ページトップ
  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 保険料

労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの[14労働局](95)


会計名及び科目
労働保険特別会計(徴収勘定) (款)保険収入 (項)保険料収入
部局等
14労働局
保険料納付義務者
徴収不足があった事業主数 373事業主
徴収過大があった事業主数 121事業主
徴収過不足額
徴収不足額 409,195,016円(平成26年度~28年度)
徴収過大額 112,729,965円(平成26年度~28年度)

1 保険料の概要

(1) 労働保険

労働保険は、労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)及び雇用保険を総称するものである。このうち、①労災保険は、労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対する療養補償給付等を行う保険であり、原則として、事業所に使用される全ての労働者が対象となる。また、②雇用保険は、労働者の失業等に対する失業等給付、雇用安定事業等を行う保険であり、常時雇用される一般労働者のほか、いわゆるパートタイム労働者等の短時間就労者のうち1週間の所定労働時間が20時間以上で継続して31日以上雇用されることが見込まれることなどの要件を満たす者が被保険者となる。

なお、取締役等の役員は、業務執行権を有する者の指揮監督を受けて労働に従事している者を除き、労働者として取り扱われないこととなっている。

(2) 保険料の徴収

保険料は、①労災保険分については事業主が負担して、②雇用保険分については、失業等給付に充てる部分を労働者と事業主とが折半して負担し、雇用安定事業等に充てる部分を事業主が負担して、①と②のいずれも事業主が納付することとなっている。

保険料の納付は、原則として次のとおり行われることとなっている。

ア 事業主は、毎年度の6月1日から40日以内に、都道府県労働局(以下「労働局」という。)に対して、その年度の労働者に支払う賃金総額の見込額に保険料率(注)を乗じて算定した概算保険料を申告して、納付する。

イ 事業主は、次の年度の6月1日から40日以内に、労働局に対して、前年度に実際に支払った賃金総額に基づいて算定した確定保険料申告書を提出する。

ウ 労働局は、この申告書の記載内容を審査して、その結果に基づき保険料の過不足分が精算される。

この労働保険の保険料の平成28年度の収納済額は2兆7557億余円に上っている。

(注)
保険料率  労災保険率と雇用保険率に分かれており、それぞれ次のとおりである。
① 労災保険率は、労災保険の適用を受ける全ての事業の過去3年間の業務災害及び通勤災害に係る災害率等を考慮して事業の種類ごとに定められており、平成26年度の場合は最低1000分の2.5から最高1000分の89、27、28両年度の場合は最低1000分の2.5から最高1000分の88となっている。
② 雇用保険率は、失業等給付、雇用安定事業等に要する費用を考慮して定められており、26、27両年度の場合は1000分の13.5(ただし、農林、水産等の事業は1000分の15.5、建設の事業は1000分の16.5)、28年度の場合は1000分の11(ただし、農林、水産等の事業は1000分の13、建設の事業は1000分の14)となっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、事業主の雇用する労働者の保険加入が適正になされているかなどに着眼して、全国47労働局のうち14労働局管内の事業主から短時間就労者を雇用している割合が高いなどと思われる648事業主を選定して、26年度から28年度までの間における各労働局の保険料の徴収の適否について検査した。

検査に当たっては、上記の14労働局において、事業主から提出された確定保険料申告書等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

検査したところ、事業主が、雇用保険の加入要件を満たす短時間就労者を同保険に加入させておらず、その賃金を雇用保険分の保険料の算定の際に賃金総額に含めるべきところ、これを含めていなかったり、労働者として取り扱われない役員の報酬等を労災保険分及び雇用保険分の保険料の算定の際に賃金総額から除くべきところ、これを含めていたりなどしている事態が見受けられた。

このため、前記648事業主のうち、14労働局管内の373事業主について徴収額が409,195,016円不足していたり、14労働局管内の121事業主について徴収額が112,729,965円過大になっていたりしていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主が確定保険料申告書を提出するに当たり、制度を十分に理解していなかったり、計算誤りをしたりなどしていて、賃金総額の記載が事実と相違するなどしていたのに、上記の14労働局において、これに対する調査確認が十分でなかったことによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

埼玉労働局は、小売業を営む事業主Aから、平成26年度の労働保険の保険料について、雇用保険の被保険者5,022人に対して支払った賃金総額は18,136,768千円、その雇用保険分の保険料は244,846,368円であるとした確定保険料申告書の提出を受けて、これに基づき、当該保険料を徴収していた。

しかし、事業主Aは、雇用保険の加入要件を満たす短時間就労者777人を同保険に加入させておらず、これらの者に対して支払った賃金980,917千円を確定保険料申告書に記載する賃金総額に含めるべきところ、これを含めていなかった。このため、雇用保険分の保険料13,242,379円が徴収不足となっていた。

なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、全て徴収決定又は還付決定の処置が執られた。

これらの徴収不足額及び徴収過大額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 本院の調査に係る事業主数 徴収不足があった事業主数
徴収過大があった事業主数
徴収不足額
徴収過大額(△)
      千円
北海道 47 32 16,494
    11 △16,052
青森 36 14 5,820
    6 △634
茨城 45 32 26,534
    6 △5,444
埼玉 36 25 54,783
    5 △4,358
東京 84 49 78,760
    19 △38,123
神奈川 61 37 41,918
    10 △2,115
愛知 58 30 65,685
    12 △24,191
滋賀 26 8 1,793
    6 △1,163
大阪 66 41 43,812
    18 △13,071
兵庫 46 30 18,852
    2 △85
奈良 35 23 14,391
    3 △259
福岡 48 24 9,017
    5 △1,192
長崎 36 16 6,422
    10 △4,292
大分 24 12 24,907
    8 △1,743
648 373 409,195
    121 △112,729