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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本中央競馬会|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

土地、建物等の貸付けに当たり、貸付資産の使用実態を反映することにより、適切な貸付料の算定を行うよう改善させたもの


科目
一般勘定 (項)事業外収入
部局等
日本中央競馬会本部、競走馬総合研究所
貸付けの概要
土地、建物等を公益法人等に貸し付けるもの
貸付料
1億7238万余円(平成23事業年度~28事業年度)
貸付資産の使用実態を反映した場合の貸付料
1億9731万余円(平成23事業年度~28事業年度)
更に徴収することができた貸付料
2493万円(平成23事業年度~28事業年度)

1 貸付資産の概要等

日本中央競馬会(以下「競馬会」という。)は、日本中央競馬会法(昭和29年法律第205号)等に基づき、中央競馬の開催等の業務を行っており、業務に必要であるとして取得した土地、建物等の資産を所有している。そして、競馬会は、日本中央競馬会不動産貸付基準(昭和50年理事長達第9号。以下「不動産貸付基準」という。)等に基づき、公共性又は公益性のある団体等(以下「公益法人等」という。)に対して、これら資産の一部を賃貸借契約により有償で又は使用貸借契約により無償で貸し付けている。

不動産貸付基準等によれば、土地、建物等の貸付料の年額は、当該土地、建物等に係る固定資産課税台帳登録価格等に貸付料率を乗ずるなどして得た額とするが、公益法人等が公共又は公益の目的のために使用するなどの場合であって理事長が適当と認めたときなどには無償とするとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、競馬会が貸し付けている土地、建物等の資産(以下「貸付資産」という。)に係る貸付料の算定は貸付資産の使用実態を反映した適切なものとなっているかなどに着眼して、競馬会本部、3競馬場及び2本部附属機関(注1)において、平成23事業年度から28事業年度までの間に9公益法人等(注2)との間で締結している賃貸借契約(24件、貸付料計2億0275万余円)及び7公益法人等(注3)との間で締結している使用貸借契約(20件)を対象として、契約書、貸付資産の図面等の関係書類を確認するとともに、現地に赴き契約の相手方の使用実態等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注1)
3競馬場及び2本部附属機関  函館、新潟、東京各競馬場、競走馬総合研究所、美浦トレーニング・センター
(注2)
9公益法人等  一般社団法人函館馬主協会、一般社団法人東京馬主協会、一般社団法人日本調教師会、一般社団法人新潟馬主協会、公益財団法人競走馬理化学研究所、公益財団法人競馬保安協会、公益社団法人日本軽種馬協会、公益社団法人競走馬育成協会、一般財団法人競馬共助会
(注3)
7公益法人等  一般社団法人函館馬主協会、一般社団法人東京馬主協会、一般社団法人日本調教師会、一般社団法人新潟馬主協会、公益財団法人競走馬理化学研究所、公益財団法人競馬保安協会、一般財団法人競馬共助会

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

競馬会の本部附属機関である競走馬総合研究所(以下「総合研究所」という。)が27年12月まで庁舎として使用するなどしていた栃木県宇都宮市に所在する土地、建物等は、総合研究所の移転等に伴い29年1月22日までは総合研究所が、それ以降は競馬会の本部附属機関である馬事公苑が管理してきた。

そして、総合研究所又は馬事公苑は、12年4月以降、それぞれが管理する土地や建物等の一部(土地9,784.00m2、建物床面積4,976.48m2等)を公益財団法人競走馬理化学研究所(23年5月31日以前は財団法人競走馬理化学研究所。以下「競理研」という。)に賃貸借契約及び使用貸借契約を締結して貸し付けている。

総合研究所は、貸付けを開始した12年4月当時の競理研における建物の使用内容に応じて、建物については、家畜及び農畜産物等に係る理化学的な研究等の研究業務で使用する部分(床面積3,250.77m2)は公益目的に相当するとして使用貸借契約により無償で貸し付けることとし、これ以外の業務である競走馬の薬物検査等に係る検査業務で使用する部分(床面積1,725.71m2)は賃貸借契約により有償で貸し付けることとしていた。そして、総合研究所は、土地、建物等の貸付資産の貸付料について、貸し付けた建物の総床面積に対する有償で貸し付けるとした部分の床面積の比率をそれぞれの資産の固定資産課税台帳登録価格等に乗ずるなどして算定しており、23事業年度から28事業年度までの間に、競理研から計1億7238万余円の貸付料を徴収していた。

しかし、貸し付けた建物の実際の使用状況等を確認したところ、競理研では、近年、競走馬の薬物検査の種類及び件数が増加してきていることなどから、従来研究業務で使用していた部分の一部を検査業務で使用してきており、検査業務で使用する部分の床面積は貸付けを開始した12年4月当時に比べて、21年12月に23.29m2、24年9月には更に297.74m2増加するなどしていたが、総合研究所は、貸付料を見直していなかった。

このように、総合研究所において、貸付資産の使用実態が変更されていたのに貸付料を見直していなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(更に徴収することができた貸付料)

23事業年度から28事業年度までの賃貸借契約について、貸付資産の使用実態により貸付料を算定すると計1億9731万余円となり、徴収した貸付料計1億7238万余円との差額2493万余円が更に徴収できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、競馬会において、貸付資産の使用実態を貸付先の公益法人等から報告を受けるなどして把握した上でこれを反映して貸付料の算定を行うこととしていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、競馬会は、29年9月に、競馬会の競馬場、本部附属機関等に対して通知を発して、貸付先の公益法人等において貸付資産の使用実態を変更する場合には、競馬会に契約変更をするための協議を申し入れることなどを賃貸借契約書及び使用貸借契約書に規定することなどにより、貸付資産の使用実態を把握した上でこれを反映して適切な貸付料の算定を行うこととする処置を講じた。また、馬事公苑は、同通知を受け、同月に賃貸借契約及び使用貸借契約を変更して、貸付資産の使用実態を反映した貸付料を徴収する処置を講じた。