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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(4) 緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施した事業において基金を補助の目的外に使用していたもの[厚生労働本省](162)


1件 不当と認める国庫補助金 25,499,881円

緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金は、厚生労働本省(以下「本省」という。)が定めた平成21年度緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金交付要綱(平成21年厚生労働省発能第0605001号)等に基づき、中央職業能力開発協会(以下「協会」という。)が、同交付金を原資として、緊急人材育成・就職支援基金(以下「基金」という。)を造成し、緊急人材育成・就職支援基金事業(以下「基金事業」という。)を実施するために国が交付するものである。

協会は、本省が定めた緊急人材育成・就職支援基金事業実施要領(平成25年厚生労働省発能0306第1号)に基づき、基金事業の一つとして若者育成支援事業を実施している。

上記の若者育成支援事業において実施される地域若者サポートステーション事業(以下「サポステ事業」という。)は、地域若者サポートステーション事業実施要領(平成25年能発0318第3号。以下「サポステ実施要領」という。)等に基づき、一定期間無業の状態にある若者の職業的自立支援の取組を促進することなどを目的として、原則として、15歳から39歳までで仕事に就いておらず家事も通学もしていない若者等に対して、キャリアコンサルタントなどのキャリア形成支援を行う者による相談支援等を実施するものである。

また、前記の若者育成支援事業において支給される若年者人材育成・定着支援奨励金(以下「奨励金」という。)は、若年者人材育成・定着支援奨励金(若者チャレンジ奨励金)業務実施要領(平成25年職発0307第2号、能発0307第1号。以下「奨励金実施要領」という。)等に基づき、若年者の正規雇用労働者としての就職等の雇用の安定化等を図ることを目的として、非正規雇用の若年者に対して職業能力の向上を目指した実践的な職業訓練(以下「訓練」という。)を実施するなどした事業主を助成するものである。

ア 事業経費の支給

サポステ実施要領等によれば、サポステ事業を実施した者(以下「事業実施者」という。)は、事業の実施状況等を記載した実施結果報告書、人件費等の算出内訳を記載した補助簿等の関係書類を添えて、サポステ事業に要した経費(以下「事業経費」という。)を記載した支給申請書を本省に提出することとされている。そして、事業実施者から支給申請書の提出を受けた本省は、事業実施者から申請された事業経費が適正かなどについて審査を行い、その審査結果を協会に送付し、協会は、本省の審査結果に基づいて事業経費の支給決定を行い、基金から支給決定額を取り崩して事業経費を支給することとされている。

イ 奨励金の支給

奨励金には訓練奨励金と正社員雇用奨励金がある。このうち、訓練奨励金は、35歳未満の非正規雇用の若年者に対して、事業主が、訓練実施時間数等についてあらかじめ管轄の都道府県労働局(以下「労働局」という。)の確認を受けた訓練実施計画に基づいて訓練を実施した場合に、訓練実施期間に訓練受講者1人につき1月当たり15万円を事業主に支給するものである。また、正社員雇用奨励金は、事業主が、訓練を終了した訓練受講者(以下「訓練修了者」という。)を正社員として1年又は2年継続して雇用した場合に、訓練修了者1人につき50万円(最大100万円)を事業主に支給するものである。

奨励金実施要領等によれば、訓練奨励金の支給を受けようとする事業主は、訓練の終了後、訓練実施時間数、実施内容等を記載した実施状況報告書、出勤簿等の関係書類を添えて、支給申請書を労働局に提出することとされている。また、正社員雇用奨励金の支給を受けようとする事業主は、訓練修了者を正社員として雇用してから1年又は2年経過した後、正社員雇用状況及び訓練受講状況等報告書、訓練修了者に係る雇用契約書等の関係書類を添えて、支給申請書を労働局に提出することとされている。そして、事業主から支給申請書の提出を受けた労働局は、事業主の申請内容が奨励金の支給要件を満たしているかなどについて審査を行い、その審査結果を協会に送付し、協会は、労働局の審査結果に基づいて奨励金の支給決定を行い、基金から支給決定額を取り崩して奨励金を支給することとされている。

