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次期戦闘機(F-35A)の調達等の実施状況について


検査対象
防衛装備庁(平成27年9月30日以前は装備施設本部)、航空幕僚監部、内部部局、東北、北関東両防衛局
調達等の概要
航空自衛隊の現用戦闘機の減耗を補充し、その近代化を図るための次期戦闘機(F-35A)を42機調達し、その導入及び運用に必要な後方支援態勢の整備等を実施するもの
検査の対象とした契約の件数及び当該契約に係る契約額
109件 6256億円(平成23年度~28年度)
平成28年度に見積もったF-35A42機の調達等に係るライフサイクルコスト
2兆2287億円

1 検査の背景

(1) 次期戦闘機の調達の背景

次期戦闘機は、「中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)」(平成22年12月安全保障会議及び閣議決定。以下「23中期防」という。)において、12機を整備することとされたものである。

防衛省は、次期戦闘機の導入に当たり、現用戦闘機F-4の減勢が既に始まっていることなどを考慮すると、可能な限り速やかに次期戦闘機の調達に着手する必要があるとしていた。また、我が国周辺地域における軍事力の近代化の進展に伴い、戦闘機とその支援機能が一体となって機能する総合的防空能力の向上がますます重要となる中、航空自衛隊が我が国の防空等の任務を将来にわたって着実に遂行していくためには、航空自衛隊の他の防衛装備品と連携して相乗効果を発揮できるような能力の高い次期戦闘機を導入することなどにより、その総合的防空能力の向上に努めていくことが不可欠であるとしていた。

そして、23中期防を受けて、防衛大臣は次期戦闘機の機種選定に係る提案要求書及び当該提案要求書に基づき提出される提案書の評価基準書を決定し、航空幕僚長は平成23年4月に提案要求書を提案予定国政府等に手交した。

防衛省は、次期戦闘機の機種選定に当たり、提案要求書において、①高性能戦闘機に有効に対処し得ることなどの高度の性能を有すること、②効率的で安定した後方支援態勢を合理的なコストで確立すること、③次期戦闘機に係る国内企業の製造及び修理への参画が確保されていること、④調達後の運用・維持に係る経費も含めたライフサイクルコスト(注1)(以下「LCC」という。)について考慮されていることの四つの要求事項を挙げていた。

(注1)
ライフサイクルコスト  構想から開発、量産、運用・維持、廃棄までの過程(ライフサイクル)における経費の総額

航空幕僚長は、23年9月に、F/A-18E及びF-35Aを提案機種とするアメリカ合衆国政府(以下「合衆国政府」という。)からの提案書を、ユーロファイター・タイフーンを提案機種とするイギリス政府等からの提案書をそれぞれ受領した(提案機種の概要等は別表1参照)。その後、航空幕僚長は、評価基準書が定める評価方法に基づき提案書に記載された内容について分析及び評価を行い、四つの要求事項に係る評価点の合計が最も高かったことなどから、次期戦闘機としてF-35Aが最適である旨を23年12月13日に防衛大臣に上申し、機種選定調整会議及び政務三役会議を経た後、同月19日に同大臣は、F-35Aを次期戦闘機とすることを決定した。そして、同月20日に開催された安全保障会議において、24年度以降に42機(機種選定前に23中期防で決定した12機を含む。)のF-35Aを取得することが決定され、同日、閣議において了解された(図表1参照)。

図表1 次期戦闘機の機種選定手続の流れ

図表1 次期戦闘機の機種選定手続の流れ 画像

(2) F-35戦闘機の概要

F-35戦闘機は、アメリカ合衆国を中心とした9か国(注2)により13年から本格的に共同開発が始められた、ステルス性(注3)や状況認識能力(注4)に優れているとされる最新鋭の戦闘機であり、ロッキード・マーチン社(以下「ロッキード社」という。)が設計・製作を行っている。防衛省は、F-35戦闘機について、現時点では開発中であるが、上記の共同開発国以外にも将来的な調達を予定し、又は検討している国もあることから、最終的に世界各国で3,000機を超える機数が調達されることが見込まれるとしている。

