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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
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  • 平成29年3月|

日本放送協会における関連団体の事業運営の状況に関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

1 関連団体との取引の状況

(1) 19年報告の検査の結果に対する所見に係る検査結果の概要

関連団体との取引については、19年報告の検査の結果に対する所見において協会が努める必要があるとして記述した事項があり、今回、その事項を含めて取引の状況について幅広く検査を実施した。

このうち、19年報告における所見に係る今回の検査結果等の概要を示すと、次のとおりである。

19年報告における所見 19年報告における所見に対する協会の措置状況 19年報告における所見に係る今回の検査結果
(ア) 取引の大半が随意契約による業務委託であることから、契約の競争性の確保を図る観点からも、一般調達への移行を含めた関連団体との業務委託の在り方を検討すること
競争性を高めるための各種要領(制限付一般競争入札実施要領、指名競争入札実施要領)等を制定した。
関連団体との取引の大半が依然として随意契約となっていた。業務を切り出すなどして競争性のある契約への移行が可能なものが見受けられた。
(2か所参照 リンク11020_2_1_2_1 21020_2_1_2_2
(イ) 委託業務従事者に指定された出向者の委託人件費相当額については、職員給与等を業務委託費として支払っているものであることから、当面、関連団体と随意契約による業務委託を継続せざるを得ない場合であっても、例えば委託業務従事者に占める出向者の割合を減少させるなどして、委託費を削減すること
委託業務従事者に占める出向者の割合を減少させる方法で委託費を削減はしていないが、出向者から転籍者への変更や事業の廃止等による見直しを行っている。
委託費の削減を目的として委託業務従事者に占める出向者の割合を減少させている契約はなく、出向者のみを委託業務従事者としている契約が見受けられた。
1020_2_1_4_1リンク参照
(ウ) 業務委託額の妥当性の検証は、支払証拠書類等により実際に関連団体が支払った金額の確認を行うまでには至っていないことから、契約額の妥当性、透明性の確保に留意し、実績原価を確認する機会を増やすなど、関連団体の協会からの業務委託額の検証をより積極的に行うこと
平成19年度以降、一部の契約を対象として実績原価調査を実施して業務委託額の妥当性の検証を行っている。
業務委託額の妥当性を検証するために、19年度から一部の契約を対象として実績原価調査を毎年度行っているが、同調査の結果、売上総利益率が高くなっていることを把握した契約について、業務委託費の積算等の見直しを行っていなかった。
1020_2_1_4_3リンク参照
(エ) 二次使用料率は、実際に妥当なものとなっているかの判断が困難であることから、料率の設定に当たっては、今後も算定基準をより合理的なものとしていくこと
二次使用料率について、1団体の1件について見直しを行った。
1団体の1件について20年度に二次使用料率を適用しない算定方式に変更しているが、二次使用料率自体を見直したものではなかった。このほかについては、見直しを行っていなかった。
1020_2_1_5リンク参照
(オ) 関係規程類の適用範囲が明確となっていないものなどが見受けられることから、関係規程の体系的な整理を推進すること
20年4月に経理規程実施細則及び業務委託事務処理手順において、関連団体以外の委託先との随意契約手続を定めるなど関係規程類の改定を行った。
関係規程類の一部について、28年7月現在においても適用範囲が明確なものとなるよう改定していなかった(28年度中に手続を明文化する見込み)。
1020_2_1_6リンク参照

(2) 協会における契約の状況

ア 関連団体との契約の状況

協会は、経理規程等において、契約相手方の選定は競争によることを原則とすることとしており、競争入札及び企画競争等を競争性のある契約であるとしている。そして、20年2月の総務省からの「特殊法人における随意契約の適正化の推進について」の協力要請も踏まえ、協会は、18年度以降の一般競争入札、随意契約等の実績を基に20年に「随意契約見直し計画」を策定して、締結した随意契約について点検・見直しを行い、可能なものから順次一般競争へ移行することとした。そこで、協会が27年度と同じ金額基準で契約方式別の集計を開始した19年度と直近3か年度(25年度から27年度までの間)の契約の状況をみると、図表1-1のとおり、関連団体以外の者との契約における競争入札は、19年度は件数で157件(関連団体以外の者との契約件数に占める割合1.7%)となっていたのに対して、27年度は2,447件(同24.0%)となっており、競争入札への移行が進んでいる。関連団体との契約における競争入札は、19年度は4件(関連団体との契約件数に占める割合0.2%)となっているのに対して、27年度は49件(同2.2%)となっており、増加しているものの、関連団体以外の者との契約に比べて、競争入札への移行が進んでいない状況となっている。そして、関連団体との契約における企画競争等は、19年度247件(関連団体との契約件数に占める割合15.7%)から27年度では315件(同14.4%)となっており件数は増加している一方、件数の割合が減少している。また、関連団体との契約に占める競争性のない随意契約の割合は、19年度の件数で83.9%、金額で92.1%から25年度は減少し、件数で77.0%、金額で88.7%となっているが、26年度以降毎年度増加していて、27年度は件数で83.2%、金額で92.7%となっている。

これについて、協会は、協会の業務を補完・支援して効率的に業務を進める目的で関連団体を設立しており、単純に競争性のある契約方式に移行するのは難しい業務も多いが、企画競争等も含めた競争性のある契約方式への移行を可能な限り進めているとしている。しかし、27年度の随意契約の中にも、関連団体に委託している建物管理業務のうち清掃業務や警備業務を切り出すなどして競争性のある契約への移行が可能なものが見受けられることから、上記の状況も踏まえて、今後とも業務内容の勘案・検証を行った上で、競争性のある契約への移行をより積極的に進めていく必要があると認められる。

図表1-1 協会における契約の状況

(単位:件、千円、%)
区分 平成19年度 25年度 26年度 27年度
件数   金額   件数   金額   件数   金額   件数   金額  
  割合   割合   割合   割合   割合   割合   割合   割合
関連団体 1,565 100.0 121,214,519 100.0 2,466 100.0 165,762,785 100.0 2,294 100.0 169,697,682 100.0 2,174 100.0 173,479,938 100.0
  競争入札 4 0.2 127,487 0.1 42 1.7 2,247,045 1.3 51 2.2 1,741,367 1.0 49 2.2 1,607,722 0.9
企画競争等 247 15.7 9,365,892 7.7 524 21.2 16,412,764 9.9 418 18.2 10,984,497 6.4 315 14.4 10,994,203 6.3
随意契約 1,314 83.9 111,721,140 92.1 1,900 77.0 147,102,975 88.7 1,825 79.5 156,971,818 92.5 1,810 83.2 160,878,012 92.7
  随意契約
(番組制作業務委託)
110 7.0 75,437,055 62.2 171 6.9 104,129,000 62.8 158 6.8 112,205,194 66.1 178 8.1 116,151,735 66.9
随意契約
(番組制作業務委託以外)
1,204 76.9 36,284,085 29.9 1,729 70.1 42,973,975 25.9 1,667 72.6 44,766,624 26.3 1,632 75.0 44,726,277 25.7
関連団体以外の者 8,774 100.0 169,270,407 100.0 9,068 100.0 203,106,291 100.0 9,711 100.0 207,003,319 100.0 10,189 100.0 213,980,726 100.0
  競争入札 157 1.7 8,707,175 5.1 959 10.5 46,816,986 23.0 2,036 20.9 52,017,013 25.1 2,447 24.0 54,059,017 25.2
企画競争等 2,902 33.0 97,107,164 57.3 2,838 31.2 102,220,155 50.3 2,813 28.9 103,104,497 49.8 2,505 24.5 105,358,840 49.2
随意契約
(番組制作業務委託以外)
5,715 65.1 63,456,068 37.4 5,271 58.1 54,069,150 26.6 4,862 50.0 51,881,807 25.0 5,237 51.3 54,562,868 25.4
10,339 100.0 290,484,926 100.0 11,534 100.0 368,869,077 100.0 12,005 100.0 376,701,001 100.0 12,363 100.0 387,460,664 100.0
  競争入札 161 1.5 8,834,662 3.0 1,001 8.6 49,064,032 13.3 2,087 17.3 53,758,380 14.2 2,496 20.1 55,666,740 14.3
企画競争等 3,149 30.4 106,473,056 36.6 3,362 29.1 118,632,919 32.1 3,231 26.9 114,088,994 30.2 2,820 22.8 116,353,044 30.0
随意契約 7,029 67.9 175,177,208 60.3 7,171 62.1 201,172,126 54.5 6,687 55.7 208,853,625 55.4 7,047 57.0 215,440,880 55.6
  随意契約
(番組制作業務委託)
110 1.0 75,437,055 25.9 171 1.4 104,129,000 28.2 158 1.3 112,205,194 29.7 178 1.4 116,151,735 29.9
随意契約
(番組制作業務委託以外)
6,919 66.9 99,740,153 34.3 7,000 60.6 97,043,126 26.3 6,529 54.3 96,648,431 25.6 6,869 55.5 99,289,145 25.6
イ 番組制作業務委託に係る契約の状況

前記の関連団体との契約のうち、契約金額の割合で6割以上を占めている番組制作業務委託についてみると、公共放送にふさわしい番組としての品質管理が求められるなどのため、協会では競争入札等にはなじまないとして、従来、番組制作業務委託は全て関連団体との随意契約によるものとなっていた。

前記の総務省からの協力要請も踏まえ、協会は、可能なものから順次一般競争へ移行することとしたが、番組制作業務委託については、番組1本ごとに内容や制作手法が全て異なるという特性があることから競争になじまないため、企画提案の内容によって採否を決定する企画競争を行うこととした。そして、企画競争による番組制作業務委託については、企画競争により制作する番組の編成時間が業務委託により制作する番組の総編成時間に占める比率を25%から30%程度に高めていくことを目標として、「随意契約見直し計画」の集計から除外し、20年度から25年度までの各年度に公表した「随意契約見直し計画のフォローアップ」においても集計から除外している。なお、上記の編成時間に占める比率は、28年7月においては目標値となっていない。

25年度から27年度までの間の番組制作業務委託に係る企画競争の件数及び契約金額をみると、図表1-2のとおり、3か年度の件数は計108件、金額は計38億余円となっていて、番組制作業務委託全体に対する割合は件数で17.5%、金額で1.1%となっている。

図表1-2 番組制作業務委託に係る企画競争等の状況

(単位:件、千円、%)
区分 平成25年度 26年度 27年度
件数   金額   件数   金額   件数   金額   件数   金額  
  割合   割合   割合   割合   割合   割合   割合   割合
企画競争による番組制作業務委託 39 18.5 1,509,361 1.4 33 17.2 1,386,518 1.2 36 16.8 922,184 0.7 108 17.5 3,818,063 1.1
随意契約による番組制作業務委託 171 81.4 104,129,000 98.5 158 82.7 112,205,194 98.7 178 83.1 116,151,735 99.2 507 82.4 332,485,929 98.8
210 100.0 105,638,361 100.0 191 100.0 113,591,712 100.0 214 100.0 117,073,919 100.0 615 100.0 336,303,992 100.0

そして、25年度から27年度までの間に契約に至った企画競争への応募件数をみると、募集テーマ41件に対して2,837件の応募があり、1募集テーマ当たりの平均で69.1件となっている。一方、企画競争により制作した番組の編成時間が総編成時間に占める比率は27年度で1.5%程度にとどまっている。これについて、協会は、公共放送としてふさわしい社会的な意義、事実性の担保、取材上の危機管理等の要件を満たし、協会の編集基準に沿った番組制作を担保できる質の高い企画の提案は極めて限られているなどのためとしている。

放送法において放送番組編集の自由が規定されていることから、企画提案の採択の最終的な判断は番組編集権限により決定するものであるが、企画競争を推進するための取組を更に進めていくことが重要である。

(3) 関連団体の役職員の状況

27年度末における関連団体26団体の役職員数は、図表1-3のとおり、計6,531人となっている。そして、関連団体の職員に占める協会からの出向者・転籍者(注2)の割合は、子会社において3.6%から65.3%、関連会社において8.0%から32.3%、関連公益法人等において2.2%から89.8%となっている。また、関連団体の常勤役員に占める協会の出身者の割合は、子会社において57.1%から100%、関連会社において25%から50%、関連公益法人等において60%から100%となっており、この割合が100%となっている関連団体は、子会社において9社、関連公益法人等において7団体、計16団体となっている。

(注2)
出向者・転籍者  協会に身分を保有したまま協会を休職し、関連団体等において業務に従事する者を出向者、定年満了を繰り上げて協会を退職し、引き続き関連団体等に再就職する者を転籍者という。

関連団体における職員の構成をみると、27年度末は職員計6,402人のうち協会からの出向者・転籍者は計1,976人、30.8%となっており、17年度末の30.7%と比較して構成比はほとんど変わっていない状況となっている。

また、関連団体における常勤役員の構成をみると、27年度末は常勤役員計129人のうち協会の出身者は計105人、81.3%を占めており、17年度末の86.9%から僅かに減少している。このほか、関連団体は、協会や他の関連団体の職員を非常勤役員として受け入れており、27年度末で106人となっている。

なお、社長又は理事長は17年度末と同様、全て協会の出身者となっている。

図表1-3 平成17年度末及び27年度末の関連団体における役職員数

(単位:人)
関連団体名
役職員数
 
常勤役員数
協会の出身者の占める割合
職員数
協会からの出向者・転籍者の占める割合
  うち
協会の出身者数
 
うち協会からの出向者・転籍者数
  出向者 転籍者
平成
17年度
27年度 17年度 27年度 17年度 27年度 17年度 27年度 17年度 27年度 17年度 27年度 17年度 27年度 17年度 27年度 17年度 27年度
子会社 (株)NHKエンタープライズ 381 520 12 13 10 9 83.3% 69.2% 369 507 182 232 83 116 99 116 49.3% 45.7%
  (株)総合ビジョン 17 4 3 75.0% 13 1 1 7.6%
(株)NHKエデュケーショナル 144 269 6 6 6 6 100.0% 100.0% 138 263 93 172 57 126 36 46 67.3% 65.3%
(株)NHKグローバルメディアサービス 392 7 7 100.0% 385 215 90 125 55.8%
  (株)NHK情報ネットワーク 264 8 8 100.0% 256 139 48 91 54.2%
(株)日本文字放送 41 4 4 100.0% 37 16 16 43.2%
(株)日本国際放送 68 3 3 100.0% 65 21 10 11 32.3%
(株)NHKプラネット 204 3 3 100.0% 201 80 46 34 39.8%
  (株)NHKきんきメディアプラン 45 5 5 100.0% 40 20 10 10 50.0%
(株)NHK中部ブレーンズ 45 2 2 100.0% 43 10 6 4 23.2%
(株)NHKちゅうごくソフトプラン 18 1 1 100.0% 17 6 4 2 35.2%
(株)NHK九州メディス 28 1 1 100.0% 27 7 4 3 25.9%
(株)NHK東北プランニング 25 1 1 100.0% 24 8 3 5 33.3%
(株)NHK北海道ビジョン 22 1 1 100.0% 21 8 6 2 38.0%
(株)NHKプロモーション 49 54 5 5 5 5 100.0% 100.0% 44 49 11 13 8 9 3 4 25.0% 26.5%
(株)NHKアート 267 255 6 6 5 4 83.3% 66.6% 261 249 8 9 1 8 8 3.0% 3.6%
(株)NHKメディアテクノロジー 1,180 8 8 100.0% 1,172 458 171 287 39.0%
  (株)NHKテクニカルサービス 703 9 9 100.0% 694 316 129 187 45.5%
(株)NHKコンピューターサービス 218 5 5 100.0% 213 38 14 24 17.8%
(株)NHK出版 245 7 4 57.1% 238 21 3 18 8.8%
  (株)日本放送出版協会 299 11 7 63.6% 288 21 1 20 7.2%
(株)NHKビジネスクリエイト 493 6 6 100.0% 487 104 33 71 21.3%
  (株)NHK共同ビジネス 262 7 7 100.0% 255 52 8 44 20.3%
(株)NHKオフィス企画 128 4 4 100.0% 124 36 22 14 29.0%
(株)NHKアイテック 785 825 9 9 7 7 77.7% 77.7% 776 816 206 160 34 24 172 136 26.5% 19.6%
(株)NHK文化センター 206 166 6 4 6 4 100.0% 100.0% 200 162 64 25 2 1 62 24 32.0% 15.4%
NHK営業サービス(株) 561 804 6 5 6 5 100.0% 100.0% 555 799 117 160 35 12 82 148 21.0% 20.0%
関連会社 (株)放送衛星システム 66 76 5 5 2 2 40.0% 40.0% 61 71 30 23 17 10 13 13 49.1% 32.3%
NHK Cosmomedia America, Inc. 15 38 1 4 1 2 100.0% 50.0% 14 34 4 4 4 4 28.5% 11.7%
NHK Cosmomedia(Europe)Ltd. 12 29 1 4 1 2 100.0% 50.0% 11 25 3 2 3 2 27.2% 8.0%
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ 20 4 1 25.0% 16 3 3 18.7%
(株)NHK名古屋ビルシステムズ 9 2 1 50.0% 7 3 1 2 42.8%
関連公益法人等 (一財)NHKサービスセンター 276 237 6 5 4 3 66.6% 60.0% 270 232 109 100 21 17 88 83 40.3% 43.1%
(一財)NHKインターナショナル 32 44 3 3 3 3 100.0% 100.0% 29 41 17 14 7 5 10 9 58.6% 34.1%
(一財)NHKエンジニアリングシステム 47 75 4 3 4 3 100.0% 100.0% 43 72 27 46 11 18 16 28 62.7% 63.8%
(一財)NHK放送研修センター 74 73 4 4 4 4 100.0% 100.0% 70 69 62 62 23 28 39 34 88.5% 89.8%
(学)日本放送協会学園 139 117 5 4 3 3 60.0% 75.0% 134 113 11 6 2 1 9 5 8.2% 5.3%
(公財)NHK交響楽団 125 135 4 2 4 2 100.0% 100.0% 121 133 3 3 3 3 2.4% 2.2%
(福)NHK厚生文化事業団 18 16 3 2 3 2 100.0% 100.0% 15 14 7 7 1 2 6 5 46.6% 50.0%
日本放送協会健康保険組合 78 63 2 2 2 2 100.0% 100.0% 76 61 19 14 19 9 5 25.0% 22.9%
(一財)日本放送協会共済会 197 133 8 5 5 5 62.5% 100.0% 189 128 18 22 5 3 13 19 9.5% 17.1%
5,596 6,531 161 129 140 105 86.9% 81.3% 5,435 6,402 1,672 1,976 591 744 1,081 1,232 30.7% 30.8%
(注)
関連団体の区分は平成27年度末に存続する団体の区分で整理している。

このように、関連団体は、17年度以降、職員について協会から出向者・転籍者を一貫して受け入れ、役員についても協会の出身者を17年度以降一貫して受け入れている。

昭和55年度から平成27年度までの間の関連団体及び協会の職員数の推移をみると、この間に協会の業務は、衛星放送の開始、放送の24時間化、国際放送の充実等により拡大しているが、図表1-4及び図表1-5のとおり、27年度末における関連団体の職員数は6,402人、協会の職員数は10,074人となっていて、昭和55年度末と比べて、協会において職員数は6,669人減少(平成17年度末と比べて1,590人減少)している一方、関連団体において職員数は4,755人増加(同967人増加)し、関連団体及び協会の職員数の合計は、漸減している状況となっている。

図表1-4 関連団体及び協会の年度末職員数の推移

図表1-4 関連団体及び協会の年度末職員数の推移 画像

図表1-5 関連団体及び協会の年度末職員数の推移

(単位:人)
区分
昭和
55年度
60年度
平成
2年度
7年度 12年度 17年度 22年度 27年度 17年度からの増減 55年度からの増減
(a)         (b)   (c) (c)-(b) (c)-(a)
関連団体及び協会の職員 18,390 18,233 17,817 17,587 17,088 17,099 16,630 16,476 △623 △1,914
  関連団体の職員 1,647 2,357 3,516 4,669 4,896 5,435 6,236 6,402 967 4,755
  協会からの出向者・転籍者 281 752 1,487 1,932 1,865 1,672 2,083 1,976 304 1,695
  協会からの出向者 51 232 675 1,005 622 591 790 744 153 693
協会からの転籍者 230 520 812 927 1,243 1,081 1,293 1,232 151 1,002
プロパー職員 1,366 1,605 2,029 2,737 3,031 3,763 4,153 4,426 663 3,060
協会の職員 16,743 15,876 14,301 12,918 12,192 11,664 10,394 10,074 △1,590 △6,669
(注)
平成13年度以前は、関連会社及び福利厚生団体2団体等を除く数値である。

(4) 関連団体への業務委託等の状況

協会は、関連団体への委託も含めた業務委託費の積算に当たっては、前記のとおり、原則として市場価格を基準として計算する市場価格方式によることとするが、これによることが適当でないものについては委託する業務の実施に要する費用を積み上げて計算する原価計算方式によることとしており、計算に当たっては、標準的な体制で委託する業務を実施した場合に要する費用を算出することとしている。原価計算方式における標準的な関連団体への業務委託費の積算は、人件費と物件費から成る業務委託原価、管理費、原則として管理費の算定対象とならない派遣旅費等の実費(業務実施後に確定する実費弁償的なもの)並びに消費税及び地方消費税に相当する額から構成される。

ア 業務委託費のうち人件費の積算

番組制作以外の業務委託の人件費の積算においては、主に協会が業務委託ごとに策定する業務委託基本計画の中で、大きくは出向者、転籍者、関連団体の社員等に区分してそれぞれ要員数が計上され、それらを基に人件費が算定される。

出向者に係る人件費は、出向者ごとに当該出向者の前年度の給与支給実績額、社会保険料事業主負担額等の合計額を基に年間給与概算額を算出し、これを12で除して月額にしたものに従事月数を乗ずるなどして積算しており、毎年度末に精算することとしている。出向者に対する具体的な給与、賞与、諸手当等の支給方法をみると、協会が出向者の給与を立て替えて出向者本人に直接支給し、社会保険料事業主負担分も協会が立て替えており、協会は毎月その経費を関連団体に請求し、当該関連団体は請求額を協会に支払っている。そして、出向者の支給水準等は、当該出向者の協会在籍時と同等の水準となっており、最終的には出向者の給与等に管理費を加えた額が協会から関連団体に支払われることとなっている。

転籍者に係る人件費は、当該転籍者の協会退職時の役職区分に応じて協会が退職時の給与水準より低く設定して関連団体に通知している所定の年間給与水準を基準とし、これを12で除すなどして算出した月額の給与相当額に従事月数を乗じた額に、福利厚生費相当額を加えて積算している。関連団体の社員等の人件費は、委託する業務内容及び委託先における雇用形態に応じて、積算参考資料等の客観的資料等を基に算出した給与月額に従事月数を乗ずるなどして積算している。なお、転籍者及び関連団体の社員等に係る人件費については、出向者と違い、積算に給与相当額を使用していることから、実費精算は行わないこととなっている。

業務委託費における人件費について、会計検査院は、19年報告の所見において、「委託業務従事者に指定された出向者の委託人件費相当額については、職員給与等を業務委託費として支払っているものであることから、当面、関連団体と随意契約による業務委託を継続せざるを得ない場合であっても、例えば委託業務従事者に占める出向者の割合を減少させるなどして、委託費を削減すること」に努める必要があると記述している。そこで、業務委託のうち、関連団体との契約金額3000万円を超える随意契約における出向者の削減状況をみると、業務委託基本計画等において前年度の実績値と比較可能な契約は25年度で70件、26年度で93件、27年度で17件の計180件あり、このうち25年度で3件、26年度で4件、27年度で3件、計10件については減少していたが、このうち6件は出向者がそのまま転籍者となるなど要員区分を見直したことによる減少であり、残り4件は当該委託業務において、事業の一部廃止に伴い業務を縮小したことによる減少であり、委託費の削減を目的として出向者の割合を減少させているものはなかった。

また、関連団体との契約金額3000万円を超える随意契約について、委託業務に従事する要員の構成をみたところ、業務委託基本計画等において業務委託費の削減につながらない出向者のみを要員としているものが、25年度で293件中4件、26年度で344件中2件、27年度で284件中3件、計9件見受けられた。これらの契約については、出向者の給与等の水準が協会職員と同水準となっていて、委託業務従事者に指定された出向者の人件費相当額については、当該出向者の給与等を業務委託費として支払っているに等しい仕組みとなっていることを踏まえると、業務委託の目的である協会の経費節減には結び付いていないと思料されることから、関連団体に業務委託する必要性を適切に検討する必要があると認められる。関連団体への業務委託において、業務に従事する要員が協会からの出向者のみとなっていたものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 関連団体への業務委託において、業務に従事する要員が協会からの出向者のみとなっていたもの

協会は平成26年度に、スポーツ中継番組の実施等に関する業務を株式会社NHKグローバルメディアサービスに1億5846万余円で委託している。これは26年度中に協会が放送するスポーツ中継番組の実況及びこれに付随する取材等の業務を実施するもので、契約期間は26年4月から27年3月までとなっている。

この業務委託について、受託経費見積書、仕様書、業務委託基本計画等により契約内容を確認したところ、業務委託費の算定の基礎となる要員数を26年4月から6月までが8人、同年7月から27年3月までが9人とし、これに基づいて人件費1億3713万円、管理費959万余円、消費税等相当額1173万余円、計1億5846万余円と算定しているが、この要員は全て協会からの出向者であり、転籍者や同会社の社員は含まれていなかった。

一方、番組制作業務委託費の積算については、前記のとおり、業務委託事務処理手順において、同事務処理手順を適用せずに別に定めるところによるとしている。そして、別に定めた「平成27年度 業務委託契約手続きについて(放送関係)」において、委託額については、番組ごとに個別見積書を委託先から受領した上でその妥当性を検証するとともに、要員費単価については「スキルランク別要員単価基準(制作要員)(技術要員)」を適用することとなっている。このため、番組制作業務委託の人件費の積算においては、出向者や転籍者が実際に従事するか否かにかかわらず、あらかじめ計上した要員数や、協会が定めた単価に基づき積算を行うことから、出向者や転籍者が従事していたとしても実費精算は行うこととなっていない。

イ 関連団体における取引の区分経理及び営業利益率等の状況
(ア) 協会が把握する関連団体との取引の区分経理

協会は、20年度決算から関連団体との取引の透明性の向上を図るために、協会との取引がほとんどを占めるなどしている一部の関連団体を除き、自主的な取組として関連団体に対し、協会との取引と協会以外との取引を区分経理させることとし、報告の作成及び提出を求め、それぞれの取引に係る売上高、営業利益、売上原価、販売費及び一般管理費(以下「販管費」という。)等を把握している。この区分経理に関して、23年5月24日に開催された第1144回経営委員会の議事録によれば、協会との取引における売上高に占める営業利益の割合(以下「営業利益率」という。)については、子会社の平均で3%程度に抑制することを目標にするとされていた。

区分経理に当たって、協会は、「NHK取引とその他の取引の区分経理に関する基本方針(平成21年2月)」(以下「基本方針」という。)により、売上高、売上原価及び販管費の区分についての方針を定めている。また、区分経理の報告については作成要領を定めており、売上高及び売上原価は実際の協会との取引額と協会以外との取引額に区分したものを報告させている。販管費のうち直接計上できない人件費は、作成要領に従って業務従事割合で区分する方法、原価に算入された人件費の割合で区分する方法のいずれかを関連団体が選択して算定したものを報告させている。

