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官民ファンドにおける業務運営の状況について


3 検査の状況

(1) 国の財政支援及び官民ファンド運営法人による支援の実施状況

ア 国の財政支援の状況

(ア) 政府出資等の状況
a 出資等の種類別の状況

官民ファンド運営法人に対する官民ファンドの業務運営に関する28年度末の政府出資等の額は、図表1-1のとおり、合計7812億余円となっており、政府出資等の額を出資等の種類別にみると、次のとおりとなっている。

出資によるものは、一般会計の計1211億余円及び財政投融資特別会計(投資勘定)の計5365億余円となっている。なお、株式会社地域経済活性化支援機構に対する出資は、預金保険機構が国からの出資金を財源として株式会社地域経済活性化支援機構に出資した額である(以下、国から直接出資を受けている官民ファンド運営法人に対して国が出資した額と預金保険機構が国からの出資金を財源として株式会社地域経済活性化支援機構に出資した額を合わせて「政府出資金」という。)。

国が法人に対して出資することにより取得した株式及び出資による権利は、国有財産法(昭和23年法律第73号)上の国有財産とされており、国民共有の貴重な財産であり適切な方法により管理する必要がある。官民ファンドについては、一義的には官民ファンド運営法人及び所管府省庁において、政府出資金の価値が著しく低下したり、政府出資金が回収できなかったりする事態が生ずることを回避するよう政府出資金を適切に管理する必要がある。また、財政投融資特別会計(投資勘定)の出資は収益が上がるまで長期的に耐えることのできる資金であるが、投資先から回収したリターンを再投資する仕組みであることから、官民ファンド運営法人は、業務期間を通じて、対象事業者へ支援のために拠出した出資金等を確実に回収することに加え、官民ファンドの業務運営に要する経費を上回る収益を確保し、出資者である国に納付することが求められている。

補助金の交付によるものは、一般会計の計300億円及びエネルギー対策特別会計(エネルギー需給勘定)の計144億余円となっており、これらは、基金設置法人2法人が支援を行うための基金を造成するために交付されたものであり、基金設置法人2法人は、交付要綱等に基づき基金事業を実施し、基金事業を完了したとき又は基金事業の中止若しくは廃止の承認を受けたときは、基金の残余の額を国庫に返納しなければならないこととなっている。

貸付けによるものは、財政投融資特別会計(投資勘定)の計790億円となっており、借用証書に基づき、国が将来回収することとなっている。

また、政府出資等のほかにファンド専業法人である株式会社産業革新機構等7法人は民間からの出資(以下「民間出資」という。)を受けており、28年度末の額は計551億余円となっている。このほか、株式会社日本政策投資銀行は競争力強化ファンドに500億円、特定投資業務に1150億円をそれぞれ自己資金から繰り入れている。

図表1-1 官民ファンドの業務運営に関する政府出資等の額(平成28年度末)

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人等 政府出資等開始年度 政府出資等 民間出資等 合計
国の会計区分 出資等の種類 金額
(a)
金額
(b)
金額
(c)=(a)+(b)
政府出資等の割合(a)/(c)
株式会社産業革新機構 平成21年度 財政投融資特別会計
(投資勘定)
出資 286,000 14,010 300,010 95.3%
株式会社地域経済活性化支援機構 21年度 財政投融資特別会計
(投資勘定)
出資 注(1) 12,970 注(1) 10,159 26,084 61.0%
一般会計 出資 注(1) 2,955
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 24年度 財政投融資特別会計
(投資勘定)
出資 30,000 1,902 31,902 94.0%
株式会社民間資金等活用事業推進機構 25年度 財政投融資特別会計
(投資勘定)
出資 10,000 10,000 20,000 50.0%
株式会社海外需要開拓支援機構 25年度 財政投融資特別会計
(投資勘定)
出資 58,600 10,700 69,300 84.5%
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 26年度 財政投融資特別会計(投資勘定) 出資 19,000 5,945 24,945 76.1%
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 27年度 財政投融資特別会計
(投資勘定)
出資 5,022 2,385 7,407 67.8%
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 24年度 財政投融資特別会計
(投資勘定)
貸付け 注(2) 79,000 (自己資金)
50,000
129,000 61.2%
特定投資業務 27年度 財政投融資特別会計
(投資勘定)
出資 注(2) 115,000 (自己資金)
115,000
230,000 50.0%
独立行政法人中小企業基盤整備機構 10年度 一般会計 出資 注(2) 15,700 注(3) 15,700 100.0%
国立研究開発法人科学技術振興機構 24年度 一般会計 出資 注(2) 2,500 2,500 100.0%
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム 24年度 一般会計 出資 注(2) 12,500 12,500 100.0%
国立大学法人東京大学 24年度 一般会計 出資 注(2) 41,700 41,700 100.0%
国立大学法人京都大学 24年度 一般会計 出資 注(2) 29,200 29,200 100.0%
国立大学法人大阪大学 24年度 一般会計 出資 注(2) 16,600 16,600 100.0%
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 24年度 一般会計 補助金の交付 30,000 30,000 100.0%
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 25年度 エネルギー対策特別会計
(エネルギー需給勘定)
補助金の交付 14,465 14,465 100.0%
国の会計区分及び出資等の種類別の計 一般会計 出資 121,155
補助金の交付 30,000
財政投融資特別会計
(投資勘定)
出資 536,592
貸付け 79,000
エネルギー対策特別会計
(エネルギー需給勘定)
補助金の交付 14,465
合計 781,212 (民間出資)
55,101
(自己資金)
165,000
1,001,314 78.0%
注(1)
株式会社地域経済活性化支援機構に対する政府出資等の額は、預金保険機構が国からの出資金を財源にして株式会社地域経済活性化支援機構に出資した額である。また、民間出資等の額のうち96億余円は、預金保険機構が民間金融機関からの拠出金を財源にして株式会社地域経済活性化支援機構に出資した額である。
注(2)
政府出資等の額は、官民ファンドの業務運営に関する政府出資等の額のみを抽出した金額である。
注(3)
独立行政法人中小企業基盤整備機構は政府出資等157億円のほかに自己資金を用いて支援を行っているが、同機構は支援業務に関して区分経理を行うこととなっておらず((3)ア(イ)参照)、自己資金の額を把握できないため、「-」としている。
b 政府出資金の状況等

前記のとおり、官民ファンド運営法人に対する政府出資等7812億余円のうち、政府出資金は、一般会計の計1211億余円及び財政投融資特別会計(投資勘定)の計5365億余円の合計6577億余円であり、政府出資等に占める政府出資金の割合は84.1%で、政府出資等の多くが出資によるものとなっている。また、これらの出資を受けた官民ファンド運営法人は、全て株式を上場していない。

国が官民ファンド運営法人に対して出資することにより取得した株式及び出資による権利は、前記のとおり国有財産法上の国有財産とされており、国有財産台帳に登録されている。国有財産台帳価格については、国有財産法施行令(昭和23年政令第246号)第23条の規定に基づき、毎会計年度、当該年度末の現況において、財務大臣の定めるところにより評価し、その評価額により改定しなければならないこととなっており、その評価額は、「国有財産台帳の価格改定に関する評価要領について」(平成23年財理第4670号)に基づき、株式上場を行っていない法人に対して出資することにより取得した株式及び出資による権利のように市場価格のない出資金については、総資産額から総負債額を減じた額に出資割合を乗じた額を評価額とすることとなっている。

官民ファンド運営法人のうち、ファンド専業法人は、官民ファンドの業務を主な業務としているため、ファンド専業法人に対する政府出資金(株式会社地域経済活性化支援機構は、国から預金保険機構に対する出資金)の評価額がそのまま国有財産台帳価格として登録されている。一方、政府出資金を受けている兼業法人については、官民ファンドの業務以外の業務を含めた法人全体に係る政府出資金の評価額が国有財産台帳価格として登録されている。

そこで、株式会社地域経済活性化支援機構を除くファンド専業法人の政府出資金について、24年度末から28年度末までの国有財産台帳価格をみると、図表1-2のとおりとなっており、政府出資金に対する国有財産台帳価格の割合は、28年度末現在までにおいては、株式会社産業革新機構を除く各法人において、全ての年度で100%を下回っている状況となっている。

図表1-2 政府出資金に対する国有財産台帳価格の割合(平成24年度末~28年度末)

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人 国有財産台帳価格等 平成24年度末 25年度末 26年度末 27年度末 28年度末
株式会社産業革新機構 政府出資金 266,000 286,000 286,000 286,000 286,000
国有財産台帳価格 249,665 806,406 857,254 701,540 1,049,513
政府出資金に対する国有財産台帳価格の割合 93.8% 281.9% 299.7% 245.2% 366.9%
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 政府出資金 30,000 30,000 30,000 30,000 30,000
国有財産台帳価格 29,887 29,201 28,254 27,154 25,724
政府出資金に対する国有財産台帳価格の割合 99.6% 97.3% 94.1% 90.5% 85.7%
株式会社民間資金等活用事業推進機構 政府出資金 10,000 10,000 10,000 10,000
国有財産台帳価格 9,877 9,613 9,472 9,505
政府出資金に対する国有財産台帳価格の割合 98.7% 96.1% 94.7% 95.0%
株式会社海外需要開拓支援機構 政府出資金 30,000 30,000 41,600 58,600
国有財産台帳価格 29,557 28,492 38,271 54,706
政府出資金に対する国有財産台帳価格の割合 98.5% 94.9% 91.9% 93.3%
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 政府出資金 5,400 15,000 19,000
国有財産台帳価格 5,256 13,991 16,901
政府出資金に対する国有財産台帳価格の割合 97.3% 93.2% 88.9%
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 政府出資金 1,872 5,022
国有財産台帳価格 1,780 4,529
政府出資金に対する国有財産台帳価格の割合 95.1% 90.1%
(注)
官民ファンド運営法人の設置日前の年度は斜線を引いている。

このように、国から直接出資を受けているファンド専業法人については、その支援の結果や官民ファンドの業務運営に要する経費等に応じた純資産の増減を通じて、国民共有の貴重な財産である国有財産の価値を増減させることになる。

また、政府出資金を受けている兼業法人については、官民ファンドの業務のみが純資産の増減に影響を与えるものではないが、官民ファンドの業務を含めた法人全体の業務の結果として純資産の増減に影響を与え、政府出資金の評価額の増減として、国有財産台帳価格に反映されることになる。

財政投融資特別会計(投資勘定)は、日本電信電話株式会社や日本たばこ産業株式会社の配当等を財源としており、近年は、政府の成長戦略を受けるなどして、官民ファンドを通じてリスクが高く民間だけでは十分に資金が供給されない事業に対する資金供給を強化している。

そして、同勘定の出資は投資先から回収したリターンを再投資する仕組みであり、官民ファンド運営法人において業務期間を通じて、対象事業者へ支援のために拠出した出資金等を確実に回収することに加え、官民ファンドの業務運営に要する経費を上回る収益を確保し、出資者である国に納付することが求められるものであり、国においても政府出資金が回収できない事態等が生じないように、出資者としての統制を適切に行い、最終的な受益者である国民の中長期的なリターンの拡大を図る責任を適切に果たす必要がある。このため、出資者である国において、官民ファンド運営法人における支援内容、実支援後の状況等を確認することが重要である。同勘定からの政府出資金に係る統制の状況についてみたところ、次のような取組が行われていた。

