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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 国土交通省|
  • 平成28年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(2) 地域間幹線系統確保事業における輸送量の算定について


平成28年度決算検査報告参照

1 本院が要求した改善の処置

国土交通省は、複数の市町村にまたがる地域間の交通ネットワークを確保、維持するために、幹線となる路線バス系統(以下「幹線系統」という。)を運行する一般乗合旅客自動車運送事業者等(以下「補助事業者」という。)に対して、地域公共交通確保維持改善事業費補助金交付要綱等に基づき、地域間幹線系統確保維持費国庫補助金を交付している(以下、同補助金を交付する事業を「地域間幹線系統確保事業」という。)。地域間幹線系統確保事業は、市区町村、補助事業者等の関係者が組織する協議会又は都道府県等(以下「協議会等」という。)が策定する生活交通確保維持改善計画(以下「生活交通計画」という。)に基づき実施されることとなっており、生活交通計画には、運送収入等を基に算定した1日当たりの幹線系統ごとの平均乗車人数(以下「輸送量」という。)等を記載することとされている。そして、補助対象となる幹線系統は輸送量が15人以上であることなどとされており、国土交通省は、輸送量が15人を下回る場合は、地域の特性、実状に応じて、運行系統の再編や乗合タクシー等の路線バスの代替移動手段等の最適な交通手段を検討すべきであるとしている。また、輸送量算定の基となる運送収入には地方公共団体からの運賃補填額を含むとされているが、国土交通省は、運賃補填額を運送収入に計上するためには、住民等が実際にバスを利用するという輸送実態を伴うことが必要であるとしている。しかし、回数券等の売上げとして運送収入に計上された市町村からの運賃補填額(以下「市町村補填額」という。)については、住民等のバス利用がなく市町村補填額に対応した輸送実態がないにもかかわらず、この市町村補填額が計上された運送収入に基づく輸送量が生活交通計画に記載された結果、地域間幹線系統確保事業が地域の輸送実態を反映していない生活交通計画に基づき実施されていて、地域の特性、実状に応じた最適な交通手段の提供に資するものとなっていない事態が見受けられた。

したがって、国土交通大臣に対して平成29年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。

  • ア 補助事業者に対して、運送収入に計上できる市町村補填額は輸送実態を伴うことが必要であることを具体的に示すこと
  • イ 協議会等に対して、市町村が発券を受けた回数券等の利用状況を把握するなどして、輸送量が地域の輸送実態を反映したものとなるよう指導すること

2 当局が講じた処置

本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 30年3月に地方運輸局等に対して通知を発して、運送収入に地方公共団体が購入した回数券等の売上げを計上する場合は、輸送実態を伴うことが必要であることから住民等が回数券等を使用した実績に基づき計上することなどを示した。これを受けて地方運輸局等は、同年4月から6月までの間に補助事業者に対して、上記の内容を周知した。

イ 30年3月から6月までの間に地方運輸局等を通じて協議会等に対して、生活交通計画に記載される輸送量が地域の輸送実態を反映したものとなるよう、地方公共団体が購入した回数券等の売上げは住民等が回数券等を使用した実績に基づいて運送収入に計上されているかなどを確認することを指導した。