そして、協会は、運営基準に基づいて行われる業務運営状況調査の一環として21年度以降毎年度、関連団体の作成する区分経理の報告が基本方針等に沿って作成されているかについて監査法人に委託して調査を行っている。業務運営状況調査は、区分経理に関する調査、運営基準の遵守に関する調査及び関連団体との取引における実績原価のサンプリング調査である実績原価調査の3項目について、協会が委託した監査法人が直接その関連団体に赴いて調査するもので、協会にその結果を報告することとなっており、この委託に係る27年度の支払額は2376万円となっている。そして、調査の結果によると、区分経理の報告については、24年度までは計算誤りなどに対する指導を行うなどしていたが、25年度以降はおおむね基本方針等に沿って作成していたとされている。

(イ) 関連団体の営業利益率等の状況

協会は、前記のとおり、関連団体との取引について、透明性の向上等を目的として関連団体に対して区分経理を行わせることとしており、27年度末における全ての子会社13社、連結決算の対象としている関連会社の株式会社放送衛星システム及び協会と一定の取引が存在する関連公益法人等4団体をその対象としている。そして、関連公益法人等については損益計算書を作成せず、収支計算書を作成していることから、子会社と異なり経常収益等の区分経理を行わせている。そこで、関連団体における協会と協会以外との取引に係る営業利益率等の違いを把握することなどのために、区分経理を行わせている関連団体を子会社等と関連公益法人等とに分けて、その営業利益率等の状況をみると次のとおりとなっている。

a 子会社等の営業利益率等の状況

協会が区分経理を行わせている子会社等14社における27年度の売上高、営業利益及び営業利益率をみると、図表1-6のとおりとなっている。このうち売上高が544億余円の株式会社NHKエンタープライズを始めとして、売上高が比較的大きくなっている株式会社NHKエデュケーショナル、株式会社NHKグローバルメディアサービス及び株式会社NHKプラネットの番組制作を主な業務としている子会社4社(以下「番組制作系子会社」という。)の売上高に占める協会との取引額の割合をみると、おおむね70%を超えている一方、株式会社NHK出版や株式会社NHK文化センターは主に個人を対象とした業務を行っていることから協会との取引が1%未満となっていて、子会社等の業務内容等によって協会との取引額の割合に大きな差がある状況となっている。

27年度の子会社等の営業利益をみると、株式会社日本国際放送、株式会社NHKプラネット及びNHK営業サービス株式会社の3社は、協会以外との取引において営業損失を計上しているが、協会との取引による営業利益がその分を上回っており、全体で営業利益を計上している状況となっている。

図表1-6 平成27年度の子会社等における売上高、営業利益及び営業利益率

(単位:千円、%)
会社名 売上高 営業利益 営業利益率
  協会との取引に係るもの 協会以外との取引に係るもの   協会との取引に係るもの 協会以外との取引に係るもの   協会との取引に係るもの 協会以外との取引に係るもの
  割合   割合   割合   割合
a b b/a c c/a d e e/d f f/d d/a e/b f/c
(株)NHKエンタープライズ 54,431,758 41,637,803 76.4 12,793,955 23.5 566,914 555,191 97.9 11,724 2.0 1.0 1.3 0.0
(株)NHKエデュケーショナル 23,571,980 18,623,563 79.0 4,948,417 20.9 900,368 865,062 96.0 35,306 3.9 3.8 4.6 0.7
(株)NHKグローバルメディアサービス 22,322,645 19,244,182 86.2 3,078,463 13.7 1,786,756 1,645,817 92.1 140,939 7.8 8.0 8.5 4.5
(株)日本国際放送 7,957,357 6,084,495 76.4 1,872,862 23.5 501,109 583,058 116.3 △81,949 △16.3 6.2 9.5 △4.3
(株)NHKプラネット 7,810,761 5,383,588 68.9 2,427,173 31.0 194,715 253,980 130.4 △59,265 △30.4 2.4 4.7 △2.4
(株)NHKプロモーション 8,285,355 956,315 11.5 7,329,040 88.4 76,911 △14,651 △19.0 91,562 119.0 0.9 △1.5 1.2
(株)NHKアート 16,040,284 10,128,147 63.1 5,912,137 36.8 933,600 552,712 59.2 380,888 40.7 5.8 5.4 6.4
(株)NHKメディアテクノロジー 31,725,651 23,891,124 75.3 7,834,527 24.6 972,491 309,067 31.7 663,424 68.2 3.0 1.2 8.4
(株)NHK出版 14,365,964 62,096 0.4 14,303,868 99.5 290,076 10,315 3.5 279,761 96.4 2.0 16.6 1.9
(株)NHKビジネスクリエイト 9,733,751 5,187,743 53.2 4,546,008 46.7 903,378 52,284 5.7 851,094 94.2 9.2 1.0 18.7
(株)NHKアイテック 32,737,625 18,019,754 55.0 14,717,871 44.9 225,275 1,577 0.7 223,698 99.2 0.6 0.0 1.5
(株)NHK文化センター 7,537,778 31,643 0.4 7,506,135 99.5 △33,182 △2,947 8.8 △30,235 91.1 △0.4 △9.3 △0.4
NHK営業サービス(株) 10,662,171 9,942,934 93.2 719,237 6.7 185,020 273,459 147.7 △88,439 △47.7 1.7 2.7 △12.2
(株)放送衛星システム 11,775,233 810,439 6.8 10,964,794 93.1 2,745,353 292,685 10.6 2,452,668 89.3 23.3 36.1 22.3
計(平均) 258,958,313 160,003,826 61.7 98,954,487 38.2 10,248,784 5,377,609 52.4 4,871,176 47.5 (4.8) (5.7) (3.3)
(注)
営業利益率の平均欄は、各子会社等の営業利益率の合計を子会社等数で除したものである。

子会社等における売上高に占める売上原価の割合(以下「原価率」という。)、売上高に占める販管費の割合(以下「販管費率」という。)及び営業利益率について、23年度から27年度までの間における各科目の合計値から算出すると、図表1-7のとおりとなっている。

子会社等の原価率について、財務省の法人企業統計調査(以下「統計調査」という。)における業種別、資本金別に区分した原価率と、統計調査の区分により分類した子会社等の原価率の平均とを比較すると、統計調査では情報通信業の資本金区分10億円以上の23年度から27年度までの間の合計値から算出した原価率が40.2%となっているのに対して、子会社等は77.5%と大きく上回っており、同様に算出した情報通信業の資本金区分1億円以上10億円未満が71.6%に対して89.7%、サービス業の資本金区分1億円以上10億円未満が70.4%に対して90.2%、情報通信業の資本金区分5000万円以上1億円未満が70.7%に対して74.5%と、いずれも子会社等が上回っている。一方、建設業の資本金区分1億円以上10億円未満については87.1%に対して86.8%と、子会社等が若干下回っている。

原価率について子会社等を個別にみると、株式会社NHK文化センターが協会との取引で原価率が100%を超えている。これは、カルチャーセンター業界自体が低迷していて売上げが上がらない一方、講師の人件費等の原価を下げにくいことなどによるものである。

子会社等の販管費率について、同様に統計調査と比較すると、統計調査では情報通信業の資本金区分10億円以上の販管費率が47.7%となっているのに対して子会社等は7.0%、同様に算出した情報通信業の資本金区分1億円以上10億円未満が23.6%に対して5.4%、サービス業の資本金区分1億円以上10億円未満が25.2%に対して6.5%と、子会社等が大きく下回っている。これは、子会社等の取引先が主に協会であるため、多額の営業費用や広告費用を通常必要としないなどによるものである。一方、情報通信業の資本金区分5000万円以上1億円未満が25.1%に対して23.8%、建設業の資本金区分1億円以上10億円未満が9.3%に対して10.3%と、おおむね同水準となっている。

販管費率について子会社等を個別にみると、株式会社NHK出版の販管費率が全体で23.8%と統計調査から算出した情報通信業の販管費率25.1%とおおむね同水準となっているものの、他の子会社等と比較して高い傾向となっている。これは、出版不況等により売上高が減少する中、販管費等を下げる努力はしているものの限界があり、結果的に販管費率が高くなっていることなどによるものである。

そして、子会社等の原価率及び販管費率から導き出される営業利益率について、同様に統計調査と比較すると、統計調査では情報通信業の資本金区分10億円以上の営業利益率が11.9%となっているのに対して子会社等は15.3%となっており、同様に算出した情報通信業の資本金区分1億円以上10億円未満が4.7%に対して4.7%と、同水準となっている。一方、サービス業の資本金区分1億円以上10億円未満が4.2%に対して3.0%、情報通信業の資本金区分5000万円以上1億円未満が4.0%に対して1.5%、建設業の資本金区分1億円以上10億円未満が3.5%に対して2.8%と、子会社等が下回っている。

営業利益率について子会社等を個別にみると、株式会社日本国際放送の協会との取引における営業利益率が10.2%と高くなっているのは、同社が20年4月に設立されて間もないことから、業務委託費の算定に適用する管理費率について、協会は同会社の財務体質の強化のために、他の「放送番組の企画・制作、販売」を行う子会社等よりも高く設定しており、27年度においては他の子会社等は7%としているのに対し、11%としていることなどによるものである(図表1-14参照)。また、株式会社NHK文化センターは、協会との取引と協会以外との取引の両方において、営業利益率がマイナスとなっている。これは、前記のとおり、カルチャーセンター業界自体が低迷していることなどによるものである。また、株式会社NHKプロモーションは、協会との取引において営業損失を計上したため営業利益率がマイナスとなっている。これは、主な業務である展覧会事業等の競争が激しく採算が悪化したことなどによるものである。一方、株式会社日本国際放送、株式会社NHKプラネット及びNHK営業サービス株式会社は、協会以外との取引において営業損失を計上したため営業利益率がマイナスとなっている。これは、協会以外の取引先における事業の中止、縮小等により採算が悪化したことなどによるものである。また、関連会社である株式会社放送衛星システムの営業利益率が、全体で28.1%、協会との取引において34.3%と高くなっているのは、放送を行うために貸与している衛星中継器の利用率が近年高くなってきていて収入が増加していることなどによるものである。

このように、子会社等によって営業利益率は様々であるものの、番組制作系子会社においては、特に協会との取引における営業利益率が協会以外との取引における営業利益率より高い傾向があり、これらの子会社は協会との取引割合も高くなっている。

図表1-7 子会社等における原価率、販管費率及び営業利益率(平成23年度から27年度までの間の売上高等の合計値から算出したもの)

(単位:%)
区分
会社名
注(1)
分類
原価率 販管費率 営業利益率
全体 協会との取引に係るもの 協会以外との取引に係るもの 統計調査による業種別、資本金別原価率 全体 協会との取引に係るもの 協会以外との取引に係るもの 統計調査による業種別、資本金別販管費率 全体 協会との取引に係るもの 協会以外との取引に係るもの 統計調査による業種別、資本金別営業利益率
(株)NHKエンタープライズ A 87.6 91.6 76.5 40.2 9.8 5.8 20.7 47.7 2.5 2.4 2.6 11.9
(株)NHKエデュケーショナル B 92.2 91.3 95.4 71.6 4.2 4.2 4.4 23.6 3.4 4.4 0.0 4.7
(株)NHKグローバルメディアサービス B 85.5 86.2 81.5 71.6 7.1 5.6 16.6 23.6 7.2 8.1 1.7 4.7
(株)日本国際放送 B 88.3 85.8 96.4 71.6 5.4 3.9 10.3 23.6 6.2 10.2 △6.8 4.7
(株)NHKプラネット B 91.9 88.4 99.8 71.6 6.0 7.1 3.4 23.6 2.0 4.3 △3.2 4.7
(株)NHKプロモーション C 94.6 96.5 94.4 70.4 4.2 4.2 4.2 25.2 1.0 △0.8 1.3 4.2
(株)NHKアート B 90.1 90.4 89.7 71.6 4.0 3.7 4.5 23.6 5.8 5.8 5.7 4.7
(株)NHKメディアテクノロジー B 90.3 91.7 86.0 71.6 5.8 5.7 6.1 23.6 3.8 2.4 7.8 4.7
(株)NHK出版 D 74.5 71.0 74.5 70.7 23.8 23.8 23.8 25.1 1.5 5.0 1.5 4.0
(株)NHKビジネスクリエイト C 84.8 89.8 79.4 70.4 6.1 8.4 3.6 25.2 9.0 1.7 16.8 4.2
(株)NHKアイテック E 86.8 88.8 85.0 87.1 10.3 11.0 9.7 9.3 2.8 0.1 5.2 3.5
(株)NHK文化センター C 91.0 101.1 91.0 70.4 9.7 9.8 9.7 25.2 △0.8 △11.0 △0.7 4.2
NHK営業サービス(株) C 90.7 89.5 98.5 70.4 6.3 6.7 3.6 25.2 2.8 3.6 △2.2 4.2
(株)放送衛星システム A 67.5 61.2 68.0 40.2 4.3 4.3 4.3 47.7 28.1 34.3 27.6 11.9
平均 A 77.5 76.4 72.2 40.2 7.0 5.0 12.5 47.7 15.3 18.3 15.1 11.9
B 89.7 88.9 91.4 71.6 5.4 5.0 7.5 23.6 4.7 5.8 0.8 4.7
C 90.2 94.2 90.8 70.4 6.5 7.2 5.2 25.2 3.0 △1.6 3.8 4.2
D 74.5 71.0 74.5 70.7 23.8 23.8 23.8 25.1 1.5 5.0 1.5 4.0
E 86.8 88.8 85.0 87.1 10.3 11.0 9.7 9.3 2.8 0.1 5.2 3.5
注(1)
「分類」欄は統計調査における区分により分類したものであり、Aは情報通信業の資本金区分10億円以上、Bは情報通信業の資本金区分1億円以上10億円未満、Cはサービス業の資本金区分1億円以上10億円未満、Dは情報通信業の資本金区分5000万円以上1億円未満、Eは建設業の資本金区分1億円以上10億円未満である。
注(2)
統計調査による業種別、資本金別営業利益率等は、平成23年度から27年度までの間の売上高等の合計値から算出している。

23年度から27年度までの間の協会との取引における子会社等の原価率、販管費率及び営業利益率の推移をみると図表1-8のとおりとなっている。23年度の営業利益率の平均が2.7%と他の年度より低くなっているのは、東日本大震災の影響や地上デジタル放送関係の業務が終了するなどしたためである。そして、各指標の関係をみると、営業利益率の平均が23年度2.7%から27年度5.7%に上がっているのは、原価率の平均が23年度89.6%から27年度86.5%に下がっていることもその一因であると思料される。また、例えば、株式会社NHKメディアテクノロジーにおいて営業利益率が23年度3.6%から27年度1.2%に下がっているのは、原価率にほとんど変化がみられないことから、販管費率が23年度4.7%から27年度6.7%に上がっていることが、その一因であると思料される。

図表1-8 子会社等における原価率、販管費率及び営業利益率の推移

(単位:%)
区分
会社名
協会との取引に係るもの
原価率 販管費率 営業利益率
平成23 24 25 26 27 23 24 25 26 27 23 24 25 26 27
(株)NHKエンタープライズ 91.6 91.4 90.9 91.2 92.8 5.7 5.7 6.1 5.8 5.8 2.5 2.7 2.8 2.9 1.3
(株)NHKエデュケーショナル 92.6 91.7 90.8 91.0 90.6 3.9 4.0 4.1 4.3 4.6 3.4 4.2 5.0 4.6 4.6
(株)NHKグローバルメディアサービス 87.9 87.1 84.6 85.2 86.2 5.0 5.7 5.9 6.3 5.2 6.9 7.0 9.4 8.4 8.5
(株)日本国際放送 83.7 85.1 86.3 86.4 86.6 5.2 5.0 3.0 3.0 3.8 11.0 9.8 10.6 10.4 9.5
(株)NHKプラネット 89.3 90.7 87.0 86.8 88.7 8.2 7.5 6.8 6.4 6.5 2.4 1.7 6.0 6.6 4.7
(株)NHKプロモーション 94.7 97.2 96.7 96.1 97.6 5.0 5.0 3.9 3.6 3.9 0.1 △2.3 △0.6 0.2 △1.5
(株)NHKアート 91.6 89.5 90.4 90.2 90.4 3.2 3.2 4.0 3.9 4.0 5.1 7.2 5.4 5.8 5.4
(株)NHKメディアテクノロジー 91.5 91.8 91.7 91.7 91.9 4.7 4.8 5.3 6.6 6.7 3.6 3.3 2.8 1.5 1.2
(株)NHK出版 85.6 66.4 67.2 68.0 59.0 23.9 23.1 23.9 23.8 24.3 △9.5 10.3 8.8 8.1 16.6
(株)NHKビジネスクリエイト 92.0 88.5 89.5 88.8 90.2 6.7 9.5 8.5 8.3 8.6 1.1 1.9 1.8 2.8 1.0
(株)NHKアイテック 95.0 87.5 88.1 86.6 88.4 13.5 12.0 8.6 10.5 11.5 △8.6 0.4 3.2 2.8 0.0
(株)NHK文化センター 104.8 104.0 97.9 97.0 100.2 10.7 9.7 9.8 9.2 9.0 △15.5 △13.8 △7.7 △6.3 △9.3
NHK営業サービス(株) 88.7 88.1 90.4 90.6 90.1 5.1 7.4 7.3 7.0 7.1 6.1 4.4 2.2 2.3 2.7
(株)放送衛星システム 65.6 59.4 59.5 58.9 59.4 4.7 4.1 4.2 4.0 4.4 29.6 36.3 36.1 37.0 36.1
平均 89.6 87.0 86.5 86.3 86.5 7.5 7.6 7.2 7.3 7.5 2.7 5.2 6.1 6.2 5.7

協会が区分経理を行わせていない関連会社について、原価率、販管費率及び営業利益率を23年度から27年度までの間の各科目の合計値から算出し、国内関連会社と海外関連会社とに分けてみると、図表1-9及び図表1-10のとおりとなっている。

協会が区分経理を行わせていない国内関連会社は株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズの1社であり、その営業利益率等をみると、図表1-9のとおり、統計調査において同会社の業務が該当する情報通信業のうち資本金区分10億円以上のものの23年度から27年度までの間の合計値から算出した各数値と比較して、原価率は88.9%と高く、販管費率は7.7%、営業利益率は3.2%と低くなっており、子会社等とおおむね同じ傾向となっている。特に販管費率については、統計調査の47.7%よりも大幅に低くなっている。これは、主に取り扱っているB-CASカードがテレビ等の機器に付属するものであるため特段営業活動の必要がないという同会社の業態がその要因の一つであると思料される。

図表1-9 協会が区分経理を行わせていない国内関連会社における原価率、販管費率及び営業利益率(平成23年度から27年度までの間の売上高等の合計値から算出したもの)

(単位:%)
区分
会社名
原価率 統計調査による業種別、資本金別原価率 販管費率 統計調査による業種別、資本金別販管費率 営業利益率 統計調査による業種別、資本金別営業利益率
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ 88.9 40.2 7.7 47.7 3.2 11.9
(注)
統計調査による業種別、資本金別による営業利益率等は、平成23年度から27年度までの間の売上高等の合計値から算出している。

協会が区分経理を行わせていない海外関連会社2社の営業利益率等をみると、図表1-10のとおり、原価率は59.6%及び71.9%となっており、海外関連会社を除く子会社等の原価率の平均77.5%と比較して低くなっている。また、販管費率は31.2%及び27.2%となっており、海外関連会社を除く子会社等の販管費率の平均7.0%と比較して高くなっている。さらに、営業利益率については、NHK Cosmomedia(Europe)Ltd.は0.8%となっており、NHK Cosmomedia America, Inc.の8.9%と比較して低くなっている。これは、個人契約者の減少や、当時の為替レートの影響によるものである。

図表1-10 協会が区分経理を行わせていない海外関連会社における原価率、販管費率及び営業利益率(平成23年度から27年度までの間の売上高等の合計値から算出したもの)

(単位:%)
区分
会社名
原価率 販管費率 営業利益率
NHK Cosmomedia America, Inc. 59.6 31.2 8.9
NHK Cosmomedia(Europe)Ltd. 71.9 27.2 0.8

b 関連公益法人等における経常利益率

関連公益法人等のうち、協会が区分経理を行わせている一般財団法人は4団体あり、これらの団体について、経常利益率を23年度から27年度までの間の各科目の合計値から算出すると、図表1-11のとおり、協会との取引に係るものは5.2%となっている。団体ごとにみると、経常利益率は4団体の全てで協会との取引に係るものが協会以外との取引に係るものを上回っている。

図表1-11 関連公益法人等における経常利益率(平成23年度から27年度までの間の売上高等の合計値から算出したもの)

(単位:%)
区分
会社名
経常利益率
全体 協会との取引に係るもの 協会以外との取引に係るもの
(一財)NHKサービスセンター 注(1) 1.7 2.1 1.1
(一財)NHKインターナショナル 注(2) 2.2 10.6 △6.0
(一財)NHKエンジニアリングシステム 注(3) 5.2 5.2 5.1
(一財)NHK放送研修センター 注(4) 1.4 3.2 △3.5
平均 2.6 5.2 △0.8
注(1)
(一財)NHKサービスセンターは、平成25年4月1日に(財)NHKサービスセンターから移行した。
注(2)
(一財)NHKインターナショナルは、平成25年4月1日に(財)NHKインターナショナルから移行した。
注(3)
(一財)NHKエンジニアリングシステムは、平成25年4月1日に(財)NHKエンジニアリングサービスから移行した。
注(4)
(一財)NHK放送研修センターは、平成25年4月1日に(財)NHK放送研修センターから移行した。
ウ 実績原価の検証

協会は、従来、契約額の妥当性等の検証に関して、業務委託以外の契約については、必要に応じて実績原価の分析を行うことを予定価格算定基準書において定める一方、関連団体との業務委託の契約については、関連団体が実際に要した経費について、契約上精算条項が付された経費を除き、必要に応じて、見積書、契約書等で確認するにとどまっており、実際に関連団体が支払った金額の確認をするなどの実績原価の分析を行うまでには至っていなかった。

そして、会計検査院は、19年報告の所見において、「業務委託額の妥当性の検証は、支払証拠書類等により実際に関連団体が支払った金額の確認を行うまでには至っていないことから、契約額の妥当性、透明性の確保に留意し、実績原価を確認する機会を増やすなど、関連団体の協会からの業務委託額の検証をより積極的に行うこと」に努める必要があると記述していることから、その後の実績原価調査の実施及び検証の状況をみたところ、次のとおりとなっていた。

協会は、19年度以降、毎年度、運営基準に基づき、前記業務運営状況調査の一環として、実績原価調査のために委託の担当部局が独自に抽出した委託業務について、当該業務の委託先である関連団体に実績原価調査票(以下「調査票」という。)の作成及び提出を求め、提出を受けた調査票に基づく調査を監査法人に委託している。監査法人は、順次、関連団体に赴いて実績原価調査を行い、調査票の記載内容について、証ひょう、帳簿等を参照し、売上高、売上原価、売上総利益等の記載と照合するなどの方法により確認し、その結果を協会に報告している。そして、同様の調査方式となった21年度以降の実績原価調査の実施状況及び27年度の実績原価調査の結果をみると、図表1-12及び図表1-13のとおりとなっている。

27年度の実績原価調査の実施件数は21件となっているが、実施件数は21年度の101件から減少傾向となっており、契約件数に対する実績原価調査の実施率は21年度の7.2%から27年度の1.1%となっている。これは、特に21年度から24年度までの間は一つの業務について複数の実績原価調査に切り分けて実施しているため調査実施件数が多くなっていることなどによるものである。一方、実績原価調査の実施金額は、選定する業務によって増減しており、その傾向は一定していない状況となっている。

27年度の実績原価調査の結果をみると、売上高に占める売上総利益の割合(以下「売上総利益率」という。)はマイナス7.7%から31.2%と選定する業務によって大きな差がある状況となっている。また、27年度は、委託業務のうち番組制作について、関連団体に調査票の作成を求めておらず、実績原価調査が行われていない状況となっている。この理由について協会は、番組制作については、番組自体の改編等があり比較が難しく、実績原価の反映に時間が掛かり、活用しにくいためであるなどとしている。しかし、番組制作は、業務委託において大きな割合を占めていることから、特に継続して制作されている番組等のように比較が可能なものについて調査を行うとともに、他の番組についても牽(けん)制効果を高めるためにも適宜調査を行う必要があると認められる。

そして、関連団体ごとの実績原価調査の実施状況をみると、毎年度実施している関連団体が8団体ある一方、1度も実施していない関連団体が4団体見受けられた。これは協会との取引の件数、金額等によって実施件数に差が出ていると考えられるが、取引の規模が比較的小さい関連団体についても、可能な限り実績原価の把握に努める必要があると認められる。

図表1-12 実績原価調査の実施状況

(単位:件、億円)
調査実施年度 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
区分 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
契約 1,385 1276 1,213 1301 1,335 1363 1,411 1369 1,781 1402 1,900 1471 1,825 1569
  実績原価調査を実施 101 282 84 282 59 258 61 290 37 206 30 192 21 214
うち番組制作業務委託
47 38 33 55 27 65 20 37 19 39 12 36
実施率 7.2% 22.1% 6.9% 21.6% 4.4% 18.9% 4.3% 21.1% 2.0% 14.6% 1.5% 13.0% 1.1% 13.6%
関連団体内訳 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
(株)NHKエンタープライズ 25 18.7 5 3.2 5 10.3 5 12.7 4 8.8 4 3.2 2 26.8
(株)NHKエデュケーショナル 8 4.7 8 4.9 7 17.3 7 9.6 3 5.7 3 1.1
(株)NHKグローバルメディアサービス 8 14.8 16 41.1 10 27.1 7 35.8 3 5.4 2 2.7 3 19.6
(株)日本国際放送 2 1.4 2 3.4 5 7.6 3 5.3 2 5.3 3 29.7 1 3.1
(株)NHKプラネット 4 1.1 3 2.9 2 0.3 2 4.1
(株)NHKプロモーション 1 4.9 1 4.6 1 0.5 1 5.7 1 6.7
(株)NHKアート 4 14.1 3 5.4 2 5.1 3 6.0 4 10.4
(株)NHKメディアテクノロジー 9 36.3 9 21.5 3 7.6 1 1.2 1 5.2 1 2.0 2 2.2
(株)NHK出版
(株)NHKビジネスクリエイト 8 23.7 5 12.6 7 17.0 6 22.5 4 17.8 5 15.1 4 14.4
(株)NHKアイテック 9 23.2 9 27.9 2 10.7 5 14.2 2 18.2 1 14.8 3 35.3
(株)NHK文化センター
NHK営業サービス(株) 7 81.6 6 86.4 5 96.2 6 118.1 4 100.5 3 93.9 3 94.5
(株)放送衛星システム
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ
(一財)NHKサービスセンター 9 41.3 11 54.7 7 45.8 8 44.8 6 20.0 5 13.6
(一財)NHKインターナショナル 2 3.7
(一財)NHKエンジニアリングシステム 4 4.5 5 4.8 4 4.1 6 5.3 2 4.0 2 9.3 2 9.7
(一財)NHK放送研修センター 1 8.1 1 8.5 1 8.6 1 7.9 1 8.8
(注)
平成21年度の(株)NHKエンタープライズの数値には、(株)総合ビジョンの分を含めている。