同勘定から出資を行うに当たっては、「財政融資資金の長期運用に対する特別措置に関する法律」(昭和48年法律第7号)第5条の規定に基づき、財政投融資計画が策定される。財政投融資計画の策定に当たっては、財政制度等審議会の意見聴取を行いながら、財務省において個々の施策の必要性や重要性、資金を供給する事業の収益性等について審査が行われている。財政投融資計画は、特別会計予算の添付書類として国会に提出され、また、財政投融資計画に計上される同勘定の出資額が予算の一部として国会の審議及び議決を経ることで、国会による財政統制の下に置かれている。

また、出資後においては、国は、出資者として従前から株式会社に対して議決権を行使しており、28年度に「政府保有株式に係る株主議決権行使等の方針」(平成28年5月財務省理財局)が作成されたことにより、同方針の「2.株主議決権行使等の方針」に基づき、株主総会における議決権行使の結果や株主総会での発言について公表することとなっている。

さらに、国は、出資者としての統制を確保する一環として、財務省による実地監査を行うこととしており、26年に株式会社産業革新機構、27年に株式会社農林漁業成長産業化支援機構及び28年に株式会社海外需要開拓支援機構に対して、法令等の遵守及び内部統制に係る実地監査をそれぞれ実施している。

このように、財政投融資特別会計(投資勘定)からの政府出資金について、官民ファンド運営法人に対して出資を行う前の段階での審査や出資後の出資者としての議決権の行使等により、政府出資金が回収できない事態等が生ずることを回避するための取組が行われている。

(イ) 政府出資等以外の財政支援の状況
a 運営費交付金

国は、国立大学法人における研究成果の事業化に向けた産学共同の研究開発を推進するなどのために、国立大学法人4法人に対して、平成24年度一般会計補正予算(第1号)により、運営費交付金計200億円を交付している。この運営費交付金は、国立大学法人の産学連携体制の整備等に係る経費や、事業化につながるような共同研究(以下「事業化推進型共同研究」という。)の実施に必要な経費等に充当するための財源として交付されたものであり、政府出資金と合わせて官民イノベーションプログラムの財源の一部となっている(当該運営費交付金の使用状況等については、エ 官民イノベーションプログラムにおける政府出資金等の状況を参照)。また、国は、当該運営費交付金とは別に、独立行政法人2法人及び国立大学法人4法人に対して、各法人の業務に係る費用の財源に充てるために運営費交付金を交付しており、そのうちの一部が官民ファンドの業務に充当されている。

b 政府保証

国は、一部の官民ファンド運営法人が金融市場で発行する債券や借入金に政府保証を付して、支援に必要な資金を円滑かつ有利に調達できるようにしている。

官民ファンド運営法人に対する官民ファンドの業務運営に関する28年度の政府保証の状況をみると、図表1-3のとおりとなっており、政府保証の限度額が28年度の国の一般会計予算に定められていた官民ファンド運営法人は7法人となっている。そして、これらのうち、実際に政府保証を付した借入等を行った法人は株式会社産業革新機構及び株式会社民間資金等活用事業推進機構の2法人となっており、これらの2法人は、政府保証を付した借入等を財源として、大型案件等への支援を行っている。

図表1-3 官民ファンド運営法人に対する官民ファンドの業務運営に関する平成28年度の政府保証の状況

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人 平成28年度政府保証 28年度末累計
限度額 調達額 累計調達額 政府保証借入等残高
株式会社産業革新機構 1,800,000 379,800 1,623,400 379,800
株式会社地域経済活性化支援機構 1,000,000 - - -
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 23,600 - - -
株式会社民間資金等活用事業推進機構 113,800 5,000 20,000 20,000
株式会社海外需要開拓支援機構 35,000 - - -
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 71,000 - - -
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 45,700 - - -
3,089,100 384,800 1,643,400 399,800
(注)
限度額は平成28年度一般会計補正予算(第2号)成立後の限度額を、調達額は平成28年度に政府保証を付した借入等を行った額を、累計調達額は設立から28年度末までに政府保証を付した借入等を行った累計額を、政府保証借入等残高は政府保証を付した借入等の28年度末の残高をそれぞれ計上している。

イ 官民ファンド運営法人が実施する支援の状況

官民ファンドは、支援基準等において定められた対象事業者に対して支援を行うことにより、政策目的の実現を図ることとなっている。そして、官民ファンドの中には、それぞれの設置根拠法において、保有する全ての株式等の処分を行い、支援を終了するよう努めなければならない時期(以下「支援の終了時期」という。)が定められている法人がある。さらに、政府出資等が多額に上っていることを踏まえて、支援を行うなどした結果、不要となった政府出資等が発生した場合等には、適切に国庫に納付することが求められる。

官民ファンド運営法人が実施する支援の状況についてみると、次のとおりとなっている。

(ア) 官民ファンドの政策目的及び支援の終了時期等の状況

官民ファンド運営法人は、それぞれの設置根拠法等において政策目的が定められている。

また、ファンド専業法人は、その存続に期限を設けて、個別の投資案件を民間に適切に引き渡すことが一般的であることから、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構を除いて、設置根拠法において支援の終了時期が定められており、それぞれの設置根拠法の見直しの時期も定められている。なお、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構は、支援対象となる海外インフラ事業が超長期にわたるプロジェクトであるため、あらかじめ具体的な支援の終了時期を明記することは適切でないとして具体的な支援の終了時期を定めていないが、設置根拠法において、5年ごとに検討を加えて、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとなっている。

一方、兼業法人についてみると、株式会社日本政策投資銀行の競争力強化ファンドについては設置根拠法等に支援の終了時期及び見直しの時期は定められていないが、34年度末までに支援を終了する予定としており、特定投資業務については、設置根拠法に支援の終了時期及び見直しの時期が定められている。独立行政法人2法人及び国立大学法人4法人については支援の終了時期は定められていないが、独立行政法人2法人は独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「独法通則法」という。)に基づき5年ごとに、国立大学法人4法人は国立大学法人法に基づき6年ごとに、それぞれ法人の業務全般について検討を行うこととなっている。基金設置法人2法人については支援の終了時期は定められていないが、それぞれの交付要綱に基づき、一般社団法人環境不動産普及促進機構は交付要綱施行後10年以内に、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構は基金造成後10年以内に、事業の内容について検討を加えることとなっている(図表1-4参照)。

図表1-4 官民ファンドの政策目的及び支援の終了時期等

官民ファンド運営法人等 設置根拠法等 政策目的 支援の終了時期
(見直しの時期及び対象)
株式会社産業革新機構 強化法 企業等が知識や技術をはじめとする経営資源の自前主義にとらわれることなく、従来の組織や産業といった枠を超えて経営資源を有効に活用することにより、社会の課題に対応して付加価値を創造していくオープンイノベーションを促進するため、特定事業活動に対して、出資を主とする資金供給等の支援を行うこと 平成37年3月31日
(30年3月31日までの間に設置根拠法を見直し)
株式会社地域経済活性化支援機構 株式会社地域経済活性化支援機構法 雇用機会の確保に配慮しつつ、地域における総合的な経済力の向上を通じて地域経済の活性化を図り、併せて地域の信用秩序の基盤強化に資するため、地域経済の活性化に資する事業活動の支援を行うこと 35年3月31日
(設置根拠法の施行後5年以内に同法を見直し)
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 株式会社農林漁業成長産業化支援機構法 我が国農林漁業が農林漁業者の所得を確保し、及び農山漁村において雇用機会を創出することができる成長産業となるようにするため、農林漁業者が主体となって、国内外における新たな事業分野を開拓する事業活動等に対し資金供給その他の支援を行うこと 45年3月31日
(設置根拠法の施行後3年を目途として同法を見直し)
株式会社民間資金等活用事業推進機構 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 独立採算型等のPFI事業を実施する者に対し、金融機関が行う金融及び民間の投資を補完するための資金の供給を行うこと等により、民間インフラ資本市場の整備を促進するとともに、必要な知識及び情報の提供その他普及に資する支援を行い、もって我が国においてPFI事業を推進すること 40年3月31日
(設置根拠法の施行後3年ごとに同法を見直し)
株式会社海外需要開拓支援機構 株式会社海外需要開拓支援機構法 我が国の生活文化の特色を生かした魅力ある商品又は役務の海外における需要の開拓を行う事業活動及び当該事業活動を支援する事業活動に対し資金供給その他の支援等を行うこと 46年3月31日
(33年3月31日までの間に設置根拠法を見直し)
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法 我が国に蓄積された知識、技術及び経験を活用して海外における交通事業及び都市開発事業を行う者等に対し資金の供給、専門家の派遣その他の支援を行うこと 定めなし
(設置根拠法の施行後5年ごとに同法を見直し)
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法 我が国の事業者に蓄積された知識、技術及び経験を活用して海外において通信・放送・郵便事業を行う者等に対し資金供給その他の支援を行うこと 48年3月31日
(設置根拠法の施行後5年を目途として同法を見直し)
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 株式会社日本政策投資銀行法 日本の競争力強化に資する、新たな価値の創造(イノベーション)や企業価値向上に向けた取組に対し、リスクマネーの供給を行うこと 定めなし
(定めなし)
特定投資業務 地域の特性を生かした事業活動の活性化又は我が国の企業の競争力の強化及び事業者が生産性又は収益性を向上させることを目指して行う事業活動に対する金融機関等による資金供給の促進に寄与すると認められるものに対して、貸付けその他の資金供給を行うこと 38年3月31日
(設置根拠法の改正後適当な時期において特定投資業務を見直し)
独立行政法人中小企業基盤整備機構 独立行政法人中小企業基盤整備機構法強化法 中小企業者その他の事業者の事業活動に必要な出資等の事業を行い、もって中小企業者その他の事業者の事業活動の活性化のための基盤を整備すること 定めなし
(独法通則法により中期目標期間の終了時に法人の業務全般について見直し)
国立研究開発法人科学技術振興機構 国立研究開発法人科学技術振興機構法研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律 研究開発の成果の実用化及びこれによるイノベーションの創出を図るため、科学技術振興機構の研究開発の成果を事業活動において活用しようとする者に対する出資並びに人的及び技術的援助の業務を行うこと 定めなし
(独法通則法により中長期目標期間の終了時に法人の業務全般について見直し)
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム 国立大学法人法強化法 国立大学法人等における技術に関する研究成果の活用を促進するため、技術に関する研究成果を事業活動において活用する者に対し、当該事業活動に関する必要な助言、資金供給その他の支援を行う事業の実施に必要な資金の出資並びに人的及び技術的援助の業務を行うこと 定めなし
(国立大学法人法により中期目標期間の終了時に法人の業務全般について見直し)
国立大学法人東京大学
国立大学法人京都大学
国立大学法人大阪大学
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 耐震・環境不動産形成対策費補助金交付要綱平成24年度地球温暖化対策推進事業費国庫補助金交付要綱 老朽・低未利用不動産の改修、建替え又は開発を行い、耐震・環境性能を有する良質な不動産の形成を促進するための基金を造成することにより、地域再生・活性化に資するまちづくり及び地球温暖化対策を推進すること 定めなし
(交付要綱の施行後10年以内に事業の内容を見直し)
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 地域低炭素投資促進ファンド事業費補助金(地域低炭素化出資事業基金)交付要綱 地域において地球温暖化対策のための事業を行う者又は当該事業者に対し出資を行う投資事業有限責任組合等を出資により支援することにより、地球温暖化対策のための投資を促進し、二酸化炭素の排出削減を推進すること注(2) 定めなし
(基金の造成後10年以内に事業の内容を見直し)
注(1)
政府は、株式会社産業革新機構の支援の終了時期を平成37年3月31日から46年3月31日に改めるなどする強化法の改正案及び株式会社地域経済活性化支援機構の支援の終了時期を35年3月31日から38年3月31日に改めるなどする株式会社地域経済活性化支援機構法の改正案を、30年3月22日現在において、第196回国会(常会)に提出している。
注(2)
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構は、平成29年度の交付要綱の改正により、同年度からサブファンドに対する支援決定を行わないこととしている。
(イ) 官民ファンドごとの支援スキームの状況

