備の安定計算を行ったところ、基礎底面に作用する地震力は236.3kNとなり、基礎底面とゴムマットとの摩擦により生じる滑動抵抗力82.7kNを大幅に上回っていて、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

したがって、本件太陽光発電設備(工事費相当額10,626,000円、国庫補助金相当額7,550,340円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。

(309) 環境本省 山梨県 26 21,600 21,600 3,232 3,232

山梨県は、南都留郡道志村に対して県補助金を交付しており、同村は、地震等の大規模災害に備えて、太陽光発電式蓄電池内蔵LED街路灯(以下「ソーラーLED街路灯」という。)43基を道志村内15か所の避難所周辺の避難路脇等に設置する工事を工事費21,729,600円(県補助金21,600,000円、国庫補助金相当額同額)で実施していた。このうち40基については、避難路脇等の土中にコンクリート基礎を埋め込むなどして設置するものである。

同村は、上記ソーラーLED街路灯40基の設計を「照明用ポール強度計算基準JIL1003」(社団法人日本照明器具工業会編)、「道路標識ハンドブック2012年度版」(一般社団法人全国道路標識・標示業協会編)等に基づいて行っており、これらの基準等においては、ソーラーLED街路灯等の基礎は、基礎前面地盤の水平地盤反力度(注2)が地盤の受働土圧強度を上回らないよう設計することにより安定するとなっている。

そして、同村は、前記ソーラーLED街路灯40基の基礎の設計に当たり、土中への埋込み長さを0.8mとするなどして安定計算を行っており、その結果、基礎前面地盤の水平地盤反力度が地盤の受働土圧強度を上回らないことから安全であるとして、平成26年12月に工事を発注していた。

しかし、同村は、本件工事発注後の27年1月、請負人から、前記ソーラーLED街路灯40基の基礎について、設置場所の状況等を考慮すると土中への埋込み長さを0.8mよりも短く変更する必要があるとするなどの協議を受け、これを承認していたが、設計の変更に当たり、設計変更後の埋込み長さなどに基づいた基礎の安定計算を行っていなかった。

そこで、設計変更後の埋込み長さなどに基づいて改めて基礎の安定計算を行ったところ、ソーラーLED街路灯6基については、基礎前面地盤の水平地盤反力度147.5kN/m2が、地盤の受働土圧強度70.8kN/m2を大幅に上回っているなどしており、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

したがって、ソーラーLED街路灯6基(工事費相当額3,434,400円、国庫補助金相当額3,232,377円)は、基礎の設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。

(注2)
水平地盤反力度  構造物を介して地盤に水平方向の力を加えたとき、地盤に発生する単位面積当たりの抵抗力をいう。
(310) 環境本省 滋賀県 26 26,000 26,000 5,337 5,337

滋賀県は、長浜市に対して県補助金を交付しており、同市は、長浜市役所北部振興局の庁舎建物に太陽光発電設備等を設置する事業を事業費27,765,445円(県補助金26,000,000円、国庫補助金相当額同額)で実施したとする基金事業の実績報告書を提出していた。

しかし、上記事業費のうち、同市が基金事業対象事業費としていた26,740,602円は、本件太陽光発電設備等に係る契約金額ではなく、県補助金の交付申請に当たり算出した概算設計金額に基づいて算出した額であった。

したがって、太陽光発電設備等に係る契約金額に基づいて適正な事業費及び基金事業対象事業費を算定すると、それぞれ22,699,818円、20,663,861円となり、県補助金は20,663,000円となることから、前記の県補助金26,000,000円はこれに比べて5,337,000円過大に精算されており、これに係る国庫補助金相当額5,337,000円が基金から過大に取り崩され使用されていた。

(308)―(310)の計 75,966 75,966 16,119 16,119