ページトップ
  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(4) 国民健康保険の財政調整交付金が過大に交付されていたもの[14都道府県](140)―(166)


27件 不当と認める国庫補助金 211,871,000円

国民健康保険(「国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの」参照)については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が行う国民健康保険について財政調整交付金が交付されている(注1)。財政調整交付金は、市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異により生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するために交付されるもので、普通調整交付金と特別調整交付金がある。

(注1)
平成30年4月に国民健康保険法が改正され、同月以降、都道府県は当該都道府県管内の市町村とともに保険者として国民健康保険を行うこととされ、国民健康保険の財政運営の責任主体となった都道府県に対して財政調整交付金を交付することとされた。

普通調整交付金は、被保険者の所得等から一定の基準により算定される収入額(以下「調整対象収入額」という。)が、医療費等から一定の基準により算定される支出額(以下「調整対象需要額」という。)に満たない市町村に対して、その不足を公平に補うことを目途として交付されるもので、医療費等に係るもの(以下「医療分」という。)、後期高齢者支援金(注2)等に係るもの(以下「後期分」という。)及び介護納付金(注3)に係るもの(以下「介護分」という。)の合計額が交付されている。そして、普通調整交付金の額は、「国民健康保険の調整交付金の交付額の算定に関する省令」(昭和38年厚生省令第10号。平成30年4月1日以降は「国民健康保険の調整交付金等の交付額の算定に関する省令」)等に基づき、医療分、後期分及び介護分のいずれも、それぞれ当該市町村の調整対象需要額から調整対象収入額を控除した額に基づいて算定することとなっている。

(注2)
後期高齢者支援金  高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)の規定に基づき、各医療保険者が社会保険診療報酬支払基金に納付する支援金
(注3)
介護納付金  介護保険法(平成9年法律第123号)の規定に基づき、各医療保険者が社会保険診療報酬支払基金に納付する納付金

特別調整交付金は、市町村について特別の事情がある場合に、その事情を考慮して交付されるもので、結核性疾病及び精神病に係る医療給付費等が多額である場合に交付される交付金(以下「結核・精神病特別交付金」という。)等がある。

財政調整交付金の交付手続については、①交付を受けようとする市町村は、都道府県に交付申請書及び事業実績報告書を提出し、②これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査し確認した上で厚生労働省に提出し、③厚生労働省は、これに基づき交付決定及び交付額の確定を行うこととなっている。

本院は、26都道府県の222市区町村において、23年度から28年度までの間に交付された財政調整交付金について、会計実地検査を行った。その結果、14都道府県の27市町村において、普通調整交付金の調整対象需要額を過大に算定したり、調整対象収入額を過小に算定したり、特別調整交付金のうち結核・精神病特別交付金等を過大に算定したりするなどしていたため、財政調整交付金の交付額計15,276,022,000円のうち計211,871,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、27市町村において財政調整交付金の交付額の算定に当たり、制度の理解が十分でなかったり、確認が十分でなかったりしていたこと、14都道府県において事業実績報告書の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、態様別に示すと次のとおりである。

ア 普通調整交付金の調整対象需要額を過大に算定していた事態

普通調整交付金の調整対象需要額は、本来保険料(保険税を含む。以下同じ。)で賄うべきとされている額であり、そのうち医療分に係る調整対象需要額は、一般被保険者(退職被保険者及びその被扶養者以外の被保険者をいう。以下同じ。)に係る医療給付費、前期高齢者納付金(注4)等の合計額から療養給付費負担金等の国庫補助金等を控除した額となっている。

(注4)
前期高齢者納付金  高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)の規定に基づき、各医療保険者が社会保険診療報酬支払基金に納付する納付金(前期高齢者交付金がある場合には、これを控除した額)

このうち、一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額と、入院時食事療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額との合計額とすることとなっている。

後期分に係る調整対象需要額は、後期高齢者支援金等の納付に要した費用の額から後期高齢者医療費支援金負担金等の国庫補助金等を控除した額となっている。

4道府県の4市は、普通調整交付金の実績報告に当たり、一般被保険者に係る医療給付費や前期高齢者納付金及び後期高齢者支援金を過大に算定しており、調整対象需要額を過大に算定していた。このため、交付金計63,039,000円が過大に交付されていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