(注2)
9か国  アメリカ合衆国、イギリス、イタリア、オランダ、トルコ、カナダ、オーストラリア、デンマーク、ノルウェー
(注3)
ステルス性  敵のセンサーによる自機の探知を防止するための技術又はその効果の総称
(注4)
状況認識能力  各種センサー(自機に搭載されたもの以外のものも含む。)からの情報を融合して、一つのディスプレイに表示するなどし、操縦者の戦況把握の促進や負担の軽減等を実現する技術やその効果の総称

F-35戦闘機には、通常離着陸型のF-35Aのほか、短距離で離陸し垂直に着陸できるF-35B及び空母搭載用のF-35Cがあるが、防衛省は、航空自衛隊の現用戦闘機の減耗を補充し、その近代化を図るために、F-4戦闘機の後継機としてF-35戦闘機のうちF-35Aを必要機数調達するとともに、その導入及び運用に必要な後方支援態勢の整備等を実施することとしている。

F-35戦闘機の維持管理については、同機が国際共同開発であることを背景に、ALGS(Autonomic Logistics Global Sustainment)という国際的な後方支援システムが採用され、F-35戦闘機を調達する全ての国が世界規模で部品等を融通し合うことになっている。防衛省は、ALGSでは共通の在庫を通じて各国で部品等を融通し合うことから、ALGSへの参加により、保有する在庫を最小限に抑制できるとともに、必要なときに速やかに部品等の供給を受けて迅速な整備を行うことができ、F-35戦闘機の可動率の維持・向上を図りつつ、関連経費の削減を図ることが可能になるとしている。

また、ALGSを活用するために、情報処理のための共通の基盤としてALIS(Autonomic Logistics Information System)と呼ばれるネットワークシステムが構築され、飛行運用、教育、補給等を一元的に支援するための情報が調達国とALGSオペレーションセンター(ロッキード社が運営)との間で共有されることになっている。

(3) F-35Aに係る調達の概要等

ア F-35Aに係る調達の概要

F-35Aは、国内企業が外国企業の技術を導入するライセンス生産によるのではなく、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定」(昭和29年条約第6号)に基づく有償援助(Foreign Military Sales)によること(以下、この調達方法を「FMS調達」という。)が合衆国政府から提案された。

F-35Aが次期戦闘機として決定された後、防衛省は23中期防に基づき24年度から契約を開始したが、23中期防の期間中に「中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)について」(平成25年12月国家安全保障会議及び閣議決定。以下「26中期防」という。)が策定され、26年度以降は26中期防に基づき契約することとなったため、23中期防で当初契約することとしていた12機については、24、25両年度の2か年で6機について契約するにとどまった。そして、防衛省は、26中期防において、26年度から30年度までの間にF-35A28機について契約することとしている。したがって、現在は、機種選定の際に23年12月の安全保障会議において決定され閣議了解された42機のうち、23中期防に基づく6機及び26中期防に基づく28機の計34機について契約することとしている。

イ FMS調達の概要

防衛省は、安全保障会議決定に従い、24年度以降にF-35Aを取得することとしており、これを受けて防衛装備庁(27年9月30日以前は装備施設本部。以下「装備庁」という。)は、24年度からF-35AのFMS調達を行っている。

 「有償援助による調達の実施に関する訓令」(昭和52年防衛庁訓令第18号。以下「有償援助訓令」という。)によれば、その調達源が合衆国政府に限られるもの又はその価格、調達時期等を考慮して有償援助による調達が妥当であると認められ、かつ、合衆国政府が有償援助による販売を認めるものについてFMS調達を行うこととされている。

また、有償援助は、武器輸出管理法等のアメリカ合衆国の法令等に従って行われ、①契約する防衛装備品及び役務(以下「防衛装備品等」という。)の価格は合衆国政府が負担する総費用(合衆国政府の事務経費等を含む。)の見積りによること、②支払は原則として前払とすること、③契約時に示される提供時期は確定年月日ではなく予定年月日となること、④提供の内容は変更される場合があることといった合衆国政府から示された条件を受諾することにより、防衛装備品等が提供されるものとなっている。

なお、「装備品等及び役務の調達実施に関する訓令」(昭和49年防衛庁訓令第4号)によれば、防衛装備品等の調達は装備庁が実施機関として行う調達(以下「中央調達」という。)と、各自衛隊の部隊等が行う調達に区分されているが、FMS調達は、有償援助訓令に基づき中央調達によることが原則となっている。