官民ファンド運営法人が支援を行う際の支援スキームには、1(3)イのとおり、直接支援と間接支援があり、設置根拠法等において、官民ファンドごとに両方の支援スキームで行うか、いずれか一方の支援スキームで行うかが定められている。

直接支援は、図表1-5のとおり、独立行政法人中小企業基盤整備機構及び一般社団法人環境不動産普及促進機構を除く12官民ファンドで業務として定められており、うち、出資による支援が12官民ファンドで、また、貸付けによる支援が10官民ファンドで業務として定められている。

間接支援は、国立研究開発法人科学技術振興機構を除く13官民ファンドで業務として定められており、サブファンドに対してGP出資又はLP出資を行うことができることとなっている(各官民ファンド運営法人の支援スキームの概念図及び支援金額等については別表3「ア 支援スキーム」を参照)。

なお、国立大学法人4法人の官民イノベーションプログラムは、4国大ファンドが対象事業者等に対して支援を行っており、その業務運営はGP出資を行うそれぞれの国立大学法人の子会社が行っている。

図表1-5 官民ファンドごとの支援スキーム等(平成28年度末)

官民ファンド運営法人等 直接支援   間接支援
出資 貸付け
株式会社産業革新機構
株式会社地域経済活性化支援機構
株式会社農林漁業成長産業化支援機構
株式会社民間資金等活用事業推進機構
株式会社海外需要開拓支援機構
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド
特定投資業務
独立行政法人中小企業基盤整備機構 - - -
国立研究開発法人科学技術振興機構 - -
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム注(2)
国立大学法人東京大学
国立大学法人京都大学
国立大学法人大阪大学
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 - - -
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 -
12官民ファンド 12官民ファンド 10官民ファンド 13官民ファンド
注(1)
官民ファンドとして支援実績がある支援スキーム又は支援の手法に○、支援実績はないが設置根拠法等において行うことができることとなっている支援スキーム又は支援の手法に△を付している。また、「-」は設置根拠法等に定めがない支援スキーム又は支援の手法である。
注(2)
官民イノベーションプログラムのうち、直接支援の実績があるのは国立大学法人東北大学、国立大学法人京都大学及び国立大学法人大阪大学であり、また、間接支援の実績があるのは国立大学法人東京大学のみである。
注(3)
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構は、平成29年度の交付要綱の改正により、同年度からサブファンドに対する支援決定を行わないこととしている。
(ウ) 支援の実績
a 官民ファンド運営法人における支援の実績

官民ファンド運営法人は、政府出資等及び民間出資等(以下、両者を合わせて「資本金等」という。)を受けて支援を行っている。そして、官民ファンド運営法人は、支援決定に基づき対象事業者等との契約で支援約束額を設定して、対象事業者等の事業の進捗等に応じて実支援を行っている。

官民ファンドの資本金等に対する設置日等から28年度末までの実支援額の割合等は、図表1-6のとおりであり、資本金等が対象事業者等への支援に活用されているかについてみたところ、株式会社産業革新機構、株式会社地域経済活性化支援機構及び株式会社民間資金等活用事業推進機構は、対象事業者等からの回収額を再び支援に活用したり、政府保証の付された借入金等により資金調達を行ったりなどして既に実支援額が資本金等を上回っていて、同割合が100%を超えており、また、株式会社日本政策投資銀行の競争力強化ファンドは同割合が99.1%となっている。これらの官民ファンドでは、資本金等が対象事業者等への支援に活用されている。

一方、その他の官民ファンドは、設置日等から28年度末までの期間が短いなどの理由により、おおむね同割合が50%以下になっている。

そして、資本金等に対する実支援額の割合を、資本金等に対する支援約束額の割合と、支援約束額に対する実支援額の割合(以下「支援実行率」という。)に分解してみると、支援約束が進んでおらず資本金等に対する支援約束額の割合が低い官民ファンド運営法人や、支援約束は進んでいるが実支援が進んでおらず支援実行率が低くなっている官民ファンド運営法人が見受けられた。

図表1-6 資本金等に対する実支援額(設置日等~平成28年度末)の割合等

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人等 設置日等 設置日等から平成28年度末までの期間 資本金等
(28年度末)
支援約束額 実支援額 資本金等に対する実支援額の割合 資本金等に対する支援約束額の割合 支援実行率
        注(1)   注(1)
(a) (b) (c) (d) (e)=(d)/(b) (f)=(c)/(b) (g)=(d)/(c)
株式会社産業革新機構 21年7月17日     114件 114件      
  7年8か月 300,010 984,643 815,914 271.9% 328.2% 82.8%
株式会社地域経済活性化支援機構 21年10月14日     81件 81件      
(前身の株式会社企業再生支援機構の設置日) 7年5か月 26,084 528,028 504,326 1933.4% 2024.2% 95.5%
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 25年1月23日     81件 78件      
  4年2か月 31,902 41,104 6,552 20.5% 128.8% 15.9%
株式会社民間資金等活用事業推進機構 25年10月7日     21件 9件      
  3年5か月 20,000 31,260 29,929 149.6% 156.3% 95.7%
株式会社海外需要開拓支援機構 25年11月8日     21件 17件      
  3年4か月 69,300 46,604 31,031 44.7% 67.2% 66.5%
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 26年10月20日     6件 5件      
  2年5か月 24,945 20,480 10,859 43.5% 82.1% 53.0%
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 27年11月25日     2件 1件      
  1年4か月 7,407 7,468 1,300 17.5% 100.8% 17.4%
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 25年3月12日     12件 12件      
(事業開始日) 4年0か月 129,000 128,984 127,897 99.1% 99.9% 99.1%
特定投資業務 27年6月29日     30件 29件      
(事業開始日) 1年9か月 230,000 166,752 145,278 63.1% 72.5% 87.1%
独立行政法人中小企業基盤整備機構 11年2月16日     248件 246件 注(3) 注(3)  
(前身の中小企業事業団による出資事業開始日) 18年1か月 15,700 358,446 253,442 70.7%
国立研究開発法人科学技術振興機構 26年4月1日     12件 12件      
(前身の独立行政法人科学技術振興機構による出資事業開始日) 3年0か月 2,500 904 904 36.1% 36.1% 100.0%
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム 27年8月31日   12,500 5件 5件 10.8% 10.8%  
(国大ファンドの設置日) 1年7か月 (9,680) 1,357 1,357 (14.0%) (14.0%) 100.0%
国立大学法人東京大学 28年12月15日   41,700 4件 4件 1.8% 6.5%  
(国大ファンドの設置日) 3か月 (25,001) 2,711 764 (3.0%) (10.8%) 28.1%
国立大学法人京都大学 28年1月4日   29,200 11件 11件 4.4% 4.4%  
(国大ファンドの設置日) 1年2か月 (16,001) 1,299 1,299 (8.1%) (8.1%) 100.0%
国立大学法人大阪大学 27年7月31日   16,600 10件 10件 7.1% 7.1%  
(国大ファンドの設置日) 1年8か月 (12,510) 1,185 1,185 (9.4%) (9.4%) 100.0%
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 25年3月29日     6件 6件      
(基金設置日) 4年0か月 30,000 9,048 7,086 23.6% 30.1% 78.3%
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 25年6月20日     28件 20件      
(基金設置日) 3年9か月 14,465 11,001 3,855 26.6% 76.0% 35.0%
  692件 660件 注(6)  
1,001,314 2,341,282 1,942,987 171.4% 82.9%
注(1)
実支援の払込み方式が異なるため、資本金等に対する実支援額の割合や支援実行率を単純に比較することはできない。
注(2)
株式会社地域経済活性化支援機構の支援に係る件数及び金額には、同機構の関係会社がGP出資しているものを含んでいる。以下同じ。
注(3)
独立行政法人中小企業基盤整備機構は政府出資等157億円のほかに自己資金を用いて支援を行っているが、同機構は支援業務に関して区分経理を行うこととなっておらず((3)ア(イ)参照)、自己資金の額を把握できないため、「-」としている。
注(4)
国立大学法人4法人の資本金等の額は、上段が各国立大学法人に対する政府出資金の額であり、下段の括弧内の額が、各国立大学法人の国大ファンドに対する当該国立大学法人及び民間金融機関等からのLP出資と子会社からのGP出資の合計額である。
注(5)
国立大学法人4法人は、上段の値は、資本金等の欄の上段の額を用いて算出しており、下段の値は、資本金等の欄の下段の括弧内の額を用いて算出している。
注(6)
独立行政法人中小企業基盤整備機構を除く。また、国立大学法人4法人は、上段の値を用いて算出している。

上記のとおり、支援約束は進んでいるが実支援が進んでおらず、支援実行率が低くなっている官民ファンド運営法人が見受けられたことから、支援スキーム別に支援実行率をみたところ、図表1-7のとおり、直接支援の支援実行率は17.4%から100.0%になっており、間接支援の支援実行率は5.5%から87.9%になっている。

図表1-7 支援スキーム別の支援実行率(設置日等~平成28年度末の累計)

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人等 直接支援 間接支援
支援約束額
(a)
実支援額計
(b)
  支援実行率
(b)/(a)
支援約束額
(c)
実支援額(d) 支援実行率
(d)/(c)
出資 貸付け その他注(2) サブファンド出資
株式会社産業革新機構 105件
928,135
105件
775,637
105件
688,558
4件
40,509
5件
46,569
83.5% 9件
56,508
9件
40,276
71.2%
株式会社地域経済活性化支援機構 41件
493,957
41件
493,957
18件
370,221
9件
82,275
35件
41,460
100.0% 40件
34,071
40件
10,368
30.4%
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 29件
3,603
26件
2,496
2件
1,324
24件
1,172
-
-
69.2% 52件
37,501
52件
4,056
10.8%
株式会社民間資金等活用事業推進機構 21件
31,260
9件
29,929
2件
1,901
9件
26,768
1件
1,260
95.7% -
-
-
-
-
株式会社海外需要開拓支援機構 18件
34,904
14件
29,802
13件
29,502
-
-
1件
300
85.3% 3件
11,700
3件
1,229
10.5%
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 6件
20,480
5件
10,859
5件
10,859
-
-
-
-
53.0% -
-
-
-
-
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 2件
7,468
1件
1,300
1件
1,200
1件
100
-
-
17.4% -
-
-
-
-
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 10件
122,335
10件
122,045
9件
101,634
3件
20,411
-
-
99.7% 2件
6,649
2件
5,851
87.9%
特定投資業務 25件
156,110
25件
144,685
13件
27,142
5件
35,914
7件
81,628
92.6% 5件
10,642
4件
593
5.5%
独立行政法人中小企業基盤整備機構 -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- 248件
358,446
246件
253,442
70.7%
国立研究開発法人科学技術振興機構 12件
904
12件
904
12件
904
-
-
-
-
100.0% -
-
-
-
-
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム 5件
1,357
5件
1,357
5件
1,357
-
-
-
-
100.0% -
-
-
-
-
国立大学法人東京大学 -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- 4件
2,711
4件
764
28.1%
国立大学法人京都大学 11件
1,299
11件
1,299
11件
1,299
-
-
-
-
100.0% -
-
-
-
-
国立大学法人大阪大学 10件
1,185
10件
1,185
10件
1,185
-
-
-
-
100.0% -
-
-
-
-
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- 6件
9,048
6件
7,086
78.3%
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 22件
6,791
16件
3,283
14件
2,597
-
-
2件
685
48.3% 6件
4,210
4件
572
13.5%
317件
1,809,793
290件
1,618,744
220件
1,239,689
55件
207,150
51件
171,904
89.4% 375件
531,488
370件
324,242
61.0%
注(1)
直接支援では同一の対象事業者に対して出資と貸付け等を同時に行っている場合があるため、件数の合計が一致しないものがある。
注(2)
その他は、債権の買取り、社債引受け、収益分配請求権の取得及び信託受益権の取得である。
注(3)
間接支援では、サブファンドは投資事業有限責任組合契約に基づき、GP及びLPの同意を得るなどしてサブファンドに対する支援約束額を減額することができることとなっているため、支援約束額の減額を行っている場合は減額後の支援約束額としている。