図表1-13 平成27年度実績原価調査21件の調査結果

(単位:千円、%)
区分 売上高
a
売上原価 売上総利益
b
売上総利益率
b/a
調査1 2,457,492 2,298,321 159,170 6.4
調査2 26,000 22,519 3,480 13.3
調査3 1,555,549 1,069,130 486,418 31.2
調査4 153,123 133,926 19,197 12.5
調査5 110,221 95,086 15,134 13.7
調査6 296,114 223,577 72,537 24.4
調査7 105,671 107,781 △2,110 △1.9
調査8 101,248 109,097 △7,848 △7.7
調査9 462,715 415,870 46,845 10.1
調査10 211,400 200,345 11,054 5.2
調査11 382,222 369,829 12,392 3.2
調査12 277,435 264,524 12,911 4.6
調査13 1,220,540 1,204,230 16,309 1.3
調査14 623,914 585,200 38,713 6.2
調査15 1,429,718 1,222,993 206,725 14.4
調査16 3,065,438 2,860,896 204,541 6.6
調査17 5,326,436 4,818,094 508,341 9.5
調査18 362,970 291,561 71,409 19.6
調査19 779,807 737,342 42,465 5.4
調査20 127,199 120,384 6,815 5.3
調査21 817,389 642,592 174,796 21.3
21調査
全体
19,892,611 17,793,309 2,099,301 10.5
(注)
金額は、消費税抜きである。

実績原価調査を行った翌年度にも同じ内容の契約を締結していて比較が可能な契約で、1件3000万円を超える契約は24年度実施の24件、25年度実施の16件、26年度実施の19件となっている。協会は、売上総利益率と、協会が業務委託費の算定に適用している管理費率(原則として7%及び11%)とを比較するなどして実績原価調査の結果を次回の契約に反映させることを検討するとしていることなどから、上記各契約のうち、実績原価調査の結果、売上総利益率が管理費率を大きく上回る20%以上となっている24年度実施1件(売上総利益率34.0%)、25年度実施1件(同29.9%)、26年度実施3件(同21.4%、29.9%及び30.0%)について調査実施の翌年度の契約をみたところ、いずれも業務委託費の積算等の見直しが行われていない状況となっていた。

実績原価調査の結果、売上総利益率が高くなっていることを把握したにもかかわらず、調査実施の翌年度以降の同じ契約において、業務委託費の積算等の見直しを行っていなかったものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例2> 実績原価調査の結果を、翌年度以降の業務委託費の積算等に反映していなかったもの

協会は、平成24年度に実施した気象情報の制作・送出に係る業務委託契約を1億3006万余円で株式会社NHKグローバルメディアサービスと締結している。そして、この契約について、25年度に実績原価調査を行っており、その結果、売上高1億2430万余円、売上原価8704万余円、売上総利益3726万余円となっており、売上総利益率は29.9%と他の契約と比較して高くなっていた。しかし、26年度の同じ契約においても従来の積算等の見直しを行っていなかったため、引き続き高い売上総利益率になっていると思料される。

このように、業務委託額の妥当性の検証は、19年度以降、実績原価調査として一部の契約について監査法人への委託により実施しているものの、実績原価調査の対象とする契約の選定について、調査の必要性を十分に検討した上で適切に選定を行う必要があると認められる。また、実施した調査の結果が業務委託費の積算等の見直しに結び付いていないものもあることから、協会から関連団体への業務委託額について、実績原価の確認の結果を適切に反映し、業務委託額の削減等に努める必要があると認められる。

エ 協会が設定する関連団体への業務委託費の算定に適用する管理費率

業務委託費のうち管理費は、関連団体の営業活動や経営管理に必要な販管費と適正な利益の二つの要素から成り、業務委託原価に管理費率を乗じて算定される。協会から関連団体に随意契約により業務委託を行うに当たって、関連団体において営業活動を通常必要としないことなどから、協会は、関連団体への業務委託費の算定に適用する管理費率について、関連団体以外の者に適用する管理費率よりも低く設定するとしている。そして、協会は、管理費率について、原則として、「放送番組の企画・制作、販売」分野の業務を行う関連団体は7%、「業務支援」分野の業務を行う関連団体は11%とすることとしている。関連団体への業務委託費の算定に適用した管理費率をみると、図表1-14のとおりとなっていて、おおむねこの考え方に従って設定されている。なお、関連団体のうち株式会社日本国際放送については、「放送番組の企画・制作、販売」分野の業務を行う子会社であるが、前記のとおり20年4月に設立されて間もないことから、協会は、財務体質の強化が図られるまで管理費率を高く設定するとしており、27年度においても11%と7%よりも高く設定している。

協会は、「番組制作の企画・制作、販売」分野の業務を行う関連団体については自ら企画を立案して業務を行うことから、自助努力による経費節減の余地が大きいとして管理費率を7%と低く設定し、「業務支援」分野の業務を行う関連団体についてはあらかじめ決められた仕様に基づき業務を行うことから自助努力による経費節減の余地が小さいとして11%と高く設定している。そして、協会は、管理費率について各関連団体の経営状況を検証し、必要に応じて見直すとしているが、一部を除き長期間にわたって見直されておらず、協会が27年度における管理費率を設定した根拠は明らかでない状況となっている。このため、関連団体の経営状況を定期的に検証するなどして、必要に応じて管理費率を見直す必要があると認められる。

図表1-14 関連団体への業務委託費の算定に適用した管理費率

図表1-14 関連団体への業務委託費の算定に適用した管理費率 画像

(5) 協会における関連団体との取引による副次収入の状況

協会は、協会業務の補完・支援としての番組ビデオ、テキスト等の販売、協会の番組の二次使用、番組に関連したイベントの実施、協会の設備・施設の活用等により副次収入を得ている。そして、27年度の副次収入額についてみると、図表1-15のとおり80億余円となっており、うち関連団体からの収入は56億余円、70.7%となっている。また、17年度から27年度までの間の協会における副次収入をみると、関連団体との取引による副次収入は56億余円から73億余円の間で推移していて、協会における副次収入全体の7割から8割を占めている。また、この関連団体との取引による副次収入は、協会における収入全体(27年度6868億余円)の1%程度となっている。

図表1-15 協会における副次収入

(単位:百万円、%)
年度 平成
17年度
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
副次収入 a 8,933 8,868 9,202 8,824 8,415 8,569 8,092 7,593 7,794 7,911 8,046
  うち関連団体からの収入 b 7,099 6,883 7,380 7,091 6,936 6,941 6,697 5,970 6,292 6,148 5,696
比率 b/a 79.4 77.6 80.1 80.3 82.4 81.0 82.7 78.6 80.7 77.7 70.7
(注)
金額は、平成23年度以前は消費税込み、24年度以降は消費税抜きである。

23年度から27年度までの間の関連団体からの副次収入の内訳をみると、図表1-16のとおりとなっていて、27年度については副次収入56億余円のうち、番組関係副次収入は45億余円、技術協力収入約0.9億円、施設利用料収入等10億余円となっている。このうち番組関係副次収入は、放送番組の多角的活用による収入で、協会の所有する番組、素材、音楽等を提供したケーブルテレビ等の放送事業者から徴収したり、DVD等の市販用商品として二次展開する際に利用者から徴収したりする二次使用料収入や、様々な二次展開に必要な権利についての許諾権を番組ごとに一つにまとめて関連団体に付与し、その権利料として徴収するメディアミックス収入、有料イベントにおいて利益が生じた際に徴収する催物関係収入等がある。また、技術協力収入は技術支援や特許料等によるものであり、施設利用料収入は施設の賃貸料等によるものである。23年度から27年度までの間の副次収入の内訳の推移をみると、番組関係副次収入については43億余円から50億余円の間で推移していて安定した収入となっている一方、技術協力収入は23年度の7億余円から27年度の約0.9億円と毎年減少している。これは、主に地上デジタル放送関係の特許実施料が減少したことなどによるものである。

図表1-16 関連団体からの副次収入の内訳

(単位:百万円)
年度 平成23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
6,697 5,970 6,292 6,148 5,696
番組関係副次収入 4,899 4,353 5,032 4,984 4,583

二次使用料 2,182 2,046 2,266 2,357 2,317
メディアミックス収入 1,958 1,100 1,557 1,511 1,229
催物関係収入等 132 185 166 102 60
テキスト出版収入 626 1,020 1,041 1,012 975
技術協力収入 764 644 302 153 98
施設利用料収入等 1,032 972 957 1,011 1,014
(注)
金額は、平成23年度以前は消費税込み、24年度以降は消費税抜きである。

副次収入について、会計検査院は、19年報告の所見において、「二次使用料率は、実際に妥当なものとなっているかの判断が困難であることから、料率の設定に当たっては、今後も算定基準をより合理的なものとしていくこと」に努める必要があると記述している。二次使用料率は、関連団体が協会所有の番組等を提供した対価として外部の利用者から徴収した額等を基準として、協会の収入とする二次使用料を算定する際に乗ずる料率であり、二次使用の形態、権利確認や番組複製等の事務処理費用等を考慮して定めるものである。そこで、19年度以降の算定基準における二次使用料率の見直しの状況について検査したところ、二次使用料率に基づいて番組等を提供した対価の一部を協会に納付させて残りを当該業務に係る経費に充当するという方式から、番組等を提供した対価を全て協会に納付させて業務委託に要する経費を協会から別途支払う方式としている例が20年度に1団体について1件見受けられたものの、二次使用料率自体の見直しを行っていたものはなかった。協会は、二次使用料について、二次使用料率をケーブルテレビ事業者等の番組の提供先や提供媒体等ごとに定めるなどして算定しているが、関連団体における二次使用に係る収支状況を確認しているわけではなく、実際に二次使用料の算定方法が妥当なものとなっているかの判断は依然として困難な状況である。

協会は、副次収入について、番組等の素材の加工工程をほとんど伴わず、業務工程がある程度確立されているものは二次使用料率に基づく方式から、業務委託に要する経費を別途支払う方式に可能な限り移行したとしているが、二次使用料率に基づき二次使用料を算定するものが依然として大半であり、その二次使用料ごとの収支状況を確認していないことなどから、二次使用料の算定方法の検証を可能な限り進める必要があると認められる。

(6) 関連団体との取引における関係規程類

会計検査院は、19年報告において、任意業務の委託に関する手続については業務委託基準の適用範囲に含まれておらず、同基準の趣旨を尊重して実施することとしていて、業務委託の手続の一部が明文化されていなかったり、「業務委託事務手続き」において、実質的に関連団体と随意契約を行うことを前提としたものとなっていたりしていたことなどから、関係規程を体系的に整理する必要があると記述している。

これらの関係規程類の見直しの状況について検査したところ、「業務委託事務手続き」(18年4月以降は「業務委託事務処理手順」)やその上位規程である経理規程実施細則を20年4月に、業務委託に係る事務手続等が関連団体と随意契約を行うことを前提としたものとはならないよう改定していた。

しかし、任意業務の委託に関する事務手続等については、28年7月現在においても、業務委託基準の適用範囲に含まれておらず、委託に関する他の関係規程類においても明文化されていない状況となっていることから、関係規程類を速やかに定めて適切に運用する必要があると認められる。これについて、協会は、任意業務の委託に関する手続を28年度中に明文化する予定であるとしている。

2 関連団体の剰余金及び協会に対する配当の状況

(1) 19年報告の検査の結果に対する所見に係る検査結果の概要

関連団体の剰余金及び協会に対する配当について、会計検査院は、19年報告の所見において、「協会が直接出資している子会社は全体として財務面での健全性は高く、十分な財務上の余力が見受けられる会社もあることから、これらの子会社に対しては、今後も利益剰余金額、当座資産額等の資産状況等を勘案して特例配当を要請するなどの必要があると考えられ、ひいては、これをもって協会の財政に寄与させることが望まれる。」と記述している。

これに対して、協会は、子会社の配当について、財務上の余力をそれぞれの会社ごとに検証した上で、協会の財政に寄与するよう、大型配当を含めて、引き続き要請していきたいとしたが、19年報告の前後以降の子会社の利益剰余金残高及び配当総額(普通配当と特例配当を合計した額。以下同じ。)の推移をみると、図表2-1のとおりとなっており、利益剰余金残高は、21年度末まではおおむね横ばい、22年度末以降は増加傾向となっていて、27年度末で948億余円となっている。また、配当総額は、20年度に実施された73億余円の配当の後は、同年度の半分以下で推移している状況が続いていたが、28年度の配当で、20年度と同程度の規模の72億余円の配当が実施されている。

図表2-1 子会社の利益剰余金残高及び配当総額の推移

図表2-1 子会社の利益剰余金残高及び配当総額の推移 画像

(2) 関連団体の剰余金の状況

ア 協会の連結決算等

前記のとおり、協会は、14年度から、参考情報を提供するという目的で連結決算を導入し、開示している。

そして、27年度の連結決算においては、子会社13社全て及び関連会社のうち持分法(注3)を適用している会社である株式会社放送衛星システムの計14社がその対象とされている。協会の27年度における連結決算及び単体決算をみると、図表2-2のとおり、当期事業収支差金は連結決算では318億余円(親会社に帰属する当期事業収支差金)、単体決算では289億余円となっており、連結決算の対象とされている子会社の協会グループ全体への利益の貢献度をみる指標である連単倍率は1.1倍となっている。

また、27年度の連結決算において持分法の適用対象としていない関連会社であるNHK Cosmomedia America, Inc.、NHK Cosmomedia(Europe)Ltd.及び株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズの3社について、協会は、当期事業収支差金(持分に見合う額)及び利益剰余金(持分に見合う額)からみて、持分法の適用対象から除いても連結財務諸表に及ぼす影響が軽微であり、かつ、全体として重要性がないとしている。

(注3)
持分法  投資会社が被投資会社の資本及び損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法

図表2-2 協会の連結決算、単体決算及び連単倍率(平成27年度)

(単位:百万円、倍)
科目等 連結決算
(a)
単体決算
(b)
連単倍率
(a)/(b)
貸借対照表    
  資産合計 1,161,768 1,036,354 1.1
  流動資産合計 406,589 322,900 1.2
固定資産合計 592,461 550,736 1.0
特定資産合計 162,717 162,717 1.0
負債合計 379,011 348,395 1.0
  流動負債合計 232,619 217,324 1.0
固定負債合計 146,392 131,070 1.1
純資産合計 782,756 687,959 1.1
損益計算書    
  経常事業収支    
  経常事業収入 754,777 687,944 1.0
経常事業支出 728,298 669,001 1.0
経常事業収支差金 26,479 18,942 1.3
経常事業外収支    
  経常事業外収入 7,984 8,366 0.9
経常事業外支出 118 0 157.9
経常事業外収支差金 7,866 8,365 0.9
経常収支差金 34,346 27,308 1.2
特別収支    
  特別収入 4,137 3,987 1.0
特別支出 2,509 2,364 1.0
税金等調整前当期事業収支差金 35,973 28,931
法人税、住民税及び事業税 2,820
法人税等調整額 747
当期事業収支差金 32,406 28,931
  非支配株主に帰属する当期事業収支差金 510
親会社に帰属する当期事業収支差金 31,895 28,931 1.1
イ 関連団体の利益剰余金等の状況

関連団体の27年度末における剰余金の状況をみるために、便宜的に、剰余金に相当する額として、子会社等については利益剰余金の額を、また、関連公益法人等については一般正味財産期末残高等をみたところ、図表2-3のとおりとなっており、このうち、協会が、財務や事業の方針を示して支配できる範囲としており、協会の連結決算において利益剰余金を合算している子会社13社の27年度末における利益剰余金は計948億余円となっている。また、協会が、株主として影響を与えることはできても財務や事業の方針は支配できる範囲としておらず、協会の連結決算において利益剰余金を合算していない関連会社4社の同年度末における利益剰余金は計150億余円となっている。さらに、協会が財務及び事業の方針決定を支配している又はそれに対して重要な影響を与えることができる関連公益法人等8団体(団体全体の貸借対照表が作成されないなど、他の関連団体とは作成する決算書類が異なるなどのため剰余金に相当する額を集計することが困難である日本放送協会健康保険組合を除く。)の一般正味財産期末残高等は計153億余円となっている。

そして、子会社が27年度決算に基づき28年度に実施した配当総額は計72億余円となっており、このうち協会の受取額は計51億余円、また、関連会社が27年度決算に基づき28年度に実施した配当総額は計5億余円となっており、このうち協会の受取額は計2億余円となっている。

図表2-3 関連団体の平成27年度決算等の状況

(単位:百万円) (単位:百万円)
区分
会社名
利益剰余金 平成27年度決算に基づく配当総額
区分
団体名
剰余金に相当する額
    うち協会の受取額
(株)NHKエンタープライズ 15,313 2,180 1,791 (一財)NHKサービスセンター 注(2) 4,763
(株)NHKエデュケーショナル 6,390 1,333 893 (一財)NHKインターナショナル 注(2) 1,575
(株)NHKグローバルメディアサービス 10,107 2,250 1,636 (一財)NHKエンジニアリングシステム 注(2) 1,167
(株)日本国際放送 1,130 - - (一財)NHK放送研修センター 注(2) 962
(株)NHKプラネット 2,290 56 29 (学)日本放送協会学園 注(3) 363
(株)NHKプロモーション 1,392 25 15 (公財)NHK交響楽団 注(2) 1,028
(株)NHKアート 4,340 582 380 (福)NHK厚生文化事業団 注(3) 148
(株)NHKメディアテクノロジー 10,405 373 272 日本放送協会健康保険組合
(株)NHK出版 14,351 7 3 (一財)日本放送協会共済会 注(2) 5,373
(株)NHKビジネスクリエイト 9,291 298 42 関連公益法人等計 15,382
(株)NHKアイテック 15,395 24 12  
(株)NHK文化センター 1,043 - -
NHK営業サービス(株) 3,438 83 69
子会社計 94,892 7,216 5,148
(株)放送衛星システム 12,823 510 254
NHK Cosmomedia America, Inc. 注(1) 641 77 -
NHK Cosmomedia(Europe)Ltd. 注(1) △17 9 -
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ 1,635 - -
関連会社計 15,081 597 254
注(1)
海外関連会社の数値は、1ドル=112.68円、1ポンド=161.92円(決算日為替レート)により換算したものである。
注(2)
「剰余金に相当する額」欄は、一般正味財産期末残高である。
注(3)
「剰余金に相当する額」欄は、流動資産から流動負債等を差し引いたものである。

関連団体のうち子会社13社について、18年度から27年度までの間の各年度の利益剰余金、配当等の推移をみると、図表2-4のとおりとなっている。各年度の当期純利益は、44億余円から69億余円の間で推移している中で、19年度決算に基づき20年度に実施した配当は、73億余円と最も多額であったため、20年度末の利益剰余金が前年度末に比べて19億余円減少しているのに対して、近年は、配当実施額が減少し、任意積立金の積立てが増加していることにより利益剰余金が増加する傾向となっている。

図表2-4 子会社の利益剰余金、配当等の推移

(単位:百万円)
年度
区分
平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
前期末利益剰余金(a) 75,935 76,159 77,732 75,757 78,240 81,994 82,980 86,452 88,868 91,633
当期配当実施額 4,984 3,353 7,381 3,020 2,953 3,461 2,926 2,201 2,679 2,145
当期純利益 5,238 4,971 6,028 6,003 6,708 4,458 6,398 6,965 6,197 5,402
当期末利益剰余金(b) 76,159 77,732 75,757 78,240 81,994 82,980 86,452 88,868 91,633 94,892
  利益準備金 666 760 827 856 863 867 870 858 863 867
任意積立金 55,032 65,163 62,772 64,941 68,390 71,641 72,680 75,129 79,549 81,598
繰越利益剰余金 20,460 11,808 12,157 12,442 12,740 10,471 12,901 12,880 11,220 12,425
利益剰余金増減額(b)-(a) 224 1,572 △1,975 2,482 3,754 985 3,472 2,416 2,764 3,259
(注)
平成18年度当時は関連会社であったが、後に子会社と合併するなどした(株)日本文字放送及び(株)総合ビジョンを含めている。
ウ 子会社の決算の状況
(ア) 27年度末の総資産、自己資本等の状況

子会社の27年度末の総資産、自己資本等の状況を会社別にみると、図表2-5のとおり、子会社13社の総資産は計1590億余円、自己資本は計990億余円、自己資本比率(総資産に占める自己資本の割合)は、平均で59.2%となっており、株式会社NHK文化センターが26.7%と低率になっているものの、残りの12社は経営が安定し倒産しにくい企業の自己資本比率の目安とされている40%を、うち11社は50%を超えていて、全体として財務面での健全性は高いと思料される。

また、統計調査において、協会の子会社の業務が該当する情報通信業、サービス業及び建設業の27年度決算期における自己資本比率をみると、情報通信業の資本金額10億円以上の平均は61.1%、同1億円以上10億円未満の平均は55.7%、同5000万円以上1億円未満の平均は47.8%、サービス業の資本金額1億円以上10億円未満の平均は37.2%、建設業の資本金額1億円以上10億円未満の平均は41.2%であることから、この数値と業種、資本金額がそれぞれ該当する各会社の自己資本比率とを比較すると、10社は各会社の自己資本比率が平均を上回っていて、多くの子会社で財務面での健全性が損なわれている状況にはないと思料される。

さらに、自己資本の一部である利益剰余金額及び利益剰余金の総資産に対する割合をみると、利益剰余金額は計948億余円、同割合の平均は55.5%となっており、13社中11社が40%以上、うち5社は60%以上となっていて、多くの子会社において、十分な財務上の余力があると思料される。

そして、すぐに現金化できる当座資産額及び当座資産と短期の流動負債との比率であり、100%以上が支払安定性の目安とされる当座比率をみると、当座資産額は計969億余円、当座比率の平均は239.6%となっていて、13社中、株式会社NHK文化センターを除く12社が100%以上、うち7社は200%を超えている。

したがって、それぞれの子会社に係る経営方針にもよるが、利益剰余金額、当座資産額等の資産状況等から、子会社の中には十分な財務上の余力がある会社が見受けられ、利益剰余金が今後の新規投資等に向けられないのであれば、子会社において一定以上の規模での配当が十分可能な状態であると思料される。

図表2-5 子会社の平成27年度決算における会社別の総資産、自己資本等の状況

(単位:百万円、%)
会社名 総資産 自己資本 自己資本比率 利益剰余金の総資産に対する割合 当座資産
流動負債
当座比率
  うち資本金 うち利益剰余金   統計調査による業種別、資本金別自己資本比率 注(1)
分類
(a) (b) (c) (d) (b)/(a) (d)/(a) (e) (f) (e)/(f)
(株)NHKエンタープライズ 26,519 16,550 1,250.0 15,313 62.4 61.1 A 57.7 16,574 8,002 207.1
(株)NHKエデュケーショナル 10,411 6,495 100.0 6,390 62.3 55.7 B 61.3 6,814 3,535 192.7
(株)NHKグローバルメディアサービス 14,064 10,584 435.0 10,107 75.2 55.7 B 71.8 11,488 2,670 430.2
(株)日本国際放送 3,109 1,520 390.0 1,130 48.8 55.7 B 36.3 2,448 1,563 156.5
(株)NHKプラネット 3,988 2,625 358.5 2,290 65.8 55.7 B 57.4 3,314 1,001 330.7
(株)NHKプロモーション 2,857 1,497 100.0 1,392 52.4 37.2 C 48.7 1,937 1,129 171.5
(株)NHKアート 8,262 4,540 200.0 4,340 54.9 55.7 B 52.5 6,585 2,131 308.9
(株)NHKメディアテクノロジー 19,068 10,811 380.0 10,405 56.6 55.7 B 54.5 8,947 5,136 174.1
(株)NHK出版 18,962 14,416 64.8 14,351 76.0 47.8 D 75.6 8,310 2,370 350.4
(株)NHKビジネスクリエイト 14,971 9,496 205.0 9,291 63.4 37.2 C 62.0 3,047 1,592 191.3
(株)NHKアイテック 26,796 15,713 300.0 15,395 58.6 41.2 E 57.4 20,831 8,313 250.5
(株)NHK文化センター 4,597 1,230 100.0 1,043 26.7 37.2 C 22.7 2,855 2,899 98.4
NHK営業サービス(株) 5,400 3,588 100.0 3,438 66.4 37.2 C 63.6 3,764 1,492 252.2
計(平均) 159,009 99,073 3,983.3 94,892 (59.2) (55.5) 96,919 41,839 (239.6)
注(1)
「分類」欄は統計調査における区分により分類したものであり、Aは情報通信業の資本金区分10億円以上、Bは情報通信業の資本金区分1億円以上10億円未満、Cはサービス業の資本金区分1億円以上10億円未満、Dは情報通信業の資本金区分5000万円以上1億円未満、Eは建設業の資本金区分1億円以上10億円未満である。
注(2)
当座資産の数値は、流動資産のうち、現金、預金、受取手形、売掛金、有価証券等を合計したものから貸倒引当金等を控除したものである。
注(3)
自己資本比率、利益剰余金の総資産に対する割合及び当座比率の平均欄は、各子会社のそれぞれの値の合計を子会社数で除したものである。

さらに、このうち子会社の利益剰余金について、その経理上の区分は図表2-6のとおりであり、その27年度決算における内訳をみると、図表2-7のとおりとなっていて、27年度決算においては、任意積立金と繰越利益剰余金を合わせたその他利益剰余金計940億余円が利益剰余金全体の99.0%を占めている。そして、任意積立金の大半は目的積立金であり、そのうち事業維持積立金計658億余円が利益剰余金全体の69.3%を占めている。

この事業維持積立金は、子会社の事業に不可欠な資産と処分可能な資産とを明確に区分することにより純資産の構成を明らかにするために、19年度に子会社が協会の指示により、従前積み立てられていた別途積立金を取り崩して事業に不可欠な資産に対応する利益剰余金として組み替えることにより新設したものである。

また、繰越利益剰余金は利益剰余金全体の13.0%の計124億余円となっている。

図表2-6 子会社における利益剰余金の区分

図表2-6 子会社における利益剰余金の区分 画像

図表2-7 子会社の平成27年度決算における利益剰余金の内訳

(単位:百万円)
会社名 利益剰余金
  利益準備金 その他利益剰余金
  任意積立金 繰越利益剰余金
目的積立金 別途積立金
  うち事業維持積立金
(株)NHKエンタープライズ 15,313 312 15,000 14,300 11,300 - 700
(株)NHKエデュケーショナル 6,390 25 6,365 5,718 5,718 - 647
(株)NHKグローバルメディアサービス 10,107 108 9,998 6,000 4,000 - 3,998
(株)日本国際放送 1,130 - 1,130 - - - 1,130
(株)NHKプラネット 2,290 37 2,252 1,017 1,017 180 1,054
(株)NHKプロモーション 1,392 20 1,372 1,000 1,000 - 372
(株)NHKアート 4,340 50 4,290 3,430 3,430 - 860
(株)NHKメディアテクノロジー 10,405 95 10,310 9,050 7,550 - 1,260
(株)NHK出版 14,351 16 14,335 12,928 9,500 - 1,407
(株)NHKビジネスクリエイト 9,291 51 9,240 8,660 5,200 - 580
(株)NHKアイテック 15,395 75 15,320 15,000 13,100 200 120
(株)NHK文化センター 1,043 38 1,005 1,420 1,420 - △415
NHK営業サービス(株) 3,438 37 3,401 2,630 2,600 64 706
94,892 867 94,024 81,154 65,836 444 12,425
 
