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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • |第4 東日本高速道路株式会社、第5 中日本高速道路株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1)(2)橋りょう下部工の場所打ち杭等とフーチングの接合部の設計に当たり、縁端距離が杭径の1.0倍未満となる場合は、レベル2地震動に対する水平押抜きせん断の照査が必要であることを設計要領に明記することなどにより、地震時における所要の安全度を確保するよう改善させたもの


会社名
(1) 東日本高速道路株式会社
(2) 中日本高速道路株式会社
科目
(1)(2)仕掛道路資産
部局等
(1)本社、3支社
(2)本社、4支社
場所打ち杭等とフーチングの接合部の設計の概要
橋りょう下部工の場所打ち杭等とフーチングとの接合部について、常時及び地震時における所要の安全度を確保するよう設計するもの
検査の対象とした橋りょう工事の契約件数及び契約金額
(1)18工事 1802億8136万余円(平成22年度~27年度)
(2)33工事 1358億2687万余円(平成25年度~27年度)
上記のうちレベル2地震動に対する水平押抜きせん断の照査を実施していなかった橋りょう工事の契約件数及び契約金額
(1) 10工事 1556億4742万余円
(2) 26工事 1039億3654万余円
上記のうちレベル2地震動に対する水平押抜きせん断について所要の安全度が確保されていない橋脚等数及び直接工事費
(1)1基 1742万円
(2)4基 4513万円

1 フーチングの水平押抜きせん断の照査の概要

(1) 橋りょう下部工の設計の概要

東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)及び中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。また、以下、これらの会社を総称して「2会社」という。)は、高速道路の建設工事の一環として、橋りょうを建設する工事を実施している。

そして、2会社は、橋りょうの建設に当たって、2会社がそれぞれ制定している「設計要領第二集橋梁建設編」(以下「設計要領」という。)に基づいて設計することとしており、設計要領に記載のない事項については、「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等を適用することとしている。

設計要領及び示方書によれば、橋りょうを構成する鉄筋コンクリート造の下部工のうち、橋脚及び液状化が生ずると判定される地盤に築造されるなどしている橋台(以下「橋脚等」という。)の基礎については、常時(注1)及びレベル1地震動(注2)時における設計計算を行った上で、レベル2地震(注2)動に対する照査を行うこととされている。

(注1)
常時  地震時等に対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。
(注2)
レベル1地震動・レベル2地震動  「レベル1地震動」とは、構造物の供用期間中に発生する確率が高い地震動をいい、「レベル2地震動」とは、構造物の供用期間中に発生する確率は低いが大きな強度を持つ地震動をいう。

(2) 杭とフーチングの接合部の照査

設計要領及び示方書によれば、橋脚等の基礎形式を杭基礎とする場合、杭とフーチングの接合部は剛結として設計し、地震動等により杭頭部に作用する外力に対して安全であることを照査することとされている。

設計要領によれば、杭中心からフーチング縁端までの距離(以下「縁端距離」という。)を杭径の1.0倍以上とするなどとすれば、杭とフーチングの接合部の照査を省略できるとされている。また、場所打ち杭等を基礎杭とする場合は、杭とフーチングの接合部の照査として、フーチング端部の杭頭部に作用する軸直角方向力によりフーチングコンクリートに生ずる水平方向の押抜きせん断(注3)の照査(以下「水平押抜きせん断の照査」という。)を実施すれば、縁端距離が杭径の1.0倍未満であっても、杭周面からフーチング縁端までの距離を250mmとしてもよいとされている(参考図参照)。

そして、設計要領には、水平押抜きせん断の照査について、地震動時等に杭頭部に作用する軸直角方向力によりフーチング下面の鉄筋に生ずる引張応力度(注4)(以下「軸直角方向力による鉄筋の引張応力度」という。)が鉄筋の許容引張応力度(注4)以下となることを確認する照査方法は示されているが、その照査において考慮すべき設計地震動のレベル等については明記されていない。

一方、示方書においては、平成24年3月の改訂により、縁端距離を杭径の1.0倍未満とする場合は、レベル2地震動も含めた水平押抜きせん断の照査を行う必要があると明記されている。