広島県三次市は、平成25、26両年度の普通調整交付金の実績報告に当たり、基礎資料からの転記を誤っていたため、前期高齢者納付金及び後期高齢者支援金を過大に算定しており、医療分及び後期分の調整対象需要額をそれぞれ過大に算定していた。

その結果、適正な前期高齢者納付金及び後期高齢者支援金により算定した調整対象需要額に基づいて普通調整交付金の額を算定すると、計35,153,000円が過大に交付されていた。

このほか、25、26両年度の結核・精神病特別交付金についても、同様の誤りにより計510,000円が過大に交付されていた。

イ 普通調整交付金の調整対象収入額を過小に算定していた事態

普通調整交付金の調整対象収入額は、医療分、後期分及び介護分それぞれについて、一般被保険者又は介護納付金賦課被保険者の数を基に算定される応益保険料額と、それら被保険者の所得を基に算定される応能保険料額との合計額となっており、本来徴収すべきとされている保険料の額である。

このうち、医療分及び後期分の応能保険料額は、一般被保険者の所得(以下「算定基礎所得金額」という。)に一定の方法により計算された率を乗じて算定することとなっている。そして、算定基礎所得金額は、保険料の賦課期日(毎年4月1日)現在において一般被保険者である者の前年における所得金額の合計額を基に算定することなどとなっている。

また、介護分の応能保険料額は、介護納付金賦課被保険者について上記と同様に算定することとなっている。

2県の2市町は、普通調整交付金の実績報告に当たり、算定基礎所得金額を過小に算定しており、調整対象収入額を過小に算定していた。このため、交付金計31,421,000円が過大に交付されていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

埼玉県志木市は、平成27年度の普通調整交付金の実績報告に当たり、一般被保険者である者の前年における所得金額の合計額を算定する際に、基礎資料からの転記を誤っていたため、算定基礎所得金額を過小に算定しており、調整対象収入額を過小に算定していた。

その結果、適正な算定基礎所得金額により算定した調整対象収入額に基づいて普通調整交付金の額を算定すると、25,687,000円が過大に交付されていた。

ウ 特別調整交付金を過大に算定していた事態

結核・精神病特別交付金は、市町村における一般被保険者の医療給付費等から療養給付費負担金相当額等を控除した額のうち結核性疾病及び精神病に係る額(以下「結核・精神病に係る実質保険者負担額」という。)の占める割合(以下「結核・精神病負担額割合」という。)が100分の15を超える場合に交付するものである。

このうち、結核・精神病に係る実質保険者負担額は、傷病が結核性疾病又は精神病のみである場合の医療給付費及び結核性疾病又は精神病が主要疾病であると判定された場合の医療給付費から、年間平均一般被保険者数のうち結核性疾病又は精神病に係る一般被保険者数の割合により算出した額を控除するなどして算定することとなっている。

そして、結核・精神病特別交付金の額は、一般被保険者の医療給付費等から療養給付費負担金相当額等を控除した額に、結核・精神病負担額割合から100分の15を控除して得た割合を乗じて得た額の10分の8(24年度以前は10分の9)以内の額とすることとなっている。

7都道県の13市町は、結核・精神病特別交付金の実績報告に当たり、結核・精神病に係る実質保険者負担額を過大に算定していた。このため、交付金計90,199,000円が過大に交付されていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3>

長崎県雲仙市は、平成23年度から26年度までの間の結核・精神病特別交付金の実績報告に当たり、結核性疾病又は精神病が主要疾病ではない場合の医療給付費を含めて集計したため、結核・精神病に係る実質保険者負担額を過大に算定していた。

その結果、適正な結核性疾病及び精神病に係る医療給付費に基づいて結核・精神病特別交付金の額を算定すると、計23,695,000円が過大に交付されていた。

上記のほか、9道府県の12市町村は、特別調整交付金の実績報告に当たり、対象となる保険料調定総額や一般被保険者数を誤るなどしていた。このため、非自発的失業軽減特別交付金(注5)17,137,000円、非自発的失業財政負担増特別交付金(注6)10,060,000円、療養担当手当特別交付金(注7)15,000円、計27,212,000円が過大に算定されていた。

(注5)
非自発的失業軽減特別交付金  賦課期日現在における非自発的失業者に係る保険料軽減措置による財政負担が多額になっている場合に交付される交付金
(注6)
非自発的失業財政負担増特別交付金  賦課期日の翌日以降の非自発的失業者に係る保険料軽減措置による財政負担が多額になっている場合に交付される交付金
(注7)
療養担当手当特別交付金  療養担当手当(暖房料加算)に係る額がある場合に交付される交付金