構成比(%) 100.0 0.9 99.0 85.5 69.3 0.4 13.0
(イ) 当期純利益等の推移

18年度から27年度までの間の子会社の当期純利益、利益剰余金等の推移を分析する前提として、子会社の資本金額、従業員数及び売上高の推移から当該期間における会社規模の推移をみると、それぞれ図表2-8図表2-9及び図表2-10のとおりとなっていて、資本金額に大きな変化はみられないものの、関連団体に対する協会からの業務委託件数や出向者及び転籍者の受入れ人数が増加していることもあり、子会社全体の従業員数は18年度末の計4,478人から27年度末には計5,393人に、売上高は18年度の計2160億余円から27年度には計2471億余円に増加していて、子会社全体の規模は増大している状況となっている。

図表2-8 子会社の資本金額の推移

(単位:百万円)
年度
会社名
平成18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末
(株)NHKエンタープライズ 1,250 1,250 1,250 1,250 1,250 1,250 1,250 1,250 1,250 1,250
  (株)総合ビジョン 注(1) 200 200 200 200 200 200 200
(株)NHKエデュケーショナル 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100
(株)NHKグローバルメディアサービス 435 435 435 435 435 435 435
  (株)NHK情報ネットワーク 300 300 300
(株)日本文字放送 注(2) 400 400 161
(株)日本国際放送 注(3) 390 390 390 390 390 390 390 390
(株)NHKプラネット 358 358 358 358 358 358 358 358
  (株)NHKきんきメディアプラン 100 100
(株)NHK中部ブレーンズ 58 58
(株)NHKちゅうごくソフトプラン 50 50
(株)NHK九州メディス 50 50
(株)NHK東北プランニング 50 50
(株)NHK北海道ビジョン 50 50
(株)NHKプロモーション 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100
(株)NHKアート 200 200 200 200 200 200 200 200 200 200
(株)NHKメディアテクノロジー 380 380 380 380 380 380 380 380
  (株)NHKテクニカルサービス 300 300
(株)NHKコンピューターサービス 80 80
(株)NHK出版 注(4) 64 64 64 64 64 64 64 64 64 64
(株)NHKビジネスクリエイト 205 205 205 205 205 205 205
  (株)NHK共同ビジネス 155 155 155
(株)NHKオフィス企画 50 50 50
(株)NHKアイテック 300 300 300 300 300 300 300 300 300 300
(株)NHK文化センター 200 200 200 200 200 200 100 100 100 100
NHK営業サービス(株) 150 150 150 150 150 150 150 150 100 100
4,208 4,208 4,359 4,333 4,333 4,333 4,233 4,033 3,983 3,983
注(1)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(2)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同会社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(3)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(4)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。

図表2-9 子会社の従業員数の推移

(単位:人)
年度
会社名
平成18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末
(株)NHKエンタープライズ 412 432 449 449 480 498 497 505 497 507
  (株)総合ビジョン 注(1) 14 13 12 15 12 12 12
(株)NHKエデュケーショナル 182 195 208 210 231 242 244 248 255 263
(株)NHKグローバルメディアサービス 329 345 348 369 377 380 385
  (株)NHK情報ネットワーク 265 281 292
(株)日本文字放送 注(2) 37 37 35
(株)日本国際放送 注(3) 34 33 39 46 58 63 60 65
(株)NHKプラネット 195 200 208 209 209 194 196 201
  (株)NHKきんきメディアプラン 41 44
(株)NHK中部ブレーンズ 42 41
(株)NHKちゅうごくソフトプラン 16 19
(株)NHK九州メディス 27 29
(株)NHK東北プランニング 18 19
(株)NHK北海道ビジョン 18 22
(株)NHKプロモーション 42 47 48 47 49 50 51 50 50 49
(株)NHKアート 245 240 234 226 223 222 226 237 250 249
(株)NHKメディアテクノロジー 1,107 1,107 1,118 1,119 1,107 1,116 1,110 1,172
  (株)NHKテクニカルサービス 737 783
(株)NHKコンピューターサービス 210 226
(株)NHK出版 注(4) 292 296 295 296 286 269 250 244 243 238
(株)NHKビジネスクリエイト 429 430 435 448 464 475 487
  (株)NHK共同ビジネス 251 260 262
(株)NHKオフィス企画 128 151 167
(株)NHKアイテック 755 742 769 788 783 754 768 788 803 816
(株)NHK文化センター 197 190 194 201 199 190 182 174 167 162
NHK営業サービス(株) 549 569 621 687 788 836 884 896 863 799
4,478 4,636 4,922 5,017 5,191 5,230 5,305 5,356 5,349 5,393
注(1)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(2)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(3)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(4)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。

図表2-10 子会社の売上高の推移

(単位:百万円)
年度
会社名
平成
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
18年度
(株)NHKエンタープライズ 43,085 44,039 46,542 45,448 51,375 52,881 51,141 53,839 53,736 54,431
  (株)総合ビジョン 注(1) 2,076 2,150 2,910 2,166 1,892 1,842 1,795
(株)NHKエデュケーショナル 14,869 18,204 19,957 20,245 21,485 21,403 21,127 22,872 23,251 23,571
(株)NHKグローバルメディアサービス 16,770 18,635 20,453 21,230 22,752 22,740 22,322
  (株)NHK情報ネットワーク 16,625 14,940 15,230
(株)日本文字放送 注(2) 1,733 1,801 1,601
(株)日本国際放送 注(3) 763 2,509 3,937 4,574 4,985 5,650 6,582 7,957
(株)NHKプラネット 8,088 7,691 8,253 7,759 6,482 6,867 7,042 7,810
  (株)NHKきんきメディアプラン 2,838 3,064
(株)NHK中部ブレーンズ 2,087 1,657
(株)NHKちゅうごくソフトプラン 636 553
(株)NHK九州メディス 698 539
(株)NHK東北プランニング 429 605
(株)NHK北海道ビジョン 670 616
(株)NHKプロモーション 注(4) 5,150 6,796 5,903 4,964 5,986 6,919 6,591 7,828 8,692 8,285
(株)NHKアート 13,193 14,144 14,919 14,741 14,332 14,713 15,166 15,311 15,526 16,040
(株)NHKメディアテクノロジー 26,280 27,570 27,055 27,017 29,789 31,212 31,045 31,725
  (株)NHKテクニカルサービス 16,865 17,448
(株)NHKコンピューターサービス 5,737 7,311
(株)NHK出版 注(5) 22,349 21,234 21,439 20,308 18,697 17,289 17,104 16,220 15,431 14,365
(株)NHKビジネスクリエイト 9,875 9,836 9,286 9,198 9,386 9,954 9,733
  (株)NHK共同ビジネス 6,115 5,939 6,192
(株)NHKオフィス企画 2,857 3,279 4,202
(株)NHKアイテック 40,460 38,903 45,774 52,536 52,277 41,297 37,983 47,685 37,122 32,737
(株)NHK文化センター 9,796 9,599 9,545 9,432 9,323 8,419 8,342 8,087 7,775 7,537
NHK営業サービス(株) 7,782 7,825 8,526 10,097 12,731 17,167 13,396 11,694 11,012 10,662
216,062 220,656 237,880 244,359 255,818 251,025 244,336 259,410 249,913 247,183
注(1)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(2)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(3)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(4)
(株)NHKプロモーションの平成18年度から21年度までの数値は消費税込みである。
注(5)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。

子会社の当期純利益について、18年度から27年度までの間の推移をみると、図表2-11のとおり、一部の子会社において、赤字となっている年度があり、また、年度により当期純利益の増減はあるものの、27年度は、子会社13社のうち、9社が10か年度連続で黒字となるなどして子会社全体で計54億余円となっている。子会社全体の当期純利益は、直近10年間で計44億余円から計69億余円で推移しているが、増減の要因として、当期純利益が最も多額となっている25年度は、東京スカイツリーの受信対策業務や番組制作及びシステム設計開発の受託増加により売上高が増加した影響等によるものであり、最も少額となっている23年度は、子会社2社において東日本大震災の影響により赤字となったことなどの影響によるものである。

図表2-11 子会社の当期純利益の推移

(単位:百万円)
年度
会社名
平成
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
18年度
(株)NHKエンタープライズ 1,120 709 645 594 2,110 844 1,162 1,341 785 460
  (株)総合ビジョン 注(1) 79 101 156 74 43 58 13  
(株)NHKエデュケーショナル 527 580 427 338 412 387 441 554 494 623
(株)NHKグローバルメディアサービス 553 402 739 844 1,249 1,271 1,285
  (株)NHK情報ネットワーク 762 887 329
(株)日本文字放送 注(2) 208 270 176
(株)日本国際放送 注(3) △125 △16 79 138 231 149 286 386
(株)NHKプラネット 78 117 57 54 △7 118 122 115
  (株)NHKきんきメディアプラン 75 106
(株)NHK中部ブレーンズ 31 11
(株)NHKちゅうごくソフトプラン 19 3
(株)NHK九州メディス 20 7
(株)NHK東北プランニング 8 5
(株)NHK北海道ビジョン 17 23
(株)NHKプロモーション 注(4) 121 82 189 12 42 85 87 90 28 51
(株)NHKアート 266 334 452 413 321 273 668 573 609 653
(株)NHKメディアテクノロジー 547 546 546 447 852 960 745 733
  (株)NHKテクニカルサービス 567 598
(株)NHKコンピューターサービス 99 130
(株)NHK出版 注(5) 100 △657 652 190 △308 △610 666 818 585 324
(株)NHKビジネスクリエイト 324 156 498 534 519 551 578
  (株)NHK共同ビジネス 406 431 419
(株)NHKオフィス企画 98 110 42
(株)NHKアイテック 301 798 1,758 2,501 2,530 1,098 748 618 613 46
(株)NHK文化センター 82 46 3 26 △138 △259 20 △115 11 △24
NHK営業サービス(株) 323 389 274 323 451 701 133 88 90 166
5,238 4,971 6,028 6,003 6,708 4,458 6,398 6,965 6,197 5,402
注(1)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(2)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(3)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(4)
(株)NHKプロモーションの平成18年度から21年度までの数値は消費税込みである。
注(5)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。
(ウ) 利益剰余金の推移

子会社の利益剰余金について、18年度から27年度までの間の推移をみると、図表2-12のとおり、子会社全体で、21年度末まではおおむね横ばい、22年度末以降は増加傾向となっていて、18年度末の計761億余円が27年度末は計948億余円となっている。

図表2-12 子会社の利益剰余金の推移

(単位:百万円)
年度
会社名
平成18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末
(株)NHKエンタープライズ 14,131 14,504 12,402 12,371 14,072 14,028 14,565 15,069 15,264 15,313
  (株)総合ビジョン 注(1) 868 959 1,106 1,170 1,204 1,253 1,257
(株)NHKエデュケーショナル 4,542 4,963 4,387 4,577 4,871 5,049 5,255 5,644 5,939 6,390
(株)NHKグローバルメディアサービス 7,296 7,304 7,703 7,989 8,638 9,302 10,107
  (株)NHK情報ネットワーク 7,881 8,539 7,058
(株)日本文字放送 注(2) 832 1,103 668
(株)日本国際放送 注(3) △125 △141 △62 76 307 457 743 1,130
(株)NHKプラネット 1,938 2,030 2,047 2,066 2,035 2,142 2,217 2,290
  (株)NHKきんきメディアプラン 804 896
(株)NHK中部ブレーンズ 254 257
(株)NHKちゅうごくソフトプラン 100 99
(株)NHK九州メディス 223 225
(株)NHK東北プランニング 318 318
(株)NHK北海道ビジョン 85 101
(株)NHKプロモーション 1,358 1,388 1,561 1,338 1,376 1,446 1,474 1,424 1,387 1,392
(株)NHKアート 815 1,150 1,592 1,986 2,268 2,481 3,070 3,357 3,827 4,340
(株)NHKメディアテクノロジー 8,752 9,107 9,171 9,235 9,880 10,385 9,990 10,405
  (株)NHKテクニカルサービス 6,866 7,216
(株)NHKコンピューターサービス 1,509 1,558
(株)NHK出版 注(4) 12,855 12,190 12,834 13,017 12,701 12,079 12,737 13,548 14,038 14,351
(株)NHKビジネスクリエイト 7,552 7,589 7,876 8,207 8,537 8,905 9,291
  (株)NHK共同ビジネス 5,245 5,487 5,755
(株)NHKオフィス企画 1,619 1,677 1,626
(株)NHKアイテック 11,546 10,550 12,029 13,511 14,842 14,981 15,129 15,357 15,641 15,395
(株)NHK文化センター 1,543 1,538 1,528 1,554 1,411 1,152 1,172 1,057 1,068 1,043
NHK営業サービス(株) 2,756 3,005 2,639 2,866 3,195 3,548 3,369 3,249 3,305 3,438
76,159 77,732 75,757 78,240 81,994 82,980 86,452 88,868 91,633 94,892
注(1)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(2)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(3)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(4)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。

また、各年度末の子会社の利益剰余金の内訳の推移をみると、図表2-13のとおりとなっていて、利益剰余金のうち、利益準備金は各年度末ともに少額で推移しており、また、繰越利益剰余金は、19年度末以降、各年度末時点でおおむね横ばいとなっている。そして、事業維持積立金は、19年度末以降、毎年増加しており、各年度末とも利益剰余金全体の7割程度を占めている。

図表2-13 子会社の利益剰余金の内訳の推移

図表2-13 子会社の利益剰余金の内訳の推移 画像

子会社の利益剰余金のうち、繰越利益剰余金について18年度から27年度までの間の推移をみると、図表2-14のとおり、18年度末には計204億余円であったが、19年度に事業維持積立金が新設されるなど利益剰余金の構成が大きく組み替えられたため、19年度末には計118億余円に大きく減少し、それ以降は年度によって増減はあるものの、計104億余円から計129億余円の間で推移し、27年度末には計124億余円とおおむね横ばいとなっている。

図表2-14 子会社の繰越利益剰余金の推移

(単位:百万円)
年度
会社名
平成18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末
(株)NHKエンタープライズ 4,848 1,192 1,589 1,258 2,960 1,416 1,652 1,456 1,152 700
  (株)総合ビジョン 注(1) 861 851 997 1,060 1,093 1,141 1,144 1,144
(株)NHKエデュケーショナル 1,017 609 494 384 478 456 612 651 596 647
(株)NHKグローバルメディアサービス 1,189 1,195 1,594 1,880 2,529 3,193 3,998
  (株)NHK情報ネットワーク 1,806 2,464 983
(株)日本文字放送 注(2) 526 797 362
(株)日本国際放送 注(3) △125 △141 △62 76 307 457 743 1,130
(株)NHKプラネット 724 813 826 843 810 915 986 1,054
  (株)NHKきんきメディアプラン 151 241
(株)NHK中部ブレーンズ 253 255
(株)NHKちゅうごくソフトプラン 100 70
(株)NHK九州メディス 31 33
(株)NHK東北プランニング 16 16
(株)NHK北海道ビジョン 64 70
(株)NHKプロモーション 1,042 368 541 318 356 426 454 404 367 372
(株)NHKアート 355 690 812 776 688 641 1,040 767 807 860
(株)NHKメディアテクノロジー 1,057 1,112 776 690 1,035 1,240 845 1,260
  (株)NHKテクニカルサービス 1,437 1,181
(株)NHKコンピューターサービス 507 151
(株)NHK出版 注(4) 1,303 39 1,285 1,329 454 231 1,491 2,302 1,093 1,407
(株)NHKビジネスクリエイト 742 158 505 536 525 554 580
  (株)NHK共同ビジネス 1,559 748 717
(株)NHKオフィス企画 855 403 54
(株)NHKアイテック 3,251 975 1,854 2,536 2,567 1,106 754 682 666 120
(株)NHK文化センター 141 81 69 95 △47 △307 △286 △401 △390 △415
NHK営業サービス(株) 329 564 737 964 1,293 1,646 1,467 1,347 603 706
20,460 11,808 12,157 12,442 12,740 10,471 12,901 12,880 11,220 12,425
注(1)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(2)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(3)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(4)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。
(エ) 任意積立金の状況

a 目的積立金のうち事業維持積立金の状況

前記のとおり、事業維持積立金は、子会社の事業に不可欠な資産と処分可能な資産とを明確に区分することにより純資産の構成を明らかにするために、19年度に新設されたものである。そして、子会社の事業に不可欠な資産には、事業運営上不可欠な固定資産等のほか、協会が、子会社に対する融資や債務保証を行うことが放送法では認められないため、子会社自ら又は他から確保することが必要とされる運転資金も含まれている。

事業維持積立金の積立額について、18年度から27年度までの間の推移をみると、図表2-15のとおりとなっていて、19年度末に当時の子会社18社及び関連会社1社の計19社で計517億余円が積み立てられていた。そして、20年度以降も各子会社で積増しが行われ、27年度末で株式会社日本国際放送を除く子会社12社で計658億余円が積み立てられている。

図表2-15 子会社の事業維持積立金の積立額の推移

(単位:百万円)
年度
会社名
平成18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末
(株)NHKエンタープライズ - 8,000 9,500 8,500 9,800 10,800 10,800 10,800 11,300 11,300
  (株)総合ビジョン 注(1) - 100 100 100 100 100 100
(株)NHKエデュケーショナル - 4,329 3,868 4,168 4,368 4,468 4,568 4,918 5,318 5,718
(株)NHKグローバルメディアサービス 4,000 4,000 4,000 4,000 4,000 4,000 4,000
  (株)NHK情報ネットワーク - 4,000 4,000
(株)日本文字放送 注(2) - - -
(株)日本国際放送 注(3) - - - - - - - -
(株)NHKプラネット 1,017 1,017 1,017 1,017 1,017 1,017 1,017 1,017
  (株)NHKきんきメディアプラン - 650
(株)NHK中部ブレーンズ - -
(株)NHKちゅうごくソフトプラン - 28
(株)NHK九州メディス - 190
(株)NHK東北プランニング - 120
(株)NHK北海道ビジョン - 29
(株)NHKプロモーション - 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000
(株)NHKアート - 410 730 1,160 1,530 1,790 1,980 2,540 2,970 3,430
(株)NHKメディアテクノロジー 6,200 6,400 6,800 6,950 7,250 7,550 7,550 7,550
  (株)NHKテクニカルサービス - 5,000
(株)NHKコンピューターサービス - 1,000
(株)NHK出版 注(4) - 9,800 9,200 9,200 9,200 8,800 7,800 7,800 9,500 9,500
(株)NHKビジネスクリエイト 5,070 5,070 5,050 5,100 5,200 5,200 5,200
  (株)NHK共同ビジネス - 4,400 4,400
(株)NHKオフィス企画 - 450 670
(株)NHKアイテック - 9,000 9,000 9,600 10,500 11,700 12,200 12,500 12,800 13,100
(株)NHK文化センター - 1,420 1,420 1,420 1,420 1,420 1,420 1,420 1,420 1,420
NHK営業サービス(株) - 1,800 1,800 1,800 1,800 1,800 1,800 1,800 2,600 2,600
- 51,727 52,906 53,436 56,606 58,896 59,036 60,546 64,676 65,836
注(1)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(2)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(3)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(4)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。

協会が各子会社に対して示している事業維持積立金の要積立額の算定方法は、おおむね次のとおりである。すなわち、事業維持積立金の要積立額は、維持すべき資本の額から資本金、資本剰余金及び利益準備金の合計を差し引いた額とされ、維持すべき資本の額とは、次の①から③までを足し合わせた額とされている。

  • ① 最低保有資金(原則として、1月当たりの現金支出費用の3か月分)
  • ② 有形・無形固定資産の簿価
  • ③ 政策保有株式等(協会グループ会社間の持ち合い株式等)

a 目的積立金のうち事業維持積立金の状況 画像

維持すべき資本の額のうち、①の最低保有資金が子会社全体でみると3分の2程度を占めている。そして、この最低保有資金とは、必要運転資金のことであるとされ、原則として1月当たりの現金支出費用の3か月分とされているが、協会及び協会グループ内の会社との取引が大半で協会等からの入金をすぐに支払に充てることが可能である子会社の場合には、1か月分の支払額相当分とされていたり、契約により資金の受入れが長期になることが多い子会社の場合には、4か月分の支払額相当分とされていたりなどしていて、協会は、子会社の実態に応じた運用を認めている。

原則として1月当たりの現金支出費用の3か月分とする最低保有資金の算定方法については、おおむね損益計算書上の年間の営業費用から減価償却費を控除した額に12分の3を乗じて算定している。そして、この最低保有資金は、売上げに係る取引先からの資金の受入れが3か月の間全く行われないことを想定し、その間の支払に必要となる運転資金の全てを保有するという考え方に基づき算定しているとしている。

しかし、各子会社の事業は、資金を毎月継続して安定的に収入として受け入れることが見込まれる協会との取引も多く、取引先からの資金の受入れが全く行われないことは考えにくいことから、この算定方法は、資金の受払の実際の状況を考慮したものとはなっていないと思料される。また、子会社から協会に報告される最低保有資金の額について、根拠が明確に示されずに報告されているため、協会において検証することが困難となっているものが13社のうち5社(注4)見受けられた。

子会社の事業維持積立金が増加していることが利益剰余金全体の増加につながっていることから、適正な配当を実施させる点からは、事業維持積立金の額が妥当であることが重要である。

しかし、前記のとおり、各子会社の最低保有資金は必ずしも真に必要な額が報告されていないと思料されることなどから、協会は、子会社が行う事業維持積立金の算定の基礎となる最低保有資金の額の根拠を明確にさせ、子会社から協会への報告に基づいて検証を十分に行うなどして、最低保有資金の額の適正化を図り、適正な配当を実施させる点から、子会社の事業維持積立金の必要以上の増加を抑制する必要があると認められる。

(注4)
5社  株式会社NHKエンタープライズ、株式会社NHKプロモーション、株式会社NHKメディアテクノロジー、株式会社NHK出版、株式会社NHK文化センター

b 事業維持積立金以外の目的積立金の状況

子会社13社のうち7社が27年度末の貸借対照表の純資産の部の利益剰余金の内訳科目として、事業維持積立金以外の目的積立金を計上している。これら7社における目的積立金の名称と金額は図表2-16のとおりであり、27年度末には、子会社7社で、計22の積立金が積み立てられていて、その総額は、計153億円となっている。これは、事業維持積立金が新設されるなど利益剰余金の構成が大きく組み替えられた直後の19年度末の計9の積立金計50億余円に比べて3倍程度の規模となっている。

図表2-16 子会社の平成27年度末における事業維持積立金以外の目的積立金の状況

会社名 平成27年度末 (参考)19年度末
積立金名 積立金残高
(百万円)
同額が留保され続けている年数
(年)
(株)NHKエンタープライズ 積立金の数 6 事業基盤整備積立金 500 5 -
権利取得資金積立金 500 3
事務系システム統合積立金 800 4
次世代放送推進積立金 500 2
ロケ施設整備積立金 200 2
国際展開推進積立金 500 -
金額計
(百万円)
  3,000   -
(株)NHKグローバルメディアサービス 注(1) 積立金の数 2 事業拡張積立金 1,500 4 -
システム統合準備積立金 500 4
金額計
(百万円)
  2,000   -
(株)NHKメディアテクノロジー 注(2) 積立金の数 2 事業拡張積立金 1,300 7 2
プログラム積立金 200 5
金額計
(百万円)
  1,500   1,300
(株)NHK出版 注(3) 積立金の数 6 配当準備積立金 110 8以上 3
資料センター拡充積立金 700 8以上
書籍倉庫拡充積立金 1,500 8以上
顧客対応高度化積立金 400 5
電子出版事業開発積立金 300 5
コンテンツ管理システム構築積立金 400 3
金額計
(百万円)
  3,410   2,310
(株)NHKビジネスクリエイト 注(4) 積立金の数 4 設備拡充積立金 850 6 3
建物取得積立金 1,620 -
建物修繕積立金 890 2
新規事業積立金 100 3
金額計
(百万円)
  3,460   1,112
(株)NHKアイテック 積立金の数 1 事業基盤整備積立金 1,900 4 1
金額計
(百万円)
  1,900   300
NHK営業サービス(株) 積立金の数 1 事業基盤整備積立金 30 - -
金額計
(百万円)
  30   -
積立金の数 22     9
金額計
(百万円)
  15,300 5,022
注(1)
(株)NHKグローバルメディアサービスの19年度末は、(株)NHK情報ネットワークの数値である。
注(2)
(株)NHKメディアテクノロジーの19年度末は、(株)NHKテクニカルサービスと(株)NHKコンピューターサービスを合算した数値である。
注(3)
(株)NHK出版の19年度末の社名は、(株)日本放送出版協会である。また、買換資産圧縮積立金は除いている。
注(4)
(株)NHKビジネスクリエイトの19年度末は、(株)NHK共同ビジネスと(株)NHKオフィス企画を合算した数値である。

しかし、過去には当初の目的を達成するなどしたとして取り崩した目的積立金があった一方で、27年度末で積み立てられている目的積立金は、目的に係る具体的な計画等が明確にされておらず、その目的が具体化される見込みのないまま積み立てられるなどしてから同額が留保され続けているものが見受けられ、8年以上同額が留保され続けているものが3積立金、7年、6年のものがそれぞれ1積立金、5年のものが4積立金計上されている状況となっている。協会は、目的積立金が新設される場合には事前に報告を受けるなどしているが、その後、具体的な投資計画に基づくなどして、目的積立金の必要性や要積立額の妥当性の検証が十分に行われていない積立金が見受けられる状況となっていた。

協会において子会社の目的積立金の必要性等の検証が十分に行われていないものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例3> 協会において子会社の目的積立金の必要性等の検証が十分に行われていないもの

株式会社NHK出版(平成22年12月31日以前は、株式会社日本放送出版協会)は、27年度末において、計6の目的積立金計34億余円を積み立てている。協会は、このうち、書籍倉庫拡充積立金(積立額15億円)は、昭和46年にしゅん工した流通センター(取得価額11億余円、減価償却累計額11億余円)の建て替え資金として、また、資料センター拡充積立金(積立額7億円)は、59年にしゅん工した資料センター(取得価額8億余円、減価償却累計額6億余円)の老朽化及び拡充のための建て替え資金としてそれぞれ積み立てられているものであると把握しているとしている。上記の書籍倉庫拡充積立金は52年度決算利益処分において積立てが開始され、平成7年度決算利益処分において27年度末と同額の15億円となっており、また、資料センター拡充積立金は13年度決算の利益処分において27年度末と同額の7億円が積み立てられている。

しかし、その後、これらの積立金の積立額の変動はなく20年間又は14年間留保され続けていて、28年7月の会計実地検査の時点において、協会は、それぞれの具体的な計画等を把握できておらず、当該積立金について、投資計画等に基づくなどして、目的積立金の必要性や要積立額の妥当性の検証が十分に行われていない状況となっていた。

したがって、協会は、目的積立金の必要性等が適切に検証できるよう、子会社に対して、投資計画等を適切に定めさせたり、必要性の乏しい目的積立金については取り崩して配当財源に充てるなどの活用方法を検討させたりするよう指導する必要があると認められる。

c 別途積立金の状況

子会社の任意積立金のうち、使途を特定しないで積み立てられた別途積立金について、18年度から27年度までの間の推移をみると、図表2-17のとおりとなっていて、27年度末に、子会社3社で計4億余円が積み立てられている。