(ア) FMS調達の要求から前払金の支払までの手続

有償援助訓令によれば、防衛装備品等のFMS調達の要求から前払金の支払までの手続は、次のとおり行うこととされている(図表2参照)。

① 中央調達の要求を行う陸上、海上、航空各幕僚監部等の調達要求元は、合衆国政府に対する引合書(注5)を請求する書類(注6)(以下「引合請求書」という。)を作成し、装備庁の支出負担行為担当官(以下「支担官」という。)に提出して、引合請求書に基づく合衆国政府への引合書の請求を依頼する。

② 支担官は、引合請求書に基づき合衆国政府に引合書の請求を行い、合衆国政府から引合書の送付を受けて、調達要求元に当該引合書の写しを送付する。

③ 支担官は、引合書に引合請求書の内容と相違したり、確認を要したりする事項が記載されている場合は、調達要求元と調整等を行う。そして、調達要求元は、当該引合書の確認を行うなどして、引合書の記載内容のとおり調達を要求する旨の通知を支担官に行う。

④ 支担官は、上記の通知を受けたときは、直ちに、支出負担行為として当該引合書に署名して引合受諾書(注7)とした後、これを合衆国政府に送付すると、契約が成立する(以下、引合受諾書に基づく個々の契約を「ケース」という。)。また、支担官は、調達要求元に対して、当該引合受諾書の写しを送付する。

⑤ 支出官は、引合受諾書に定められた支払予定に合わせて、合衆国政府に支払うべきドル建ての前払金について、支出官事務規程(昭和22年大蔵省令第94号)に基づき、同規程に規定する外国貨幣換算率(以下「支出官レート」という。)により換算した邦貨額を支出決定の額とした上で、必要な外貨額を明らかにして、日本銀行に外国送金の依頼をする。

(注5)
引合書  防衛装備品等の内容及び条件を記載した書類で、合衆国政府の代表者が署名したもの
(注6)
引合書を請求する書類  防衛装備品等の価格その他の調達条件等を合衆国政府に照会するなどして、防衛装備品等の内容、提供の予定時期、受領場所等の要求内容を明らかにした書類
(注7)
引合受諾書  日米両政府の代表者(日本側は支担官)が署名する文書で、これに基づきFMS調達が行われる。この文書には、両政府が合意する防衛装備品等の内容及び価格、提供の予定時期等の条件が記載される。

図表2 FMS調達の要求から前払金の支払までの手続の流れ

図表2 FMS調達の要求から前払金の支払までの手続の流れ 画像

(イ) 防衛装備品等の提供から余剰金の返済までの手続

合衆国政府は、引合受諾書に基づき、我が国に対して防衛装備品等を提供することとなる。防衛装備品等の提供は、原則として、調達要求元に属する防衛装備品等を受領する部隊等(以下「受領部隊等」という。)に対して行われる。そして、装備庁は防衛装備品等の提供の確認を行い、前払金に対して余剰金が生じた場合、合衆国政府は余剰金の返済を行う。有償援助訓令によれば、防衛装備品等の受領のための検査(以下「受領検査」という。)から余剰金の返済までの手続は、次のとおり行うこととされている(図表3参照)。

① 支担官は、引合受諾書に基づき、合衆国政府から受領部隊等が防衛装備品等を受領するときは、受領部隊等の職員のうちから当該部隊等の長が指名した者を受領検査官に任命する。支担官は、受領検査官に受領検査指令書(引合受諾書の記載内容に基づき防衛装備品等の内容を明らかにした書類)を送付する。受領検査官は、遅滞なく受領検査を行い、確認した防衛装備品等の内容、判定等を記載する書類として受領検査調書を作成し、支担官に送付する。

② 支担官は、ケースに係る一部の提供が完了し、合衆国政府から四半期ごとに送付される中間の計算書(合衆国政府が有償援助により販売した防衛装備品等の対価を記載した書類)を受領した場合は、一定の期間を定めて受領検査調書と照合して、提供の確認を行う。

③ 支担官は、ケースに係る全ての提供が完了して、合衆国政府から最終の計算書(以下「最終計算書」という。)が送付されたときは、速やかに受領検査調書と照合してケースに係る提供の完了の確認を行うとともに、前払金に係る余剰金が発生した場合には、速やかに余剰金の返済を請求するための措置を執る。

