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  • 平成28年度|
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  • (2) 工事の設計が適切でなかったもの

押え盛土工の設計が適切でなかったもの[関東農政局](239)


(1件 不当と認める国庫補助金 1,122,207円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(239) 関東農政局 群馬県
(事業主体)
農村地域防災減災等2事業 26、27 54,183 27,037 2,244 1,122

この補助事業は、群馬県が、吾妻郡中之条町わらび峠地区において、宅地脇に発生した亀裂箇所斜面の崩壊危険箇所の安定化を図ることを目的として、押え盛土工、明渠(きょ)工、集水井工等の地すべり防止対策工事を実施したものである。

同県は、押え盛土工(延長22.0m、高さ2.6m)の設計を「土地改良事業計画設計基準 計画「農地地すべり防止対策」基準書」(農林水産省農村振興局監修)等に基づき行っており、本件地すべり防止対策工事前の亀裂箇所斜面の安全率を1.00として、鋼製ふとんかご(長さ2.0m、幅1.0m、高さ0.5m)を3段(うち根入れ1段)設置し、その上部に良質な盛土材を用いて盛土(高さ1.6m。以下「上部の盛土」という。)等を行うこととすれば、近隣に家屋等の重要施設がある場合に必要とされる目標安全率1.20を確保できるとしていた。そして、押え盛土工のうち、上部の盛土については、本件工事等で発生する残土を用いることとしていたが、想定していた良質な盛土材を残土により確保することが困難となったことから、上部の盛土を行わないこととする設計変更を行い、これにより施工していた(参考図参照)。しかし、同県は別途工事等による上部の盛土を行わないまま、本件地すべり防止対策工事を完了させていた。そこで、改めて亀裂箇所斜面の安全率を確認したところ1.09となっていて、必要とされる目標安全率が確保されていなかった。

したがって、本件地すべり防止対策工事の押え盛土工、明渠工等(工事費相当額計2,244,414円)は、押え盛土工の設計が適切でなかったため、崩壊危険箇所の安定化を図るという工事の目的を達しておらず、これらに係る国庫補助金相当額計1,122,207円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、本件地すべり防止対策工事の重要性についての認識が欠けていたことなどによると認められる。

参考図

押え盛土工概念図

押え盛土工概念図 画像