図表2-17 子会社の別途積立金残高の推移

(単位:百万円)
年度
会社名
平成18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末
(株)NHKエンタープライズ 9,000 5,000 - - - - - - - -
  (株)総合ビジョン 注(1) - - - - - - -
(株)NHKエデュケーショナル 3,500 - - - - - - - - -
(株)NHKグローバルメディアサービス - - - - - - -
  (株)NHK情報ネットワーク 6,000 2,000 2,000
(株)日本文字放送 注(2) 300 300 300
(株)日本国際放送 注(3) - - - - - - - -
(株)NHKプラネット 180 180 180 180 180 180 180 180
  (株)NHKきんきメディアプラン 650 -
(株)NHK中部ブレーンズ - -
(株)NHKちゅうごくソフトプラン - -
(株)NHK九州メディス 190 -
(株)NHK東北プランニング 300 180
(株)NHK北海道ビジョン 20 -
(株)NHKプロモーション 300 - - - - - - - - -
(株)NHKアート 370 - - - - - - - - -
(株)NHKメディアテクノロジー 100 100 - - - - - -
  (株)NHKテクニカルサービス 5,420 -
(株)NHKコンピューターサービス 500 100
(株)NHK出版 注(4) 9,200 - - - - - - - - -
(株)NHKビジネスクリエイト - - - - - - -
  (株)NHK共同ビジネス 3,650 - -
(株)NHKオフィス企画 - - -
(株)NHKアイテック 8,220 200 200 200 200 200 200 200 200 200
(株)NHK文化センター 1,370 - - - - - - - - -
NHK営業サービス(株) 2,410 610 64 64 64 64 64 64 64 64
51,400 8,390 2,844 544 444 444 444 444 444 444
注(1)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(2)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(3)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(4)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。

子会社は、19年度に事業維持積立金を設定し、その際に、事業に不可欠な資産に対応する利益剰余金を事業維持積立金とするなどしたが、27年度末において3社に積み立てられている別途積立金は、NHK営業サービス株式会社が19年度末決算の際に、主として配当の財源とするために取り崩した分を除いては、18年度までに積み立てられていた別途積立金の残高と19年度に積み立てた事業維持積立金の開差分がそのまま別途積立金として残されているものである。

したがって、協会は、子会社3社に対して、別途積立金について、取り崩して配当財源に充てるなどの活用方法を検討するよう指導する必要があると認められる。

(子会社ごとの利益剰余金等の状況については別表2を参照

エ 関連会社の決算の状況

27年度末における協会の関連会社4社のうち、NHK Cosmomedia America, Inc.及びNHK Cosmomedia(Europe)Ltd.の2社は、いずれも株式会社NHKエンタープライズの海外子会社であること、また、協会の直接出資がなく協会への配当も行われないことから、国内企業の経営指標による分析や配当に関する分析等になじまないため、分析はこれらの2社を除いた株式会社放送衛星システム及び株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズの2社(以下「関連会社2社」という。)について行うこととした。

なお、関連会社であった株式会社日本文字放送及び株式会社総合ビジョンについては、株式会社日本文字放送は自社株式の買取りを行い19年12月に子会社となったこと、株式会社総合ビジョンは25年7月に株式会社NHKエンタープライズを存続会社として合併したことから、前記子会社の決算の状況の中で記述している。

また、株式会社NHK名古屋ビルシステムズについては、21年6月に解散していること及び総資産規模も20年度末において1億余円であり、全体への影響も大きくないと思料されることから、今回の分析の対象から除いている。

(ア) 27年度末の総資産、自己資本等の状況

27年度末の関連会社2社の総資産、自己資本等の状況を会社別にみると、図表2-18のとおり、株式会社放送衛星システムは総資産592億余円、自己資本267億余円、自己資本比率45.1%、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは同39億余円、同28億余円、同72.1%となっていて、関連会社2社とも自己資本比率は、経営が安定し倒産しにくい企業の自己資本比率の目安とされている40%以上となっていて、財務面での健全性は高いと思料される。

また、自己資本の一部である利益剰余金額及び利益剰余金の総資産に対する割合をみると、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは16億余円、41.8%となっていて、十分な財務上の余力があると思料される。

そして、当座資産額及び当座比率をみると、株式会社放送衛星システムは90億余円、164.5%、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは25億余円、367.7%となっていて、関連会社2社とも当座比率は、支払安定性の目安とされる100%を超えている。

したがって、配当を実施していない株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、会社の経営方針にもよるが、近年は毎年度、配当を実施している株式会社放送衛星システムと同様に、利益剰余金額、当座資産額等の資産状況等から、十分な財務上の余力があり、利益剰余金が今後の新規投資等に向けられないのであれば、配当が十分可能であると思料される。

図表2-18 関連会社2社の平成27年度決算における会社別の総資産、自己資本等の状況

(単位:百万円、%)
会社名 総資産 自己資本 自己資本比率 利益剰余金の総資産に対する割合 当座資産 流動負債 当座比率
  うち資本金 うち利益剰余金
(a) (b) (c) (d) (b)/(a) (d)/(a) (e) (f) (e)/(f)
(株)放送衛星システム 59,232 26,740 15,000 12,823 45.1 21.6 9,027 5,487 164.5
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ 3,911 2,821 1,500 1,635 72.1 41.8 2,567 698 367.7
計(平均) 63,144 29,561 16,500 14,458 (58.6) (31.7) 11,594 6,185 (266.1)
注(1)
当座資産の数値は、流動資産のうち、現金、預金、受取手形、売掛金及び有価証券を合計したものから貸倒引当金を控除したものである。
注(2)
自己資本比率、利益剰余金の総資産に対する割合及び当座比率の平均欄は、関連会社2社のそれぞれの値の合計を関連会社数で除したものである。

さらに、このうち利益剰余金について内訳をみると、図表2-19のとおり、任意積立金が計上されている子会社の場合とは異なり、繰越利益剰余金が利益剰余金全体の98%を占めている状況となっている。

図表2-19 関連会社2社の平成27年度決算における利益剰余金の内訳

(単位:百万円)
会社名 利益剰余金
  利益準備金 その他利益剰余金
  任意積立金 繰越利益剰余金
目的積立金 別途積立金
  うち事業維持積立金
(株)放送衛星システム 12,823 247 12,575 - - - 12,575
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ 1,635 - 1,635 - - - 1,635
14,458 247 14,211 - - - 14,211
 
構成比(%) 100.0 1.7 98.2 - - - 98.2
(イ) 当期純利益等の推移

関連会社2社の18年度(株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは20年度。以下、エ(イ)及び(ウ)において同じ。)から27年度までの間の当期純利益、利益剰余金等の推移を分析する前提として、関連会社2社の資本金額、従業員数及び売上高の推移から当該期間における会社規模の推移をみると、それぞれ図表2-20図表2-21及び図表2-22のとおりとなっていて、資本金額に変化はみられないものの、27年度末の従業員数は関連会社2社とも18年度末(株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは20年度末)に比べて増加している。また、売上高については、株式会社放送衛星システムは増加傾向となっていて、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは22年度まで増加傾向であったが23年度以降減少傾向となっている。

図表2-20 関連会社2社の資本金額の推移

(単位:百万円)
年度
会社名
平成18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末
(株)放送衛星システム 15,000 15,000 15,000 15,000 15,000 15,000 15,000 15,000 15,000 15,000
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(注) 1,500 1,500 1,500 1,500 1,500 1,500 1,500 1,500
15,000 15,000 16,500 16,500 16,500 16,500 16,500 16,500 16,500 16,500
(注)
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、平成19年改正法の施行に伴い、平成20年度から関連会社となった。

図表2-21 関連会社2社の従業員数の推移

(単位:人)
年度
会社名
平成18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末
(株)放送衛星システム 61 56 57 60 66 66 67 65 69 71
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(注) 13 14 14 15 16 17 17 16
61 56 70 74 80 81 83 82 86 87
(注)
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、平成19年改正法の施行に伴い、平成20年度から関連会社となった。

図表2-22 関連会社2社の売上高の推移

(単位:百万円)
年度
会社名
平成                  
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
(株)放送衛星システム 7,095 7,442 8,954 9,034 10,214 10,250 13,002 13,010 13,012 11,775
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(注) 9,825 14,236 20,832 13,032 5,769 6,462 5,925 4,722
7,095 7,442 18,779 23,271 31,047 23,282 18,771 19,473 18,938 16,497
(注)
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、平成19年改正法の施行に伴い、平成20年度から関連会社となった。

関連会社2社の当期純利益について、18年度から27年度までの間の推移をみると、図表2-23のとおり、株式会社放送衛星システムは10か年度連続で黒字となっており、また、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、赤字となっている年度があり、当期純利益の増減はあるものの、黒字となっている年度が多くなっている。

図表2-23 関連会社2社の当期純利益の推移

(単位:百万円)
年度
会社名
平成                  
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
(株)放送衛星システム 645 870 663 1,032 1,194 594 1,863 1,876 2,040 1,193
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(注) △52 120 177 470 91 107 10 △63
645 870 611 1,152 1,371 1,065 1,955 1,983 2,050 1,129
(注)
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、平成19年改正法の施行に伴い、平成20年度から関連会社となった。
(ウ) 利益剰余金の推移

関連会社2社の利益剰余金について、18年度から27年度までの間の推移をみると、図表2-24のとおり、関連会社2社とも増加傾向となっており、株式会社放送衛星システムは、18年度末の39億余円から27年度末には128億余円に増加しており、また、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、20年度末の5億余円から27年度末には16億余円に増加している。

図表2-24 関連会社2社の利益剰余金の推移

(単位:百万円)
年度
会社名
平成18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末
(株)放送衛星システム 3,969 4,839 5,503 6,535 7,472 7,769 9,483 10,579 12,139 12,823
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(注) 562 682 859 1,330 1,421 1,529 1,539 1,635
3,969 4,839 6,065 7,218 8,331 9,099 10,905 12,108 13,679 14,458
(注)
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、平成19年改正法の施行に伴い、平成20年度から関連会社となった。

関連会社2社の利益剰余金のうち、繰越利益剰余金について18年度から27年度までの間の推移をみると、図表2-25のとおりとなっている。前記のとおり、関連会社2社は、繰越利益剰余金が利益剰余金の全て又は大半を占めているため、利益剰余金と同様の傾向となっており、関連会社2社とも増加傾向となっている。株式会社放送衛星システムは、18年度末の39億余円から27年度末には125億余円に増加しており、また、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、20年度末の5億余円から27年度末には16億余円に増加している。

図表2-25 関連会社2社の繰越利益剰余金の推移

(単位:百万円)
年度
会社名
平成18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末
(株)放送衛星システム 3,969 4,839 5,503 6,535 7,446 7,713 9,412 10,430 11,943 12,575
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(注) 562 682 859 1,330 1,421 1,529 1,539 1,635
3,969 4,839 6,065 7,218 8,305 9,044 10,834 11,960 13,482 14,211
(注)
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、平成19年改正法の施行に伴い、平成20年度から関連会社となった。

(関連会社ごとの利益剰余金等の状況については別表2を参照

オ 関連公益法人等の決算の状況

協会の関連公益法人等には、公益法人会計基準を採用している一般財団法人5団体及び公益財団法人1団体、学校法人会計基準を採用している学校法人1団体並びに社会福祉法人会計基準を採用している社会福祉法人1団体がある。そして、関連公益法人等の18年度から27年度までの間の一般正味財産等の推移を分析する前提として、関連公益法人等の従業員数の推移から当該期間における団体規模の推移をみると、図表2-26のとおりとなっていて、18年度と比べて27年度が増加している団体が4団体、減少している団体が4団体あるが、関連公益法人等全体では、おおむね横ばいとなっている。

図表2-26 関連公益法人等の従業員数の推移

(単位:人)
年度
団体名
平成18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末
(一財)NHKサービスセンター 注(1) 279 284 274 275 252 238 231 236 231 232
(一財)NHKインターナショナル 注(2) 29 28 27 27 27 43 51 42 42 41
(一財)NHKエンジニアリングシステム 注(3) 41 49 58 57 57 55 58 77 74 72
(一財)NHK放送研修センター 注(4) 64 67 70 71 70 72 68 70 68 69
(学)日本放送協会学園 131 131 127 125 119 127 137 129 118 113
(公財)NHK交響楽団 注(5) 126 134 133 130 135 138 134 135 135 133
(福)NHK厚生文化事業団 15 15 15 16 16 18 18 13 12 14
(一財)日本放送協会共済会 注(6) 182 174 169 166 162 159 150 130 131 128
867 882 873 867 838 850 847 832 811 802
注(1)
(一財)NHKサービスセンターは、平成25年4月1日に(財)NHKサービスセンターから移行した。
注(2)
(一財)NHKインターナショナルは、平成25年4月1日に(財)NHKインターナショナルから移行した。
注(3)
(一財)NHKエンジニアリングシステムは、平成25年4月1日に(財)NHKエンジニアリングサービスから移行した。
注(4)
(一財)NHK放送研修センターは、平成25年4月1日に(財)NHK放送研修センターから移行した。
注(5)
(公財)NHK交響楽団は、平成22年4月1日に(財)NHK交響楽団から移行した。
注(6)
(一財)日本放送協会共済会は、平成25年10月1日に(財)日本放送協会共済会から移行した。
(ア) 一般財団法人及び公益財団法人の一般正味財産の状況

一般財団法人5団体及び公益財団法人1団体について、便宜的に、一般正味財産を剰余金に相当する額としてその期末残高及び当期一般正味財産増減額の18年度から27年度までの間の推移をみると、図表2-27のとおりとなっている。一般正味財産期末残高は、18年度末の計112億余円から27年度末には計148億余円に増加しており、27年度末は、18年度末と比べて全ての団体で増加している。また、当期一般正味財産増減額は、27年度は計約2300万円の増加となっており、18年度以降はいずれの法人も減少となっている年度があり、年度により増加額の幅はあるものの、増加している年度が多い状況となっている。

図表2-27 一般正味財産期末残高及び当期一般正味財産増減額の推移

(単位:百万円)
年度
団体名、区分
平成                  
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
(一財)NHKサービスセンター
注(1)注(2)
当期一般正味財産増減額 270 71 △183 △110 156 92 289 148 99 △32
一般正味財産期末残高 3,763 3,835 3,652 3,542 3,698 3,790 4,080 4,229 4,329 4,763
(一財)NHKインターナショナル
注(3)
当期一般正味財産増減額 9 76 159 72 209 11 6 △8 6 70
一般正味財産期末残高 970 1,046 1,206 1,279 1,489 1,500 1,507 1,499 1,505 1,575
(一財)NHKエンジニアリングシステム
注(4)
当期一般正味財産増減額 38 △16 61 80 △136 △37 117 49 62 82
一般正味財産期末残高 903 886 948 1,029 893 855 973 1,022 1,085 1,167
(一財)NHK放送研修センター
注(5)
当期一般正味財産増減額 44 20 3 5 △9 △23 41 39 38 18
一般正味財産期末残高 826 847 851 856 847 824 866 905 943 962
(公財)NHK交響楽団
注(6)注(7)注(8)
当期一般正味財産増減額 △34 32 117 125 137 76 59 △4 56 88
一般正味財産期末残高 338 370 487 613 751 828 887 882 939 1,028
(一財)日本放送協会共済会
注(9)注(10)注(11)
当期一般正味財産増減額 77 98 130 660 △0 33 △323 △804 1,636 △204
一般正味財産期末残高 4,411 4,510 4,641 5,301 5,300 5,334 5,010 4,206 5,578 5,373
当期一般正味財産増減額 405 283 289 834 357 154 191 △580 1,899 23
一般正味財産期末残高 11,214 11,498 11,788 12,622 12,980 13,134 13,325 12,745 14,381 14,870
注(1)
(一財)NHKサービスセンターは、平成25年4月1日に(財)NHKサービスセンターから移行した。
注(2)
(一財)NHKサービスセンターの平成27年度の一般正味財産期末残高には、27年度の当期一般正味財産増減額のほかに「合併による一般正味財産増加額」466百万円が含まれる。
注(3)
(一財)NHKインターナショナルは、平成25年4月1日に(財)NHKインターナショナルから移行した。
注(4)
(一財)NHKエンジニアリングシステムは、平成25年4月1日に(財)NHKエンジニアリングサービスから移行した。
注(5)
(一財)NHK放送研修センターは、平成25年4月1日に(財)NHK放送研修センターから移行した。
注(6)
(公財)NHK交響楽団は、平成22年4月1日に(財)NHK交響楽団から移行した。
注(7)
(公財)NHK交響楽団の平成18年度の当期一般正味財産増減額の数値は、「正味財産増加(減少)額」である。
注(8)
(公財)NHK交響楽団の平成18年度の一般正味財産期末残高の数値は、正味財産の額から基本金の額を差し引いたものである。
注(9)
(一財)日本放送協会共済会は、平成25年10月1日に(財)日本放送協会共済会から移行した。
注(10)
(一財)日本放送協会共済会の平成25年度の当期一般正味財産増減額の数値は、移行前の(財)日本放送協会共済会との合算である。
注(11)
(一財)日本放送協会共済会の平成26年度の一般正味財産期末残高には、26年度の当期一般正味財産増減額のほかに「退職給付会計基準適用に伴う調整額」△264百万円が含まれる。
(イ) 学校法人及び社会福祉法人の流動資産等の状況

学校法人及び社会福祉法人は、一般財団法人及び公益財団法人とは適用される会計基準が違うため、学校法人1団体及び社会福祉法人1団体について、便宜的に、流動資産から流動負債等を差し引いた額を剰余金に相当する額として、年度末残高の18年度から27年度までの間の推移をみると、図表2-28のとおりとなっている。学校法人日本放送協会学園は、27年度末の流動資産が11億余円、流動負債等が7億余円となっていて、流動資産及び流動負債等ともに減少傾向になっており、流動資産から流動負債等を差し引いた額は27年度末3億余円となっていて、おおむね減少傾向になっている。また、社会福祉法人NHK厚生文化事業団は、27年度末の流動資産が1億余円、流動負債が約2900万円となっていて、流動資産及び流動負債ともに年度により増減があるものの、おおむね横ばいとなっており、流動資産から流動負債を差し引いた額は27年度末1億余円となっていて、1億余円から2億余円の間で推移し、おおむね横ばいとなっている。

図表2-28 学校法人及び社会福祉法人の流動資産から流動負債等を差し引いた額の推移

(単位:百万円)
年度
団体名、区分
平成18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末 年度末
(学)日本放送協会学園 流動資産(a) 3,053 2,704 2,734 2,694 2,063 1,860 1,527 1,420 1,324 1,127
流動負債等(注)(b) 1,889 1,616 1,717 1,616 1,378 1,313 1,182 1,065 921 763
(a)-(b) 1,164 1,087 1,017 1,077 684 546 345 354 403 363
(福)NHK厚生文化事業団 流動資産(c) 155 168 227 231 293 187 253 174 167 177
流動負債(d) 23 29 27 31 27 28 25 25 24 29
(c)-(d) 132 139 200 199 266 159 227 149 143 148
流動資産(a)+(c) 3,209 2,872 2,962 2,925 2,357 2,048 1,781 1,594 1,492 1,305
流動負債等(b)+(d) 1,912 1,645 1,744 1,647 1,406 1,342 1,207 1,090 945 792
(a)+(c)-((b)+(d)) 1,296 1,226 1,218 1,277 951 705 573 504 546 512
(注)
(学)日本放送協会学園の流動負債等の数値は、流動負債に長期未払金を加えたものである。

(3) 協会に対する配当の状況

ア 子会社の配当の状況
(ア) 配当の指針等の変遷

協会は、16年度決算に基づく配当までは、子会社の財務体質の健全化を図ることなどを目的として、売上高に対する協会との取引における協会の支払額の割合が高い子会社については配当を求める対象から除外していたこともあり、全体として利益に比べて配当を抑制し、利益を内部に留保させてきた。しかし、協会は、企業の一般的な増配傾向、不祥事に伴う受信料収入の減少による協会の厳しい財政状況、子会社に一定の財務体力がついてきたことなどから、17年に、配当を抑制する施策を転換し、協会が直接出資する子会社には、原則として、毎期、当該期純利益又は当該期末資本金のそれぞれに所定の率を乗じた額のうち高額なものを下限として配当を求めることとした。

そして、その後、関連団体の剰余金増加に対する社会的関心が高まるなどしていたことから、19年12月に、原則として、配当額は当該期純利益の35%相当額を下限とすることなどを定めた新しい配当の指針を制定した。

これらの協会の配当の指針等の変遷は、図表2-29のとおりである。

図表2-29 協会の配当の指針等の変遷

名称 内容
配当ガイドライン(平成9年4月)

1 関連団体(株式会社)の配当の実施は、自主業務の着実な展開を前提とし、NHKからの収入の割合(NHK取引率)を基準とする。

① 当期の売上高に占めるNHKからの収入割合が50%以下を目標とするが、当面経過措置として70%以下とする。

2 あわせて、健全な財務体質の指標として、当期利益の有無と一般企業でも用いられている財務諸表の数値を基準とする。

  • ② 当期利益が、過去3期以上出ている
  • ③ 前期および当期の売上高経常利益率2.5%以上
  • ④ 当期および当期末の自己資本比率が3.0%以上
  • ⑤ 当期および当期末の流動比率が120%以上

3 配当にあたっては、①を前提とした上で、②~⑤を参考にして総合的に判断する。

配当の指針(17年9月)

1 NHK関連団体の配当については、関連団体運営基準第11条(13)に基づき、当該関連団体とNHKとの間で事前に協議を行い、財務状況、事業計画、株主構成などを勘案したうえで、実施、規模等を決することとする。

2 NHKが直接出資している子会社(以下、直接出資子会社)については、配当に関する事前の協議にあたっての基本姿勢を以下のとおりと定める。

(配当の実施)

(1) 原則として毎期、配当を行う。

(配当の規模)

(2) 配当総額は、原則として、次の各号で計算した金額のうち高額のものを下限とする。

  • ① 当該期純利益の20%相当額
  • ② 当該期末資本金の5%相当額

※ 各号の数値は、平成20年度までに実施する配当に適用し、以降は、その時点の経済状況等を勘案して見直しを行う。

(その他)

(3) 配当の実施、配当の規模は、上記(1)、(2)を原則としつつも、直接出資子会社またはNHKの財政その他の事情により、事前に協議する中で、その規模について、無配を含み増減することがある。

3 本指針は、平成18年4月1日から適用する。

配当の指針(19年12月)

1 NHK関連団体の配当については、関連団体運営基準第11条(13)に基づき、当該関連団体とNHKとの間で事前に協議を行い、財務状況、事業計画、株主構成などを勘案したうえで、実施、規模等を決することとする。

2 NHKが直接出資している子会社(以下、直接出資子会社)については、配当に関する事前の協議にあたっての基本姿勢を以下のとおりと定める。

(配当の実施)

(1) 原則として毎期、配当を行う。

(配当の規模)

(2) 配当額は、原則として、次のとおりとする。

① 当該期純利益の35%相当額を下限とする。

② 当該期純利益が、年度当初に作成する事業計画上の当期純利益と比較して、これを上回る場合、その超過分は全額を配当に充てる。

③ ただし、中間期において、事業計画上の利益を大幅に超過することが想定される場合には、協会と協議の上、事業計画の修正を行うことがある。

(その他)

(3) 配当の実施、配当の規模は、上記(1)、(2)を原則としつつも、直接出資子会社またはNHKの財政その他の事情により、事前に協議する中で、その規模について、無配を含み増減することがある。

(4) 平成21年度以降に実施する配当に適用し、以降、経済状況等に大きく変化があった場合には、随時見直しを行う。

3 本指針は、平成21年4月1日から適用する。

(イ) 配当を受ける際の子会社との協議

子会社の配当については、運営基準に基づき、協会と子会社との間で事前に協議を行うこととなっており、その際に、財務状況、事業計画、株主構成等を勘案した上で、配当の有無、規模等を協議することとなっている。そして、この配当に関する事前協議は、例年、12月に当該年度の決算見込みの提出を子会社から受けた後に行われている。

(ウ) 配当の状況と協会の受取額の推移

子会社の18年度から27年度までの間の決算に基づく普通配当及び特例配当の配当額の推移並びに配当総額の推移をみると、図表2-30及び図表2-31のとおりとなっている。18年度決算に基づく配当は配当総額で計33億余円となっており、さらに、19年度決算に基づく配当は配当総額では計73億余円に上り、27年度決算に基づく配当までの間の中では最も多額となっている。その後、23年度決算に基づく配当まで計30億円前後で推移し、24年度決算に基づく配当から26年度決算に基づく配当までは、特例配当を実施しなかったこともあって配当の規模が縮小して計20億円台で推移している。

そして、27年度決算に基づく配当においては、利益剰余金が多額になるなどしたため、協会が子会社4社に対して計51億余円の特例配当を要請し、特例配当を実施しない子会社に対しては、配当の指針に基づく配当額の配当性向(当期純利益に対する配当金の割合)の下限を、当該期純利益の35%相当額から50%相当額に特例的に引き上げて要請したため、28年度における子会社からの配当総額が計72億余円に大きく増加している。

図表2-30 子会社全体の普通配当及び特例配当の配当額の推移

図表2-30 子会社全体の普通配当及び特例配当の配当額の推移 画像

図表2-31 子会社の配当総額の推移

(単位:百万円)
決算年度
会社名
平成                  
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
(株)NHKエンタープライズ 336 2,748 626 408 888 625 504 589 412 2,180
  (株)総合ビジョン 注(2) 10 10 10 10 10 10 -
(株)NHKエデュケーショナル 158 1,003 149 118 209 235 165 200 173 1,333
(株)NHKグローバルメディアサービス 394 340 559 296 608 480 2,250
  (株)NHK情報ネットワーク 229 1,810 315
(株)日本文字放送 注(3) - - 121
(株)日本国際放送 注(4) - - - - - - - -
(株)NHKプラネット 25 40 23 23 11 47 42 56
  (株)NHKきんきメディアプラン 15 37
(株)NHK中部ブレーンズ 5 2
(株)NHKちゅうごくソフトプラン 2 2
(株)NHK九州メディス 2 2
(株)NHK東北プランニング 2 2
(株)NHK北海道ビジョン 5 2
(株)NHKプロモーション 51 16 236 4 14 60 15 65 9 25
(株)NHKアート - 10 20 40 60 80 100 140 140 582
(株)NHKメディアテクノロジー 191 482 384 207 455 475 317 373
  (株)NHKテクニカルサービス 249 567
(株)NHKコンピューターサービス 49 32
(株)NHK出版 注(5) 7 7 7 7 11 7 7 7 11 7
(株)NHKビジネスクリエイト 119 210 203 189 182 193 298
  (株)NHK共同ビジネス 189 151 147
(株)NHKオフィス企画 52 39 54
(株)NHKアイテック 1,794 279 1,020 1,200 960 600 390 330 330 24
(株)NHK文化センター 52 14 - 5 - - - - - -
NHK営業サービス(株) 140 640 96 122 348 312 66 33 33 83
3,353 7,381 3,020 2,953 3,461 2,926 2,201 2,679 2,145 7,216
注(1)
年度の表示は、配当算定の基となった決算年度であり、配当実施は翌年度である。
注(2)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(3)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(4)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(5)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。

また、これらの配当のうち、持株比率に基づく協会の受取配当額の推移は、図表2-32のとおりとなっていて、27年度決算に基づく配当は計51億余円となっている。そして、最も多い額は19年度決算に基づく配当で計53億余円、最も少ない額は26年度決算に基づく配当で計13億余円となっている。

