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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
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  • (3) 補助金により造成した基金の使用が適切でなかったもの

交付金の交付対象とならない事業費の支払に充てるために、基金から交付金を取り崩して使用していたもの[岩手県](277)


(1件 不当と認める国庫補助金 609,268,000円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(277) 岩手県 陸前高田市 東日本大震災復興交付金
(市街地復興効果促進)
24~28 1,557,777
(1,375,097)
1,100,078 944,262
(944,262)
609,268

この交付金事業は、陸前高田市が、東日本大震災により相当数の住宅、公共施設その他の施設の滅失又は損壊等の著しい被害を受けた地域の円滑かつ迅速な復興のために復興交付金事業計画に基づき実施する事業として、防災集団移転促進事業等と一体となってその効果を増大させるために必要な復興まちづくりのための避難誘導施設整備等を行う事業(以下「市街地復興効果促進事業」という。)の事業費として国土交通省から東日本大震災復興交付金(以下「交付金」という。)の交付を受け、交付金を原資として基金を造成して事業を実施するものである。そして、市街地復興効果促進事業の実施に当たっては、交付対象事業費の10分の8について交付金を充てている。

東日本大震災復興交付金基金交付要綱(平成24年国官会第2412号国土交通事務次官通知)等(以下「交付要綱等」という。)によれば、事業主体は、市街地復興効果促進事業の内訳である個々の事業(以下「細要素事業」という。)の実施に当たり、細要素事業ごとの事業費、基金を取り崩して事業費に充てるとしている交付金交付額(以下「交付額」という。)、測量設計や本工事等の種別ごとの工事費内訳等が記載された使途内訳提出書等を、特定市町村(注1)に係るものは復興庁を経由して特定都道県(注2)において審査した上で国土交通省に提出することにより事業に着手できることとされている。また、交付要綱等によれば、事業主体は、事業の実施に伴い提出済みの使途内訳提出書に記載された各細要素事業に対する交付額を増額する変更をしようとするなどの場合には、その都度、使途内訳変更提出書を上記と同様の手続により提出することとされているほか、毎会計年度終了後、復興交付金事業等の成果を記載した年度終了実績報告書を特定都道県に提出することとされている。

(注1)
特定市町村  その全部又は一部の区域が東日本大震災に際し災害救助法(昭和22年法律第118号)が適用された同法第2条に規定する市町村の区域又はこれに準ずる区域として政令で定める地方公共団体である市町村
(注2)
特定都道県  特定市町村が存する都道県

このように定められているのは、市街地復興効果促進事業が、交付金を基金から取り崩して事業費の支払に充てる際に事業主体から国への申請等が不要であるなど、交付手続が簡素化され機動的な事業実施ができる制度であることから、国が事業主体における市街地復興効果促進事業の適正な執行を確保するために必要であることによるものである。そして、交付要綱等において、国土交通省は、市街地復興効果促進事業の適正な執行を確保するために必要があるときは、使途内訳提出書等に記載された上記の各事項に対して修正を加えることができることになっている。

また、事業主体に造成された基金については、東日本大震災復興交付金基金管理運営要領(平成24年府復第4号等)によれば、事業主体は、復興交付金事業等の実施に要する経費に充てる場合を除き、これを取り崩してはならないとされている。

同市は、平成24年度から28年度までの間に、緊急避難路を整備するなどの細要素事業16事業を実施するとして、使途内訳提出書に細要素事業ごとの事業費(計613,515,000円)、交付額(計490,810,000円)等を記載し、これを提出していた。そして、同市は、岩手県に提出している28年度の年度終了実績報告書において、上記使途内訳提出書のとおり16事業を実施し、上記の交付額を基金から取り崩したとしていた。

しかし、同市は、上記16事業の実施に当たり、使途内訳提出書に測量設計費、用地費及び補償費のみを計上していたのに本工事に着手したり、変更契約を行って契約金額を増額したりなどしたため、上記の事業費を944,262,731円上回る計1,557,777,731円の事業を実施していた。そして、同市は、この事業費の支払に充てるために上記の交付額を609,268,000円超える計1,100,078,000円を26年度から28年度までの3か年度にわたり基金から取り崩していた。

したがって、前記の16事業について、使途内訳提出書に記載されていない本工事等に要した事業費は、復興交付金事業等に要する経費として認められず交付金の交付対象とならないことから、同提出書に記載された交付額を超えて基金から取り崩して使用していた交付金計609,268,000円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同市において市街地復興効果促進事業の適切な実施及び基金の適切な運営に対する認識が著しく欠けていたこと、同県において年度終了実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

(「震災復興特別交付税の額の算定に当たり、算定の対象とならない経費を含めるなどしていたため、震災復興特別交付税が過大に交付されていたもの」参照)