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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

艦船に係る国有財産台帳価格の記録に当たり、正しい耐用年数を用いるなどして、国有財産台帳に適正な台帳価格を記録するとともに、現在額報告書の誤びゅう訂正の報告を行うよう適宜の処置を要求し、事務処理上の留意点等を明確にして国有財産部局に対する指導等を徹底するよう是正改善の処置を求めたもの


会計名
一般会計
部局等
内部部局
国有財産の分類
(分類)行政財産 (種類)公用財産 (区分)船舶
平成23年度から27年度までの間に就役した艦船の隻数及び国有財産台帳価格
38隻 4880億7641万余円(平成27年度末)
艦船取得時の価格を誤ったため、国有財産台帳価格が過大となっていた艦船の隻数及び価格(1)
1隻 7億3594万円(平成27年度末)
価格改定を誤ったため、国有財産台帳価格が過大又は過小となっていた艦船の隻数及び価格(2)
過大 1隻 16億9094万円(平成27年度末)
過小 4隻 51億8186万円(平成27年度末)
(1)及び(2)の計
76億0874万円

【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたものの全文】

国有財産台帳に記録する艦船の価格について

(平成28年10月28日付け 防衛大臣宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

1 制度の概要

(1) 国有財産台帳への記録の概要

国有財産台帳は、国有財産を適切に管理するための帳簿であり、国有財産法(昭和23年法律第73号)によれば、各省各庁の長又は部局等の長は、その所管又は所属に属する国有財産につき、取得、所管換、処分その他の理由に基づく変動が生じた場合には、それらの事実を直ちに国有財産台帳に記録する必要があるとされている。そして、国有財産法施行令(昭和23年政令第246号)によれば、各省各庁の長は、その所管に属する国有財産につき、毎会計年度、当該年度末の現況において、財務大臣の定めるところにより評価し、その評価額により国有財産の台帳価格を改定しなければならないこととされている。

貴省では、「防衛省所管国有財産取扱規則」(平成18年防衛庁訓令第118号)等に基づき、貴省内部部局の整備計画局施設整備官が貴省所管の国有財産に関する事務を総括するとともに、大臣官房会計課長等の部局の長が国有財産に関する事務を分掌しており、部局の長は、部局所属の国有財産について、取得等の異動があった場合には、直ちに、国有財産台帳に記録しなけばならないこととなっている。

(2) 艦船取得時の国有財産台帳への記録の概要

艦船取得時の国有財産台帳への記録は、「海上自衛隊の艦船の国有財産台帳価格の算定及び生産明細書の作成要領について(通達)」(平成元年海幕装備第1513号)等に基づき、当該艦船の製造を請け負った造船会社から提出される生産明細書の大区分別一覧表における国有財産の合計額を基に行われることとなっている。

生産明細書は、艦船建造時の国有財産と物品の区分を明らかにすることなどを目的として作成されている。そして、造船会社は、生産明細書の作成に当たり、仕様書等に基づき、会社が自ら調達した調達品や官給品について納品書等により品目ごとに数量、金額等を整理し、国有財産と物品の別に品目ごとに区分した金額を船体部、機関部等の大区分ごとに集計して、それらを大区分別一覧表に記載することとなっている。

(3) 艦船に係る国有財産台帳の価格改定の概要

国有財産台帳の価格改定は、「国有財産台帳の価格改定に関する評価要領について」(平成23年財理第4670号。以下「評価要領」という。)等により実施することとなっている。艦船の評価については、船舶の種目等ごとに耐用年数が定められており、この耐用年数に対応して定められている償却率を用いて、次の算定式により算定した価格を価格改定後の国有財産台帳価格とすることとなっている。

艦船に係る国有財産台帳価格の記録に当たり、正しい耐用年数を用いるなどして、国有財産台帳に適正な台帳価格を記録するとともに、現在額報告書の誤びゅう訂正の報告を行うよう適宜の処置を要求し、事務処理上の留意点等を明確にして国有財産部局に対する指導等を徹底するよう是正改善の処置を求めたもの 画像