図表2-32 協会の子会社からの受取配当額の推移

(単位:百万円)
決算年度
会社名
平成                  
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
(株)NHKエンタープライズ 271 2,218 505 329 717 505 406 484 339 1,791
  (株)総合ビジョン 注(2) - - - - - - -
(株)NHKエデュケーショナル 106 672 99 79 140 157 110 134 115 893
(株)NHKグローバルメディアサービス 262 226 371 197 442 349 1,636
  (株)NHK情報ネットワーク 160 1,264 220
(株)日本文字放送 注(3) - - 36
(株)日本国際放送 注(4) - - - - - - - -
(株)NHKプラネット 13 20 12 12 6 24 22 29
  (株)NHKきんきメディアプラン 7 19
(株)NHK中部ブレーンズ 3 1
(株)NHKちゅうごくソフトプラン 1 1
(株)NHK九州メディス 1 1
(株)NHK東北プランニング 1 1
(株)NHK北海道ビジョン 2 1
(株)NHKプロモーション 29 9 134 2 8 34 8 39 6 15
(株)NHKアート - 6 12 25 38 50 63 91 91 380
(株)NHKメディアテクノロジー 135 340 270 146 321 335 231 272
  (株)NHKテクニカルサービス 174 397
(株)NHKコンピューターサービス 35 22
(株)NHK出版 注(5) 3 3 3 3 5 3 3 3 5 3
(株)NHKビジネスクリエイト 17 30 29 27 26 27 42
  (株)NHK共同ビジネス 24 19 19
(株)NHKオフィス企画 10 7 12
(株)NHKアイテック 902 140 513 604 483 302 196 166 166 12
(株)NHK文化センター 5 1 - 0 - - - - - -
NHK営業サービス(株) 112 512 76 98 278 250 53 27 28 69
1,853 5,302 1,782 1,784 2,211 1,863 1,394 1,776 1,383 5,148
注(1)
年度の表示は、配当算定の基となった決算年度であり、配当実施は翌年度である。
注(2)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(3)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(4)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(5)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。
(エ) 普通配当の状況

a 普通配当の配当額の推移

子会社の18年度から27年度までの間の決算に基づく普通配当の配当額の推移をみると、図表2-33のとおりとなっていて、配当の指針が19年12月に改められたことを契機に、19年度決算に基づく配当は増加している。そして、21年度決算に基づく配当からは、配当額が計20億円を超える状況が続いていて、27年度決算に基づく配当では計21億余円となっている。

普通配当の配当額について、協会は、配当の指針2(3)に基づき、子会社と事前に協議する中で、配当の指針2(2)に基づいて算定される配当額より減額した規模で配当を実施する場合があるとしており、配当額は、20年度決算に基づく配当から26年度決算に基づく配当までの7年間で、5会社において、計12件、計28億余円が減額されている状況となっている。

図表2-33 子会社の普通配当の配当額の推移

(単位:百万円)
決算年度
会社名
平成                  
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
(株)NHKエンタープライズ 224 248 226 208 738 295 504 589 412 180
  (株)総合ビジョン 注(2) 10 10 10 10 10 10 -
(株)NHKエデュケーショナル 105 203 38 118 144 135 165 200 173 333
(株)NHKグローバルメディアサービス 194 140 259 296 608 480 450
  (株)NHK情報ネットワーク 152 310 115
(株)日本文字放送 注(3) - - 37
(株)日本国際放送 注(4) - - - - - - - -
(株)NHKプラネット 25 40 23 23 11 47 42 56
  (株)NHKきんきメディアプラン 5 37
(株)NHK中部ブレーンズ 2 2
(株)NHKちゅうごくソフトプラン 2 2
(株)NHK九州メディス 2 2
(株)NHK東北プランニング 2 2
(株)NHK北海道ビジョン 2 2
(株)NHKプロモーション 24 16 66 4 14 60 15 65 9 25
(株)NHKアート - 10 20 40 60 80 100 140 140 282
(株)NHKメディアテクノロジー 191 191 384 207 455 475 317 373
  (株)NHKテクニカルサービス 113 209
(株)NHKコンピューターサービス 19 32
(株)NHK出版 注(5) 7 7 7 7 11 7 7 7 11 7
(株)NHKビジネスクリエイト 119 56 203 189 182 193 298
  (株)NHK共同ビジネス 81 151 147
(株)NHKオフィス企画 19 39 21
(株)NHKアイテック 60 279 620 1,200 960 600 390 330 330 24
(株)NHK文化センター 16 14 - 5 - - - - - -
NHK営業サービス(株) 64 140 96 113 157 312 66 33 33 83
917 1,722 1,622 2,253 2,702 2,196 2,201 2,679 2,145 2,116
注(1)
年度の表示は、配当算定の基となった決算年度であり、配当実施は翌年度である。
注(2)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(3)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(4)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(5)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。
注(6)
斜体字は、配当の指針2(3)に基づき子会社との事前協議を経るなどした結果、配当の指針2(2)に基づいて算定される配当額より減額した額で配当を実施したものである。

b 配当性向の推移

子会社が実施した18年度から27年度までの間の決算に基づく普通配当の配当性向の推移をみると、図表2-34のとおりとなっていて、配当の指針に基づいて配当が実施されているため、20年度決算に基づく配当以降は、配当性向の下限である当該期純利益の35%以上の配当がおおむね実施されている。

なお、各年度において配当性向の下限である当該期純利益の35%を超えて配当を実施している子会社が見受けられるのは、配当の指針2(2)②において、当該期純利益が、年度当初に作成する事業計画上の当期純利益と比較して、これを上回る場合、その超過分は全額を配当に充てると定められており、子会社の業績が年度当初に作成する事業計画上の当期純利益と比較して上回る場合が多いことによると思料される。

図表2-34 子会社の普通配当の配当性向の推移

(単位:%)
決算年度
会社名
平成                  
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
(株)NHKエンタープライズ 20.0 35.0 35.0 35.0 35.0 35.0 43.3 43.9 52.5 39.2
  (株)総合ビジョン 注(2) 12.5 9.8 6.3 13.4 22.8 16.9 -
(株)NHKエデュケーショナル 20.0 35.0 8.8 35.0 34.8 34.9 37.3 36.0 34.9 53.3
(株)NHKグローバルメディアサービス 35.0 35.0 35.0 35.0 48.6 37.7 35.0
  (株)NHK情報ネットワーク 19.9 35.0 35.0
(株)日本文字放送 注(3) - - 21.2
(株)日本国際放送 注(4) - - - - - - - -
(株)NHKプラネット 33.2 34.0 41.3 43.3 - 39.8 34.7 49.0
  (株)NHKきんきメディアプラン 6.6 35.0
(株)NHK中部ブレーンズ 9.4 24.8
(株)NHKちゅうごくソフトプラン 12.7 65.3
(株)NHK九州メディス 12.1 34.9
(株)NHK東北プランニング 30.2 45.1
(株)NHK北海道ビジョン 14.2 10.8
(株)NHKプロモーション 20.0 20.2 34.8 34.6 34.8 70.4 17.1 73.0 34.7 49.8
(株)NHKアート - 2.9 4.4 9.6 18.6 29.2 14.9 24.4 22.9 43.1
(株)NHKメディアテクノロジー 34.9 35.0 70.2 46.4 53.4 49.4 42.6 50.9
  (株)NHKテクニカルサービス 20.0 35.0
(株)NHKコンピューターサービス 19.9 24.5
(株)NHK出版 注(5) 7.7 - 1.1 4.0 - - 1.1 0.9 1.9 2.3
(株)NHKビジネスクリエイト 36.8 36.4 40.8 35.5 35.1 35.0 51.6
  (株)NHK共同ビジネス 20.0 35.1 35.0
(株)NHKオフィス企画 20.0 35.4 50.3
(株)NHKアイテック 20.0 35.0 35.2 47.9 37.9 54.6 52.1 53.3 53.7 51.9
(株)NHK文化センター 19.9 29.8 - 19.7 - - - - - -
NHK営業サービス(株) 19.9 36.1 35.0 34.9 35.0 44.5 49.7 38.0 37.7 50.0
17.5 34.6 26.9 37.5 40.2 49.2 34.4 38.4 34.6 39.1
注(1)
年度の表示は、配当算定の基となった決算年度であり、配当実施は翌年度である。
注(2)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(3)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(4)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(5)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。

c 配当の指針における原則を適用していない子会社の状況

配当の指針2(3)では、「直接出資子会社またはNHKの財政その他の事情により、事前に協議する中で、その規模について、無配を含み増減する」ことを認めており、協会によれば、この規定を適用して、配当の規模について原則を適用していない子会社が、26年度決算に基づく配当の時点において、図表2-35のとおり13社中5社ある。なお、この5社の中には、27年度決算に基づく配当において配当の指針における原則を適用して配当した子会社がある。

図表2-35 平成26年度決算に基づく配当において配当の指針における原則を適用していない子会社の状況

分類 会社名 状況
無配としているもの (株)日本国際放送
平成19年改正法の施行に伴い、平成20年4月4日に新たに設立された会社であり、国際展開など、今後の事業発展のため、資本蓄積を優先させるとして無配としている。なお、27年度決算に基づく配当においても同様としている。
(株)NHK文化センター
26年度決算の当期純利益は黒字となっているものの、営業利益は25年度決算に引き続き赤字となっているため、無配としている。
なお、27年度決算に基づく配当においては、当期純利益も営業利益も赤字となっているため、引き続き、無配としている。
1株当たりの配当額を1、2年単位の定額にして配当を実施しているもの (株)NHKプラネット
20年4月に(株)NHKきんきメディアプラン、(株)NHK中部ブレーンズ、(株)NHKちゅうごくソフトプラン、(株)NHK九州メディス、(株)NHK東北プランニング及び(株)NHK北海道ビジョンの6社が合併したものであり、27年度末においても地方株主が多く、可能な限り安定的な配当を行う方針としているため、1、2年単位で額の見直しを実施しつつ定額を配当することで、安定的な配当を実施している。
なお、27年度決算に基づく配当においては、配当の指針における原則を適用して、配当を実施している。
1株当たりの配当額を定めて安定的な配当を実施しているもの (株)NHK出版
個人株主が多いことを考慮して、配当の指針の基準額の配当は行わず、安定的な配当を実施している。
なお、27年度決算に基づく配当においても同様としている。
配当の指針の基準以下の配当を実施しているもの (株)NHKアート
他の子会社と比べて自己資本の蓄積が十分でないことから、配当の指針の基準以下の配当としている。
なお、27年度決算に基づく配当においては、配当の指針における原則を適用した普通配当に加えて、3億円の特例配当を実施している。
(オ) 特例配当の状況

a 特例配当の配当額の推移

協会は、子会社の17年度決算に基づく配当から、一部の子会社に対して特例配当を要請しており、これを受けて当該子会社は特例配当を実施している。17年度から27年度までの間の配当額の推移は図表2-36のとおりである。

特例配当は、17年度当時の不祥事に伴う受信料収入の減少による協会の厳しい財政状況に鑑みるなどして、普通配当とは別に、経営・資金面で比較的安定している子会社に対して、配当の指針に定めた規模以上の特例的な配当の実施による協会への財政貢献に向けた協力を協会が求めたことにより、子会社の17年度決算に基づく配当において初めて実施された。

特例配当は、当初の17年度決算に基づく配当から19年度決算に基づく配当までの3か年度は、各団体の当該期純利益にかかわらず、16年度末株主資本の一定額を分配する考え方に基づいて、協会が子会社に要請して実施された。具体的には、子会社の16年度の事業規模(売上げ)が100億円を上回り、16年度末の貸借対照表により、資金面で一定規模以上の余裕があると考えられ、株主構成等において協会グループ外の株主が多いなどの特別の事情を有していない子会社を対象として、当該3か年度の間に、合わせて、16年度末株主資本(利益処分後)の15%を目途として実施するとされた。そして、実際にはこの3か年度で当初に見込んだ対象子会社数(当時)の4社を上回る14社において、当初の特例配当の配当見込額計57億余円を上回る計120億余円が配当された。

その後の20年度決算に基づく配当から22年度決算に基づく配当までの3か年度は、19年に策定された21年度以降の配当施策の中で、「配当の指針における普通配当とは別に、経営・資金両面で比較的安定している団体においては、特例的な大型配当を20~22年度の3か年のうちに各社最低1回は、実施する」こととされ、また、協会の「平成21年度~23年度 NHK経営計画」の収支計画において、子会社の配当総額は各年度25億円と示されたため、これに沿って普通配当だけでは不足する分を補う形で特例配当が実施され、この3か年度で計28億余円が配当された。

特例配当は、更に23年度決算に基づく配当において、計7億余円が配当され、17年度決算に基づく配当から23年度決算に基づく配当までの7か年度の間に実施された分を合わせると、計156億余円が各子会社から配当された。

そして、24年度決算に基づく配当以降は、子会社の資本政策の見直しなどが考慮されたこともあるが、協会は、子会社に対して特例配当の要請を行っておらず、子会社の特例配当は26年度決算に基づく配当までの3か年度は実施されなかった。

その後、27年度決算に基づく配当において、協会は、4年ぶりに子会社4社に対して普通配当とは別に計51億円の特例配当を要請し、このうち38億余円を持株比率に基づく協会受領分として受け取った。

図表2-36 子会社の特例配当の配当額の推移

(単位:百万円)
決算年度
会社名
平成                    
17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
株主資本の一定額を分配する考え方 配当総額が「NHK経営計画」に明示   特例配当なし  
(株)NHKエンタープライズ 2,390 112 2,500 400 200 150 330 - - - 2,000
  (株)総合ビジョン 注(2) - - - - - - - -
(株)NHKエデュケーショナル 390 52 800 111 - 65 100 - - - 1,000
(株)NHKグローバルメディアサービス 200 200 300 - - - 1,800
  (株)NHK情報ネットワーク 1,200 76 1,500 200
(株)日本文字放送 注(3) - - - 84
(株)日本国際放送 注(4) - - - - - - - -
(株)NHKプラネット - - - - - - - -
  (株)NHKきんきメディアプラン - 10 -
(株)NHK中部ブレーンズ - 2 -
(株)NHKちゅうごくソフトプラン - - -
(株)NHK九州メディス - - -
(株)NHK東北プランニング - - -
(株)NHK北海道ビジョン - 2 -
(株)NHKプロモーション - 27 - 170 - - - - - - -
(株)NHKアート - - - - - - - - - - 300
(株)NHKメディアテクノロジー - 291 - - - - - -
  (株)NHKテクニカルサービス - 135 358
(株)NHKコンピューターサービス - 29 -
(株)NHK出版 注(5) - - - - - - - - - - -
(株)NHKビジネスクリエイト - 154 - - - - -
  (株)NHK共同ビジネス - 108 - -
(株)NHKオフィス企画 - 32 - 33
(株)NHKアイテック - 1,733 - 400 - - - - - - -
(株)NHK文化センター - 35 - - - - - - - - -
NHK営業サービス(株) - 76 500 - 9 190 - - - - -
3,980 2,435 5,658 1,398 700 759 730 - - - 5,100
注(1)
年度の表示は、配当算定の基となった決算年度であり、配当実施は翌年度である。
注(2)
(株)総合ビジョンは、関連会社であり、平成25年7月1日に(株)NHKエンタープライズを存続会社として合併した。
注(3)
(株)日本文字放送は、平成19年12月までは関連会社であり、(株)NHK情報ネットワークは21年4月1日に存続会社として同社を合併し、社名を(株)NHKグローバルメディアサービスとした。
注(4)
(株)日本国際放送は、平成20年4月4日に設立された。
注(5)
(株)NHK出版の平成22年までの社名は、(株)日本放送出版協会である。

b 子会社の資本政策の見直し

協会は、25、26両年度に、子会社の資本政策の見直しを実施している。これは、子会社の株主構成を見直し、協会及び協会グループの持株比率を上昇させることにより、意思決定を迅速化するとともに協会の影響力を強化し、協会グループ経営の充実を図ることや、将来の配当による資金の協会グループ外への流出を抑制し配当政策の自由度を高めることを目的とするものである。

見直しの内容は、次のとおりとなっている。

① 子会社において、協会グループ外の株主が保有している自社株式を取得し、その消却を行う。

② それにより、協会グループ外の株主の持株比率を圧縮し、新たな出資を行うことなく、協会及び協会グループの持株比率を上昇させる。

そして、子会社13社のうち、協会グループ外の株主が多いなど固有の事情がある株式会社日本国際放送及び株式会社NHK出版並びに25年度以降の資本政策の見直しを検討する際に既に株式が協会グループの100%保有となっていた株式会社NHKエデュケーショナルの3社を除く10社が見直しの検討対象とされた。検討の結果、図表2-37のとおり、最終的に子会社6社が2か年度をかけて協会グループ外の株主が所有するそれぞれの自社株式を買い取ることになった。

なお、子会社の資本政策の見直しについては、27年度以降は実施されていないものの、協会は、子会社による自社株式の買取りの検討を引き続き行っているとしている。

図表2-37 子会社における自社株式の取得状況

(単位:百万円、%)
会社名 実施年度 買取総額 協会グループ持株比率
子会社の資本政策の見直し前 子会社の資本政策の見直し後
(株)NHKエンタープライズ 平成25 334 97.2 99.0
(株)NHKグローバルメディアサービス 969 91.4 100.0
(株)NHKプロモーション 124 94.0 100.0
(株)NHKアート 186 96.9 100.0
NHK営業サービス(株) 141 95.0 99.0
1,756
(株)NHKメディアテクノロジー 26 454 93.3 96.6
454
合計 2,210
(注)
持株比率の数値は、四捨五入して表示している。

c 協会の24年度決算に基づく配当以降の特例配当の要請に関する方針

24、25両年度決算に基づく配当(配当実施は25、26両年度)において、子会社に対して特例配当を要請しなかったことについて、協会は、前記のとおり、子会社が自社株式を買い取ることに優先的に剰余金を使わせたことなど、子会社の資本政策の見直しの状況を考慮したことによるとしている。また、26年度決算に基づく配当(配当実施は27年度)において、子会社に対して特例配当の要請を行わなかったことについて、協会は、従来、関連団体の事業所が複数のビルに分散していることから、関連団体が放送センターの近隣に共同でビルを借りる又は購入するなどの構想が協会内であり、一方、当時はまだ協会本部が所在する放送センターの建て替え場所の検討途中であり、この決定までは、利益剰余金の規模を小さくすることになる特例配当の要請について消極的に判断したことによるとしている。

しかし、26年度決算に基づく配当において、協会が特例配当の要請を行わなかった判断は、23年度決算に基づく配当以降、協会において、特例配当についての定めや経営計画の中で具体的な配当額を示すことがなくなった状況の中で、子会社による明確な投資計画が示されないまま、具体的な目的に係る目的積立金として積み立てるなどすることなく行われたものである。主たる運営財源が受信料である協会は、特例配当の要請の判断に当たっては、事前に具体的な投資計画を明確にした上で、より一層透明性が確保できるよう留意することが必要であったと思料される。

したがって、協会は、普通配当の要請を行うことに加えて、特例配当の要請の要否の決定方法、配当額の算定方法の考え方を定めることなどにより、透明性を確保した上で、適切な特例配当の要請を行うことを検討する必要があると認められる。

(子会社ごとの配当額等の状況については別表2を参照

イ 関連会社の配当の状況
(ア) 配当を受ける際の関連会社との協議

関連会社の配当については、運営基準に基づき、協会と関連会社との間で事前に協議を行うこととなっており、事前協議の際には、協会は、他の株主の意向を尊重しつつ行うこととなっている。

(イ) 配当の状況と協会の受取額の推移

関連会社2社の18年度(株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは20年度。以下、イ(ウ)において同じ。)から27年度までの間の決算に基づく配当額の推移をみると、図表2-38のとおり、株式会社放送衛星システムは、27年度決算に基づく配当において、5億余円の配当を実施しており、21年度決算に基づく配当以降、毎年度配当を実施している。一方、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは20年度以降配当を実施していない状況となっている。

図表2-38 関連会社2社の配当額の推移

(単位:百万円)
決算年度
会社名
平成                  
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
(株)放送衛星システム - - - 258 297 150 780 480 510 510
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ 注(2) - - - - - - - -
注(1)
年度の表示は、配当算定の基となった決算年度であり、配当実施は翌年度である。
注(2)
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、平成19年改正法の施行に伴い、平成20年度から関連会社となった。

また、この配当のうち、持株比率に基づく協会の受取配当額の推移は、図表2-39のとおりとなっていて、27年度決算に基づく配当では2億余円となっている。そして、最も多い額は24年度決算に基づく配当で3億余円、最も少ない額は23年度決算に基づく配当で約7400万円となっている。

図表2-39 協会の関連会社2社からの受取配当額の推移

(単位:百万円)
決算年度
会社名
平成                  
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
(株)放送衛星システム - - - 128 148 74 389 239 254 254
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ 注(2) - - - - - - - -
注(1)
年度の表示は、配当算定の基となった決算年度であり、配当実施は翌年度である。
注(2)
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、平成19年改正法の施行に伴い、平成20年度から関連会社となった。
(ウ) 配当性向の推移

関連会社2社が18年度から27年度までの間に実施した配当性向の推移をみると、図表2-40のとおりとなっていて、21年度決算に基づく配当以降、配当を実施している株式会社放送衛星システムは、27年度決算に基づく配当では42.7%となっていて、24.8%から42.7%の間で配当性向が推移している。

図表2-40 関連会社2社の配当性向の推移

(単位:%)
決算年度
会社名
平成                  
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
(株)放送衛星システム - - - 24.9 24.8 25.2 41.8 25.5 24.9 42.7
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ 注(2) - - - - - - - -
注(1)
年度の表示は、配当算定の基となった決算年度であり、配当実施は翌年度である。
注(2)
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、平成19年改正法の施行に伴い、平成20年度から関連会社となった。

関連会社の配当については、前記配当の指針等の対象が、協会が直接出資している子会社に限定されているため、現状は関連会社から示された配当額を受け取っている状況となっている。

これについて、協会は、関連会社に対しては、子会社の場合とは異なり、持株比率に基づく協会グループ単独での議決権を有していないため、他の株主の意向を尊重しつつ積極的に配当の要請を行っていないとしている。さらに、協会は、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズに対して配当の要請を行っていないことについて、同会社は、新しい放送コンテンツ保護管理(新CAS)への移行の取組の影響を受けており、協会の判断だけでの対応が困難であるとしている。

(関連会社ごとの配当額等の状況については別表2を参照

(4) 子会社の利益剰余金と協会に対する配当の関連性

前記のとおり、協会は、24、25両年度決算に基づく配当では、子会社の資本政策の見直しなどのために特例配当の要請を行わなかったとしているものの、24年度決算に基づく配当以降、3か年度にわたって特例配当の要請を行っておらず、その結果、子会社が特例配当を実施していないことなどが、近年の子会社の利益剰余金増加の一因となっていると思料される。このような状況を踏まえ、協会において積極的に配当の要請を行っていくためには、子会社の利益剰余金からの配当可能額を適切に算定することが重要である。

ア 協会による子会社の利益剰余金からの配当可能額の算定

協会から子会社に対して特例配当の要請を行うに当たり、その前提となる子会社の利益剰余金からの配当可能額の算定に関する協会の考え方はおおむね次のとおりである。

(ア) 24年度決算に基づく配当の要請時における協会の配当可能額の算定の考え方

協会は、25年5月23日の衆議院総務委員会で、子会社の剰余金のうち配当可能額については57億円程度と考えている旨の答弁を行っている。この57億円は、24年度決算に基づく配当の要請時において、23年度決算に基づく配当後の利益剰余金788億余円から事業維持積立金等の目的積立金及び利益準備金を差し引いたものであり、子会社の全体額を合算して算定しているものである。協会は、この考え方にのっとって、同様の算定をすると、28年度決算に基づく配当の要請時における配当可能額(28年度決算の当期純利益は考慮していない。)は72億余円になるとしている。

24年度決算に基づく配当の要請時における協会の配当可能額の算定の考え方 画像

(イ) 27年度決算に基づく配当の要請時における協会の配当可能額の算定の考え方

協会は、27年度決算に基づく配当の要請時において、より多額の利益剰余金を配当に充てるために、上記の算定方法とは別に、便宜的に、おおむね次の方法により算定している。すなわち、子会社ごとに配当後の剰余金の額から売上高(直近3か年度の平均の1.5か月分)を必要運転資金として差し引き、更に有形固定資産、無形固定資産、差入保証金、資金運用目的でない有価証券、繰延税金資産(注5)等を差し引き、長期借入金を加えた額を算定式に基づき算定した上で、最後に現金預金の残高、将来の投資予定等を考慮して配当可能額を算定したとしている。

(注5)
繰延税金資産  企業会計上の収益又は費用と課税所得計算上の益金又は損金の認識時点の相違等により、貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の額との間に差異がある場合において、当該差異が、解消するときにその期の課税所得を減額させる効果を持つときは、原則として当該差異に係る法人税等相当額が繰延税金資産として、貸借対照表に計上される。

27年度決算に基づく配当の要請時における協会の配当可能額の算定の考え方 画像

これによると、必要運転資金について、前記事業維持積立金の要積立額の算定においては原則として3か月分で算定していたものを1.5か月分にしたり、事業維持積立金以外の目的積立金について考慮しなくなったりしたことになり、27年度決算に基づく配当の要請時における配当可能額は、現金預金残高等の状況を考慮する前の計算で子会社13社のうち9社で計294億余円となるとしている。また、同様の算定方法で、28年度決算に基づく配当の要請時における配当可能額(28年度決算の当期純利益は考慮していない。)を算定すると、前記25年の国会答弁時における算定の方法で算定した場合の72億余円を大きく上回る10社、計269億余円になる。

なお、上記のとおり、27年度決算に基づく配当の要請時における特例配当の配当可能額の算定では、9社、計294億余円となるとしているが、実際の特例配当の要請は、4社、計51億余円となっている。これは、各子会社の状況を考慮して、1か年度でその全額を特例配当として要請するのではなく、2、3か年度に平準化して配当の要請を行うこととしたもの、子会社の現金預金の状況を考慮して配当の要請を見合わせたもの、子会社における不祥事の発生による影響を考慮して配当の要請を見合わせたもの及び協会グループ外への資金の流出抑制を考慮して配当の要請を抑制したものがあることによるものである。

このように、配当可能額の算定について、協会はより多額の配当可能額となるような方法に改めるなどして、より積極的に特例配当を求める姿勢に改善した結果、前記のとおり、27年度決算に基づく配当は、子会社の配当総額が過去最大規模の72億余円となっている。そして、この算定方法は、27年度決算に基づく配当要請時においては、配当の指針を改正するなどすることなく便宜的に採られたものであり、協会内において確立しているものではないことから、一時的な配当要請の増額にとどまり、再び、利益剰余金が増加して、これを財源として配当が可能であるにもかかわらず配当額が減少することのないよう、協会は、目的積立金の必要性等に留意しつつ、今後も引き続き、積極的な配当要請につながる算定方法を採っていくことが重要である。

イ 協会と子会社における営業利益、利益剰余金及び配当の状況

26年度決算及び27年度決算について、協会と子会社における営業利益、利益剰余金及び配当の状況をみると、図表2-41のとおり、26年度決算の子会社が協会との取引において計上した営業利益は計64億余円、同年度末の子会社の利益剰余金は計916億余円、同年度決算に基づく協会への配当総額は計13億余円となっており、また、27年度決算の子会社が協会との取引において計上した営業利益は計50億余円、同年度末の子会社の利益剰余金は計948億余円、同年度決算に基づく協会への配当総額は計51億余円となっている。

