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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 不当事項|
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  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

擁壁の設計が適切でなかったもの[2県](263)(264)


(2件 不当と認める国庫補助金 41,709,898円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(263) 長野県 上田市 社会資本整備総合交付金
(道路)
26~28 47,606
(43,000)
23,650 23,243
(20,781)
11,429

この交付金事業は、上田市が、上田市小牧地内において、市道小牧4号線の拡幅等を行うために、擁壁の築造、水路の設置等を実施したものである。

このうち、擁壁は、市道の法面の一部を掘削して割栗石を詰めた鋼製のかご枠(長さ1.0m又は2.0m、幅0.8m、高さ0.5m、延長計342.4m)を4段から6段積み重ねて設置するなどしたものである(参考図1参照)。

同市は、擁壁の設計を「道路土工 擁壁工指針」(公益社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)等に基づき行うこととしている。指針によれば、擁壁の直接基礎の原地盤面等からの根入れ深さ(以下「根入れ深さ」という。)は、将来予想される地盤の洗掘の影響等を考慮する必要があり、原則として0.50m以上確保することとされている。

しかし、同市は、擁壁の設計に当たって、必要とされる根入れ深さについて、指針に基づかずに、かご枠の製造メーカーの技術資料に示されている将来洗掘が予想されない場合に標準とされている根入れ深さの考え方により、かご枠の高さの半分から下までの深さ0.25mを埋め戻すこととして擁壁を施工していた。

そこで、現地の状況を確認したところ、参考図2のとおり、擁壁前面の原地盤面の高さが一定でないため、結果的に延長計43.2mにおいては、根入れ深さが0.50m確保されていたが、延長計299.2mにおいては、根入れ深さが0.50m確保されておらず最小で0.25mにとどまっており、根入れ深さが最大で0.25m不足していた。

したがって、本件擁壁は設計が適切でなかったため、擁壁等延長計299.2m(工事費相当額計23,243,000円)は、降雨等の影響により地盤の洗掘等が進行すると転倒等するおそれがある状態となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額計11,429,550円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図1)

市道及び擁壁の概念図

市道及び擁壁の概念図 画像

(参考図2)

実際の施工状況の概念図

実際の施工状況の概念図 画像

(264) 鹿児島県 大島郡大和村 防災・安全交付金(効果促進) 26 43,257
(43,257)
30,280 43,257
(43,257)
30,280

この交付金事業は、大和村が、防災・安全交付金事業における効果促進事業として、大和村大金久地内において、台風時や豪雨時の避難所や防災拠点となる防災会館の建築工事、擁壁工、側溝工、盛土工等の外構工事等を実施したものである。

このうち、擁壁工は、防災会館の敷地を約2m盛土するための土留工として、基礎形式を直接基礎とする、片持ばり式の現場打ち鉄筋コンクリート構造のL型擁壁(延長18.7m、高さ2.0m又は1.4m。以下「現場打ち擁壁」という。)及び片持ばり式のプレキャスト鉄筋コンクリート製のL型擁壁(延長47.0m、高さ2.0m。以下「プレキャスト擁壁」といい、現場打ち擁壁と合わせて「両擁壁」という。)を延長計65.7m設置するものである。また、側溝工は、防災会館の敷地内の排水を目的として、プレキャスト擁壁前面にプレキャスト鉄筋コンクリート製のU型側溝(高さ0.67m)を延長48.0m設置するものである。

同村は、両擁壁の設計を「道路土工 擁壁工指針」(公益社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)等に基づき行うこととしている。指針によれば、擁壁の直接基礎の原地盤面等からの根入れ深さ(以下「根入れ深さ」という。)は、将来予想される地盤の洗掘の影響等を考慮する必要があり、片持ばり式擁壁等は、原則として底版厚さに0.50m以上加えた根入れ深さを確保することとされ、また、擁壁に接してコンクリート水路を設ける場合の根入れ深さは、水路底面より0.30m以上確保することとされている。

しかし、同村は、両擁壁の設計に当たって、必要とされる根入れ深さについての検討を行わないまま両擁壁を施工していた。

そこで、両擁壁の必要とされる根入れ深さを指針等に基づき算出すると、現場打ち擁壁については底版厚さ0.20mに0.50mを加えた0.70m、プレキャスト擁壁についてはU型側溝の水路底面までの深さ0.67mに0.30mを加えた0.97mとなる。そして、現地で根入れ深さを確認したところ、現場打ち擁壁では0.11mから1.01mまでとなっていて、全延長18.7mのうち13.2mの区間において根入れ深さが不足(最大0.59m)していた。また、プレキャスト擁壁では0mから0.31mまでとなっていて、全延長47.0mにおいて根入れ深さが不足(最大0.97m)していた(参考図参照)。

したがって、両擁壁は設計が適切でなかったため、降雨等の影響により地盤の洗掘等が進行すると転倒等するおそれがある状況となっており、両擁壁及び両擁壁で土留めされた盛土上に建設されている防災会館等(これらの工事費計43,257,640円)は工事の目的を達しておらず、これに係る交付金30,280,348円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同村において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

参考図

現場打ち擁壁の概念図

現場打ち擁壁の概念図 画像

U型側溝に接しているプレキャスト擁壁の概念図

U型側溝に接しているプレキャスト擁壁の概念図 画像

(263)(264)の計 90,864
(86,257)
53,930 66,500
(64,038)
41,709