直接支援の支援実行率は、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構が17.4%と低くなっているのを除き、ほとんどの法人が50%を超えている。これは、直接支援は、官民ファンド運営法人が直接対象事業者に対して支援を行うものであり、原則として、支援決定の際に設けられた条件が満たされれば実支援が行われるためであると考えられる。株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構は、支援決定案件が2件であり、うち1件は支援決定を28年度までに行ったものの、実支援の開始が29年度に後倒しとなったことから支援実行率が17.4%と低くなっている。

一方、間接支援の支援実行率は、直接支援の支援実行率と比べると低い傾向にあるが、これは、サブファンドに対する実支援は、原則として、サブファンドのGPによる案件発掘のプロセスを経て決定された対象事業者に対する出資等の進捗に応じて行われるためであると考えられる。

b 間接支援の実績

上記のとおり、間接支援の官民ファンド運営法人のサブファンドに対する実支援は、原則として、サブファンドのGPによる案件発掘のプロセスを経て決定された対象事業者に対する出資等の進捗に応じて行われる。そこで、28年度末に存続している10官民ファンドの267サブファンドを対象として、支援決定から28年度末までの経過年数ごとのサブファンドに対する支援実行率及び支援決定から1年以上経過したサブファンドの出資等の実績の有無についてみたところ、図表1-8のとおり、独立行政法人中小企業基盤整備機構は、支援決定からの経過年数に応じて支援実行率が高くなっている。一方、株式会社農林漁業成長産業化支援機構は、支援決定から年数が経過したサブファンドに対する支援実行率は年数が経過していないサブファンドと同程度であり、支援実行率が40%を超えるサブファンドが3年以上4年未満に1件、4年以上5年未満に2件含まれていたものの、同機構全体としては11.5%となっている。また、支援決定から1年以上経過したサブファンドのうち、4官民ファンドの10サブファンドは対象事業者への出資等の実績がない。

図表1-8 支援決定から平成28年度末までの経過年数ごとのサブファンドに対する支援実行率等(28年度末に存続している267サブファンド)

官民ファンド運営法人等 支援決定から平成28年度末までの経過年数
1年未満 1年以上2年未満 2年以上3年未満 3年以上4年未満 4年以上5年未満 5年以上
株式会社産業革新機構 サブファンド数 0 2 3 3 0 1 9
支援実行率 - 20.9% 62.0% 91.6% - 67.4% 71.2%
株式会社地域経済活性化支援機構 サブファンド数 5 13 16 5 0 0 39
支援実行率 4.6% 31.1% 36.0% 20.1% - - 30.4%
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 サブファンド数 0 1 11(4) 21(3) 15 0 48(7)
支援実行率 - 17.2% 11.6% 10.9% 11.7% - 11.5%
株式会社海外需要開拓支援機構 サブファンド数 1 2(1) 0 0 0 0 3(1)
支援実行率 20.0% 3.4% - - - - 10.5%
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド サブファンド数 0 1 1 0 0 0 2
支援実行率 - 98.7% 55.4% - - - 87.9%
特定投資業務 サブファンド数 0 5(1) 0 0 0 0 5(1)
支援実行率 - 5.5% - - - - 5.5%
独立行政法人中小企業基盤整備機構 サブファンド数 19 15 11 23 20 58 146
支援実行率 19.6% 47.5% 48.5% 69.4% 79.2% 81.3% 64.5%
国立大学法人東京大学 官民イノベーションプログラム サブファンド数 4 0 0 0 0 0 4
支援実行率 28.1% - - - - - 28.1%
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 サブファンド数 1 1 3 0 0 0 5
支援実行率 81.8% 100.0% 73.5% - - - 76.8%
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 サブファンド数 2 1 2(1) 1 0 0 6(1)
支援実行率 0.0% 48.3% 2.1% 100.0% - - 13.5%
サブファンド数 32 41(2) 47(5) 53(3) 35 59 267(10)
(注)
サブファンド数の欄の括弧内の値は、支援決定から1年以上経過したサブファンドのうち対象事業者に対する出資等の実績がないサブファンド数で内数である。

これら10サブファンドの出資等のその後の状況をみると、29年9月末現在、対象事業者への出資等の決定が行われて出資等が実行されたのが株式会社農林漁業成長産業化支援機構の2サブファンド及び株式会社海外需要開拓支援機構の1サブファンド、出資等の決定が行われて今後出資等が実行される見込みであるのが株式会社農林漁業成長産業化支援機構の1サブファンド及び一般社団法人グリーンファイナンス推進機構の1サブファンド、依然として出資等の決定が行われた案件がなく引き続き案件発掘等を行っているのが株式会社農林漁業成長産業化支援機構の3サブファンド及び株式会社日本政策投資銀行の特定投資業務の1サブファンド、清算を結了したのが株式会社農林漁業成長産業化支援機構の1サブファンドとなっている。

依然として出資等の決定が行われた案件がない株式会社日本政策投資銀行の特定投資業務の1サブファンドは、GPが特定投資業務を行うサブファンドと官民ファンドに含まれないその他の案件を行うサブファンドを運営して、その中で特定投資業務の条件を満たす案件があれば特定投資業務として出資等を行うスキームとなっており、その他の案件に対しての出資等の実績はあるが、特定投資業務の条件を満たす案件がないため、出資等の実績がない状況となっている。

サブファンドは、投資事業有限責任組合契約にあらかじめ規定されている存続期間の満了やGP及びLPの解散への同意等によって解散することになっている。25年度から28年度までに解散して清算を結了したサブファンドは、株式会社農林漁業成長産業化支援機構の4サブファンド、独立行政法人中小企業基盤整備機構の71サブファンド及び一般社団法人環境不動産普及促進機構の1サブファンドである。なお、株式会社地域経済活性化支援機構には、民間企業に持分を譲渡することで支援を終了した1サブファンドがある。

そこで、25年度から28年度までに解散して清算を結了したサブファンドを対象として、その出資等の実績についてみたところ、株式会社農林漁業成長産業化支援機構の4サブファンドは、出資等の実績がないまま解散して清算を結了していた。これは、同機構によると、当該4サブファンドについては、存続期間の満了前において、具体的な出資案件のめどが立たない中で運営経費のみが費消されることを回避するために、GP及び同機構以外のLPと協議の上解散したためであるとしている。

出資等の実績がないまま解散したサブファンドについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 出資等の実績がないまま解散したサブファンド

株式会社農林漁業成長産業化支援機構は、平成25年3月に、農林水産大臣の認可を受けて、A投資事業有限責任組合に対する支援を決定した。同組合は、「農林漁業者が主体となって、地域の特色を活かした農林水産物の開発、新たな販路開拓、農村漁村の活性化につながる新規事業に対して、積極的に資金供給等の支援を実施していく方針」で運営される組合で、存続期間は15年間、支援約束額は総額10億円(うち同機構分5億円)となっていた。

しかし、同機構は、同組合において、25年度に5回、26年度に3回及び27年度に2回開催された経営支援委員会に出席し、案件組成に向けてGPや他のLPと意見交換を行うなどしたものの、組合組成時に出資を予定していた2件の案件は出資等につながらず、その後も出資等を検討できる案件がない状態が2年以上続いていた。

このため、同機構は、28年1月に、GPに対して今後の対応を聴取するなどしたところ、GPが解散の意向を示し、同機構以外のLPも解散に同意したため、同組合は同年3月に出資等の実績がないまま解散した。

なお、同機構は、同組合と締結した投資事業有限責任組合契約に基づき、同組合に対して、25年度367万余円、26年度233万円及び27年度94万円、計694万余円の実支援を行っており、このうち組合経費、GPに対する報酬の支払等に充てられた685万余円を除いた8万余円を同組合の清算に伴い配当として受けていた。

株式会社農林漁業成長産業化支援機構は、年数が経過してもサブファンドに対する実支援が増加しない傾向があり、また、28年度末に出資等の実績がないサブファンドがあったり、出資等がないまま清算を結了したサブファンドがあったりしたため、支援決定時に見込んだ出資等が実行されていない。

間接支援の実施に当たっては、支援決定に係るGPの審査や支援決定後に行う実績の確認の機会に、支援の対象となり得る事業者の数や出資等に対する需要を引き続き十分に確認するとともに、支援決定時に見込んだ出資等が進まない場合には、必要に応じて業務運営の進め方の見直しを検討する必要がある。

c 支援対象分野の状況

官民ファンド運営法人は、それぞれの設置根拠法等に定められた政策目的を実現するために、設置根拠法等に定められた支援スキームにより支援を行っているが、それぞれの支援基準等において支援対象分野が図表1-9のとおり定められている。

図表1-9 官民ファンドの支援基準等における主な支援対象分野

官民ファンド運営法人 支援基準等における主な支援対象分野
株式会社産業革新機構 社会の課題に対応し付加価値を創造するオープンイノベーションの促進
株式会社地域経済活性化支援機構 地域経済の活性化に資する事業活動の支援等
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 農林漁業者が議決権の過半数を有する6次産業化事業体(機構、サブファンドが有する議決権を除く。)
株式会社民間資金等活用事業推進機構 独立採算型等のPFI事業者
株式会社海外需要開拓支援機構 日本文化の特色を生かし、海外の需要の開拓を行う事業者
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 海外における交通事業及び都市開発事業を行う事業者
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 海外における通信・放送・郵便事業を行う事業者
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド イノベーションや企業価値向上に向けた取組
特定投資業務 企業の競争力の強化及び生産性又は収益性を向上させる事業活動
独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業者の事業活動の活性化
国立研究開発法人科学技術振興機構 科学技術振興機構の研究開発の成果を活用しようとする事業者
国立大学法人東北大学 国立大学法人東北大学における技術に関する研究成果を事業活動において活用する事業者
国立大学法人東京大学 国立大学法人東京大学における技術に関する研究成果を事業活動において活用する事業者
国立大学法人京都大学 国立大学法人京都大学における技術に関する研究成果を事業活動において活用する事業者
国立大学法人大阪大学 国立大学法人大阪大学における技術に関する研究成果を事業活動において活用する事業者
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境性能を有する不動産の開発及び改修事業を行う事業者
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地球温暖化対策のための事業を行う事業者