なお、前記27市町村のうち5市町については事態の態様が重複している。

以上を部局等別・交付先(保険者)別に示すと、次のとおりである。

  部局等 交付先
(保険者)
交付金の種類 年度 交付金交付額 左のうち不当と認める額 摘要
          千円 千円  
(140) 北海道 美唄市 特別調整交付金(結核・精神病特別交付金) 26、27 442,834 8,085 結核性疾病又は精神病に係る一般被保険者数を過小に算定していたもの
(141) 芦別市 普通調整交付金、特別調整交付金(結核・精神病特別交付金等) 23~26 812,020 10,246 調整対象需要額を過大に算定していたものなど
(142) 砂川市 特別調整交付金(結核・精神病特別交付金) 24 207,230 2,121 結核性疾病又は精神病に係る一般被保険者数を過小に算定していたもの
(143) 福島県 石川郡玉川村 特別調整交付金(非自発的失業軽減特別交付金) 25 2,493 2,493 非自発的失業による保険料軽減世帯に係る保険料調定総額を過小に算定していたもの
(144) 栃木県 芳賀郡芳賀町 特別調整交付金(結核・精神病特別交付金) 27 96,303 1,289 結核性疾病又は精神病に係る一般被保険者数を過小に算定していたもの
(145) 埼玉県 志木市 普通調整交付金 27 127,211 25,687 調整対象収入額を過小に算定していたもの
(146) 桶川市 特別調整交付金(非自発的失業軽減特別交付金) 25 9,482 4,544 非自発的失業による保険料軽減世帯に係る保険料調定総額を過小に算定していたもの
(147) 北本市 26 7,274 3,376
(148) 吉川市 25~28 11,402 2,348
(149) 千葉県 東金市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 28 3,253 2,687 非自発的失業による保険料軽減世帯に係る一般被保険者数を過大に算定していたもの
(150) 山武郡九十九里町 25 2,705 1,501
(151) 東京都 清瀬市 特別調整交付金(結核・精神病特別交付金) 26、27 529,368 17,166 結核性疾病及び精神病に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(152) 三重県 松阪市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 26、27 16,752 2,552 非自発的失業による保険料軽減世帯に係る一般被保険者数を過大に算定していたものなど
(153) 大阪府 堺市 普通調整交付金 27 5,966,793 16,122 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(154) 泉佐野市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 25、26 15,800 2,309 一般被保険者の保険料調定総額を過大に算定していたものなど
(155) 兵庫県 西脇市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 25、26 5,256 1,989 非自発的失業による保険料軽減世帯に係る一般被保険者数を過大に算定していたもの
(156) 広島県 三次市 普通調整交付金、特別調整交付金(結核・精神病特別交付金) 25、26 590,038 35,663 調整対象需要額を過大に算定していたものなど
(157) 徳島県 美馬市 特別調整交付金(非自発的失業軽減特別交付金) 26、27 2,324 2,197 非自発的失業による保険料軽減世帯に係る保険料調定総額を過小に算定していたもの
(158) 板野郡板野町 特別調整交付金(結核・精神病特別交付金) 27、28 291,661 3,527 結核性疾病又は精神病に係る一般被保険者数を過小に算定していたもの
(159) 福岡県 うきは市 27 338,401 3,423
(160) 嘉麻市 27 596,893 5,044
(161) 糸島市 普通調整交付金 24 989,956 2,907 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(162) 糟屋郡宇美町 特別調整交付金(結核・精神病特別交付金) 24 284,634 1,168 結核性疾病又は精神病に係る一般被保険者数を過小に算定していたもの
(163) 遠賀郡岡垣町 27 227,583 1,997
(164) 三潴郡大木町 特別調整交付金(結核・精神病特別交付金等) 24~27 470,920 22,001 結核性疾病及び精神病に係る医療給付費を過大に算定していたものなど
(165) 長崎県 雲仙市 特別調整交付金(結核・精神病特別交付金) 23~26 3,001,387 23,695 結核性疾病及び精神病に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(166) 大分県 速見郡日出町 普通調整交付金 26 226,049 5,734 調整対象収入額を過小に算定していたもの
(140)―(166)の計 15,276,022 211,871