図表3 防衛装備品等の提供から余剰金の返済までの手続の流れ

図表3 防衛装備品等の提供から余剰金の返済までの手続の流れ 画像

ウ FMS調達に係る過去の会計検査の状況

会計検査院は、これまでもFMS調達について関心をもって検査に当たってきたところであり、提供の予定時期を過ぎているのに提供が大幅に遅延している事態等について平成9年度決算検査報告で、防衛装備品等の提供の確認及び前払金に対する余剰金の返済が遅延していた事態等について平成14年度決算検査報告で、それぞれ「特に掲記を要すると認めた事項」として掲記し問題を提起した(平成9年度決算検査報告平成14年度決算検査報告参照)。

エ FMS調達以外の調達の概要

装備庁は、中央調達として、FMS調達以外に、国内企業がF-35Aの製造及び修理に参画するために必要な契約((4)イ、ウにおいて詳述)や、F-35Aの運用に当たり必要となる防衛装備品等(ミサイルの試験に使用する小型標的等)の契約を締結している。

また、中央調達以外に、「防衛省における自衛隊の施設の取得等に関する訓令」(平成19年防衛省訓令第66号)に基づき、地方防衛局は、三沢基地等においてF-35Aに係る教育訓練施設、補給倉庫等の施設整備等(以下「直轄工事」という。)を行っている。

(4) F-35Aに係る国内企業の製造及び修理への参画の取組

ア 製造及び修理に参画する国内企業の決定

防衛省は、我が国の戦闘機が、将来にわたり安全性を確保しつつ高い可動率を維持し、我が国の運用に適した能力向上等を行っていくために防衛生産・技術基盤の維持・強化が重要であるとの考え方に基づき、次期戦闘機の機種選定時の提案要求書において、国内企業による最終組立・検査への参画を必須要求事項として挙げるとともに、国内企業の部品の製造及び修理への参画の程度について提案を求めることとした。

防衛省は、国内企業が最終組立・検査に必要な能力や施設を有することは、例えば、①機体が破損して、主翼や胴体等の主要構造部位の修理や交換等の部隊では実施できない作業の必要が生じた場合でも、国内において迅速に対応することができること、②将来的にF-35Aの能力向上を図る際等に、国内において改修作業を行うことができることなど、F-35Aに対する運用支援を効果的に実施する上で重要であるとしている。また、国内企業が最終組立・検査や部品の製造に参画することは、最先端の戦闘機技術、ノウハウ等に接することが可能となるなどの意義があるとしている。

そして、合衆国政府から受領したF-35Aに係る提案書においては、(1)の機種選定に当たっての要求事項を受け、国内企業による最終組立・検査及び一部の部品の製造等への参画が提案された。

また、次期戦闘機の機種が決定された23年12月20日の安全保障会議決定及び閣議了解によれば、調達するF-35Aについては、一部を除き国内企業が製造に参画することとされ、また、各年度の具体的整備に当たっては、その時々における経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図ることとされている。

防衛省は、次期戦闘機の製造及び修理に参画するためのライセンスや航空機製造事業法(昭和27年法律第237号)に基づく許可の取得のための準備、手続、交渉等を行う国内企業の決定に当たり、23年8月に、製造及び修理に参画を希望する国内企業が調査書を作成するための前提条件や調査項目等を示した「次期戦闘機の調達の相手方に関する調査要領書」を国内企業に配布した。そして、同年9月に国内企業から調査書を受領し、あらかじめ定めていた評価基準書に基づき、機体、エンジン及びミッション系アビオニクス(注8)の各分野における製造及び修理に参画する能力等について分析及び評価を行った。その結果、製造及び修理施設、財務的基盤、製造・修理等の技術及び知識等の評価事項を全て満たしており、かつ最高得点であったことから、次期戦闘機の機種が決定された23年12月20日に、機体については三菱重工業株式会社(以下「三菱重工」という。)、エンジンについては株式会社IHI(以下「IHI」という。)、ミッション系アビオニクスについては三菱電機株式会社(以下「三菱電機」という。)を、それぞれ製造及び修理に参画する国内企業として決定した。