官民ファンドの支援基準等における主な支援対象分野は、対象事業者が実施する事業の内容や特性、事業の基となる研究成果等により定められている。そして、同一の対象事業者が複数の官民ファンドの支援対象分野に該当する場合には、当該対象事業者に対して複数の官民ファンドが重複して支援を行うことが可能な状況となっている。

この点については、26年5月の第2回幹事会の検証報告(第1回)の「II ガイドラインに沿った検証における主な指摘事項」において、「官民ファンドは、法令上等の政策目的に沿って設立・運営されることとなっているが、出資の対象とする分野の重複の可能性にも留意して運営する必要がある」との指摘がなされている。そして、同年11月の第3回幹事会の検証報告(第2回)において、各官民ファンド運営法人は、指摘に対する対応状況を報告しており、他の官民ファンド及び対象事業者と適切なコミュニケーションを取って、重複することのないように運営するなどとしている。

また、27年7月の第4回幹事会の検証報告(第3回)においては、官民ファンド運営法人が連携して支援を行うことが有効である場合もあることから、各官民ファンドがそれぞれ有する専門性を活かした投資を進めるとともに、必要に応じて官民ファンドの連携を図ることが重要であるとされており、①シーズ・ベンチャー支援及び②地域活性化支援の二つの政策課題について官民ファンド連携チーム会合を設けて、関連する官民ファンド運営法人が連携して支援案件の情報交換や投資手法等の共有等に取り組むこととされた。これら二つの官民ファンド連携チーム会合の参加者である官民ファンド運営法人の分類及び官民ファンド運営法人が支援した対象事業者が実施する事業の分野(以下「事業分野」という。)の状況は、図表1-10のとおりである。

図表1-10 官民ファンド運営法人ごとの事業分野の状況等(平成28年度末)

(単位:百万円)
官民ファンド
連携チーム会合
官民ファンド運営法人 事業分野別の支援件数及び実支援額注(1)
①シーズ・ベンチャー支援 株式会社産業革新機構 電子デバイス インフラ エネルギー その他
12件 373,006 9件 85,467 1件 53,508 66件 149,966
国立研究開発法人科学技術振興機構 ライフイノベーション ナノテクノロジー・材料 情報通信技術
6件 509 5件 370 1件 24
国立大学法人東北大学 部品加工 材料 機器製造 医薬
1件 488 1件 449 2件 270 1件 150
国立大学法人東京大学 間接支援
4件 764
国立大学法人京都大学 バイオテクノロジー エネルギー・素材 情報通信技術
4件 630 3件 450 4件 219
国立大学法人大阪大学 基盤技術 ライフサイエンス 環境技術
4件 589 5件 496 1件 100
②地域活性化支援 株式会社地域経済活性化支援機構 間接支援 飲食業 卸売業 その他
39件 10,363 2件 1,643 1件 747 11件 2,701
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 間接支援 畜産 分野横断
48件 4,031 1件 1,001 1件 323
株式会社民間資金等活用事業推進機構 空港 防衛(海運) 道路 その他
1件 23,160 1件 3,713 1件 1,700 6件 1,356
株式会社日本政策投資銀行 事業分野別の管理を行っていない(図表1-13を参照)。
独立行政法人中小企業基盤整備機構 事業分野別の管理を行っていない(図表1-13を参照)。
株式会社海外需要開拓支援機構 メディア・コンテンツ ライフスタイル・ファッション 食・サービス 間接支援
5件 14,256 3件 11,632 4件 2,612 3件 1,229
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 陸上風力発電 木質バイオマス発電 太陽光発電 その他
4件 890 1件 700 5件 307 9件 1,658
該当なし 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 鉄道 都市開発 物流
2件 8,721 2件 1,225 1件 912
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 通信
1件 1,200
一般社団法人環境不動産普及促進機構注(2) ホテル 事務所 サービス付き高齢者向け住宅 介護付有料老人ホーム
2件 3,050 1件 2,252 1件 955 1件 252
注(1)
平成28年度末で支援継続中の出資案件(株式会社地域経済活性化支援機構については、貸付け、債権の買取り及び社債引受けを含み、株式会社民間資金等活用事業推進機構については、貸付け及び社債引受けを含み、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構については、信託受益権の取得を含む。)を対象として各官民ファンド運営法人(国立大学法人4法人については国大ファンド)からの実支援額を各官民ファンド運営法人が定めた事業分野別に集計している。
注(2)
一般社団法人環境不動産普及促進機構は、間接支援におけるサブファンドの出資先を事業分野別に管理しており、同機構からの実支援額を同機構が定めた事業分野別に集計している。

また、官民ファンド連携チーム会合の①シーズ・ベンチャー支援の参加者である株式会社産業革新機構及び②地域活性化支援の参加者である株式会社地域経済活性化支援機構の2法人は、図表1-10に示した事業分野において「その他」に含まれる件数と金額が他の法人に比べて多いことから、詳細な事業分野別の実支援額を示すと、図表1-11及び図表1-12のとおりとなっている。

図表1-11 株式会社産業革新機構の事業分野別の実支援額(平成28年度末)

図表1-11 株式会社産業革新機構の事業分野別の実支援額(平成28年度末) 画像

図表1-12 株式会社地域経済活性化支援機構の事業分野別の実支援額(平成28年度末)

図表1-12 株式会社地域経済活性化支援機構の事業分野別の実支援額(平成28年度末) 画像

このように、官民ファンド連携チーム会合の①シーズ・ベンチャー支援に参加する官民ファンド運営法人が支援した事業分野は、主に科学技術に関連するものとなっており、②地域活性化支援に参加する官民ファンド運営法人が支援した事業分野は、商業、食品、サービス、インフラ、エネルギーといった多種多様な状況となっている。

なお、官民ファンド連携チーム会合の②地域活性化支援の参加者である株式会社日本政策投資銀行は、官民ファンドの業務単独ではなく官民ファンドの業務に含まれない投資を含めた法人全体としてのポートフォリオマネジメントを行っているため、また、独立行政法人中小企業基盤整備機構は、間接支援のみを行っており、サブファンドからの出資先についてはLPとしての立場から主体的に事業分野を管理することが困難であるため、いずれも事業分野別の管理を行っていない。このため、会計検査院が、これら2法人の支援先を主な支援目的別に分類して、その実支援額を示すと、図表1-13のとおりとなっている。

図表1-13 事業分野別の管理を行っていない官民ファンドの支援目的別の実支援額(平成28年度末)

図表1-13 事業分野別の管理を行っていない官民ファンドの支援目的別の実支援額(平成28年度末) 画像

そして、①シーズ・ベンチャー支援に関する官民ファンド連携チーム会合においては、連携の方向性の例として、国立研究開発法人科学技術振興機構が有する高度な目利き機能により選別され、支援等により成長した研究シーズのうち同機構だけでは支援できない案件を、株式会社産業革新機構又は官民イノベーションプログラムの事業目的等を十分に考慮した上で、それらのうちのいずれかに紹介して、継続的な支援を行っていくことを挙げており、対象事業者への支援の段階に応じて役割を分担するなどして連携していくこととしている。また、②地域活性化支援に関する官民ファンド連携チーム会合においては、同会合のメンバーである官民ファンドの支援対象分野が広範であることから、一般的な方向性ではなく、株式会社地域経済活性化支援機構及び株式会社海外需要開拓支援機構が連携して支援を行った具体的な取組内容等を幹事会において報告している。

以上のとおり、官民ファンドの支援対象分野については、同一の事業者に対して重複して支援が行われる可能性にも留意する必要がある状況となっていることから、官民ファンド運営法人は、支援の実施に当たり、一層効率的、効果的に取り組む観点から、引き続き官民ファンド間の情報交換、投資手法等の共有等に努めることが望まれる。

(エ) 剰余金の配当等及び業務の実施に必要のない政府出資等の国庫納付等

ア(ア)のとおり、官民ファンド運営法人は、国から多額の政府出資等の財政支援を受けて支援を行っており、イ(ア)のとおり、設置根拠法等においては、支援の終了時期や見直しの時期が定められるなどしている。

そこで、政府出資金から生ずる配当や見直し等に伴う政府出資等の国庫納付等の仕組みとその状況についてみたところ、次のとおりとなっている。

a 剰余金の配当等

官民ファンド運営法人による剰余金の配当の仕組みについてみると、政府出資株式会社8法人は、会社法(平成17年法律第86号)に基づき、出資者に対して剰余金の配当ができることとなっている。このうち、国が直接の出資者でない株式会社地域経済活性化支援機構は、株主に対する配当を行うことに加えて、株式会社地域経済活性化支援機構法第40条の2の規定により、剰余金の額の全部又は一部に相当する金額を国庫に納付できることとなっている。

そして、政府出資株式会社8法人のうち剰余金の配当又は剰余金の国庫納付の実績があるのは、株式会社産業革新機構及び株式会社地域経済活性化支援機構の2法人となっている。これらの法人における剰余金の配当及び剰余金の国庫納付の状況は、図表1-14のとおりであり、株式会社産業革新機構は、25年度末の利益剰余金176億余円を原資として88億余円の配当を行っており、このうち国に配当した額は84億余円となっている。また、株式会社地域経済活性化支援機構は、24年度末の利益剰余金1773億余円のうち886億余円について25年度に国庫に納付している。

図表1-14 株式会社産業革新機構及び株式会社地域経済活性化支援機構による剰余金の配当及び剰余金の国庫納付の状況

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人 剰余金の配当等の種類 実施年月日 剰余金の配当等の理由 剰余金の配当等の額
株式会社産業革新機構 剰余金の配当 平成26年7月2日 財務状況を踏まえて、剰余金の配当を決定したため 8,402
(配当総額:8,814)
株式会社地域経済活性化支援機構 国庫納付 26年3月26日 財務状況等を踏まえて、国への財政貢献として行ったため 88,693
b 業務の実施に必要のない政府出資等の国庫納付等

業務の実施に必要のない政府出資等の国庫納付等の制度や国庫納付等の状況を組織形態別にみると、次のとおりである(国立大学法人4法人については、エ官民イノベーションプログラムにおける政府出資金等の状況を参照)。

(a) 政府出資株式会社8法人

政府出資株式会社8法人は、会社法に基づき資本金の額の減少を行うことができることとなっている。また、業務の実施に必要のない政府出資等の返還についての規定は、株式会社日本政策投資銀行を除く7法人においては定められていないが、設置根拠法において、業務の完了により解散することが定められており、解散時の残余財産のうち国の出資割合に応じた額が国に返還されることが見込まれる。

一方、株式会社日本政策投資銀行が実施する特定投資業務については、株式会社日本政策投資銀行法附則第2条の27第2項及び第3項に国庫納付金に関する規定が定められており、特定投資業務の実施状況及び財務状況を勘案して、特定投資業務を適確に実施するために必要がないと認める場合には政府出資金を国庫に納付できることとなっている。また、株式会社日本政策投資銀行の競争力強化ファンドは、国からの貸付金1000億円が財源となっており、その借用証書において、競争力強化ファンドの運営状況に鑑みて、投融資に現に用いられておらず、今後も用いられる予定のない資金について、財務大臣から命ぜられた額を繰上償還することとなっている。

