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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(7) 緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施した事業において基金を補助の目的外に使用していたもの[厚生労働本省](169)


1件 不当と認める国庫補助金 48,662,000円

緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金は、厚生労働本省(以下「本省」という。)が定めた平成21年度緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金交付要綱(平成21年厚生労働省発能第0605001号)等に基づき、中央職業能力開発協会(以下「協会」という。)が、同交付金を原資として、緊急人材育成・就職支援基金(以下「基金」という。)を造成し、緊急人材育成・就職支援基金事業(以下「基金事業」という。)を実施するために国が交付するものである。

協会は、本省が定めた緊急人材育成・就職支援基金事業実施要領(平成25年厚生労働省発能0306第1号)に基づき、基金事業の一つとして若者育成支援事業を実施している。

上記の若者育成支援事業において支給される若年者人材育成・定着支援奨励金(以下「奨励金」という。)は、若年者人材育成・定着支援奨励金(若者チャレンジ奨励金)業務実施要領(平成25年職発0307第2号、能発0307第1号。以下「奨励金実施要領」という。)等に基づき、若年者の正規雇用労働者としての就職等の雇用の安定化等を図ることを目的として、非正規雇用の若年者に対して職業能力の向上を目指した実践的な職業訓練(以下「訓練」という。)を実施するなどした事業主を助成するものである。

奨励金には訓練奨励金と正社員雇用奨励金がある。このうち、訓練奨励金は、35歳未満の非正規雇用の若年者に対して、事業主が、訓練実施時間数等についてあらかじめ管轄の都道府県労働局(以下「労働局」という。)の確認を受けた訓練実施計画(以下、この確認を受けた訓練実施計画を「計画」という。)に基づいて訓練を実施した場合に、訓練実施期間に訓練受講者1人につき1月当たり15万円を事業主に支給するものである。また、正社員雇用奨励金は、事業主が、訓練を終了した訓練受講者(以下「訓練修了者」という。)を正社員として1年又は2年継続して雇用した場合に、訓練修了者1人につき50万円(最大100万円)を事業主に支給するものである。

奨励金実施要領等によれば、訓練奨励金の支給を受けようとする事業主は、訓練の終了後、訓練実施時間数、実施内容等を記載した実施状況報告書、出勤簿等の関係書類を添えて、支給申請書を労働局に提出することとされている。また、正社員雇用奨励金の支給を受けようとする事業主は、訓練修了者を正社員として雇用してから1年又は2年経過した後、正社員雇用状況及び訓練受講状況等報告書、訓練修了者に係る雇用契約書等の関係書類を添えて、支給申請書を労働局に提出することとされている。そして、事業主から支給申請書の提出を受けた労働局は、事業主の申請内容が奨励金の支給要件を満たしているかなどについて審査を行い、その審査結果を協会に送付し、協会は、労働局の審査結果に基づいて奨励金の支給決定を行い、基金から支給決定額を取り崩して奨励金を支給することとされている。

そして、訓練奨励金の支給要件は、計画に基づき訓練が実施されていることなど、また、正社員雇用奨励金の支給要件は、訓練修了者を正社員として1年又は2年継続して雇用したこと、訓練奨励金の支給対象事業主であることなどとなっている。

また、協会は、偽りその他不正の行為により本来受けることのできない奨励金の支給を受け、又は受けようとした事業主であると労働局が認める者に対して、労働局からの通知に基づき、支給した奨励金の全部若しくは一部について支給決定を取り消して返還を求め、又は不支給とすることなどとなっている。

本院が、8労働局(注1)において、平成25年度から28年度までの間に、支給申請書等の記載内容について各労働局が審査を行った奨励金を対象に会計実地検査を行ったところ、3労働局(注2)における5事業主について、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
交付金の交付年度 支給要件確認庁
労働局
奨励金の支給年度 不適正な奨励金支給額 不当と認める基金使用額 不当と認める交付金相当額
            千円 千円 千円
(169) 厚生労働本省 中央職業能力開発協会 21、22、24 3労働局 26、27 48,662 48,662 48,662

3労働局は、5事業主から、計画に基づいて訓練を実施したなどとする支給申請書及び関係書類の提出を受け、奨励金の支給要件を満たしているとする審査結果を協会に送付し、協会はこの審査結果に基づき、26、27両年度に奨励金計53,462,000円を5事業主に支給していた。

しかし、5事業主は、訓練の実績を偽って奨励金の支給を申請するなどしていて、5事業主に対し奨励金計48,662,000円が過大に支給されていた。

したがって、前記奨励金の支給は適正なものではなく、計48,662,000円(交付金相当額同額)が基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主が制度を十分に理解していなかったり、事業主が誠実でなかったりしていたため、支給申請書等の記載内容が事実と相違していたのに、3労働局において、審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

大阪労働局は、事業主Aから、平成25年7月1日から26年4月30日までの10か月間、訓練受講者6人に対して計画に基づき訓練を実施したとする訓練奨励金の支給申請書及び実施状況報告書等の関係書類の提出を受け、その内容の審査を行った上で、訓練奨励金の支給要件を満たしているとする審査結果を協会に送付し、協会はこの審査結果に基づき、26年度に訓練奨励金9,000,000円を事業主Aに支給していた。

しかし、実際には、事業主Aは計画に基づいて訓練を実施していなかったのに、計画に基づいて訓練を実施したとする虚偽の内容の関係書類を支給申請書に添付して同労働局に提出していたことから、事業主Aに対する訓練奨励金9,000,000円の全額が支給の要件を満たしていなかった。

(注1)
8労働局  北海道、神奈川、京都、大阪、和歌山、福岡、大分、沖縄各労働局
(注2)
3労働局  北海道、神奈川、大阪各労働局