このうち営業利益について、協会は、子会社の利益剰余金の増加につながる面があることから、子会社が協会との取引において計上する利益が適正なものとなるよう留意しているとしている。一方、配当については、協会は、前記のとおり、26年度決算に基づく配当(27年度に実施)までの3年間に特例配当を要請しなかったことなどのため、子会社の利益剰余金が27年度末で計948億余円と多額に上ったことから、27年度決算に基づく配当において、単年度で計72億余円(このうち協会の受取額は計51億余円)に上る配当の要請をまとめて行うことになった。

したがって、協会は、子会社の利益剰余金の過度な増加につながることがないよう、子会社との取引に際して、引き続き、子会社が協会との取引において計上する利益に留意するとともに、毎年度、子会社の利益剰余金の状況を把握し、利益剰余金の適切な規模について検証し、特例配当を要請するなど、子会社の利益剰余金額を適切な規模とするための指導・監督を適切に実施していく必要があると認められる。

図表2-41 協会と子会社における営業利益、利益剰余金及び配当の状況(平成26、27両年度)

図表2-41 協会と子会社における営業利益、利益剰余金及び配当の状況(平成26、27両年度) 画像

3 関連団体の不適正経理の再発防止に向けた指導・監督の状況

(1) 不適正経理の再発防止に向けた関連団体の取組

ア 関連団体における不適正経理の概要等

協会は、放送法において協会及びその子会社から成る集団における業務の適正を確保するための体制を整備することとなっており、協会における不適正経理の再発防止に向けた取組を実施するだけでなく、関連団体における不適正経理についても、その再発防止に向けた取組として種々の経理適正化策及び体制整備に関する指導・監督を行っている。そして、関連団体は、近年相次いだ不適正経理の発覚を受けて、それぞれの団体において、協会の指導・監督等に基づき、種々の取組を行っている。28年12月末において協会が把握している関連団体における不適正経理の概要等は、図表3-1のとおりとなっている。

図表3-1 関連団体における不適正経理の概要等

事案① フィギュアスケート競技大会の経費の横領
関連団体の名称 発覚年月 不適正経理期間 損害額 損害金の種類 処分
(一財)NHKサービスセンター 平成18年7月 14年4月~17年6月 394万余円 入場料収入 免職処分
概要
(財)NHKサービスセンター(25年4月1日以降は(一財)NHKサービスセンター。以下同じ。)の職員が、(財)日本スケート連盟から業務委託された自主事業であるNHK杯国際フィギュアスケート競技大会の出納業務において、入場券の売上げを過少申告するなどして、横領していた。
本事案は、外部からの問合せがあったことを受けて、同人が上司に横領を自白したことによって発覚した。損害額については、28年12月末において、全て弁済済みである。
発生原因 経理の審査体制が十分でなかったことなど
経理適正化策・体制整備
協会は、次の措置を講じた。
  • 関連団体における経費の請求及び支払に関する業務総点検の実施
  • 経理適正化策の実施状況に関する再点検の実施
(財)NHKサービスセンターは、18年8月に次の措置を講じており、28年12月末においても継続している。
  • 経費の請求に関する審査の強化(交際費・打合せ費の要件の厳格化、入出金の記録に係る管理の強化等)
  • 不適正経理が発生した部署における改革(承認手続厳格化、入場券の売上げに係る第三者の管理等)
  • 出納業務に関する受託の停止
他の関連団体は、業務総点検の結果を踏まえて、次の措置を講じた。
  • 出張時の宿泊費や運賃に関する証ひょうの提出
  • 出張後の報告と経費の請求との整合についての確認の徹底
  • 入場券等の売上げに係る現金についての第三者による確認の徹底
事案② 売上げの架空計上等の不適切な会計処理
関連団体の名称 発覚年月 不適正経理期間 損害額 損害金の種類 処分
(株)NHKビジネスクリエイト 平成22年6月 21年3月~22年3月 2億7414万余円 売上金等 懲戒解雇
概要
(株)NHKビジネスクリエイト(21年4月1日に(株)NHK共同ビジネスと(株)NHKオフィス企画が合併して設立)の営業部長と外部顧問が、自主事業である印刷関連のプロジェクトについて、見込計上や二重計上という手口による架空売上の計上を行っていた。また、実際の取引における見積書、納品書、請求書等の経理書類が整備されておらず、勝手な値引きによって未収金が確定できない状態となっていた。
本事案は、22年6月に(株)NHKビジネスクリエイトの経理部が多額の未回収売掛金を発見し、外部委員による適正化委員会が組織され、その調査によって架空計上等が発覚した。(株)NHKビジネスクリエイトは、22年度の決算においてこの事態に係る2億7414万余円を特別損失として処理したが、二重計上された費目や証ひょうが欠落した費目が多く、損害額の詳細は確定できなかった。このため、損害額については、当事者に対して弁済を求めていないが、損害額のうち460万円を当事者が補塡している。
発生原因
役員の営利事業に対する知識・経験不足、売上計上・請求手続・与信管理及び債権管理・案件進捗管理に係る内部統制上の不備・欠陥、管理会計・内部監査の未実施
経理適正化策・体制整備
協会は、(株)NHKビジネスクリエイトに対して、コンプライアンス意識の向上のための研修について助言した。また、NHK関連団体ガバナンス調査委員会による緊急調査を実施した。
(株)NHKビジネスクリエイトは、24年7月に次の措置を講じており、28年12月末においても継続している。
  • 適正化委員会の設置。その答申を受けた業務改革及び新販売管理システムの導入
  • 経理処理の全過程に係る監査法人による検証及び評価
  • 経営情報の評価体制の改善
  • リスク管理部の設置
  • 内部監査部局の設置
他の関連団体は、与信管理・債権管理規程の整備等を行った。
事案③ 架空の校正業務の発注等による不正請求
関連団体の名称 発覚年月 不適正経理期間 損害額 損害金の種類 処分
(株)NHK出版 平成25年12月 15年1月~25年12月 1359万余円 校正料等 懲戒免職
概要
(株)NHK出版(22年12月31日までは(株)日本放送出版協会)の放送・学芸図書編集部の編集長が、自主事業である書籍の編集について、自分の親族に書籍の校正業務を発注したように装って、(株)NHK出版に計907万余円を支払わせていた。907万余円のうち、341万円は架空の校正業務に係る経費であり、566万余円は発注の必要がない業務に係る経費であった。また、同編集長は、私的な飲食に係る経費を請求したり、虚偽の領収書を用いて不正に請求したり、出張に際して特急券を払い戻したりして着服しており、これらの不正請求の総額は451万余円に上った。
本事案は、25年12月に内部通報によって発覚した。損害額については、28年12月末において、845万円が弁済済みであり、残額514万余円は35年までに弁済する予定となっている。
発生原因
業務発注過程、経費等の支払等に係る内部統制上の不備・欠陥、管理職による管理・監督機能の脆弱性、内部監査の未実施
経理適正化策・体制整備
協会は、NHK関連団体ガバナンス調査委員会等による特命調査を実施した。
(株)NHK出版は、26年3月に次の措置を講じており、28年12月末においても継続している。
  • 外部人材を含む業務適正化委員会を設置(類似の事案の有無の確認及び内部統制の現状把握)
  • 経費請求手続の改善(打合せの事前決裁、出張後の特急券の提出等)
  • 校正料の支払及び制作体制の改善(校正業務に係る契約書、成果物等の複数チェックの徹底等)
  • 内部監査の導入
他の関連団体は、NHK関連団体ガバナンス調査委員会の提言を受けて開始した関連団体ガバナンス向上プロジェクトによる規程の整備等を行った。
事案④ 旅費・交際費の不正請求
関連団体の名称 発覚年月 不適正経理期間 損害額 損害金の種類 処分
(株)NHKアイテック 平成27年2月 25年4月~26年12月 244万余円 旅費、交際費 諭旨退職
概要
(株)NHKアイテックの社員1名が、26年6月から10月までの間に、自主事業である難視聴対策の営業業務に係る出張15件について、実際には出張に行かなかったにもかかわらず、27年2月まで出張申請の取消処理を遅延し、旅費合わせて121万余円を戻入しないまま着服していた。また、25、26両年度に、飲食の参加人数や利用日付を偽るなどして実際の利用と異なる請求を行い、交際費122万余円を着服していた。
本事案は、27年2月に(株)NHKアイテック社内の経理チェックによって出張旅費の精算の遅れが判明し、他の経費についても調査したところ、不適切な処理が発覚した。損害額については、28年12月末において、全額が弁済済みである。
発生原因
承認行為を行った管理職が、承認行為に必要とされる証ひょうの内容や存在の有無を確認していなかったこと
経理適正化策・体制整備
協会は、本事案等を踏まえて、28年7月に関連団体に対して「国内出張旅費の請求・支給事務手続きの指針」を発出した。
(株)NHKアイテックは、27年4月以降に次の措置を講じており、28年12月末においても継続している。
  • 旅費規程の改定(旅費は事後精算とした。)
  • システムの改修(同一日における複数の出張の防止、精算遅延を警告する機能の付加)
  • 交際費システムの補完による事前申請の厳格化
  • 公金に対する意識に関する研修の実施
  • 常勤監査役の設置
他の関連団体は、協会の指導に基づき、28年7月に、出張旅費について事前の申請及び事後の支払を義務付けた。
事案⑤ 工事代金等の着服
関連団体の名称 発覚年月 不適正経理期間 損害額 損害金の種類 処分
(株)NHKアイテック 平成27年11月 21年10月~27年10月 1億9802万余円 工事費、外注費 懲戒解雇
概要
(株)NHKアイテックの社員2名が、そのうち1名を役員として設立した実体のない会社に対する架空の工事や業務の小口発注を繰り返すなどの手口で、21年10月から27年10月までの間に、協会からの受託業務2件及び自主事業521件に係る外注費1億9802万余円を着服していた。
本事案は、27年11月、東京国税局の税務調査の過程で発覚した。損害額については、28年12月末において、1億2000万円が弁済済みである。協会は、残額7802万余円について、刑事告訴の動向をみながら損害賠償請求を行うことを検討するとしている。
発生原因
職場全体のコンプライアンス意識が低かったこと、上司の承認行為等に関するルールが形骸化していたこと、調達契約に係るシステム設計に不備があったことなど
経理適正化策・体制整備
協会は、総合リスク管理室、内部監査室及び関連事業局による緊急調査チームを設置し、調査の結果を「NHKアイテック多額不正事案調査報告書」として報告し公表した(調査結果等については図表3-9調査④を参照)。また、「NHKアイテック抜本改革の取り組み」として、次の措置を講ずるなどした。
  • 取引先に関する管理状況の緊急点検の要請
  • 協会の会長及び全関連団体の社長等にコンプライアンス徹底の指示
  • 出金管理に関する点検の指示
  • 経理関係システムに関するアンケート調査
  • 交際費、会議費、外部業者への発注・支払、勤務管理についての調査
(株)NHKアイテックは、27年12月以降に次の措置を講じており、28年12月末においても継続している。
  • 経営陣の刷新
  • 常勤監査役に外部人材を起用
  • 本社による証ひょう確認の徹底
  • 取引リスク評価委員会の設置
  • 取引先に関する実態調査
  • 過去3年間取引実績のないデータを削除するなど、取引先データの整理
  • 調達部門の新設
  • 外注や調達に関する見積書等の証ひょうに係るファイリングの推進
  • 就業規則の改正
他の関連団体は、協会の指示により、出金管理の点検等を実施した。
事案⑥ 取引先に便宜を図り見返りを受領
関連団体の名称 発覚年月 不適正経理期間 損害額 損害金の種類 処分
(株)NHKアイテック 平成27年12月 21年8月~27年12月 1687万余円 外注費 懲戒解雇
概要
(株)NHKアイテック九州支社の副部長が、21年8月から27年12月までの間に、支社の取引先が本社の自主事業である受信対策業務の2次下請に入れるように口利きをしたり、本社に無断で、この取引先に、合わせて1687万余円の支払を行ったりするなどし、見返りとして925万円を受け取っていた。
本事案は、(株)NHKアイテックの多額不正事案(上記の事案⑤)を受けて設置された協会の緊急調査チームが調査を行う中で、同人が上司と支社長に対して不正について告白したことによって発覚した。損害額のうち弁済することとされた574万余円については、28年12月末において、50万余円が弁済済みである。
発生原因
起案者本人が承認行為を行えるようになっていたことなど
経理適正化策・体制整備
協会による事案⑤に対する措置には、本事案に対する措置も含まれる。
(株)NHKアイテックは、27年12月以降に次の措置を講じており、28年12月末においても継続している。
  • 本社による証ひょう確認の徹底(事案⑤と同様)
  • 調達部門の新設(同)
  • 起案者本人による承認の禁止

上記不適正経理のうち、事案④の旅費の領得については、株式会社NHKアイテックにおいて、旅費の支払について証ひょう等による事後的な確認が十分でなかったために発生したものであるが、協会においては過去の不適正経理を受けて既に19年12月に出張旅費は原則事後精算とすることと定めており、それ以降、同様の不適正経理は発覚していないことから、経理適正化策として一定の効果はあったものと思料される。したがって、協会が、協会においては過去の不適正経理を受けて既に講じていた措置について、関連団体においても同様の取扱いとするよう十分に指導・監督を行っていなかったことが、上記の不適正経理が生じた一因であったとも考えられることから、協会は、協会及び関連団体において共通する業務に関する経理適正化策については、業務に応じて共通して適用するなどしていく必要があると認められる。

また、前記不適正経理のほとんどは、協会からの委託事業ではない関連団体の自主事業において生じた事態であり、協会からの委託事業に比べて協会の指導・監督が及びにくかったことも背景となっていたと思料される。したがって、前記のとおり、協会は、運営基準に基づき、関連団体の事業運営に対して指導・監督を行うこととされ、指導・監督の対象は協会からの委託事業に限られていないことから、協会は、関連団体の自主事業を含めた事業全般を対象として不適正経理の再発防止に向けた指導・監督を更に徹底していく必要があると認められる。

イ 関連団体における監査の状況
(ア) 内部監査部局の設置及び内部監査結果の活用の状況

関連団体26団体における内部監査部局の設置状況を確認したところ、25年12月の株式会社NHK出版における不適正経理(前記の事案③)の発覚を受けて協会がNHK関連団体ガバナンス調査委員会による委託調査等を行う直前の26年3月末時点では、内部監査部局を設置していた団体は、NHK営業サービス株式会社のみとなっていた。また、同調査の実施直後の同年7月末時点では、新たに内部監査部局を設置した団体は株式会社NHKエンタープライズ、株式会社NHKアート、株式会社ビジネスクリエイト及び一般財団法人NHKサービスセンターの4団体となっていた。

そして、28年12月末時点では、図表3-2のとおり、株式会社NHKプラネットを除く子会社12社において、内部監査部局又は社長直属の内部監査担当者を設置している状況となっていた。また、12社のうち、内部監査部局の担当者が他部局との兼務である株式会社日本国際放送、株式会社NHKアート、株式会社NHKメディアテクノロジー及び株式会社NHK文化センターを除く8社において、専従の職員を配置している。株式会社NHKプラネットについては、29年度頃を目途に設置の可否を含めて検討するとしている。一方、関連公益法人等9団体は、理事会の議決により内部監査規程は定めているものの、内部監査部局を設置している団体は一般財団法人NHKサービスセンター及び一般財団法人日本放送協会共済会の2団体となっていた。協会は、関連団体の内部監査部局の整備について従来指導を行っているものの、人員等の問題から全ての関連団体において内部監査部局を設置するのは難しいとしている。

関連団体における不適正経理の概要等(図表3-1)と関連団体の内部監査部局の設置状況(図表3-2)との関連性をみると、一般財団法人NHKサービスセンターの事案(前記の事案①)、株式会社NHKビジネスクリエイトの事案(同②)、株式会社NHK出版の事案(同③)及び株式会社NHKアイテックにおける旅費・交際費の不正請求の事案(同④)については、いずれも不適正経理が発覚した時点において内部監査部局は設置されていなかった。一方、株式会社NHKアイテックにおける工事代金等の着服の事案(同⑤)及び取引先に便宜を図り見返りを受領していた事案(同⑥)については、内部監査部局が設置された後にも不適正経理に係る行為が続いていたばかりか、協会の緊急調査チームによる「NHKアイテック多額不正事案調査報告書」によれば、内部監査部局を設置する以前から「経理監査」として実施していた社内調査において社内の経理手続の不備が繰り返し指摘されていたものの、会社の担当取締役が社内調査の結果を十分に活用しなかったことなどから、改善が進まないまま、東京国税局の税務調査で指摘されるまで不適正経理を発見することができていなかったなどとされている。
 したがって、不適正経理の再発防止及び早期発見に向けて、内部監査部局が設置されていない株式会社NHKプラネット及び関連公益法人等7団体に対しては、内部監査の機能が確保されるよう、協会が内部監査室による調査等を通じて積極的に指導・監督するとともに、全ての関連団体に対して、内部監査の結果を十分に活用するよう、積極的に指導・監督を続けていく必要があると認められる。

図表3-2 関連団体の内部監査部局の設置状況(平成28年12月末時点)

団体名 内部監査部局の名称等 設置年 担当者数(人)
平成25年 26年 27年 専従 委託 兼務
子会社 (株)NHKエンタープライズ 内部監査・リスク監理室   1 2
(株)NHKエデュケ―ショナル 内部監査部     1 2 4
(株)NHKグローバルメディアサービス 内部監査室     1 1 2
(株)日本国際放送 社長直属の兼務者     2
(株)NHKプラネット      
(株)NHKプロモーション 社長直属の専従者     1
(株)NHKアート 内部監査室   5
(株)NHKメディアテクノロジー 内部監査委員会     9
(株)NHK出版 内部監査部   1 1 2
(株)NHKビジネスクリエイト リスク統括室内部監査部   2 2
(株)NHKアイテック 内部監査室     2 3
(株)NHK文化センター 社長の命により監査責任者が担当     11
NHK営業サービス(株) 業務監査室 7
関連会社 (株)放送衛星システム 不明(注)            
NHK Cosmomedia America, Inc. 不明(注)            
NHK Cosmomedia(Europe)Ltd. 不明(注)            
(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ 不明(注)            
関連公益法人等 (一財)NHKサービスセンター 内部監査室   1 1
(一財)NHKインターナショナル      
(一財)NHKエンジニアリングシステム      
(一財)NHK放送研修センター      
(学)日本放送協会学園      
(公財)NHK交響楽団      
(福)NHK厚生文化事業団      
日本放送協会健康保険組合      
(一財)日本放送協会共済会 監査・リスク管理     1 15
(注)
関連会社における内部監査部局の設置状況について協会に問い合わせたところ、株式の保有数が過半数に満たないため、詳細な情報提供を求めておらず、不明であるとの回答があった。
(イ) 監事又は監査役による監査及び監査法人による監査の状況

関連団体のうち、海外の法人であり、現地の法律において監事又は監査役の設置が義務付けられていないことから外部の監査法人に依頼して監査を行っているNHK Cosmomedia America, Inc.及びNHK Cosmomedia(Europe)Ltd.の2団体を除く全ての団体において、毎年度の決算等について、監事又は監査役による監査が行われている。

また、監事又は監査役による監査に加えて、株式会社NHKエンタープライズ、株式会社放送衛星システム及び株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズにおいては会社法によって、学校法人日本放送協会学園においては私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)によって、それぞれ外部の監査法人等を会計監査人とする監査が義務付けられている。これらの監査について27年度の実施状況を確認したところ、上記の4団体において関係法に基づく監査が行われていた。なお、協会によると、株式会社NHKエンタープライズ以外の子会社12社のうち、株式会社NHKプラネット、株式会社NHKプロモーション及び株式会社NHK文化センターを除く9社については、監査法人による任意の監査を実施しているとしている。

前記不適正経理の中には、上記の監事又は監査役による監査及び監査法人による監査を通じて発見されたものはないが、監査を通じて内部統制の強化を図ることは不適正経理の再発防止に資することから、協会は、関連団体における監事又は監査役による監査及び監査法人による監査について引き続き実施状況の把握及び必要に応じた指導・監督に努める必要があると認められる。

ウ 内部通報制度

協会は、25年10月に、従来は協会、関連団体それぞれで定めていた内部通報制度に関する規程を統合して、新たに「NHKグループ通報制度規程」を定めた。これにより、関連団体における通報者は、団体内及び外部の法律事務所に設けられていた二つの通報窓口に加えて、協会の総合リスク管理室(28年3月以降はリスク管理室。以下「リスク管理室」という。)に設けられた通報窓口に通報することができるようになり、リスク管理室は、通報された内容が個別の関連団体における問題か、協会グループ全体における問題かについて判断した上で更なる事実調査等の対応をすることとなった。また、公益通報者保護法(平成16年法律第122号)の趣旨を踏まえて、通報者の範囲は関連団体の業務委託先にまで拡大された。さらに、関連団体は、自団体における内部通報制度の運用の概況についてリスク管理室に報告することとなった。

16年度から27年度までの間の内部通報件数の推移は、図表3-3のとおりである。協会によると、27年度の通報件数23件のうち4件については、調査の結果、問題があったとしてリスク管理室が当該部局又は関連団体に対して問題の解決に向けた指導をしたとしている。前記の株式会社NHK出版における不適正経理は、内部通報により発覚したものである。なお、協会によると、23年度から25年度にかけて通報件数が増加しているのは、パワーハラスメントに関する通報が増加したことによるものであり、パワーハラスメントに関する通報窓口が人事局に移管された26年6月以降、通報件数が減少しているとしている。

図表3-3 内部通報件数の推移

(単位:件)
年度
区分
平成16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
協会又は関連団体の通報窓口への通報件数 16 12 22 22 16 18 13 32 38 28 19 21
外部の法律事務所への通報件数 1 2 0 1 10 8 3 8 4 12 6 2

17 14 22 23 26 26 16 40 42 40 25 23
  うち協会の会計経理に関するもの 6 3 8 5 3 3 0 0 4 1 3 2
うち関連団体の会計経理に関するもの 0 0 0 0 1 0 1 0 0 1 0 3

(2) 不適正経理の再発防止に向けた協会の取組

ア 協会の不適正経理に係る取組
(ア) 19年報告に掲記した協会の不適正経理に係る経理適正化策

16年7月以降、協会において相次いで発覚した不適正経理を受けて、受信契約者による受信料の不払いが急増するなどの事態が生じた。そのような事態を背景として、前記のとおり、会計検査院は、参議院から協会における不適正経理等について会計検査を行い、その結果を報告するよう要請され、その要請により実施した会計検査の結果について19年報告として参議院議長に対して報告した。

上記の会計検査を行った時点までに、協会は、相次ぐ不適正経理を受けて、不適正経理が発覚した部局における緊急業務調査や同調査を踏まえた全部局を対象とする業務調査を行うなどするとともに、種々の経理適正化策を講じており、19年報告に掲記した不適正経理に係る協会の経費の種類別の主な経理適正化策は、図表3-4のとおりである。これらの経理適正化策は継続して行われているが、旅費や自動車料については、最近、新たに不適正経理が発覚しており、更なる経理適正化策が講じられている。

図表3-4 19年報告に掲記した不適正経理に係る協会の経費の種類別の主な経理適正化策

経費の種類 経理適正化策
放送料
  • 委嘱業務に係る審査委員会の事前審査・承認
  • 代理請求の制度廃止
  • 請求者以外の者による証ひょうの照合・確認
打合せ・会議費
  • 経費による部内者の飲食禁止
  • 経費による関連団体との飲食の原則禁止
  • 打合せを必要最小限とするための要件の厳格化
旅費
  • 出張報告書への宿泊施設の領収書添付
  • 航空機・特急利用時における搭乗券の半券・使用済み特急券の添付
  • 出張旅費の原則事後精算
自動車料
  • タクシーの使用は必要不可欠な場合のみとすること
謝礼
  • ビール券等の購入時にも商品券購入伺票により起票
  • 券面総額1万円以上については受領書を徴収
  • 贈呈後の業務確認を部長が実施
  • ビール券も受払簿等により在庫管理
役務費等
  • 一定額以上の美術業務の発注に係る美術業務審査会による審査
  • 業務内容については担当者だけでなく上司・経理担当も把握すること
固定資産、備品等
  • 固定資産、備品等の管理、盗難・紛失時の対応等について定める「経理規程」及び「経理事務手続き」を周知徹底
現金・預金
  • 現金の残高確認、保管等について定める「経理事務手続き」を周知徹底
その他
  • 経理審査を担当する管理職を不正支出が発生した部局に配置
  • 経理局財務部(審査)を経理局中央審査センターとして独立等
各部局における独自の取組
  • 部局独自のイントラネットによる業務状況の共有化
  • 庶務担当管理職の増員による二重確認の実施
  • 適正経理委員会の設置
  • 手書きの領収書に係る業者への事実確認の照会
  • タクシー使用に係るタクシー会社への事実確認の照会
(イ) 協会の不適正経理に係る体制整備

20年4月に、ガバナンスの向上等を目的として、平成19年改正法が施行され、協会に役員(経営委員会の委員、会長、副会長及び理事)の職務の執行を監査する監査委員会を置くこととされたほか、「協会及びその子会社から成る集団における業務の適正を確保するための体制」等についても経営委員会の議決事項とされた。これに伴い、協会は、経営委員会による「内部統制関係議決」(平成20年4月1日)に基づいて従来のコンプライアンスに関する組織を改組してリスクマネジメント委員会及び同委員会の事務局としての業務及び協会グループのリスクマネジメントに関わる業務を専門的に遂行するための組織としてリスク管理室を20年4月に設置するなど、協会におけるガバナンス、内部統制等を抜本的に見直して、協会における不適正経理の再発防止に向けた体制整備を行った。監査委員会及びリスクマネジメント委員会の概要は、次のとおりである。

a 監査委員会

平成19年改正法の施行に伴い、従来の監事制度が廃止され、新たに監査委員会が設置された。放送法によれば、監査委員会は、経営委員会が任命した3人以上の経営委員会の委員によって組織され、そのうち少なくとも1人以上は常勤としなければならないとされている。そして、監査委員会の主な責務は、協会の役員の職務の執行を監査することであり、役員の職務の執行を監査するため必要があるときは、協会の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができるとされている。

監査委員会の会合は、1か年度におおむね25回から30回程度開催され、その活動結果は定期的に経営委員会に報告されている。監査委員会の毎年度の主な活動内容は、協会が作成する業務報告書及び財務諸表に添える意見書を作成することのほか、理事会等の重要な会議への監査委員の出席を通じて協会の業務の執行状況の把握に努めたり、会長と意見交換を行ったりすることなどである。監査委員会は、放送法第39条第5項の規定によれば、監査委員会の職務の執行の状況を経営委員会に報告しなければならないとされており、この規定に基づき監査委員会は、27年度に、6件の定例報告に加えて、関連団体における土地取得計画及び株式会社NHKアイテックにおける不適正経理についてそれぞれ実施した個別調査の結果を報告している。このうち、関連団体における土地取得計画に係る調査の概要は、図表3-5のとおりである。