(注3)
押抜きせん断  コンクリートに局部的に集中荷重が作用する場合において、コンクリートが荷重作用位置の周辺に沿って円すい状又は角すい状に押し抜かれること
(注4)
引張応力度・許容引張応力度  「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性等の観点から、杭とフーチングの接合部の設計に当たり、水平押抜きせん断の照査が適切に実施されているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、2会社の本社及び各支社において、26年度又は27年度に実施した橋りょう工事(契約締結年度は22年度から27年度まで)、東会社18工事(契約金額計1802億8136万余円)、中会社33工事(同計1358億2687万余円)、2会社計51工事(同合計3161億0823万余円)において施工される場所打ち杭等を基礎杭とする橋脚等158基(東会社67基、中会社91基)を対象として、契約書、設計書、特記仕様書等の書類を確認するとともに、現地を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

前記の51工事において施工される橋脚等158基については、場所打ち杭等の杭径が500mmを超え、かつ、杭周面からフーチング縁端までの距離が250mmとなっており、いずれも縁端距離が杭径の1.0倍未満となるものであった。

そして、51工事のうち20工事(東会社9工事、中会社11工事)において施工される橋脚等60基(東会社34基、中会社26基)については、常時及びレベル1地震動時における水平押抜きせん断の照査を実施し、さらに、レベル2地震動時における軸直角方向力による鉄筋の引張応力度が、鉄筋の降伏強度(注5)を下回ることを確認する方法により、レベル2地震動時の水平押抜きせん断の照査を実施していた。

また、36工事(東会社10工事(契約金額計1556億4742万余円)、中会社26工事(同計1039億3654万余円)、同合計2595億8397万余円)において施工される橋脚等98基(東会社33基、中会社65基)については、常時及びレベル1地震動時における水平押抜きせん断の照査は実施していたが、設計要領にレベル2地震動に対する照査を実施することが明記されていないことから、レベル2地震動に対する水平押抜きせん断の照査は実施していなかった。

しかし、設計要領及び示方書において、橋脚等の基礎は、常時及びレベル1地震動時のみならず、レベル2地震動時まで照査を実施することとなっていること、また、示方書の改訂により、縁端距離を杭径の1.0倍未満とする場合は、レベル2地震動も含めた水平押抜きせん断の照査を実施する必要があるとされたことから、上記の橋脚等98基については、設計計算上、レベル2地震動に対する所要の安全度が確保されない状態となるおそれがあり、水平押抜きせん断の照査をレベル2地震動時まで実施する必要があった。

そこで、これらの橋脚等98基について、改めてレベル2地震動時における水平押抜きせん断の照査を実施したところ、2工事(東会社1工事、中会社1工事)における橋脚等計5基(東会社1基(直接工事費1742万余円)、中会社4基(同計4513万余円)、同合計6256万余円)について、軸直角方向力による鉄筋の引張応力度が366.4N/mm2から805.4N/mm2となっていて、鉄筋の降伏強度345N/mm2を大幅に上回ることとなり、設計計算上、レベル2地震動に対する所要の安全度が確保されない結果となった。

(注5)
降伏強度  材に作用している外力を取り去ってもひずみが残る塑性変形を起こさずに、材に生じさせることのできる最大応力のことをいう。

このように、杭とフーチングの接合部の設計に当たり、縁端距離が杭径の1.0倍未満となる場合に、考慮すべき設計地震動としてレベル2地震動が設計要領に明記されていなかったため、レベル2地震動時における水平押抜きせん断の照査を実施しておらず、レベル2地震動に対する所要の安全度が確保されない設計となっていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、2会社において、示方書の改訂内容を設計要領に反映していなかったこと、縁端距離が杭径の1.0倍未満となる場合のレベル2地震動時における水平押抜きせん断の照査の必要性についての認識が欠けていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、2会社は、次のような処置を講じた。

ア 28年8月に設計要領を改訂して、杭とフーチングの接合部の設計に当たり、縁端距離が杭径の1.0倍未満となる場合は、レベル2地震動に対する水平押抜きせん断の照査が必要であることを明記し、同月からこれを適用することとした。

イ 契約履行中の前記の橋脚等5基については、レベル2地震動時の所要の安全度を確保するために、フーチング下面の鉄筋に生ずる引張応力度が降伏強度を下回るよう、改めて水平押抜きせん断の照査を行い、これにより施工することとした。

(参考図)

フーチングに生ずる水平方向の押抜きせん断等の概念図

フーチングに生ずる水平方向の押抜きせん断等の概念図 画像