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雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの[厚生労働本省、38公共職業安定所](117)


会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等
厚生労働本省(支給庁)
38公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方
80人
不当と認める失業等給付金
(1) 求職者給付
(2) 就職促進給付
失業等給付金の支給額の合計
(1) 37,046,696円(平成27年度~30年度)
(2) 11,930,915円(平成28、29両年度)
計 48,977,611円
不当と認める支給額
(1) 12,640,227円(平成27年度~30年度)
(2) 11,930,915円(平成28、29両年度)
計 24,571,142円

1 保険給付の概要

(1) 雇用保険

雇用保険は、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等に基づき、常時雇用される労働者等を被保険者として、被保険者が失業した場合、被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合等に、その生活及び雇用の安定を図るなどのために失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業等を行う保険である。

(2) 失業等給付金の種類

失業等給付金には、次の求職者給付及び就職促進給付のほか、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種がある。

ア 求職者給付には基本手当、高年齢求職者給付金等7種の手当等があり、このうち基本手当は、失業等給付金の支給額の大きな部分を占めており、失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注1)が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。また、高年齢求職者給付金は、高年齢受給資格者(注2)が失業している場合に所定の日数分が支給される。

イ 就職促進給付には再就職手当、就業促進定着手当等8種の手当等があり、このうち再就職手当は、早期の再就職の促進を図るもので、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上残して安定した職業に就いた場合に支給される。また、就業促進定着手当は、再就職手当の支給を受けた者が再就職先に6か月以上雇用され、かつ、再就職後の6か月間の賃金日額が離職前の6か月間の賃金日額を下回る場合に支給される。

(注1)
受給資格者  65歳未満の被保険者が、離職して労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上(倒産等により離職した者(特定受給資格者)及び特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新を希望したにもかかわらず、当該更新がないことなどにより離職した者については、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上)あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者
(注2)
高年齢受給資格者  65歳以上の被保険者が、離職して労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、原則として、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において高年齢求職者給付金を受給する資格があると決定された者

(3) 失業等給付金の支給

上記の手当等は、公共職業安定所(以下「安定所」という。)が次のように支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省等が支給することとなっている。

ア 基本手当及び高年齢求職者給付金については、受給資格者又は高年齢受給資格者から提出された失業認定申告書又は高年齢受給資格者失業認定申告書に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等について調査し確認して、失業の認定を行った上で、支給決定を行う。

イ 再就職手当及び就業促進定着手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書及び就業促進定着手当支給申請書に記載されている雇入年月日や賃金額等について調査し確認した上で、支給決定を行う。

また、偽りその他不正の行為により上記手当等の支給を受け、又は受けようとした者に対しては、その支給を受け、又は受けようとした日以後、当該手当等を支給しないこととなっており、安定所は、既に支給した手当等の返還等を命ずることができることとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、失業等給付金の支給を受けた者(以下「受給者」という。)に対する失業等給付金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、全国47都道府県労働局(以下、都道府県労働局を「労働局」という。)の436安定所(平成30年3月末現在)のうち、14労働局の154安定所において会計実地検査を行い、27年度から30年度までの間における受給者から7,335人を選定して、失業等給付金の支給の適否について検査した。

検査に当たっては、受給者から提出された失業認定申告書等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、他の年度分も含めて更に当該安定所に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

検査の結果、9労働局の38安定所管内における27年度から30年度までの間の受給者80人については、事実と相違した失業認定申告書等により、再就職した後も引き続き失業等給付金の支給を受けるなどしており、これらに対する失業等給付金の支給額計48,977,611円のうち計24,571,142円は、支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。

これを給付の種別に示すと次のとおりである。

ア 求職者給付

37安定所管内の受給者78人に対する基本手当等の支給額計37,046,696円(基本手当計36,052,146円、高年齢求職者給付金計994,550円)のうち計12,640,227円(基本手当計11,645,677円、高年齢求職者給付金計994,550円)は、支給の要件を満たしていなかった。

イ 就職促進給付

16安定所管内の受給者20人に対する再就職手当等の支給額計11,930,915円(再就職手当計9,702,960円、就業促進定着手当計2,227,955円)の全額は、支給の要件を満たしていなかった。

このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなかったなどのため、失業認定申告書等の記載内容が事実と相違していたのに、前記の38安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

宮古安定所は、受給者Aから、平成28年8月18日に就職したとする失業認定申告書、再就職手当支給申請書及び就業促進定着手当支給申請書の提出を受けて、これに基づき、基本手当239,136円、再就職手当368,258円及び就業促進定着手当245,505円、計852,899円の支給決定を行っていた。

しかし、実際には、受給者Aは28年8月1日に就職していたのに、上記のとおり28年8月18日に就職したと偽って申告したことから、受給者Aに対する基本手当96,611円、再就職手当368,258円及び就業促進定着手当245,505円、計710,374円が支給の要件を満たしていなかった。

なお、これらの適正でなかった支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。

これらの適正でなかった支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 安定所 本院の調査に係る受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業等給付金 左のうち不当と認める失業等給付金
    千円 千円
北海道 札幌 等6 277 16 7,862 4,298
     
  小計       7,862 4,298
東京 墨田 等2 61 2 202 81
  墨田 等2 56 2 1,787 1,787
  小計       1,990 1,868
新潟 柏崎 等2 67 2 976 102
  新潟 等2 72 2 1,054 1,054
  小計       2,031 1,157
滋賀 長浜 等5 197 9 5,839 874
  長浜 等3 89 4 2,157 2,157
  小計       7,996 3,031
京都 京都西陣 等5 179 12 4,983 1,623
  京都西陣 等4 135 6 3,789 3,789
  小計       8,773 5,413
兵庫 等5 251 8 4,711 1,410
  姫路   64 1 872 872
  小計       5,583 2,283
徳島 徳島 等4 152 14 7,570 2,466
  徳島 等2 59 2 859 859
  小計       8,430 3,326
福岡 福岡中央 等5 255 5 1,364 787
     
  小計       1,364 787
沖縄 那覇 等3 205 10 3,535 994
  沖縄 等2 70 3 1,409 1,409
  小計       4,945 2,404
求職者給付計 37か所 1,644 78 37,046 12,640
就職促進給付計 16か所 545 20 11,930 11,930
合計       48,977 24,571
注(1)
上段は求職者給付に係る分、下段は就職促進給付に係る分である。
注(2)
安定所数及び不適正受給者数については、両給付間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ38か所、80人である。