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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 総務省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(1) 地域経済循環創造事業交付金が過大に交付されていたなどのもの[総務本省](28)―(37)


10件 不当と認める国庫補助金 66,485,992円

地域経済循環創造事業交付金(以下「交付金」という。)は、地域資源を活用した先進的で持続可能な事業化の取組を促進し、地域での経済循環を創造することを目的として、地域経済循環創造事業交付金交付要綱(平成25年総行政第29号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、都道府県又は市町村(以下「交付金事業者」という。)が、地域の金融機関等と連携して、地域活性化に資する事業の事業化に取り組む民間事業者等(以下「助成対象事業者」という。)に事業化段階で必要となる経費の助成を行う場合に、その経費に対して、原則として1事業当たり50,000,000円を限度として、国が交付するものである。総務省は、交付金の事業年度に助成対象事業者が事業に係るものとして初期投資等に支出した額(以下「初期投資額」という。)を交付金の交付対象事業費としている。そして、交付金の交付申請に際して、助成対象事業者に、初期投資額から自己資金、金融機関からの融資額等(以下、これらを合わせて「融資額等」という。)を差し引いて交付申請額を算出させ、交付金事業者はこれを同省に提出する実施計画書に記載することとしている。また、同省は、交付金の額の確定に際して、助成対象事業者から提出された書類等に基づき交付金事業者が作成し提出する実績報告書の添付書類である事業報告書を用いて、上記の実施計画書に記載された計画額に対応した実績額を確認するなどして交付金の額を確定している。

さらに、交付要綱等によれば、助成対象事業者は、交付金事業により取得した財産のうち取得価格等が50万円以上の機械等の財産を交付金事業者の承認を受けないで処分制限期間内に交付の目的に反して使用したり、譲渡したりするなどしてはならないとされていて、交付金事業者の承認を受けて処分制限期間内に有償で譲渡する場合において、譲渡額が残存簿価より著しく低価であることを合理的に証することができないときには、残存簿価に国庫補助率を乗じて得た額を国庫に納付することなどとされている。

本院が10道県及び73市町村において会計実地検査を行ったところ、6市1町1村において、交付金の対象とならない経費を交付対象事業費に含めていたり、交付対象事業費を過大に精算したり、交付金事業により取得した財産を無断で譲渡したりするなどしていたため、交付金相当額計66,485,992円が過大に交付されるなどしていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、助成対象事業者において交付金の対象となる経費や交付金事業により取得した財産の管理等についての理解が十分でなかったり、交付金事業を適正に実施することについての認識が欠けていたりしたこと、6市1町1村において助成対象事業者に対する指導が十分でなかったり、交付金事業を適正に実施することについての認識が欠けていたりしたこと、総務本省において本件交付金事業に係る交付金の額の確定時等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 交付金の対象とならない経費を交付対象事業費に含めていた事態

株式会社マスコは、平成26年度に、宮崎県産のほうれん草等、主要農産物の規格外品等を活用したチルドドレッシングの開発及び製造を行うための機械設備等の設置に要する経費について、宮崎県宮崎市から助成を受けていた。

そして、同市は、初期投資額として同機械設備等の設置に要した経費50,720,000円を、融資額等として18,620,000円を計上した交付金の実績報告書等を作成して総務本省に提出し、総務本省はこれを確認するなどして交付金の額を32,100,000円と確定して、同額を同市に交付していた。

しかし、同会社が設置することとしていた同機械設備等は、交付金の事業年度中に設置されていなかったことから、これに係る経費は、交付金の対象とならない経費であった。

また、同市は、交付金の実績報告に当たり、上記の事態を把握していたのに、同機械設備等を設置することになっていた施工業者に依頼して同機械設備等と同種のものの画像を取り寄せるなどして、同機械設備等が交付金の事業年度中である27年3月に設置されたとする虚偽の交付金の実績報告書等を作成して総務本省に提出していた。

したがって、本件交付金事業は、初期投資額として計上していた50,720,000円全額が交付金の対象とならず、これに係る交付金32,100,000円が過大に交付されていた。

<事例2> 交付対象事業費を過大に精算していた事態

大福工業株式会社は、平成25年度に、島根県産天然フェリエライトを吸着剤として活用した二酸化炭素濃縮装置の製造施設等の整備に要する経費について、島根県出雲市から助成を受けていた。