国庫納付等の実績がある株式会社日本政策投資銀行の競争力強化ファンドは、27年度に新たな官民ファンドとして特定投資業務を開始したことにより、新規案件の採択を中止した。そのため、株式会社日本政策投資銀行は、図表1-15のとおり、現に投融資に用いられておらず、今後も用いられる予定のない資金として、国からの貸付金1000億円のうち、残額である210億円を28年1月に繰上償還している。

図表1-15 株式会社日本政策投資銀行の競争力強化ファンドの繰上償還の状況

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人 政府出資等 国庫納付等の状況
国の会計区分 予算 目的 金額 実施年月日 理由 金額
株式会社日本政策投資銀行 財政投融資特別会計(投資勘定) 平成24年度補正予算(第1号) 競争力強化ファンドにかかる業務を実施するため 100,000 平成28年1月12日 特定投資業務の開始により、競争力強化ファンドでは新規案件の採択を中止し、業務を確実に実施する上で必要がなくなったため 21,000

(b) 独立行政法人2法人

独立行政法人2法人は、独法通則法第8条第3項の規定に基づき、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととなっている。そして、独法通則法第46条の2第1項の規定に基づき、不要財産であって、政府からの出資又は支出に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫に納付することとなっている。

独立行政法人2法人のうち国庫納付の実績がある独立行政法人中小企業基盤整備機構の国庫納付の状況は、図表1-16のとおりとなっている。同機構は、平成23年度補正予算(第3号)で、東日本大震災からの復興のために、海外展開を行う被災地等の中小企業の経営基盤強化のために25億円、経営資源融合を行う被災地等の中小企業の資本力強化のために20億円の出資を受けた。そして、同機構は、24年3月に、前者については中小企業海外展開支援出資事業を、後者については中小企業経営融合促進出資事業を実施するために、それぞれGPとしてサブファンドを組成する者を公募した。しかし、いずれも応募のない状況が続き、サブファンドの組成の見込みがないことなどから、26年3月に、これらの政府出資等について、「将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったため」として、全額を不要財産として国庫に納付している。

図表1-16 独立行政法人中小企業基盤整備機構による政府出資等の国庫納付の状況

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人 政府出資等 国庫納付等の状況
国の会計区分 予算 目的 金額 実施年月日 理由 金額
独立行政法人中小企業基盤整備機構 一般会計 平成23年度補正予算(第3号) 海外展開を行う被災地等の中小企業の経営基盤強化 2,500 平成26年3月28日 経営資源融合を行う中小企業の資本力強化事業及び海外展開を行う中小企業の経営基盤強化事業について、将来にわたり業務を確実に実施する上 で必要がなくなったため 2,500
平成23年度補正予算(第3号) 経営資源融合を行う被災地等の中小企業の資本力強化 2,000 2,000

(c) 基金設置法人2法人

補助金の交付を受けて支援を行っている基金設置法人2法人は、交付要綱等により、支援終了時に残余財産を国庫納付することとなっている。また、支援中は、「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(平成18年8月閣議決定)に基づき、補助金等の交付により造成した使用見込みの低い基金等を保有する法人は、基金の財源となっている国からの補助金等の国庫への返納等、その基金の取扱いを検討することとなっている。基金設置法人2法人の支援の実施に必要のない政府出資等の国庫納付の状況は、次のとおりである。

一般社団法人環境不動産普及促進機構は、図表1-17のとおり、24年度に耐震・環境不動産形成対策費補助金300億円及び地球温暖化対策推進事業費国庫補助金50億円の計350億円の交付を受けて耐震・環境不動産支援基金を造成して、耐震・環境不動産形成促進事業において官民ファンドによる支援を行っている。そして、同機構は、27年度に、行政改革推進会議による基金の再点検や不動産市場の動向等を踏まえ、基金の必要規模を改めて見直した結果、国土交通、環境両省が支援決定に至る確度が高いと見積もった14案件に要する額を計300億円と算定して、基金造成額との差額50億円については使用見込みの低い基金であるとして、その財源となっている耐震・環境不動産形成対策費補助金43億円及び地球温暖化対策推進事業費国庫補助金7億円の計50億円を国庫に納付している。

また、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構は、地域低炭素投資促進ファンド事業費補助金の交付を受けて地域低炭素化出資事業基金を造成して、地域低炭素投資促進ファンド事業において官民ファンドによる支援を行ている。そして、同機構は、同補助金の補助事業期間が原則として単年度となっていることから、前年度の補助金の交付額に相当する基金の額のうち支援決定がされなかった額を基金事業等の実施状況等に照らして過大であると認定している。同機構は、28年度までに同補助金計166億円の交付を受けているが、図表1-17のとおり、平成25年度予算14億円のうち計1億余円、平成26年度予算46億円のうち計12億余円、平成27年度予算46億円のうち7億余円の合計21億余円を国庫に納付している。

図表1-17 基金設置法人2法人による政府出資等の国庫納付の状況

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人 政府出資等 国庫納付等の状況
国の会計区分 予算 目的 金額 実施年月日 理由 金額
一般社団法人環境不動産普及促進機構 一般会計 平成24年度補正予算(第1号) 老朽・低未利用不動産の改修、建替え又は開発を行い、耐震・環境性能を有する良質な不動産の形成を促進するための基金を造成すること 35,000 平成27年10月13日 行政改革推進会議による基金の再点検や不動産市場の動向等を踏まえ、基金の必要規模を改めて見直したことによる。 5,000
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 エネルギー対策特別会計(エネルギー需給勘定) 平成25年度予算 地球温暖化対策のための投資を促進し、二酸化炭素の排出削減を推進するための基金を造成すること 1,400 27年1月23日等(注) 基金の額が基金事業等の実施状況等に照らして過大であると認められたため。 120
平成26年度予算 4,600 27年11月18日等(注) 1,290
平成27年度予算 4,600 28年12月26日 723
(注)
複数回に分けて国庫に納付している。

ウ KPIによる政策目的の達成状況等の評価の状況等

官民ファンド運営法人は、対象事業者に対する支援を行うことを通じて政策目的の実現を図ることとなっており、政策目的の達成状況等を評価するために、KPIを原則として自ら設定している。したがって、政策目的の達成状況等を評価するために、政策目的の達成に寄与することができるKPIを設定することが求められる。国立大学法人4法人の官民イノベーションプログラムは、文部科学省がKPIを設定して国立大学法人4法人が評価を行い、文部科学省が4法人の評価を取りまとめて官民イノベーションプログラムのKPIとして評価結果を公表している。

KPIには、個別案件ごとに達成状況を評価するための個別案件のKPIと、法人全体として評価を行うための法人全体のKPIがあり、ガイドラインによると、個別案件のKPI及び法人全体のKPIを共に設定して、評価を行うとともに、法人全体のKPIについては、評価結果を公表することとなっている。そして、官民ファンド運営法人は、法人全体のKPIの進捗状況や達成状況をA(目標の進捗率又は達成状況が水準以上)、B(目標の進捗率又は達成状況が水準未満)又はN(データが入手できない等により評価困難)の3区分に評価して、検証報告においてその結果を公表している。また、検証報告によると、事業の進展等に伴い当初設定したKPIと実情にかい離が生じてきた場合等には、必要に応じてKPIの見直しや新たなKPIの設定を行うことが重要であるとされている。

そこで、官民ファンド運営法人における政策目的の達成状況等の評価の状況について、会計検査院が法人全体のKPIをその設定内容により、政策目的、民業補完及び収益性に分類し、これらのKPIのうち、政策目的及び民業補完のKPIの設定並びにそれらの評価の状況をみると、次のとおりである(収益性のKPIについては、(3)オ KPIによる収益性の確保に関する評価の状況等を参照)。

(ア) 政策目的のKPI

28年度下期における政策目的のKPIの設定及びその評価の状況は、図表1-18のとおり、官民ファンドによって1項目から11項目のKPIが設定されており、全14官民ファンドでは、計68項目となっている。そして、それらの評価をみると、上記68項目のうちAが50項目、Bが8項目、Nが10項目となっている。なお、文部科学省は、国立大学法人4法人の官民イノベーションプログラムのKPIを28年度下期に改めて、当該KPIを用いた評価を29年度から行うこととしており、官民イノベーションプログラムのKPIの評価は、7項目全てNとなっている。

図表1-18 政策目的のKPIの設定及び評価の状況(平成28年度下期)