そして、訓練奨励金の支給要件は、訓練実施計画に基づき訓練が実施されていることなど、また、正社員雇用奨励金の支給要件は、訓練修了者を正社員として1年又は2年継続して雇用したことなどとなっている。

また、協会は、偽りその他不正の行為により本来受けることのできない事業経費又は奨励金の支給を受け、又は受けようとした事業実施者又は事業主であると本省又は労働局が認める者については、本省又は労働局からの通知に基づき、事業経費又は奨励金を不支給とし又はその支給を取り消すこととなっている。

本院が、本省及び9労働局(注1)において、平成25年度から28年度までの間に、支給申請書等の記載内容について本省及び各労働局が審査を行った事業経費及び奨励金を対象に会計実地検査を行ったところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
交付金の交付年度 支給要件確認庁
(本省、労働局)
事業経費等の支給年度 不適正な事業経費等支給額 不当と認める基金使用額 不当と認める交付金相当額
            千円 千円 千円
(162) 厚生労働本省 中央職業能力開発協会 21、22、24 本省、2労働局 25~28 25,499 25,499 25,499

ア 事業経費が過大に支給されていた事態

本省は、2事業実施者から、サポステ事業を実施したとする支給申請書及び関係書類の提出を受け、事業経費の申請は適正であるとする審査結果を協会に送付し、協会はこの審査結果に基づき、平成25、26両年度に事業経費計74,419,434円を2事業実施者に支給していた。

しかし、2事業実施者は、支給申請書に実際の給与の支払額を上回る額を計上するなどしていたことから、2事業実施者に対し事業経費計4,738,881円が過大に支給されていた。

イ 奨励金が過大に支給されていた事態

2労働局(注2)は、3事業主から、訓練実施計画に基づいて訓練を実施したなどとする支給申請書及び関係書類の提出を受け、奨励金の支給要件を満たしているとする審査結果を協会に送付し、協会はこの審査結果に基づき、26年度から28年度までの間に奨励金計23,489,000円を3事業主に支給していた。

しかし、3事業主は、訓練実施計画に基づいて訓練を実施していないのに、訓練実施計画に基づいて訓練を実施したとする虚偽の内容の関係書類を支給申請書に添付して労働局に提出するなどしていたことから、3事業主に対し奨励金計20,761,000円が過大に支給されていた。

したがって、前記事業経費及び奨励金の支給は適正なものではなく、計25,499,881円(交付金相当額同額)が基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業実施者及び事業主が制度を十分に理解していなかったり、事業主が誠実でなかったりしていたため、支給申請書等の記載内容が事実と相違するなどしていたのに、本省及び2労働局において、審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

イの事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

北海道労働局は、事業主Aから、平成25年6月28日から26年8月27日までの14か月間、訓練受講者4人に対して訓練実施計画に基づき訓練を実施したとする訓練奨励金の支給申請書及び関係書類の提出を受け、その内容の審査を行い、協会は、この審査結果に基づき訓練奨励金8,400,000円を事業主Aに支給していた。また、同局は、事業主Aから、上記訓練修了者4人のうち3人を正社員として1年継続して雇用したとする正社員雇用奨励金の支給申請書及び関係書類の提出を受け、その内容の審査を行い、協会は、この審査結果に基づき正社員雇用奨励金1,500,000円を事業主Aに支給していた。

しかし、実際には、事業主Aは訓練実施計画に基づいて訓練を実施していないのに、訓練実施計画に基づいて訓練を実施したとする虚偽の内容の関係書類を支給申請書に添付して労働局に提出していたことから、事業主Aに対する奨励金計9,900,000円の全額が支給の要件を満たしていなかった。

(注1)
9労働局  北海道、東京、神奈川、長野、岐阜、愛知、大阪、兵庫、福岡各労働局
(注2)
2労働局  北海道、福岡両労働局