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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • (第8 西日本高速道路株式会社)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

新名神高速道路の建設事業において配置される安全巡視員に係る費用の積算に当たり、業務内容等を踏まえた人件費単価を設定することにより、安全巡視員に係る費用の算定を適切なものとするよう改善させたもの


科目
仕掛道路資産
部局等
本社、関西支社、5事務所
安全巡視員の概要
新名神高速道路の建設事業における重大事故の再発防止策として、工事の受注者が安全確認の巡視を専任で行わせるために配置する者
安全巡視員を配置して費用を支払った工事の件数及び契約額
79件 2667億8414万余円(平成28年度~30年度)
上記の工事に配置された安全巡視員の人数及び安全巡視員に係る費用の積算額
延べ161人 6億0575万余円
上記のうち上部工工事及び土木工事の件数、配置された安全巡視員の人数及び安全巡視員に係る費用の積算額
27件 延べ63人 2億3882万余円
適正な人件費単価を設定することなどにより低減できた積算額
4540万円(平成28年度~30年度)

1 新名神高速道路の建設工事における安全管理等の概要

(1) 新名神高速道路の建設事業等の概要

西日本高速道路株式会社(以下「会社」という。)は、新名神高速道路(以下「新名神」という。)のうち、滋賀県甲賀市から神戸市までの間(延長約108km)の建設事業を実施しており、同事業の一環として、会社の関西支社新名神京都事務所等5事務所(注1)(以下「5事務所」という。)において、橋りょう、トンネル等の高速道路構造物の築造等を実施している。そして、新名神の各工事においては、平成28年10月以降、工事中の事故の発生を防止するために、安全確認を行う安全巡視員が配置されている。また、関西支社は、新名神の各工事における設計図書の照査、施工状況の確認等の施工管理業務を、設計コンサルタント等に委託して実施させている(以下、施工管理業務を実施している者を「施工管理員」という。)。

(注1)
5事務所  新名神京都、新名神大阪東、新名神大阪西、新名神大津、新名神兵庫(平成30年7月1日以降は阪神改築)各事務所

(2) 安全巡視員の配置の経緯等

新名神の建設事業においては、28年4月に架設中の橋桁が国道上に落下して作業員が死傷するなどの事故が発生し、その後も重大事故が連続して発生していた。そこで、関西支社は、同年10月、再発防止策として、建設事業を実施している同支社管内の全事務所に対して、施工中の全ての工事を対象に、1日1回必ず現場において安全帯の未使用等により事故につながる可能性がある作業員の行動(以下「不安全行動」という。)がないかなどの安全確認を、施工管理員等に新たに追加で指示して行わせることとした。また、新名神大阪西、新名神兵庫両事務所は、施工中の鋼製の橋りょうの上部工工事計10件の受注者に対して、新たに安全確認を専任で行う安全管理専任者を配置するよう緊急的に指示した。

さらに、29年1月にクレーンの転倒事故が発生したことから、同年2月に、関西支社は、5事務所に対して、「現地安全確認の徹底に向けた取組みについて(安全管理専任者の配置)」(平成29年2月関建統第136号建設事業部長通知。以下「29年2月通知」という。)等を発出し、これを受けて5事務所は、施工中の全ての工事を対象として、それぞれの受注者に対して、1工事につき1人以上の安全巡視員(「安全管理専任者」から改称)を配置して常時安全確認の巡視を行うよう指示し、現場の安全確認の徹底を図ることとした。

(3) 安全巡視員の業務内容等

29年2月通知等によれば、安全巡視員は、第三者被害の発生する可能性がある作業、墜落の可能性がある作業及び建設機械や大型クレーンの転倒の可能性がある作業(以下、これらの作業を「配置対象作業」という。)が実施されている期間に配置され、①配置対象作業の実施箇所の随時巡回、②不安全行動の巡回監視や即時改善指導及び③建設機械や大型クレーンを使用する工事の施工計画書と現場との整合確認等の安全確認を専任で行うこととされている。そして、安全巡視員の要件について「現場の安全管理を指導できる者」と記載されている。