官民ファンド
運営法人等
評価項目 KPI 成果目標 実績
(平成28年度下期)
官民ファンド運営法人による評価 KPIや成果目標の見直しを検討する必要がある項目
①KPIとする必要性に疑問がある指標を用いているもの ②官民ファンド運営法人の解散時点まで評価を行わないとしているもの ③28年度上期以前に達成済みの成果目標を継続して用いているもの
株式会社産業革新機構 インパクト 総案件数に占める客観化された投資インパクト(グ ローバルリーダー企業創出、ゲームルールの変革等)が達成されている件数の比率 66%以上 92% A      
エコシステム 他の公的研究機関やベンチャー支援団体等との連携数 機構全体:30年度末までに10件以上
健康医療分野:30 年度末までに5件以上
10件
健康医療分野:5 件
A    
ベンチャー支援 機構全体に占めるベンチャー等投資比率 66%以上 78.1% A      
株式会社地域経済活性化支援機構 直接の再生支援等を通じた地域への貢献 具体的な検討を行った案件に対する関与度合い 50%以上 68% A      
先導的な事業再生・地域活性化モデルの創造等 75%以上 80% A      
ハンズオン支援等による収益改善 90%以上 95% A      
地域経済への貢献 90%以上 96% A      
金融機関等との連携 90%以上 91% A      
特定支援業務(個人保証付債権等の買取)を通じた地域経済活性化への貢献 90%以上 89% B      
地域への知見・ノウハウの移転等を通じた事業再生・地域活性化支援 各都道府県での支援実績の積上げ 34年度末までに75%以上(測定時点目標:35%以上) 96% A    
地域への知見・ノウハウの移転 34年度末までに100%(累計250件)(測定時点目標:40%以上) 86% A      
地域経済への貢献 75%以上 87% A      
金融機関等との連携 90%以上 99% A      
中小企業等への重点支援の明確化 中小規模の事業者の割合 90%以上 87% B      
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 投資先6次産業化事業体の成果 事業計画どおりに売上高が進捗している投資先6 次産業化事業体の割合 7割以上 56% B      
新事業の創出 投資先6次産業化事業体において、新規の事業体の割合 7割以上 90% A      
各年度における本ファンド出資額について、1億円以上の大型案件の出資規模の割合 全体の25% 5% B      
地方創生のための雇用創出 事業計画どおり又はこれを超える人数の雇用を行っている投資先6次産業化事業体の割合 7割以上 70% A      
地域における人材育成 各サブファンド又は投資先6次産業化事業体への助言の実施状況 全てのサブファンド又は投資先6次産業化事業体へ毎月1回以上助言 100% A      
①設立後半年以上経過したサブファンドのうち出資案件1件以上のサブファンドの割合
②設立後1年以上経過したサブファンドのうち出資案件2件以上のサブファンドの割合
①8割
②5割
①88%
②50%
A      
株式会社民間資金等活用事業推進機構 機構の資金供給 支援案件の事業規模(契約額) 28年度末までに1.5兆円 2兆5189億円 A    
支援案件のインフラ分野数 28年度末までに5 分野 11分野 A    
インフラ投資市場の育成 民間インフラファンド組成に向けた取組み 28年度末までに10 社 11社 A    
利用料金収入で資金回収を行うPFI事業の普及 市場関係者へのアドバイス件数 28年度末までに延べ500件 674件 A    
地域人材の育成・ノウハウ提供 28年度末までに延べ200名 215名 A    
利用料金収入で資金回収を行うPFI事業の件数 機構の事業期間(14.5年)に100件(平均24件/3年) 55件 A      
株式会社海外需要開拓支援機構 波及効果 個別投資案件(EXIT時)の評価合算値 達成指数の合計値70%以上 104% A      
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 海外市場への参入促進 支援案件に参加する日本企業数 10社/年以上(平均2社/件以上) 6件/年 B      
新規海外・地域進出企業数 1社/年以上 1社/年 A      
我が国に蓄積された知識、技術及び経験の活用状況(案件ごとに1~3点の総合点数評価し、その平均値を用いる) 平均2.0点以上 2.8点 A      
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 海外市場への参入促進 支援案件に参加する日本企業数(出資企業+受注関連企業) 平均2社/件以上 平均2社/件 A      
日本の放送コンテンツの海外展開 日本の放送コンテンツの展開に資する海外放送局関連事業への投資 2件/年以上 実績なし B      
目利き人材の育成 機構で投資案件に携わりその経験を機構外で活かす者 40人以上(47年度末の解散まで) - N    
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド ①技術等有効活用の促進②企業間連携の促進 ①企業内やバリューチェーン内に埋もれている技術や事業が、新たな事業展開に向けて有効活用 されている案件等の割合
②バリューチェーンの川上・川下企業や異業種企業における企業間連携がなされている案件等の割合
平均75%以上 平均88% A      
戦略的取組の促進 企業の成長戦略に位置付けられた戦略的取組として適切に進捗しているもの等の割合 100% 100% A      
地域への貢献 ①地域発の案件か、②地域金融機関との連携が 見込まれる又はなされているか、③事業効果の地域還元(新規立地、雇用維持、利便性の向上等) が見込まれる又はなされているか、の要件のうち、一つ以上を充足している案件の割合 50%以上 67% A      
特定投資業務 競争力強化 十分に活用されていない経営資源(技術、ノウハウ、設備等)の有効活用による新事業開拓や異分野連携等の経営の革新を支援し、企業の生産性・収益性の向上への貢献が見込まれる案件等の割合 50%以上 73.3% A      
地域への貢献 地域経済の自立的発展に資するよう、①地域の主体的な取組(地域の事業者や地域金融機関が関 与する取組等)、又は②地域経済へ事業効果が波及する取組(新規立地、設備投資、雇用拡大・維持、利便性向上等)に寄与しているか、の要件のうち、 一つ以上を充足している案件等の割合 50%以上 70.0% A      
独立行政法人中小企業基盤整備機構 ファンド組成数 第3期中期計画期間(26年度~30年度)における組成ファンド数 50ファンド(年平均10ファンド)以上(29年度3月末時点で30ファンド) 39ファンド A      
地域への貢献及びファンドマネージャー育成 第3期中期計画期間における地域密着ファンドの組成数 6ファンド(年平均1.2ファンド)以上(29年度3月末時点で3.6ファンド) 8ファンド A    
第3期中期計画期間における新規のファンド運営者への出資ファンド数 25ファンド(年平均5ファンド)以上(29 年度3月末時点で15ファンド) 25ファンド A      
事業実施効果としてのアウトプット指標 国内新興市場IPO数に占める中小機構出資ファン ド投資先の割合 15%以上 17% A      
出資2年経過後の出資先中小企業の売上成長率 中小企業実態基本調査の売上伸び率以上 26年度~28年度の出資先中小企業の各成長率は、出資2年経過後に集計・評価する。 N      
出資2年経過後の出資先中小企業の雇用成長率 中小企業実態基本調査の従業員伸び率以上 26年度~28年度の出資先中小企業の各成長率は、出資先2年経過後に集計・評価する。 N      
事業の適正性、透明性及び効率性確保のための機構の内部規定 投資事業有責法に基づく決算監査において、「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」を適用して時価評価及び公認会計士監査を行う出資先ファンド数の割合 100% 100% A    
出資先ファンドの投資委員会へのオブザーバ出席又はその内容の報告受領の割合 100% 100% A      
国立研究開発法人科学技術振興機構 出資先企業の成長支援 機構が出資先企業に対して行う人的・技術的支援を通じた当該企業及び経営人材の成長性出資先企業の事業拡大効果を、売上規模、従業 員数、資本金規模の3つの指標について、毎年決算期と投資実行期とを比較、点数化(2点満点) 平均で1点以上 1点 A      
人材育成 出資業務等従事者の他事業・他社への転出数及び出資先企業の経営責任者の数 出資事業開始後5 年間でのべ20名以上(29年3月末で12名以上) 18名 A      
地方への貢献 地方での事業説明会の開催数 6回/年以上 6回/年 A      
国立大学法人東北大学国立大学法人東京大学国立大学法人京都大学国立大学法人大阪大学 官民イノベーションプログラム プログラムのパフォーマンス 各案件の投資決定に際し、官民ファンドとして積極的にリードをとっているか 各大学(3点満点) の出資額割合に応じた総合点が2点以上 - N      
国立大学における技術に関する研究成果の事業化 大学において研究成果の事業化に向けた取組(プレ・インキュベーション)の支援を実施しているか 各大学(3点満点) の出資額割合に応じた総合点が2点以上 - N      
大学発ベンチャーの活動を促進するために、適切なハンズオン支援がなされているか 各大学(3点満点) の出資額割合に応じた総合点が2点以上 - N      
大学における技術に関する研究成果が事業化に 結び付き、社会に対して新たな付加価値が創出されているか。 各大学(3点満点) の出資額割合に応じた総合点が2点以上 - N      
国立大学における教育研究活動の活性化 事業の実施により、大学の教育研究活動が活性化しているか 各大学(3点満点) の出資額割合に応じた総合点が2点以上 - N      
地域における経済活性化への貢献、大学発ベンチャーの海外展開への貢献 地域との連携・協働による経済活性化への貢献が図られているか 各大学(3点満点) の出資額割合に応じた総合点が2点以上 - N      
大学発ベンチャーの海外展開を展望したサポート体制が構築されているか 各大学(3点満点) の出資額割合に応じた総合点が2点以上 - N      
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 地方への貢献及び人材育成 事業全体における地方物件の割合 33年度末時点で2 割以上 実績なし B      
パートナー協定の締結 各都道府県において少なくとも1つ以上の地域金融機関等とパートナー協定を締結しているか 全都道府県において締結 A    
地域相談窓口の開設 10以上のブロックにおいて開設 10ブロック A      
本事業の普及活動、事例紹介等を行うセミナー等の実施 10か所以上で実施 15か所 A      
本事業の普及活動、事例紹介等を行うセミナー等を三大都市圏以外で実施 5か所以上で実施 9か所 A      
三大都市圏以外の地域からの問い合わせへの対応及び情報提供を実施 50件以上実施 53件 A      
選定したファンド・マネージャーを三大都市圏以外の地域の事業者やパートナー協定締結金融機関等へ紹介 2件以上実施 3件 A      
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 CO₂削減効果 出資額1億円当たりの年間CO₂削減量 2,000t-CO₂/年/ 億円以上 5,942t-CO₂/年/ 億円 A      
出資案件の年間CO₂削減量(見込)に対する達成度 年間CO₂削減量(見込)の80%以上 105.7% A      
地域活性化効果 地域貢献等効果(地域関係者の出融資、創出雇用者等を総合的に評価) 平均60点以上 66点 A      
出資案件の地域ブロックカバー 未出資地域ブロックの出資案件を年間1件以上 0件 B      
地域型サブファンドの組成件数 年間1件以上 1件 A      
該当する官民ファンド運営法人数 項目数 68 1法人 1法人 5法人
A 50
B 8
N 10

そして、各官民ファンドが1項目から11項目まで設定している政策目的のKPIごとの内容等についてみたところ、KPIや成果目標の見直しを検討する必要がある項目が図表1-18の①から③までの態様に○印を付した項目のとおり見受けられた。これを①から③までの態様ごとにみると、次のとおりである。

① KPIとする必要性に疑問がある指標を用いているもの

独立行政法人中小企業基盤整備機構は、図表1-19のとおり、「事業の適正性、透明性及び効率性確保のための機構の内部規定」の評価項目のKPIとして、「投資事業有責法に基づく決算監査において、「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」を適用して時価評価及び公認会計士監査を行う出資先ファンド数の割合」を設定しており、その実績を100%としている。

しかし、日本公認会計士協会の実務指針である「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」によると、サブファンドは「投資事業有限責任組合契約に関する法律」に基づき財務諸表等を作成する必要があり、その作成において「中小企業等投資事業有限責任組合会計規則」(平成10年企庁第2号)に基づき時価評価することが求められている。そして、同法に基づき財務諸表等は公認会計士又は監査法人の監査を受けることとなっていることから、このKPIは、単に同法及び同規則を遵守することを指標にしているにすぎないものであり、KPIとして設定する必要性に疑問がある。

図表1-19 KPIとして設定する必要性に疑問があるもの

官民ファンド運営法人 評価項目 KPI 実績 投資事業有限責任組合契約に関する法律 中小企業等投資事業有限責任組合会計規則
独立行政法人中小企業基盤整備機構 事業の適正性、透明性及び効率性確保のための機構の内部規定 投資事業有責法に基づく決算監査において、「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」を適用して時価評価及び公認会計士監査を行う出資先ファンド数の割合 100% 第8条 無限責任組合員は、毎事業年度経過後三月以内に、その事業年度の貸借対照表、損益計算書及び業務報告書並びにこれらの附属明細書(第3項において「財務諸表等」という。)を作成し、五年間主たる事務所に備えて置かなければならない。
2 前項の場合においては、無限責任組合員は、組合契約書及び公認会計士(外国公認会計士を含む。)又は監査法人の意見書(業務報告書及びその附属明細書については、会計に関する部分に限る。次項において同じ。)を併せて備えて置かなければならない。
3 略
第7条 投資は、株式、債券その他の資産の性質を示す適当な名称を付した科目に細分しなければならない。
2 投資は、時価を付さなければならない。ただし、時価が取得価額を上回る場合には、取得価額によることも妨げない。
3 前項の時価の評価方法は、組合契約に定めるところによる。
② 官民ファンド運営法人の解散時点まで評価を行わないとしているもの

株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構は、図表1-20のとおり、「目利き人材の育成」の評価項目のKPIとして「機構で投資案件に携わりその経験を機構外で活かす者」を設定しているが、当該KPIの評価は47年度末に同機構が解散するまで行わないとしており、支援の実施期間の途中段階での成果目標を設定しておらず、評価結果もNとしている。

しかし、このような成果目標は、途中段階での成果目標を設定しておらず、解散時点まで評価を行わないことから、途中段階での達成状況の評価結果を参考にしてその後の業務運営に反映することができず、政策目的の達成に寄与することができないものとなっていると考えられる。