図表3-5 関連団体における土地取得計画に係る監査委員会の調査の概要

事項 摘要
調査に至る経緯 協会の子会社である(株)NHKビジネスクリエイトは、平成27年11月13日に、他の複数の関連団体9社とともに入居することを目的とした建物を建設するために、協会と協議した上で、渋谷区に所在する約3,400平方メートルの土地の取得に向けて、土地の売主に対して、土地を約350億円で購入するなどとする買受申込書を提出し、売主から優先交渉権の内定を得た。その後、協会の会長及び理事は、関連団体に対して、土地の共同購入を検討するよう要請した。そして、買受申込書の提出に際しては、購入を確認する旨の覚書が、協会の理事2名と同会社社長の3名の署名捺印により作成されていた。協会は、同年12月になって、経営委員会において、本件取引についての説明を行ったが、協会及び関連団体における意思決定が適正な手続によるものであったかなどについて議論があり、報道にも大きく取り上げられたことなどから、購入に係る正式な手続に入ることを取りやめることを決定して、同会社も土地取得を断念した。
監査委員会は、本件土地取引に係る売買契約が締結され実行された場合には相当額の支出が必要になる一方で、上記買受申込書の提出に至るまでの手続に不明な点があることなどから、会長以下の役職員及び関連団体の幹部から聴取するなどして調査を実施した。
調査報告書の内容 監査委員会は、経営委員会に提出した調査報告書において、一連の手続について、違約金等の支払義務も生じておらず金銭的な損失はないこと、協会が定めた関連団体運営基準に定める事前協議の規定に違反したとは認められないこと及び協会が(株)NHKビジネスクリエイトに対して債務保証をしたとは認められないことから放送法に違反したとは認められないことなどを確認した。しかし、土地の購入価格等の契約条件の検討が十分でなかったほか、本件における土地取得及び建物建設については、関連団体に係る利益剰余金の扱いも含めて、協会及び関連団体の間で十分な意思統一を図りつつ、適時適切に経営委員会に報告し、必要に応じて議決を求めるべきであったとして、会長以下の役職員に対して、今後の同様の重要案件については、より慎重な対応を求めている。

b リスクマネジメント委員会

リスクマネジメント委員会は、協会グループ全体におけるリスクマネジメントの維持運営・推進に関わる事項、コンプライアンス推進活動の方針、リスク(協会の定義によれば、「協会又は協会グループの使命達成にマイナスの影響を与え、適正な業務の遂行を阻害する結果をもたらすもの」とされる。)としてリスク管理室が識別した事項等について審議するなどした上で、協会グループに横断的に存在するリスクに対する評価の決定、関連団体に対する指示等を行っている。

(ウ) 19年報告以降に発覚した協会における不適正経理に対する経理適正化策

協会は、上記のとおり、不適正経理の再発防止のための種々の経理適正化策を講じたり、平成19年改正法の施行に伴う体制整備を行ったりしているが、これらの取組にもかかわらず、19年報告以降も不適正経理が発覚している(別表3参照)。

19年報告以降に発覚した不適正経理を受けて協会内部における会計経理について協会が講じた経理適正化策は、図表3-6のとおりである。このうち、旅費及び自動車料については、図表3-4に示したように、過去に不適正経理を踏まえて経理適正化策を講じたものであるが、証ひょうの確認等の手続に関する定めが十分でなかったこと、一部の部局で所要の審査・確認を実施していなかったことなどにより、更なる不適正経理が生じたことを受けて、更に厳格な手続等を定めるなどしている状況であった。

図表3-6 19年報告以降に発覚した不適正経理に対して協会が講じた経理適正化策

発覚年 不適正経理の概要 経費の種類 経理適正化策
平成
20年
他のスタッフによるホテル宿泊の領収書を提出するなどし、当該ホテルに宿泊したように偽装して旅費を領得 宿泊料
  • 宿泊者名を明記した領収書の提出
25年 虚偽の見積書に基づく契約を締結させ、架空の工事に係る代金を領得 技術調査研究費
  • 複数チェックの徹底
  • 継続かつ類似した契約の調査
  • 経理部門における実地検査
25年 正規運賃と往復割引運賃等の航空券の差額に係る旅費を領得 旅費
  • 航空機搭乗券の種別と証ひょうとの照合
27年 業務用タクシー券の乗降場所等を虚偽記載して私的に使用 自動車料
  • タクシー乗車券の管理について、統括責任者を新たに置くことなどによる管理の強化
  • 各放送局等で定期的にタクシー乗車券の使用状況の点検を行うことなどによるチェック体制の強化
28年 勤務実態がないのに休日出勤を申請するなどして給与手当を不正に受給 給与手当
  • 日常の勤務管理について、管理職会等を通じて再徹底

このように、協会は、不適正経理が発覚するたびに、種々の経理適正化策を講じ、また、平成19年改正法の施行に伴い不適正経理の再発防止等のための体制整備を行ってきたにもかかわらず、不適正経理が依然として生じていることから、協会は、日常における経理適正化策の運用の徹底を図るとともに、調査を継続している不適正経理の事態についてはその解明に努め、これまで講じてきた経理適正化策を適切に見直すなどして充実させていくことが重要である。

イ 関連団体の不適正経理に係る協会の取組

協会は、関連団体の事業運営に対する指導・監督について、監査委員会、リスクマネジメント委員会、リスク管理室、内部監査室、関連事業局等が関連団体に対して行う調査や、日常の業務上の情報交換、指示等を通じて行っているとしている。また、協会は、平成14年度決算から、法律において義務付けられてはいないものの任意で連結財務諸表を作成しており、協会の会計監査を行う監査法人(新日本有限責任監査法人)に連結財務諸表に対する会計監査も行わせている。当該監査法人は、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して協会の財務諸表に対する監査と同様の手順により、監査の過程において、必要に応じて関連団体に赴いて事実確認等を行っている。

協会は、関連団体の行う業務がそれぞれ大きく異なることから、協会が導入した全ての経理適正化策を画一的に全ての関連団体に導入することはできないとしているが、関連団体における不適正経理の発覚を受けて、関連団体に対して、経理適正化の徹底のため、経費の支払に関する請求を承認する担当者と支出を承認する担当者によるクロスチェックを強化することなどを指示している。関連団体における不適正経理の再発防止に関連する協会の主な取組は、図表3-7のとおりである。

図表3-7 関連団体における不適正経理の再発防止に関連する協会の主な取組

事項 実施時期 摘要
監査委員会による監査、調査等 平成20年4月~継続
監査委員会は、毎年度、監査委員会監査実施方針及び監査実施計画を策定して、これに基づいて協会の監査を行っている。そして、23年度以降の監査実施計画においては、関連団体に関して「内部統制の推進状況及び関係部局のリスク対応の取り組み状況」を重点監査事項の一つとして掲げている。また、子会社の社長から業務の運営状況等の聴取を、23年度に13団体、24年度に7団体、25年度に12団体、26年度に3団体、27年度に9団体においてそれぞれ行っている。
監査法人による業務運営状況調査 17年~継続
協会は、運営基準に基づき、監査法人に委嘱して関連団体の業務運営状況を調査しており、27年度には関連団体の業務範囲、事業活動における遵守事項、協会に対する事前協議・事前説明の状況の3点の調査を委嘱している。調査は、各関連団体について、当該監査法人所属の公認会計士が数名、2日程度訪問して、各種書面の点検や関係者への聴取するなどして行われている。その結果、「重要な資産の取得に関する事前協議漏れ」があったとして、1項目、1件の検出事項の報告があり、これを受けて協会は、当該団体に対して今後協議漏れのないよう指導していた。
関連団体事業活動審査委員会 14年7月~継続
協会は、運営基準及び関連団体事業活動審査委員会規程に基づき、関連団体事業活動審査委員会を設置して、関連団体の事業活動に関する外部からの意見、苦情等を受け付け、関連団体の事業活動の適正性を審査することとなっている。
協会は、副会長を委員長とし、関連事業局担当理事、経営企画局長、関連事業局長及び経理局長のほか、会長の委嘱による外部委員(弁護士1名、公認会計士1名)を委員とする関連団体事業活動審査委員会を18年4月から28年4月までの間に20回開催しているが、28年12月末まで意見、苦情等を受け付けた実績がないことから、関連事業に関して意見交換のみを行っている。
内部監査室による調査 20年9月~継続
毎年度、関連団体の調査を実施
※詳細は「3(2)イ(ア)」を参照
緊急調査 26年3月~8月
NHK関連団体ガバナンス調査委員会による調査を実施
※詳細は「3(2)イ(イ)」を参照
26年4月~5月
内部監査室による調査を実施
※詳細は「3(2)イ(イ)」を参照
26年4月~7月
アドバイザリー・サービス契約に基づく調査を実施
※詳細は「3(2)イ(イ)」を参照
27年11月~28年2月
(株)NHKアイテックにおける不適正経理の緊急調査を実施
※詳細は「3(2)イ(イ)」を参照
関連団体ガバナンス向上プロジェクト 26年9月~27年3月
子会社におけるガバナンスと内部統制の向上を図り、コンプライアンス徹底の体制を構築することなどを目的として、協会の担当者が子会社に対して個別訪問を行うなどして指導を行った。
※詳細は「3(2)イ(ウ)」を参照
NHKグループ経営改革 28年3月~継続
関連団体における不適正経理等を受けて、協会グループにおけるコンプライアンスの徹底、協会の指導・監督機能の強化等に向けた取組を行っている。
※詳細は「3(2)イ(エ)」を参照

上記協会の取組のうち、主なものについて記述すると、次のとおりである。

(ア) 内部監査室による調査

内部監査室は、運営基準に基づく指導・監督に必要な事項についての調査を20年度から27年度までの間に子会社13社及び関連公益法人等5団体に対して行っている。内部監査室による調査の実績は図表3-8のとおりとなっており、毎年度、延べ4団体から8団体に対して調査を行っている。

この調査は、「適正経理」や「前回指摘した事項の改善状況」等を調査項目として、内部監査室の職員が関連団体に赴いて、協会内部における内部監査と同様に、関係資料等を直接確認する方法により行われており、協会は、上記の項目を調査した結果、大きな問題点はなかったとしている。協会は、26年度まで、調査の対象を協会からの委託事業としており、関連団体の自主事業については調査の対象としていなかった。しかし、前記のとおり図表3-1に記載した関連団体における不適正経理はそのほとんどが自主事業において生じていることから、内部監査室が自主事業についても十分に調査を行っていれば、不適正経理の防止又は早期の発見につながっていた可能性がある。協会は、27年4月以降は関連団体の自主事業についても内部監査室の調査の対象としているが、上記を踏まえて、自主事業も含めた関連団体の事業全般を対象として適切に調査等を行うなどして、是正すべき事項が認められた場合には、速やかに是正させるとともに、事後の報告を求めるなどしていくことが重要である。

図表3-8 内部監査室による調査の実績

年度
区分
平成
20年度
21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
調査対象延べ関連団体数(団体) 4 8 8 8 8 6 7 6
実施延べ人日数(人日) 36 121 164 171 139 103 66 100
(イ) 緊急調査

関連団体における不適正経理が相次いで発覚したことを受けて、協会は、外部委託によって、又は協会内の複数の部局から成る緊急調査チームを編成することなどによって、関連団体に対する複数回の緊急調査を実施している。これらの調査の概要は、図表3-9のとおりである。

図表3-9 緊急調査の概要

調査① NHK関連団体ガバナンス調査委員会による調査
調査の主体 A法律事務所の弁護士
契約名 法律事務の委任に関する契約
契約日 平成26年3月20日
支払金額 5622万余円
調査期間 26年3月24日から同年8月25日まで
調査・検証事項
  • (株)NHKビジネスクリエイトにおいて22年6月に発覚した架空売上計上事件の検証
  • (株)NHK出版において25年12月に発覚した架空外注費計上事件の検証
  • 協会の関連団体における不祥事の再発防止策の提言
調査結果 関連団体に共通して認められた問題点
  • 関連団体における内部統制の不備・欠陥
  • 関連団体が行う自主事業に対する協会の管理・監督機能の脆弱性
  • 営利事業(子会社の場合)を経営するという自覚の欠如
  • 一般財団法人において十分な内部統制を整備することなく、子会社(株式会社)と同様の収益事業が行われていること
共通の問題点の改善措置
  • 関連団体における内部統制の整備
  • 関連団体が行う自主事業に対する協会の管理・監督機能の強化
  • 営利事業(子会社の場合)を経営するという自覚の喚起
協会の対応
調査の結果を踏まえて、協会は、関連団体ガバナンス向上プロジェクトを実施して、関連団体において内部統制の整備を行った。
調査② 内部監査室による調査
調査の主体 内部監査室
調査期間 平成26年4月3日から同年5月31日まで
調査・検証事項 (株)NHK出版における判明している不適正経理以外の不適正経理の有無等に関する調査
調査結果
  • 不適正経理は確認されなかった。
  • 不適正経理を抑止するための制度は整備されていたが、十分に機能していなかった。
協会の対応 調査①と同様
調査③ アドバイザリー・サービス契約に基づく調査
調査の主体 内部監査室及びB監査法人
契約名 アドバイザリー・サービス契約
契約日 平成26年4月10日
支払金額 5346万円
調査期間 26年4月14日から同年7月31日まで
調査・検証事項 内部監査室が行う、(株)NHK出版を除く子会社12社において(株)NHK出版の不適正経理と類似の事態の発見等のための調査に関するアドバイザリー業務(内部監査室による調査に参加して業務を行うもの)
調査結果
アドバイザリー・サービス契約に基づく調査の結果は公表されていないが、協会から聴取したところ、次のような事項が報告されていた。
  • 外部支払850件、経費支払2,947件、財務会計(売上等)1,716件の伝票を調査したところ、(株)NHK出版の不適正経理と類似の事態は確認されなかった。
  • 各社から内部統制上の軽微な課題は検出されたが、内部統制が欠落し、不正のリスクが顕在化している事態はなかった。
協会の対応 調査①と同様
調査④ (株)NHKアイテックにおける不適正経理の緊急調査
調査の主体 協会のリスク管理室、内部監査室、関連事業局、技術局、経理局等の職員による緊急調査チーム(当初12名、最終的には50名)
調査期間 平成27年11月17日から28年2月9日まで
調査・検証事項 事案の規模・内部統制上の重要性に鑑み、協会が、指導監督上の責任に基づき、事案の解明、発生原因及び長期に見過ごされた理由の究明、並びに関係者の責任関係を明らかにすること
調査結果
28年2月9日に経営委員会に提出された「NHKアイテック多額不正事案調査報告書」によると、(株)NHKアイテックは、同会社の監査役及び外部の会計監査人による監査を受けており、社内に内部監査室やリスクマネジメント委員会を設置するなど、内部統制の制度は整備していたものの、その運用において多くの不備があり、事態の発生を見逃すことになったとしている。
協会の対応
上記の調査結果を受けて、協会は事態の深刻さに鑑みて、会長を初めとする役員の報酬を一部返上させるなどし、また、28年3月16日付けで、「NHKアイテック抜本改革の取り組み」として、同会社の経営陣を刷新し、改革プロジェクト及びリスク評価委員会を設置させること、常勤監査役に外部人材を起用させること、役職員の研修等を強化させること、協会の指導監督機能を強化することなどを決定した。

上記の調査は、いずれも関連団体における不適正経理の発覚を受けて、不適正経理の再発防止に向けた取組として、事態の把握、発生原因の究明、類似の事態の発見等のために協会が自主的に実施したものであり、不適正経理の再発防止に向けた取組の一環として必要なものであったと思料される。一方、調査③のアドバイザリー・サービス契約に基づく調査においては、株式会社NHKアイテックも調査の対象としていたのに、調査の範囲が株式会社NHK出版における不適正経理と類似の事態を発見することなどに限られていたため、株式会社NHKアイテックにおける工事代金等の着服の事案(前記の事案⑤)を発見できず、その約1年後に実施された東京国税局の税務調査で発覚する結果となった。

また、調査①のNHK関連団体ガバナンス調査委員会による調査及び調査③のアドバイザリー・サービス契約に基づく調査については、図表3-10のとおり、会計検査院が検査したところ、調査に係る契約及び当該契約に関する支出について不透明な点が見受けられたり、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)等に基づく証拠書類の提出漏れが生じたりしていた。協会は、いずれの事態についても所要の対応策を講じたなどとしているが、今後、関連団体に関する調査等を行う際には、調査に係る契約及び当該契約に関する支出について不透明な点が生ずることのないよう、規程等を遵守し、その経費の支出に際しては、事後的に十分に検証できるような方法で行うなどとする対応策について継続的に取り組んでいくとともに、証拠書類の提出漏れが生ずることのないよう、継続的に取り組んでいく必要があると認められる。

図表3-10 関連団体の調査に係る契約に関する会計検査により判明した状況及び協会の対応

契約 会計検査院の会計検査により判明した状況 協会の対応
NHK関連団体ガバナンス調査委員会による調査に係る契約
協会は、会長自らが承認して契約したものであることなどを理由として、契約書以外の書類を作成しておらず、また、見積書等を全く徴していなかったため、随意契約の理由、契約金額の根拠等の契約締結までの決定過程の妥当性について、事後的に十分に検証することができず、透明性が十分に確保されていない状況となっていた。
会計検査院の検査を受けて、協会は、平成27年9月に経理規程実施細則を改正するなどして、次のような措置を講じている。
  • ① 本件契約のように会長が承認して契約するような場合であっても、その契約締結時の決定過程の妥当性が事後的に十分に検証できるような書類を作成し保存することを含めて、契約締結に至るまでに必要な一連の手続を行うとともに、随意契約の理由等の契約締結に至るまでの決定過程に関する書類を作成し適切に保存すること
  • ② 業務従事時間により報酬が算定される契約における業務の履行確認の方法として、日付ごとの業務従事時間の内訳、具体的な業務内容等の実績を十分に確認することができ、履行確認の妥当性が事後的に十分に検証できるような情報が記載された資料の提出を契約先に求めて検査すること
  • ③ ①及び②について周知徹底を図ること
本件契約の支払に当たって、協会は、毎月提出される職階ごとの日別の業務従事時間を記載した業務実施報告書に基づき業務従事時間を確認したとしているが、同報告書には職階ごとに複数の業務従事者に係る業務従事時間を合算した時間数しか記載されておらず、各業務従事者の日別の業務従事時間数については事後的に確認できない状況となっていた。
実費として請求されている時間外作業に係る費用等について、業務従事時間等が記載された資料に弁護士等の日付ごとの業務従事時間の内訳、具体的な業務内容等が記載されていないなどのため、実際の業務従事時間が十分に確認できない状況となっていた。
アドバイザリー・サービス契約
本件調査に係る契約の締結に際して、担当部局である内部監査室は、B監査法人に対する最終的な支払総額を1732万余円と見積もって予算を確保し、調査後に一括して支払うこととしていたが、会長から徹底した調査を行うよう指示があったことなどから、当初の想定よりも業務量が大幅に増加した結果、最終的な支払額は5346万円と、予算額を大幅に上回る状況となっていた。
内部監査室は、当初計画どおりの定期監査を実施しつつ、監査に係る支出の見直しや抑制を図り、調査費用の一部に係る予算を確保していた。
協会は、内部監査室において、契約を締結する際に業務量を過少に見積もっていたことが原因であるとしているが、予算を上回った分については経理局が経理規程実施細則に基づき適切に予算の措置を行っており、予算上の問題はないとしている。
上記の2契約に共通の事項
協会は、計算証明規則の規定により会計検査院が定めた「日本放送協会の計算証明に関する指定」(平成12年9月22日付け12検第477号)等に基づき、計算書として毎月の総合合計残高試算表を、1件5000万円を超える工事又は1件3000万円を超える財産の購入その他の契約に関する契約書、その附属書類等の証拠書類を添えて、翌月末日までに会計検査院に到達するように提出しなければならないこととなっている。
しかし、前記のNHK関連団体ガバナンス調査委員会による調査に係る26年3月20日締結の「法律事務の委任に関する契約」及び同年4月10日締結の「アドバイザリー・サービス契約」の証拠書類については、いずれも単価契約であったことなどから、支払実績に応じた提出が必要であることを失念するなどしていたため期限までに提出しておらず、前者については26年7月31日の提出期限に対して提出は27年6月26日、後者については26年10月31日の提出期限に対して提出は28年2月29日となっていた。
協会は、今後同様の事態が発生しないよう、改善策として次のような取扱いとする措置を講じている。
  • ① 経理担当部局において、毎月、各部局の支払伝票の累計データを集計し、支払先ごとに3000万円を超える契約をリストアップし、証拠書類と照合すること
  • ② 時間報酬による単価契約については、新たに発注実績の集計システムを開発し、契約締結時の発注見込額が3000万円以下の全件について、毎月、発注実績を集計して確認すること
  • ③ 証拠書類の提出に関して、提出する書類の把握・報告について注意喚起すること
(ウ) 関連団体ガバナンス向上プロジェクト

協会は、26年9月から27年3月にかけて、前記NHK関連団体ガバナンス調査委員会の報告書及び協会の関連部局による調査の結果に基づき、関連団体のガバナンス及び内部統制の向上並びにコンプライアンスの徹底に向けた体制を構築するため、関連団体ガバナンス向上プロジェクトを実施した。同プロジェクトは、協会の専務理事2名、関連事業局3名、内部監査室2名、リスク管理室4名、秘書室1名、計12名の人員により行われた。

同プロジェクトにおいて、協会は、子会社13社に対して個別訪問を2回ずつ行い、経営幹部との面談、規程等の確認等を通じてガバナンス及び内部統制の有効性等を検証するなどして、その結果を各子会社と共有するなどした。

また、協会は、子会社に対して個別に助言等を行い、監査役監査規程、リスクマネジメント規程、コンプライアンス規程等のひな形を示して、規程類の整備を支援した。

その整備状況について確認したところ、27年6月までに全ての子会社が上記のひな形に準じて規程を定めていた。

さらに、協会の内部監査室と関連事業局は、連携して、協会と関連団体の内部監査部局の職員が意見交換等を行う内部監査連絡会等を通じて関連団体における内部監査体制の構築に向けて内部監査関係の規程類を整備させるなどの支援を行った。その結果、図表3-2のとおり、多くの関連団体においては内部監査部局の設置が進んでいるものの、一部の団体においては内部監査部局が設置されておらず、引き続き協会の積極的な指導・監督が必要な状況となっている。

なお、関連団体ガバナンス向上プロジェクトの結果は報告書として27年6月に経営委員会に提出されており、当該報告書によれば、全ての子会社においてガバナンスと内部統制の向上に向けた体制整備が行われており、内部監査体制の構築が進んでいるなどとされたほか、協会において、子会社職員への研修の充実、非常勤職員の派遣、内部監査室による子会社調査の拡充等により子会社に対する管理監督機能を更に強化していくなどとされている。

また、同プロジェクトの終了後、27年6月に、協会は、引き続き「財団法人等ガバナンス向上プロジェクト」を実施し、関連公益法人等9団体について、ガバナンス及び内部統制の向上を図り、コンプライアンスの徹底に向けた体制を構築するとして、同年12月まで活動しており、その結果、全ての団体において内部監査規程が整備されるなどした。

(エ) NHKグループ経営改革

協会は、27年11月に発覚した株式会社NHKアイテックの不適正経理等を踏まえるなどして、協会グループ全体としての経営を抜本的に見直すとして、28年1月に「NHKグループ経営改革の方針」を公表し、同年3月には同方針を更に具体化した「「NHKグループ経営改革」の取り組み」を公表した。協会は、NHKグループ経営改革として、コンプライアンス・不正防止施策の徹底、規律ある経営の確立、協会グループ意識の醸成、協会の指導・監督機能の強化等の改革施策に取り組んでいくとしており、協会の指導・監督機能の強化の一環として、前記の内部統制関係議決を同年4月に改正している。この改正により新たに定められた事項のうち、主なものを示すと、図表3-11のとおりである。また、この改正に合わせて運営基準も改正され、内部統制関係議決の各事項に対応して各条文の変更・追加が行われた。

 「NHKグループ経営改革」は28年に開始されたばかりであり、同年12月末において、いまだ完了しておらず、その結果について検証するには時期尚早であるが、協会及び関連団体における不適正経理の再発防止に向けて、協会が適切に実施していくことが重要である。

図表3-11 平成28年4月改正の内部統制関係議決において新たに定められた主な事項

区分 事項
協会グループにおける体制整備に関するもの
  • 会長は、協会及びその子会社から成る集団における業務の適正を確保するため、子会社の取締役等の職務の執行に係る事項の協会への報告に関する体制、子会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制、子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制、並びに子会社の取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制を整備する。
  • 会長は、子会社の損失の危険の管理に関する体制並びに子会社の取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制について、協会における体制と同水準の体制を整備させる。
  • 会長は、子会社に、整備した体制の運用状況について報告させ、その概要を把握するように努め、また、必要に応じ、子会社に対し適時適切に改善を指導する。
協会による関連団体に対する指導・監督に関するもの
  • 協会の内部監査組織は、子会社の管理に必要なときは子会社の財務・業務の状況を調査することとし、これに関する規程を整備する。
  • 会長は、各子会社の事業を所管する協会の部門を指定し、子会社の業務の適正を確保するために必要な管理を行う。
  • 会長は、協会の職員を子会社(公益法人を除く)の非常勤監査役へ就任させ、また、子会社のうち会長が定める子会社については、所要の知見を有する者をその常勤監査役へ就任させる。
  • 会長は、子会社の運営に関する共通の基準(「関連団体運営基準」)を策定し、その確実な運用を図る。なお、同運営基準には、協会と子会社との取引の適正性の評価及び公表について定めを置く。
協会におけるガバナンスに関するもの
  • 会長は、監査委員会が選定する監査委員に対して、定期的に子会社の管理の状況を報告する。
  • 会長、副会長及び理事は、子会社の業務に関し、協会に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、放送法に基づき、直ちに当該事実を監査委員会が選定する監査委員に報告する。
  • 放送法が定める監査委員会又は監査委員による経営委員会に対する報告には、協会による子会社の管理の状況が含まれるものとする。
  • 経営委員会は、放送法に基づき、子会社の管理に関する、会長、副会長及び理事の職務の執行を監督する。

協会グループにおけるガバナンス及び関連団体の不適正経理の再発防止に向けた取組の概要を示すと図表3-12のとおりとなっており、協会及び関連団体は、協会グループ全体としてガバナンスの向上等を図っていくための体制を整備するとともに、種々の取組を行っているところである。

図表3-12 協会グループにおけるガバナンス及び関連団体の不適正経理の再発防止に向けた取組の概要(平成28年12月末時点)

図表3-12 協会グループにおけるガバナンス及び関連団体の不適正経理の再発防止に向けた取組の概要(平成28年12月末時点) 画像

しかし、関連団体における不適正経理の発生並びに協会及び関連団体における主な取組の状況をみると、図表3-13のとおり、関連団体における不適正経理の再発防止に向けた協会の取組は、内部監査室による調査等の従来行われていたもののほかは、おおむね株式会社NHK出版における不適正経理が発覚した25年以降に開始されており、関連団体においても経理適正化策を実施したり体制整備を進めたりしたが、それにもかかわらず、不適正経理は依然として生じている。

このため、協会においても不適正経理が依然として生じていて不適正経理の再発防止に向けた体制整備が十分とはいえないものの、体制整備が協会の水準に達していない関連団体においては、協会グループの中で体制整備が進んでいる協会を基準として、それぞれの事業の規模や内容に応じた体制整備を引き続き実施していくことが重要であると認められる。

したがって、今後、協会においては、関連団体における不適正経理の再発防止に向けた体制整備について、関連団体ごとに事業の規模や内容が異なることから一律に進めることは難しいものの、事業の規模や内容の違いを踏まえつつ、可能な限り協会と同水準で実施されるよう、関連団体に対する指導・監督を更に徹底していく必要があると認められる。

図表3-13 関連団体における不適正経理の発生並びに協会及び関連団体における主な取組の状況

図表3-13 関連団体における不適正経理の発生並びに協会及び関連団体における主な取組の状況 画像