(4) 安全巡視員に係る費用の負担等

安全巡視員に係る費用については、安全巡視員の配置が緊急的な対応であり、会社が制定する土木工事積算要領等にその人件費単価等を設定していないことから、29年2月通知等において、契約の最終設計変更時に会社と工事の受注者との協議により定めることとし、会社が、受注者から提出された安全巡視員に支払われた給与等を基に算定した費用を確認するなどして、積算することなどとした。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

会社は、新名神の建設事業に係る工事において、当分の間は現場の安全強化のために、安全巡視員を配置することとしている。

そこで、本院は、経済性等の観点から、安全巡視員に係る費用の積算が業務内容等を反映した適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、29年2月から30年6月までの間にしゅん功した新名神の建設事業に係る工事のうち、安全巡視員が配置されていた計79件、契約金額計2667億8414万余円(安全巡視員延べ161人に係る費用計6億0575万余円)を対象として、会社の本社、関西支社及び新名神京都、新名神大阪西、新名神兵庫各事務所において、契約書、安全巡視員配置計画書等の資料を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、新名神大阪東、新名神大津両事務所から調書等の提出を受けて、その内容を確認するなどの方法により検査した。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 安全巡視員に係る人件費

関西支社は、前記79件の工事における安全巡視員に係る費用について、受注者から提示された額とおおむね同額の計6億0575万余円と積算し、同額を支払っており、その積算額の大半は人件費が占めていた。そして、安全巡視員延べ161人の人件費を1人1日当たりに換算すると、表1のとおり、平均額は34,478円であり、最高額は81,000円、最低額は9,748円と大きな開差が生じていた。

表1 安全巡視員の人件費

工種 工事件数
(件)
人数
(人)
平均額
(円)
最高額
(円)
最低額
(円)
上部工 11 26 45,723 72,765 19,568
土木 16 37 38,969 68,451 16,030
舗装 3 9 38,468 47,643 27,255
電気 12 25 37,571 81,000 19,622
通信 5 8 32,319 50,000 20,605
機械 2 6 27,729 29,908 21,207
造園 9 16 25,594 36,196 9,748
建築 5 7 24,406 45,798 11,788
標識 8 16 23,627 33,968 15,035
遮音壁 8 11 22,872 32,000 13,800
79 161 34,478

(2) 施工管理員の業務内容、資格、単価等

工事中の事故の発生を防止するための安全確認の業務については、前記のとおり、安全巡視員だけではなく、施工管理員も、施工管理業務と併せて行っている。施工管理員については、会社が制定している施工管理業務共通仕様書(以下「共通仕様書」という。)によれば、業務の実施に当たり、関係法令等、業務対象工事の契約書、設計図書等の内容を十分に理解し、工事現場の状況についても精通しておくこととされている。また、施工管理員は、共通仕様書において、表2のとおり、管理員I、管理員II及び管理員IIIに区分され、工事の難易度に応じて担当する現場を分担しており、それぞれについて必要な資格や経験年数等の要件が定められている。そして、会社は、管理員I、管理員II及び管理員IIIについては、国土交通省が公表している「設計業務委託等技術者単価について(注2)」(以下「技術者単価」という。)において定められた設計業務等技術者の職種区分の「技師B」「技師C」及び「技術員」に相当するとし、施工管理員の人件費の算定に当たっては、技術者単価の単価表に定められたそれぞれの単価(以下「基準日額」という。)を適用することとしている。

表2 施工管理員の資格要件等

資格区分 必要な資格 経験年数 技術者単価における職種区分
管理員I 技術士、上級技術者等 管理員II等を5年以上かつ管理技術者として3年以上 技師B
管理員II 1級土木施工管理技士等 管理員III等を3年以上 技師C
管理員III 2級土木施工管理技士等 不要 技術員