また、海上自衛隊は、海上自衛隊が所有する艦船の種別等ごとの耐用年数が評価要領に記載されておらず、艦船の耐用年数が明確でないことから、海上幕僚監部装備部長名で「国有財産台帳の価格改定に関する評価要領について」(平成3年海幕艦船第1720号。以下「海幕通知」という。)を発出して、艦船の種別等ごとの耐用年数を明示しており、具体的には、護衛艦、油船等の耐用年数が20年、潜水艦等の耐用年数が15年等となっている。

(4) 国有財産の現況等の報告

国有財産法によれば、各省各庁の長は、その所管に属する国有財産について、毎会計年度間における増減及び毎会計年度末現在における現在額を集計して「国有財産増減及び現在額報告書」(以下「現在額報告書」という。)を作成し、翌年度の7月31日までに財務大臣に送付することとされている。そして、財務大臣は、各省各庁の長から送付された現在額報告書に基づき「国有財産増減及び現在額総計算書」(以下「総計算書」という。)を作成することとされている。また、内閣は、総計算書を現在額報告書とともに本院に送付し、本院の検査を経た総計算書を国会に報告することとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

国有財産台帳は、国有財産を適切に管理するための帳簿であり、新たに国有財産を取得した場合には、国有財産法に従って国有財産台帳に記録する必要がある。

そして、前記のとおり、総計算書は、現在額報告書に基づき作成されており、総計算書に基づき毎会計年度末における国有財産の現在額等を国会に報告することは、国民に対して国有財産の現況を明らかにするという性格を有するものとなっている。

そこで、本院は、正確性、合規性等の観点から、艦船に係る国有財産台帳価格が適正に記録されているかなどに着眼して、平成23年度から27年度までの間に就役した38隻の艦船(27年度末の国有財産台帳価格4880億7641万余円)を対象として、内部部局、防衛装備庁、海上幕僚監部、6地方総監部等(注1)において、艦船に係る国有財産台帳、価格改定に関する資料等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注1)
6地方総監部等  横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊各地方総監部、第1術科学校

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 艦船取得時の価格を誤っていたもの

呉地方総監部は、24年3月に就役した同地方総監部在籍の潜水艦「けんりゅう」について、造船会社から提出された生産明細書の大区分別一覧表における国有財産の合計額517億6491万余円を取得時の価格であるとして、就役と同時に国有財産台帳への記録を行っていた。そして、この517億6491万余円を用いて前記の算定式により23年度末における評価額を511億5236万余円と算定して同額を国有財産台帳に記録するなどして価格改定を行っていた。

しかし、上記の517億6491万余円は、生産明細書の大区分別一覧表に記載された国有財産と物品の合計額であり、国有財産の正しい合計額は506億0501万余円であった。このため、23年度以降の価格改定後の国有財産台帳価格が過大となっており、直近の27年度末の国有財産台帳価格285億6271万余円について、正しい艦船取得時の価格を用いて修正計算すると278億2676万余円となり、7億3594万余円過大となっていた。

(2) 価格改定を誤っていたもの

横須賀、佐世保、舞鶴各地方総監部は、護衛艦等5隻の評価額の算定に当たり、海幕通知を確認していなかったことなどから、海幕通知に示されている艦船の種別等ごとの耐用年数を誤り、この誤った耐用年数に対応する償却率を用いて評価額の算定を行っていたため、価格改定後の国有財産台帳価格を誤って記録していた。

したがって、海幕通知に示されている正しい耐用年数に対応する償却率を用いて修正計算すると、のとおり、27年度末において、横須賀地方総監部の1隻の国有財産台帳価格が16億9094万余円過大となっていたり、横須賀、佐世保、舞鶴各地方総監部の4隻の国有財産台帳価格が計51億8186万余円過小となっていたりしていた。

表 過大又は過小となっている国有財産台帳価格(評価額)

