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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 内閣府(内閣府本府)|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • (1) 補助の対象とならないもの

地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型)により実施した事業の交付対象事業費に交付の対象とならない費用を含めていたもの(1)―(18)


(18件 不当と認める国庫補助金 244,824,709円)

地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型)(以下「交付金」という。)は、都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略又は市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略の円滑な策定とこれに関する優良施策の実施を支援することを目的として、地方公共団体が作成した「地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型)実施計画」(以下「実施計画」という。)に基づく事業に要する費用について、地方公共団体に対してその全部又は一部を国が交付するものである。

交付金の交付対象となる事業については、地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型)制度要綱(平成27年府地創第21号)等において、実施計画を作成する地方公共団体が実施計画に基づく事業の実施に要する費用の全部又は一部を負担するものであることなどが定められている。また、あらかじめ複数年度にわたる事業の財源を確保するものである基金の積立金や、国の補助金の給付を受けている事業等には、交付金を充当しないこととされている。

本院が、21道府県及び371市町村において会計実地検査を行ったところ、2県及び16市町村において、実施計画で定めた事業実施期間中に実施していない事業に係る費用を交付対象事業費に含めていたり、基金の積立金や国の補助金の給付を受けている事業に交付金を充当していたりなどしていたため、交付金相当額計244,824,709円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、2県及び16市町村において交付金の制度に対する理解が十分でなかったこと、内閣府本府及び3県において事業に係る交付金の額の確定時の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 実施計画で定めた事業実施期間中に実施していない事業に係る費用を交付対象事業費に含めていた事態

長野県の14市町村(注)は、実施計画に基づき、平成27年9月から28年3月までを事業実施期間とする「信州大学と連携した航空機産業分野の新たな挑戦に向けた人材育成と技術開発力の強化 飯田下伊那地域による広域連携事業」(以下「広域連携事業」という。)を事業費計180,000,000円(交付対象事業費同額)で実施したとして、長野県に実績報告書をそれぞれ提出して、これにより交付金計180,000,000円の交付を受けていた。広域連携事業は、航空機システム等の地域内一貫受注生産体制の強化を図るために高精度検査機器を配置したり、信州大学等と連携して航空機システム共同研究講座を開設する準備を行ったりするものである。

しかし、広域連携事業のうち上記講座の開設準備に係る業務は、実施計画で定めた事業実施期間外である28年4月から29年3月までの間に実施されたものであり、交付金の交付の対象となる実施計画に基づく事業に該当しないものであった。

したがって、広域連携事業のうち事業実施期間中に実施されていなかったものに係る費用計10,000,000円は交付の対象とは認められず、これに係る交付金相当額計10,000,000円が不当と認められる。

(注)
14市町村  飯田市、下伊那郡松川、高森、阿南各町、阿智、平谷、根羽、下條、売木、天龍、泰阜、喬木、豊丘、大鹿各村

<事例2> 基金の積立金に交付金を充当していた事態

大分県は、実施計画に基づき、新規就農創出基盤整備事業を事業費227,000,000円(交付対象事業費同額)で実施したとして、内閣府本府に実績報告書を提出し、これにより交付金227,000,000円の交付を受けていた。この事業は、同県が交付金を財源として、新規就農創出基盤整備事業費補助金を公益社団法人大分県農業農村振興公社に交付することにより、同公社による園芸品目に係る新規就農者の栽培施設の整備等を支援するものである。

しかし、同補助金は、平成27年度から30年度までの間の複数年度にわたる同公社による栽培施設の整備等に必要となる資金の造成に充当されていた。

したがって、新規就農創出基盤整備事業に係る費用227,000,000円は交付の対象とは認められず、これに係る交付金227,000,000円が不当と認められる。

<事例3> 国の補助金の給付を受けている事業に交付金を充当していた事態

和歌山県有田郡広川町は、実施計画に基づき、広川町らくらく農業支援事業を事業費7,703,000円(交付対象事業費同額)で実施したとして、和歌山県に実績報告書を提出し、これにより交付金5,400,000円の交付を受けていた。この事業は、同町が交付金を財源として、果樹等の農作物栽培を行っている農地において、施設を整備する農家に対して、施設整備に要する費用の一部を対象に広川町らくらく農業支援事業補助金を交付するものである。

しかし、同補助金の交付を受けて施設整備を実施した事業の一部は、農林水産省の果実等生産出荷安定対策事業費補助金の給付を受けており、同町は国の補助金の給付を受けている事業に交付金を充当していた。

したがって、広川町らくらく農業支援事業の一部に係る費用5,492,000円は交付の対象とは認められず、これに係る交付金相当額3,189,000円が不当と認められる。

前記の事態を態様別・事業主体別に示すと次のとおりである。

ア 実施計画で定めた事業実施期間中に実施していない事業に係る費用を交付対象事業費に含めていたなどの事態

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(1) 内閣府本府 和歌山県 地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型) 27 47,000 47,000 3,157 3,157
(2) 長野県 飯田市 27 50,000 50,000 2,777 2,777
(3) 下伊那郡松川町 27 10,000 10,000 555 555
(4) 下伊那郡高森町 27 10,000 10,000 555 555
(5) 下伊那郡阿南町 27 10,000 10,000 555 555
(6) 下伊那郡阿智村 27 10,000 10,000 555 555
(7) 下伊那郡平谷村 27 10,000 10,000 555 555
(8) 下伊那郡根羽村 27 10,000 10,000 555 555
(9) 下伊那郡下條村 27 10,000 10,000 555 555
(10) 下伊那郡売木村 27 10,000 10,000 555 555
(11) 下伊那郡天龍村 27 10,000 10,000 555 555
(12) 下伊那郡泰阜村 27 10,000 10,000 555 555
(13) 下伊那郡喬木村 27 10,000 10,000 555 555
(14) 下伊那郡豊丘村 27 10,000 10,000 555 555
(15) 下伊那郡大鹿村 27 10,000 10,000 555 555
(16) 鳥取県 鳥取市 27 125,779 122,659 1,477 1,477

イ 基金の積立金に交付金を充当していた事態

(17) 内閣府本府 大分県 地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型) 27 227,000 227,000 227,000 227,000

ウ 国の補助金の給付を受けている事業に交付金を充当していた事態

(18) 和歌山県 有田郡広川町 地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型) 27 7,703 5,400 5,492 3,189
(1)―(18)の計 587,482 582,059 247,127 244,824