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物品の管理が適切でなかったため、エアクッション艇の予備品として保管されていたプロペラダクトについて、不用の決定が行われたプロペラボスと取り違えて処分を行っていたもの[海上自衛隊呉造修補給所](313)


会計名
一般会計
部局等
海上自衛隊呉造修補給所
物品の分類
(分類)防衛用品 (区分)非消耗品
プロペラダクトの概要
エアクッション艇の推進用のプロペラを被覆して駆動軸を支持し、プロペラの回転で発生する空気の流れを整える円筒状のもの
管理が適切でなかったプロペラダクトの価格
78,298,427円

1 プロペラダクト等の概要

(1) プロペラダクトの概要

海上自衛隊は、輸送艦1隻に2艇のエアクッション艇を搭載するなどして、災害派遣等における救援等の任務を遂行している。エアクッション艇は、人員、車両、物資等を積載して輸送艦の後部から発進し、砂浜等に上陸することができるホバークラフト型の輸送艇であり、船体本体のほか、ガスタービン機関、推進用プロペラ、プロペラダクト等から構成されている。これらのうち、プロペラダクトは、推進用プロペラを被覆してその駆動軸を支持し、プロペラの回転で発生する空気の流れを整えるための円筒状の部品である(参考図参照)。

(2) 物品の管理の概要

物品管理法(昭和31年法律第113号)によれば、物品は、国の施設において、良好な状態で常に供用又は処分をすることができるように保管しなければならないこととされており、また、売払いを目的とするもの又は不用の決定をしたものでなければ売り払うことができないこととされている。

そして、海上自衛隊は、「海上自衛隊補給実施要領について(通知)」(平成18年補本装補第2072号。以下「補給実施要領」という。)等に基づき、物品の取得、保管、供用及び処分(以下、これらを合わせて「管理」という。)を行っている。補給実施要領等によれば、地方総監部の所在地に設置されている造修補給所は、当該地方総監部地区における艦船、需品等に係る物品の保管、補給及び整備に関する任務を遂行するために、造修補給所長が分任物品管理官としてその所掌に係る物品の管理を行うこととされている。

物品の保管において、物品を外装木箱等で梱包し保管する場合には、保管物品の物品番号、品名、数量等を記載したストックタグを外装木箱等に貼付して、梱包された物品の内容が分かるように表示することとなっている。そして、造修補給所は、原則として毎年、物品管理簿等に登録されている物品の品名や数量等が保管の実態と符合しているかについての調査(以下「現況調査」という。)を行うこととなっている。現況調査に当たっては、物品管理簿等を基に、物品ごとに物品番号、品名、現在高、保管場所等を記載した一覧表を作成するなどして、保管の実態との照合を行うことにしている。また、現況調査の結果、物品管理簿等と保管の実態との不符合を発見した場合には、原因究明のための追加調査を行うこととなっている。

また、物品の処分において、売払い又は廃棄等を予定している物品に係る不用の決定を行う場合は、上記のストックタグと払出命令に基づき作成された払出票を照合するなどした上で、保管されている倉庫から払出しを行うこととなっている。そして、造修補給所は、造修補給所長を委員長、各部の部長等を委員として構成される不用決定審査会を開催し、不用の決定に係る審査を行い、造修補給所長は、この審査結果を検討して不用の決定を行うこととなっている。

(3) 不用の決定が行われた物品に係る処分の概要

呉造修補給所(以下「呉造補所」という。)は、平成25年7月に需給統制機関(注1)である艦船補給処からの処分指示を受け、26年1月に呉造修補給所不用決定審査会(以下「呉不用決定審査会」という。)において審査を行い、呉造修補給所長は、その審査結果を基に、24年に除籍された敷設艦「むろと」の予備品として保管していたプロペラボス(注2)(物品管理簿価格8,000,000円)等の物品について不用の決定を行った。そして、呉造補所は、それらの物品を切断するなどして鉄くず等とした上で、27年3月に売払いによる処分を行っていた。

(注1)
需給統制機関  装備品等について、需要と供給の統制を効果的に行うために、在庫状況の把握、所要数量の決定、管理換等の量的な統制業務及び物品番号付与等の基礎的業務を行う機関
(注2)
プロペラボス  艦船のプロペラの中心部にあり、プロペラ羽根と軸をつなぐ円筒形の部品(参考図参照

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、物品管理法、補給実施要領等に基づき、物品の管理が適切に行われているかなどに着眼して、呉造補所で管理している物品を対象として、海上幕僚監部、海上自衛隊補給本部、艦船補給処及び呉地方総監部において、物品管理簿、契約書等を確認するとともに、物品管理職員等から説明を徴するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

呉造補所は、前記のとおり、プロペラボス等の物品についての不用の決定を受け、鉄くず等として売払いによる処分を行ったとしていた。しかし、呉造補所は、プロペラボスの処分を行うべきであったにもかかわらず、不用の決定が行われていないプロペラダクトをプロペラボスと取り違えて、処分を行っていた。

そこで、プロペラボス及びプロペラダクトの管理状況についてみたところ、次のような状況となっていた。

すなわち、呉造補所は、15年に新設された補給倉庫に既設の倉庫等から各種の物品を移動させるに当たり、ストックタグが貼付されておらず、物品番号の表記がなく、手書きで「プロペラ」の文字のみが表記されている外装木箱があることを確認していた。そして、呉造補所は、「プロペラ」の文字のみでは外装木箱に梱包されている物品が何であるかを認識できないのに、調査・確認を十分に行わないまま、プロペラボスの物品番号を外装木箱に手書きで表記して、上記の補給倉庫に移動させた上で保管していた。

しかし、実際には、この外装木箱に梱包されていたのは、プロペラボスではなく、エアクッション艇の予備品として保管されていたプロペラダクトであった。

また、呉造補所は、25年に実施した現況調査の結果、物品管理簿上は現在高1個となっているプロペラボスについて、外装木箱にプロペラボスの物品番号が表記された物品がもう1個、補給倉庫内にあることを確認していた。しかし、呉造補所は、物品管理簿等を基に作成された一覧表にこの物品に係る記載がなく、保管の実態との不符合が生じていたにもかかわらず、補給実施要領等に基づく追加調査を行っていなかった。一方、呉造補所は、プロペラダクトが上記の一覧表から漏れていたため、現況調査を行っていなかった。

その後、呉造補所は、26年1月に、前記プロペラボス等の処分に当たり、艦船補給処の処分指示に基づき作成した払出票により、外装木箱に手書きで表記されたプロペラボスの物品番号と上記の払出票に記載されているプロペラボスの物品番号とが照合できたため、外装木箱に入っている物品をプロペラボスであると判断して払出しを行っていた。そして、呉造修補給所長は、呉不用決定審査会の審査の結果を踏まえ、プロペラボス等の物品について不用の決定を行い、呉造補所は、プロペラダクトをプロペラボスと取り違えたまま売払いによる処分を行っていた。

このように、調査・確認を十分に行わないまま外装木箱に誤った物品番号を手書きで表記したり、保管の実態との不符合が生じていたにもかかわらず、追加調査を行っていなかったりなどしていて、物品を良好な状態で常に保管しなければならないとする原則に従った管理を怠ったため、不用の決定が行われていない使用可能なプロペラダクト(物品管理簿価格78,298,427円)についてプロペラボスと取り違えて売払いによる処分を行っていた事態は、物品管理法に違反していて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、呉造補所において、物品を適切に管理することに対する認識が欠けていたことなどによると認められる。

(参考図)

プロペラダクト及びプロペラボスの概念図

プロペラダクト及びプロペラボスの概念図 画像