(単位:千円)
艦船名 在籍地方総監部名 態様 平成27年度末の国有財産台帳価格
(A)
適正な価格改定後の国有財産台帳価格
(B)
過大又は過小となっている国有財産台帳価格(評価額)
(C)=(A)-(B)
護衛艦
「てるづき」
横須賀地方総監部 過小 41,114,134 46,116,350 △5,002,215
護衛艦
「ふゆづき」
舞鶴地方総監部 過小 51,448,807 51,591,727 △142,920
潜水艦
「こくりゅう」
横須賀地方総監部 過大 42,582,925 40,891,980 1,690,944
えい船
03号
横須賀地方総監部 過小 111,384 121,144 △9,760
油船
207号
佐世保地方総監部 過小 138,161 165,126 △26,964
過大 1,690,944
過小 △5,181,860
(注)
「過大又は過小となっている国有財産台帳価格(評価額)」の「過小」は、単位未満を切り捨てているため、各項目を集計しても計と一致しないことがある。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

横須賀地方総監部は、平成25年3月に就役した同地方総監部在籍の護衛艦「てるづき」について、24年度末において耐用年数が15年であるとして、国有財産台帳価格654億3883万余円に評価要領で示されている当該耐用年数に対応する償却率0.142を乗じて24年度の減価償却相当額を7億7435万余円と算出するなどし、24年度末の評価額を646億6447万余円と算定して同額を国有財産台帳に記録するなどして価格改定を行っていた。

しかし、海幕通知によれば、護衛艦の耐用年数は20年であり、これに対応する償却率は0.109とされていることから、この償却率を用いて適正な24年度の減価償却相当額を算出すると5億9440万余円となり、上記24年度末の国有財産台帳価格は1億7995万余円過小となっていた。このため、25年度以降の価格改定後の国有財産台帳価格も同様に過小となっており、直近の27年度末における国有財産台帳価格411億1413万余円について、就役した24年度から正しい耐用年数20年に対応する償却率0.109を用いて修正計算すると461億1635万余円となり、上記の国有財産台帳価格と比べて50億0221万余円過小となっていた。

(是正及び是正改善を必要とする事態)

呉地方総監部において艦船取得時の価格を誤っていたり、横須賀、佐世保、舞鶴各地方総監部において誤った耐用年数に対応する償却率を用いていたりしていて、艦船に係る国有財産台帳価格が正確に記録されておらず、国有財産台帳、現在額報告書等が国有財産の増減等を正確に反映したものとなっていない事態は適切ではなく、是正及び是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、4地方総監部(注2)において、艦船に係る国有財産台帳価格の記録に当たり、艦船取得時の価格、艦船の種別等ごとに定められている耐用年数を十分に確認していないことにもよるが、貴省において、国有財産に関する事務を総括する部局として国有財産台帳等の記録に関する業務の適正性を確保するための指導が十分でないことなどによると認められる。

(注2)
4地方総監部  横須賀、呉、佐世保、舞鶴各地方総監部

3 本院が要求する是正の処置及び求める是正改善の処置

国有財産台帳は、国有財産を適切に管理するための帳簿であり、各省各庁の長は、国有財産台帳に基づいて、毎年度、現在額報告書を作成している。そして、総計算書は現在額報告書に基づき作成されており、総計算書に基づき毎会計年度末における現在額等を国会に報告することは、国民に対して国有財産の現況を明らかにするという性格を有するものとなっている。このように、国有財産法等に基づき、国有財産を正確に国有財産台帳に記録することは、極めて重要である。

そして、貴省は、今後も艦船を取得することが見込まれることから、艦船を取得した年の年度末以降、毎年価格改定をすることとなる。

ついては、貴省において、艦船に係る国有財産台帳が正確に記録され、現在額報告書等に正確に反映されるよう、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

  • ア 艦船に係る国有財産事務を担当する4地方総監部に対して、生産明細書の国有財産の合計額を艦船取得時の国有財産台帳価格とすること、また、海幕通知に示されている耐用年数に対応した償却率を用いて適正に価格改定を行うことなどにより、国有財産台帳に適正な台帳価格を記録させるとともに、現在額報告書の誤びゅう訂正の報告を行うこと(会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求するもの)
  • イ 艦船に係る国有財産台帳価格の記録に当たり、艦船取得時及び価格改定時の事務処理上の留意点等を明確にして、艦船に係る国有財産事務を担当する6地方総監部等に通知するなどして指導等を徹底するとともに、艦船に係る国有財産の事務担当者に対して、上記の通知等に即して周知徹底を図ること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めるもの)