(注8)
ミッション系アビオニクス  戦闘機に搭載する電子機器のうち、作戦任務の遂行に必要な火器管制レーダー、電子戦器材、赤外線センサー等であって、連携して機能を発揮するもの

防衛省は、F-35Aの調達が(3)のとおり国内企業によるライセンス生産ではなくFMS調達により実施されることから、合衆国政府がF-35Aの契約を締結する外国企業の下請として製造実施権等を取得した国内企業(注9)に、製造及び修理への参画を求める(以下、外国企業の下請として製造を行うことを「下請製造」、修理を行うことを「下請修理」という。)こととしている。これを受けて、引合受諾書において、国内企業が下請製造を行うこととされている。下請製造に関しては、機体については三菱重工がロッキード社と、エンジンについてはIHIがプラット・アンド・ホイットニー社(以下「プラット社」という。)と、ミッション系アビオニクスについては三菱電機がノースロップ・グラマン社(以下「ノースロップ社」という。)とそれぞれ下請製造の契約を締結することとなっている(下請修理についてはウで後述する。)。この取組は、図表4のとおり、装備庁、合衆国政府、国内企業、外国企業といった多様な主体が複雑に関係するものであって、各主体はそれぞれの契約当事者に限定された情報しか得られないものである。

(注9)
製造実施権等を取得した国内企業  国内企業が製造又は修理に参画するに当たっては、元請となる外国企業から製造を実施するための権利(製造実施権)、製造に関する技術情報及び各種サービスの提供を受ける必要があり、製造実施権等の提供を受けるに当たっては、元請の外国企業を通じて合衆国政府から許可を得る必要がある。

図表4 F-35Aに係るFMS調達と国内企業の製造への参画

図表4 F-35Aに係るFMS調達と国内企業の製造への参画 画像

国内企業の製造への参画は、最終組立・検査と部品の製造からなるが、製造への参画の時期は、図表5のとおり、機体の最終組立・検査については三菱重工が25年度から、エンジンの最終組立・検査についてはIHIが26年度から、部品の製造についてはIHI及び三菱電機が25年度からそれぞれ参画することとされた。なお、24年度については国内企業が製造に参画しないF-35Aを調達することとなった。

図表5 国内企業の製造への参画時期

図表5 国内企業の製造への参画時期 画像

イ 初度費に係る契約の概要等

防衛省は、我が国の戦闘機が、将来にわたり安全性を確保しつつ高い可動率を維持し、我が国の運用に適した能力向上等を行っていくために防衛生産・技術基盤の維持・強化が重要であることを踏まえ、国内企業が下請製造を行うに当たって必要となる設計費、試験費及び技術援助費(注10)並びに専用施設、専用治工具、専用機械、専用装置等を調達する費用のうち、初度の調達に係る費用であって、防衛装備品等の生産等に当たり特別に必要となる費用(以下「初度費」という。)を全額負担することとしている。そして、装備庁は、下請製造を行うために必要な基盤の整備、維持管理、技術援助等に関する業務(以下「初度費業務」という。)に係る契約(以下「初度費契約」という。)を25年度から各国内企業と締結している。また、初度費契約により整備された専用施設、専用治工具等は、国内企業が製造へ参画した後、下請製造のために継続的に使用されることになる。

(注10)
技術援助費  下請製造を行うために必要な技術資料等を元請の外国企業から取得するために必要な費用

初度費契約において、各国内企業は、専用施設、専用治工具等の整備等に先立ち、整備等の計画を記載した実施計画を作成し、装備庁の承認を得るとともに、年1回を基準として整備等の実施状況に関する報告書を作成し、装備庁を経由して航空幕僚監部に提出することとなっている。そして、初度費業務が完了した後に終了届を装備庁に提出することとなっている。

また、装備庁は、国内企業が新たな部品の製造へ参画することの可否を判断するとともに、参画に当たっての問題点を解決するために必要な技術面、経費面等の条件及び情報を収集、調査及び評価すること(以下、これらを合わせて「調査研究」という。)を目的とした契約を、25年度に各国内企業と締結している。

そして、装備庁は、下請製造等を円滑に実施することを目的として、合衆国政府との取決めに基づき、装備庁及び合衆国政府が主催し、各国内企業と外国企業も参加する会議(以下「4者会議」という。)を、25年2月以降毎年開催し、F-35Aの製造に関する連絡・調整等を行うこととしている。

