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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

汚水処理槽の基礎工の設計が適切でなかったもの[鹿児島県](266)


(1件 不当と認める国庫補助金 38,624,300円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(266) 鹿児島県 奄美市 社会資本整備総合交付金
(下水道)
27、28 83,080
(83,080)
45,694 70,226
(70,226)
38,624

この交付金事業は、奄美市が、奄美市笠利町外金久地内において、平成27、28両年度に、汚水処理槽(縦14.5m、横24.5m、高さ4.6m)を新設するために基礎工、く体工等の工事を実施したものである。

このうち、基礎工は、別工事で打設した基礎杭(鋼管杭、外径267.4mm、杭長12.9m~19.9m、計72本)の上端の杭頭部を鉄筋で補強すること(以下、杭頭部を補強する鉄筋を「杭頭補強鉄筋」という。)などにより、基礎杭と汚水処理槽のく体との結合部(以下「杭頭結合部」という。)を施工するものである。

同市は、25年度に、本件基礎工の設計を「下水道施設の耐震対策指針と解説―2006年版―」(社団法人日本下水道協会編。以下「2006年版指針」という。)等に基づいて行っている。そして、同市は、杭頭結合部を杭頭補強鉄筋で補強する設計に当たって、レベル1地震動(注1)時に杭頭補強鉄筋及び汚水処理槽のく体コンクリートに生ずる応力度(注2)が許容応力度(注2)以下であることを確認する照査(以下「レベル1地震動時の照査」という。)を行い、杭頭部の外周に杭外周溶接鉄筋(径25mm、長さ1,000mmの鉄筋を杭1本当たり12本)を配置すれば、杭頭補強鉄筋及びく体コンクリートに生ずる応力度がそれぞれ許容応力度を下回ることなどから、設計計算上安全であるとして、これにより施工することとして、27年度に工事を発注していた。

しかし、26年5月に、2006年版指針が「下水道施設の耐震対策指針と解説―2014年版―」(公益社団法人日本下水道協会編。以下「2014年版指針」という。)に改訂されたことを受けて、同月、「下水道施設の耐震・耐津波対策について」(平成26年5月国土交通省水管理・国土保全局下水道部下水道事業課企画専門官事務連絡。以下「事務連絡」という。)が発出されており、これによれば、27年度以降に新規に発注する建設工事については、2014年版指針を適用することとされている。そして、2014年版指針において杭頭結合部の設計に用いることとされている「杭基礎設計便覧(平成18年度改訂版)」(社団法人日本道路協会編)によれば、杭頭結合部におけるレベル1地震動時の照査に当たっては、品質が確実に確保される中詰め補強鉄筋のみを杭頭補強鉄筋として考慮し、杭外周溶接鉄筋は考慮しないこととされているのに、同市は、25年度に行った設計を見直さないまま、杭外周溶接鉄筋を杭頭補強鉄筋として考慮していた(参考図参照)。このため、本件汚水処理槽は、設計計算上、杭頭結合部の補強が行われていない状態となっていた。

したがって、本件汚水処理槽(工事費相当額70,226,000円)は、基礎工の設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額38,624,300円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同市において、事務連絡に対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
レベル1地震動  汚水処理槽等の供用期間中に発生する確率が高い地震動をいう。
(注2)
応力度・許容応力度  「応力度」とは、材に外から力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容応力度」という。

参考図

杭頭結合部の概念図

杭頭結合部の概念図 画像