そして、同市は、同会社から提出された書類等を用いて、初期投資額として同製造施設等の整備に要した経費96,000,000円を、融資額等として46,000,000円を計上した交付金の実績報告書等を作成して総務本省に提出し、総務本省はこれを確認するなどして交付金の額を50,000,000円と確定して、同額を同市に交付していた。

しかし、同会社は、虚偽の領収書等を取引業者に作成させるなどして、初期投資額を水増ししていた。

したがって、適正な初期投資額は87,300,000円となり、これにより適正な交付金の交付額を算定すると41,300,000円となることから、交付金8,700,000円が過大に精算されていた。

<事例3> 交付金事業により取得した財産を無断で処分したり、補助の目的外に使用していたりするなどしていた事態

株式会社ウッドプランは、平成26年度に、地域資源である豊岡産木を使用した高級木製インテリアである木ブロックの製造機械の購入、木ブロック加工工場の改修等に要する経費について、兵庫県豊岡市から助成を受けていた。

そして、同市は、同会社から提出された書類等を用いて、初期投資額として同製造機械の購入等に要した経費21,183,186円を、融資額等として12,183,186円を計上した交付金の実績報告書等を作成して総務本省に提出し、総務本省はこれを確認するなどして交付金の額を9,000,000円と確定して、同額を同市に交付していた。

しかし、同会社は、木ブロックが販売不振となったことから、交付金事業により取得した同製造機械のうち主要なものであるNCルータ(取得価格7,344,000円)を、28年6月に、7年の処分制限期間内であったにもかかわらず、同市の承認を受けずに他の企業に有償で譲渡していた(28年6月時点における残存簿価6,294,857円)。

また、同会社は、NCルータを譲渡したため、NCルータに取り付けて用いる溝無ドリルミルチャック(取得価格540,000円)について、木ブロックの製造に使用する見込みがなくなっていた(28年6月時点における残存簿価462,857円)。

さらに、同会社は、木ブロック加工工場(改修による増加価格11,810,186円)についても、同市の承認を受けずに、豊岡産ではなく外国産の木材等を材料とする家具製造のために使用するなどしていた(28年6月時点における当該改修による増加分の残存簿価11,429,212円)。

したがって、交付金事業により取得するなどした財産(残存簿価計18,186,926円(これに係る交付金相当額計7,726,992円))は、無断で譲渡されたり、補助の目的外に使用されていたりするなどしていた。

以上を交付金事業者別・助成対象事業者別に示すと次のとおりである。

  部局等 交付金事業者 助成対象事業者
(事業主体)
交付金事業 年度 交付対象事業費 左に対する交付金交付額 不当と認める交付対象事業費 不当と認める交付金相当額 摘要
            千円 千円 千円 千円  
(28) 総務本省 群馬県北群馬郡榛東村 有限会社鈴京 地域経済循環創造事業交付金
〈榛東村エネルギー・地域力向上経済循環創造〉
25 48,454 32,800 4,918 3,330 精算過大、補助の対象外
(29) 新潟県五泉市 株式会社五泉の水Prj.
〈水がつなぐ地域の力〉
25 55,591 29,960 3,709 2,000
(30) 兵庫県豊岡市 株式会社ウッドプラン
〈木ブロック製造〉
26 21,183 9,000 18,186 7,726 無断処分、目的外使用等
(31) Un Bois
株式会社
〈観光客の増加と域内循環の拡大〉
27 45,849 22,000 6,240 2,995 精算過大、補助の対象外
(32) 兵庫県南あわじ市 ジョイポート南淡路株式会社
〈産直センターの新設〉
25、26 55,317 31,950 2,308 1,334
(33) 株式会社特産野菜ネット
〈地場野菜の、低菌高風味などの差別化乾燥野菜加工〉
26 211,237 50,000 11,083 2,624 補助の対象外
(34) 島根県出雲市 大福工業株式会社
〈CO2濃縮装置の製造施設整備〉
25 96,000 50,000 8,700 8,700 精算過大
(35) 島根県仁多郡奥出雲町 ISKソリューション株式会社
〈重金属吸着材・不溶化材製造〉
26 103,359 48,000 3,903 3,904
(36) 宮崎県宮崎市 株式会社マスコ
〈宮崎県農産物の高付加価値化を実現し農業産業の活性化〉
26 50,720 32,100 50,720 32,100 補助の対象外
(37) 沖縄県南城市 株式会社みやぎ農園
〈廃棄青果物の地場産品化及び収益性の高い農産業に寄与する加工施設整備〉
26 68,116 48,277 2,500 1,772
(28)―(37)の計 755,829 354,087 112,270 66,485