ウ 国内企業の修理への参画の概要

アのとおり、防衛省は、国内企業にF-35Aに係る下請修理への参画を求めることとしているが、下請修理のうち、整備、修理、オーバーホール及び改修といった、分解や検査を要する整備作業等(以下「重整備」という。)の概要は、次のとおりとなっている。

防衛省によれば、合衆国政府は、F-35戦闘機について全世界的な運用が予想されているため、北米、欧州、アジア太平洋地域において、機体、エンジンを中心として重整備を実施することを予定した整備拠点を設置することを構想している。そして、合衆国政府は、アジア太平洋地域におけるF-35戦闘機の整備拠点に関して、①機体については、30年初期までに我が国及びオーストラリアに設置すること、②エンジンについては、30年初期までにオーストラリアに設置し、追加的な所要に対応するため同年から3年ないし5年後に我が国にも設置することをそれぞれ決定した旨を26年12月に公表した。これを受けて防衛省は、三菱重工の小牧南工場(愛知県西春日井郡豊山町所在)を機体の整備拠点に、IHIの瑞穂工場(東京都西多摩郡瑞穂町所在)をエンジンの整備拠点に、それぞれ予定している。

そして、装備庁は、我が国が調達するF-35Aの重整備がFMS調達により行われることに鑑み、外国企業が実施するF-35Aの重整備に国内企業が下請修理として参画するために、機体の整備拠点の設置に係る契約(以下「整備拠点契約」という。また、初度費契約、調査研究の契約及び整備拠点契約を合わせて「国内企業参画契約」という。)を27年度に三菱重工と締結している。

(5) プロジェクト管理等

ア 装備庁新設前のLCC管理

27年10月の装備庁新設前は、装備施設本部において、次のような体制でLCC管理を実施していた。

(ア) LCC管理の体制

防衛省は、ライフサイクルを通じた効果的かつ効率的な防衛装備品の取得に資するとともに、経費面に係る説明責任の強化を図るために、22年3月に「ライフサイクルコスト管理実施要領」(平成22年防経装第3918号。以下「LCC管理実施要領」という。)等を定めて、22年度以降、本格的なLCC管理を行ってきた。

装備施設本部は、LCC管理に当たり、LCC管理実施要領及び23年4月に定めた「ライフサイクルコストの算定要領」(平成23年装本原管第1579号。以下「LCC算定要領」という。)に基づき、LCC管理の対象となる防衛装備品について、陸上、海上、航空各幕僚監部等の協力の下で、LCCの算定及び検証を実施し、その結果を年に一度、ライフサイクルコスト管理年次報告書(以下「LCC管理年次報告書」という。)として取りまとめ、防衛大臣に報告するとともに、これを公表することとしていた。

F-35Aは、FMS調達が開始された24年度から26年度までの間のLCC管理年次報告書において、LCCの算定、検証等の対象となっていた。

(イ) LCCの算定及び検証方法

LCC算定要領によれば、装備施設本部は、契約額、将来の見積費用等必要なデータを収集し、ライフサイクルの各段階(構想段階、開発段階、量産段階、運用・維持段階、廃棄段階)の経費を算出してLCCを算定することとされていた。そして、後述するLCCの検証のための基準値として用いるために、ベースライン(注11)を併せて作成することとされていた。

また、装備施設本部は、ベースライン作成年度の翌年度以降、毎年度、LCCの見積値を実績値に更新して、ベースラインとのかい離度合いを測定し、大きなかい離が生じた場合、その原因が単価や数量の変動によるものか、為替、物価等の外部要因によるものかなどを特定するための分析(以下「差異分析」という。)を行うこととされていた。

(注11)
ベースライン  基準時点における情報を基に、横軸に年度を、縦軸に経費をとり、ライフサイクルを通じて、年度ごとに、防衛装備品の調達を行うのに必要な経費の累計額を算定して表示した点を結んだ曲線であり、最終年度に表示される経費の額が、その時点におけるLCCの総合計となる。

イ 装備庁新設後のプロジェクト管理

装備庁は、防衛装備品の研究開発、調達等に係る取得関連部門(内部部局の一部、装備施設本部の一部、技術研究本部、陸上、海上、航空各幕僚監部の一部)を集約、統合した防衛省の外局として27年10月に新設され、同月以降、従来のLCC管理を一新し、防衛装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理を実施している。

