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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 農林水産省|
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  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

橋りょうの変位制限構造の設計が適切でなかったもの[農林水産本省](202)


(1件 不当と認める国庫補助金 6,537,178円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(202) 農林水産本省 埼玉県
(事業主体)
農山漁村地域整備交付金 28、29 67,510 33,751 13,075 6,537

この交付金事業は、埼玉県が、熊谷市玉作(たまつくり)地内において、既設の玉作橋(昭和48年築造。延長66.6m、幅員7.5m)に、耐震補強を目的として、橋台及び橋脚(以下「橋台等」という。)と橋桁との間の相対変位が大きくならないように支承部と補完し合って抵抗する変位制限構造の設置等を事業費67,510,800円(補助対象事業費67,503,600円)で行ったものである。そして、変位制限構造は、橋桁に固定した連結材を橋台等の橋座部にアンカーボルト等で固定する構造となっており、橋台等の橋座部に計12個(橋台2基各2個、橋脚2基各4個)を設置することとされていた。

同県は、変位制限構造の設計を「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づいて行っている。示方書によれば、変位制限構造は、地震や温度変化等による伸縮により上部構造と下部構造の間に生ずる水平変位に追随するための支承の移動や回転等の機能を損なわないような構造とすることなどとされており、このために必要とされているアンカーボルト等と連結材の間の距離(以下「設計遊間量」という。)は、余裕量として設置誤差等である15mmに、支承の移動量を加えたもの以上とすることとされている。そして、同県は、本件工事の設計を設計コンサルタントに委託しており、その設計業務の成果品によると、設計遊間量について、固定支承側は余裕量15mm、可動支承側は余裕量に橋軸方向の支承の移動量を加えた35mmとすれば、既設の支承の移動等の機能を損なわないとしていた(参考図1参照)。

しかし、設計コンサルタントは、既設の橋台等に取り付けられている固定支承と可動支承について、実際とは逆に設置されていると誤認して、固定支承側の設計遊間量を35mm、可動支承側の設計遊間量を15mmとする設計図面を作成しており、同県はこの設計図面により本件変位制限構造を設置していた(参考図2参照)。

したがって、本件変位制限構造(工事費相当額13,075,752円)は、設計が適切でなかったため、必要な設計遊間量が不足するなどしていて既設の支承の機能を損なっており、地震や温度変化等による伸縮の際に、支承や変位制限構造等が損傷して落橋等を防止できないおそれがある状態となっていて、これに係る交付金相当額6,537,178円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図1)

変位制限構造の設計遊間量の概念図

変位制限構造の設計遊間量の概念図 画像

(参考図2)

本件工事に係る変位制限構造の設置概念図

本件工事に係る変位制限構造の設置概念図 画像