(注) 1級土木施工管理技士は、土木工事の施工計画や安全管理、工程管理、技術者への技術的指導等を行うことができる国家資格で、専門的な知識と一定の実務経験が必要とされている。

また、28年10月以降に現場において作業員の不安全行動がないかなどの安全確認を行っている施工管理員の大半は資格区分が管理員IIとなっていた。

(注2)
設計業務委託等技術者単価について  設計業務等技術者給与実態調査に基づき、国土交通省が設計業務委託等技術者単価を決定したものであり、基本給与相当額、諸手当、賞与相当額及び事業主負担額から構成されている。

(3) 上部工工事等に配置された安全巡視員の業務内容、資格等

安全巡視員の業務は、前記のとおり、配置対象作業が実施されている期間に安全確認を行うものであるが、そのためには、設計図書等の内容を理解して工事の施工手順や建設機械等の使用方法を把握する必要がある。そして、安全巡視員のうち、上部工工事及び土木工事(以下、これらの工事を合わせて「上部工工事等」という。)に配置された安全巡視員が行う安全確認の現場は、対象が橋りょう等の大規模な構造物であったり、足場を利用した高所作業が多かったり、大型のクレーン等を多用したりなどしていて、墜落や落下、クレーン等の転倒等の事故の可能性が高い現場が多く、その他の工種における安全確認の現場とは異なるものとなっていた。

また、上部工工事等計27件に配置された安全巡視員延べ63人が保有している資格について安全巡視員配置計画書により確認したところ、55人(全体の87.3%)が1級土木施工管理技士の資格を保有していた。一方で、その他の工種に配置された安全巡視員延べ98人の保有資格は、同資格を含む各工種の1級の施工管理技士の資格を保有している者が35人(同35.7%)に過ぎず、55人については、資格の保有状況が不明であった。

このように、安全巡視員が施工管理員と同様に設計図書等の内容を理解するなどして安全確認を行っていること、上部工工事等に配置された安全巡視員のうち、保有する資格が把握できた者の多くが1級土木施工管理技士の資格を保有していることから、上部工工事等に配置される安全巡視員は、同資格を有し、施工管理業務の一部として安全確認を行っている管理員IIに相当するものであり、その人件費の算定に当たっては、業務内容や保有資格等に応じた「技師C」の基準日額を適用することが適切であると認められた。

そして、上部工工事等計27件に配置された安全巡視員(延べ63人に係る費用計2億3882万余円)の1人1日当たりの人件費の平均額をみると、41,756円となっており、管理員IIに適用されている技術者単価における「技師C」の基準日額(28年度29,900円、29年度30,000円、30年度30,800円)に比べて高額となっていた。

したがって、会社において、安全巡視員に係る費用の積算に当たり、安全巡視員の業務内容等を踏まえた人件費単価を設定することなく、受注者から提出された協議書に記載された安全巡視員の配置に係る費用を基に算定していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(低減できた積算額)

上部工工事等計27件に配置された安全巡視員延べ63人に係る費用の積算額について、本院において、「技師C」の基準日額を適用することとするなどして試算すると、計1億9337万余円となり、前記の積算額計2億3882万余円と比較して約4540万円低減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、工事中の事故の再発防止策として速やかに安全巡視員を配置する必要があったことにもよるが、会社において、安全巡視員の業務内容等を踏まえた適正な人件費単価を設定することについて十分な検討を行っていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、会社は、30年9月に工種ごとの安全巡視員の人件費単価や必要な資格要件等を定めるとともに、5事務所へ通知を発して、安全巡視員に係る費用の積算を適切に行うよう周知徹底を図った。そして、同年10月以降に入札手続を開始する工事については、配置する安全巡視員に係る費用を新たに定めた人件費単価等により積算することとし、契約済みの工事についても、受注者と協議して安全巡視員に係る費用の契約変更を行うこととする処置を講じた。