(ア) プロジェクト管理の概要

プロジェクト管理においては、防衛装備品の研究開発や調達等の各種業務について、ライフサイクルを通じ、性能やコスト、期間といった要素を総合的に把握しつつ、効果的かつ効率的に行っていくための方針や計画を作成したり、必要な調整を行ったりすることとなっている。

プロジェクト管理の実施に当たって必要な事項を定めた「装備品等のプロジェクト管理に関する訓令」(平成27年防衛省訓令第36号)等によれば、装備庁は、次のとおりプロジェクト管理を行うこととされている。

① プロジェクト管理の対象となる防衛装備品の検討を行い、一定の基準に該当する場合、防衛大臣の承認を経て、当該防衛装備品をプロジェクト管理重点対象装備品等に選定する。

② 選定した防衛装備品のプロジェクト管理を行うために、取得プログラム(注12)の目的及び範囲、取得の方針、LCC(ベースラインを含む。)等を記載した取得戦略計画を策定する。

(注12)
取得プログラム  プロジェクト管理の対象となる特定の防衛装備品の取得に係る業務その他これに関連する一連の業務を計画性を有するプログラムとしてまとめたもの

③ ライフサイクルの各段階において関係部局が実施する各業務について、取得戦略計画に基づき適切に計画され、かつ実施されていることを確認することなどにより、取得プログラムの管理を行う。

④ 取得プログラムの管理を通じて、進捗状況や経費の発生状況等を確認し、取得戦略計画との比較を行うとともに、その結果の分析及び評価を行い、原則として毎年度第1四半期に防衛大臣に報告する。特に、LCCについては年度見積ライン(注13)とベースラインとの比較を継続的に行い、かい離した場合、差異分析を行って、必要に応じて改善策について検討を行う。

(注13)
年度見積ライン  ベースライン設定以降のある年度において、前年度までの契約実績を基に、横軸に年度を、縦軸に経費をとり、ライフサイクルを通じて、年度ごとに、防衛装備品の調達を行うのに必要な経費の累計額を算定して表示した点を結んだ曲線
(イ) LCCの見積方法

プロジェクト管理を適切に実施するために定められた「ライフサイクルコストの見積及び管理要領について(通達)」(平成28年装プ事第1919号。以下「LCC見積管理要領」という。)、これに基づき定められた「ライフサイクルコストの細部見積要領について(通知)」(平成28年装プ事第3076号。以下「LCC細部見積要領」という。)等によれば、装備庁は、プロジェクト管理に係るLCCの見積りについて、次の方法を実情に即して適用し、行うこととされている。

① 見積りの範囲、時期及び方法その他の必要な事項を定めたLCCの見積計画を作成する。

② 内部部局、陸上、海上、航空各幕僚監部等に対し、LCCの見積計画を提示した上で、契約額や予算関連資料等の必要なデータの提供を求める。

③ 提供されたデータを基に、原則として、現年度の前年度までについては契約額、現年度については予算査定額により、また、現年度の翌年度以降については既存防衛装備品の数値を調整して経費を類推するなどの適切な見積手法により、年度ごとにLCCを見積もる。

④ 為替レートについては、原則として各年度の支出官レートを用い、将来の経費を見積もる際は直近の支出官レートを用いる。

そして、装備庁は、27年11月にF-35Aを含む12品目をプロジェクト管理重点対象装備品等として選定し、プロジェクト管理を実施している。

ウ LCC管理に係る過去の会計検査の状況

会計検査院は、防衛装備品のLCC管理の実施について、防衛大臣に対して27年9月に会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。検査の対象とした防衛装備品のうちF-35Aについては、LCCの算定に当たり、契約金額等のデータの収集等が適切でなかったり、将来発生する人件費を算定していなかったりしている事態が見受けられた(平成26年度決算検査報告)。これらの事態について、防衛省は、会計検査院の指摘の趣旨に沿い、27年10月に新設された装備庁において、LCC見積管理要領等を発するなどして、LCC管理について各組織の役割を定めて相互に密接に協力する態勢を整備するなどの処置を講じていた(平成27年度決算検査報告)。