図表1-20 官民ファンド運営法人の解散時点まで評価を行わないとしているもの

官民ファンド運営法人 評価項目 KPI 成果目標 実績 評価
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 目利き人材の育成 機構で投資案件に携わりその経験を機構外で活かす者 40人以上(平成47年度末の解散まで) - N
③ 28年度上期以前に達成済みの成果目標を継続して用いているもの

官民ファンド運営法人5法人は、28年度上期以前に達成済みの成果目標を継続して設定している。例えば、株式会社地域経済活性化支援機構は、図表1-21のとおり、「地域への知見・ノウハウの移転等を通じた事業再生・地域活性化支援」の評価項目のKPIを「各都道府県での支援実績の積上げ」と設定しており、34年度末までの成果目標である75%以上を27年度上期の時点で既に達成していた。そして、同機構は、実績の値は積み上げにより算出するものであることから一度達成すれば実績が下がることがないにもかかわらず、その後も28年度下期まで引き続き成果目標を変更することなく設定し、評価している。

しかし、このような成果目標は、政策目的を達成するために設定している成果目標としての意義が薄れており、政策目的の達成に寄与することができないと考えられることから、成果目標を上方修正したり、今後の業務運営の課題に即したものとなるようKPIを改めたりなどする必要がある。

なお、上記5法人のうち株式会社産業革新機構、株式会社民間資金等活用事業推進機構及び一般社団法人環境不動産普及促進機構は、29年度上期にKPI又はその成果目標を見直しており、同年12月の第9回幹事会で報告している。

図表1-21 平成28年度上期以前に達成済みの成果目標を継続して用いているもの

官民ファンド運営法人 評価項目 KPI 年度 平成26年度上期 26年度下期 27年度上期 27年度下期 28年度上期 28年度下期
株式会社地域経済活性化支援機構 地域への知 見・ノウハウの移転等を通じた事業再生・地域活性化支援 各都道府県での支援実績の積上げ 成果目標 34年度末までに75%以上(26年9月末時点で11%以上) 34年度末までに75%以上(測定時点目標:15%以上) 34年度末までに75%以上(測定時点目標:20%以上) 34年度末までに75%以上(測定時点目標:25%以上) 34年度末までに75%以上(測定時点目標:30%以上) 34年度末までに75%以上(測定時点目標:35%以上)
実績 48% 71% 78% 90% 92% 96%

また、①から③までの政策目的のKPIごとの内容等とは別に、官民ファンドごとに総合的にみた場合に、政策目的のKPIの設定、評価及び評価結果の公表がそれぞれの法人の政策目的の達成状況を検証するために十分なものとなっているかについて、次のとおり、政策目的のKPIの設定又は評価結果の公表の見直しを検討する必要がある官民ファンド運営法人が見受けられた。

株式会社海外需要開拓支援機構は、設定している法人全体の政策目的のKPIが1項目のみとなっており、その内容は、海外における需要の開拓という政策目的に関するもので、案件ごとに波及効果を測定するために「個別投資案件(EXIT時)の評価合算値」を用いている。

しかし、このKPIは支援を終了した案件のみを評価の対象としており、28年度下期に評価の対象となった案件はそれまでに支援を行った案件17件のうち1件のみとなっていた。そして、同機構は、支援中である残りの16件については、個別案件のKPIにより進捗状況や達成状況の評価を行っているとしているものの、設定している法人全体の政策目的のKPIは上記1項目のみとなっているため、支援中の案件の進捗状況や達成状況を含めた評価結果が公表されていない。

また、文部科学省は、国立大学法人4法人が実施する官民イノベーションプログラムに係るKPIの評価結果として国立大学法人4法人それぞれの評価を政府出資金の割合に応じて加重平均したものを評価結果として公表することにしており、国立大学法人4法人それぞれの評価は公表していない。

しかし、国立大学法人4法人は、それぞれの意思決定に基づき支援を行っていて、支援の実施状況も異なっている。このため、支援における課題も異なると考えられるが、それが明らかにならないおそれがある。

このように、政策目的のKPIごとの内容等については、必要性に疑問がある指標を用いていたり、解散時点まで評価を行わないとしていたり、達成済みの成果目標を継続して用いていたりする事態が見受けられたことから、官民ファンド運営法人は、KPIの内容や成果目標について、設定の見直しや評価結果の公表等を検討する必要がある。また、官民ファンドごとに総合的にみた場合の政策目的のKPIの設定及び評価結果の公表が政策目的の達成状況を検証するために十分なものとなっているかについては、支援中の案件の進捗状況や達成状況を評価できるKPIの設定を行っていなかったり、法人ごとの評価結果を公表していなかったりする事態が見受けられたことから、官民ファンド運営法人は、KPIの見直しや官民ファンド運営法人単位での評価結果の公表について検討する必要がある。また、幹事会の構成員である関係府省庁は、幹事会において、当該事態を踏まえて、引き続きKPIの検証を行うことが望まれる。

(イ) 民業補完のKPI

官民ファンド運営法人は、ガイドラインにおいて民業補完に徹することが求められている。28年度下期における民業補完のKPIの設定及びその評価の状況についてみると、図表1-22のとおり、独立行政法人中小企業基盤整備機構を除く官民ファンド運営法人は、法人全体のKPIとして民業補完のKPIを設定している。なお、独立行政法人中小企業基盤整備機構は個別案件のKPIとして民業補完のKPIを設定している。

民業補完のKPIは、図表1-22のとおり、民間出資等の件数で算出したり、民間出資等の額で算出したり、その両方で算出したりすることとなっている。また、官民イノベーションプログラムのように案件ごとに点数化して評価して、その評価点を国立大学法人4法人の政府出資金の割合に応じて総合点化して算出するものもあり、算出方法が法人によって異なっているものの、28年度下期の評価を行っていない国立大学法人4法人の官民イノベーションプログラムを除き全ての法人がA評価としている。

図表1-22 民業補完のKPIの設定及びその評価の状況(平成28年度下期)

官民ファンド運営法人等 評価項目 KPI 成果目標 実績
(平成28年度下期)
官民ファンド運営法人による評価 成果目標の種類
民間出資等の件数の割合 民間出資等の額の割合 民間出資等の件数及び民間出資等の額の割合 その他
株式会社産業革新機構 民業補完 民間からの協調出資がなされた件数の比率 機構全体:95%以上
健康医療分野:100%
99.1% A      
株式会社地域経済活性化支援機構 ファンドを通じた地域への資金供給(呼び水効果、民業補完の確保) LP出資に係る呼び水効果(民業補完の確保)として、ファンド出資額に占める民間からの出資額の割合 60%以上 64% A      
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 出資実行による投資誘発効果(民業補完) サブファンドからの出資額の2倍を上回る事業投資が行われている投資先6次産業化事業体の割合 7割以上 94% A      
株式会社民間資金等活用事業推進機構 インフラ投資市場の育成 呼び水効果:民業補完 3.0倍以上 9.2倍 A      
株式会社海外需要開拓支援機構 民業補完 民間企業からの協調出資等の事業総額に対する割合 10年後目処に50%超 75% A      
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 民間資金の海外プロジェクトへの誘導効果 機構からの出資額に対する機構及び日本企業からの総出資額の比率 2.0倍超 3.4倍 A      
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 民間資金の海外プロジェクトへの誘導効果 機構からの出資額に対する機構及び日本企業からの総出資額の比率 2.0倍以上 2.0倍 A      
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 呼び水効果 「競争力強化ファンド」のリスクマネー供給と合わせ、民間金融機関、民間事業会社等の資金が、当初予定通り投入された案件等の割合 100% 100% A      
特定投資業務 呼び水効果等 メザニン・ファイナンスやエクイティ等の成長資金に係る市場の創造に資するよう、民間金融機関・事業者・投資家等と協働した成長資金供給を行っている案件等の割合 75%以上 80.0% A      
独立行政法人中小企業基盤整備機構 該当なし
国立研究開発法人科学技術振興機構 民業補完 民間出融資に対する呼び水効果
(機構出資額+機構出資以降の民間出融資額)/(機構出資額)
平均で2.0倍超 9.0倍 A      
国立大学法人東北大学
国立大学法人東京大学
国立大学法人京都大学
国立大学法人大阪大学
官民イノベーションプログラム プログラムのパフォーマンス 民間のリスクマネーの投入に関し、各案件のフェーズに応じて適切な民間資金が投入されているか 各大学(3点満点)の出資額割合に応じた総合点が2点以上 - N      
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 民業補完 喚起された民間投資額 33年度末時点で1,000億円
(29年3月末時点で500億円以上)
574億円 A      
国費に対する民間投資の割合 33年度末時点で国費対民間投資=1:3.0 1:6.4 A      
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 民間資金の呼び水効果 出資額に対する民間資金の比率 3.0倍以上 10.3倍 A      
(注)
官民イノベーションプログラムの実績は、各国立大学法人が個別の案件ごとに民間資金の投入状況を「顕著である」「一定程度進捗している」等の基準に基づき3点満点で評価を行い、その平均点を国立大学法人4法人の出資額割合に応じて加重平均して算出することとしている。

エ 官民イノベーションプログラムにおける政府出資金等の状況

官民ファンド運営法人16法人のうち、官民イノベーションプログラムを実施する国立大学法人4法人は、政府出資金のほかに、運営費交付金の交付を受けていたり、子会社や国大ファンドを新たに設立して支援を実施したりするなど、他の官民ファンド運営法人と異なる運営の仕組みであることから、官民イノベーションプログラムの状況を示すと次のとおりである。

(ア) 官民イノベーションプログラムの概要等
a 官民イノベーションプログラムの概要

26年4月に、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」等を踏まえて国立大学法人法が改正されて、国立大学法人が研究開発成果の事業化を目的とした投資を行う法人への出資及び研究開発成果を活用する事業者等への支援を行う国大ファンドへの出資を行うことができることとなった。そして、国立大学法人の研究成果の実用化に向けた官民共同の研究開発の推進のための事業として、平成24年度一般会計補正予算(第1号)において予算措置された計1200億円(政府出資金1000億円、運営費交付金200億円)が国立大学法人4法人に交付され、国立大学法人4法人は、この政府出資金及び運営費交付金を活用して、官民イノベーションプログラムを運営している。国立大学法人が官民イノベーションプログラムを実施する際に出資できる範囲は、強化法等において、認定特定研究成果活用支援事業者が認定特定研究成果活用支援事業計画に従って実施する特定研究成果活用支援事業の実施に必要な資金の出資に限定されている。そして、強化法によれば、特定研究成果活用支援事業を実施しようとする者は、特定研究成果活用支援事業計画を作成して、主務大臣である経済産業大臣及び文部科学大臣の認定を受けることができることとなっている(以下、認定を受けた特定研究成果活用支援事業を実施しようとする者を「認定事業者」という。)。

官民イノベーションプログラムを運営するに当たり、国立大学法人4法人は、実際に支援業務を行う組織として100%出資の子会社を設立することとし、これらの子会社を認定事業者とする特定研究成果活用支援事業計画を作成して、経済産業大臣及び文部科学大臣の認定を受けている(以下、特定研究成果活用支援事業計画の認定を受けた子会社を「認定子会社」という。)。また、認定子会社は、自らをGPとする国大ファンドを設立することとして、国大ファンドを認定事業者とする特定研究成果活用支援事業計画を作成して、経済産業大臣及び文部科学大臣の認定を受けている。そして、図表1-23のとおり、国立大学法人4法人は、運営費交付金により国立大学法人における産学連携機能の強化や事業化を目指した共同研究を実施するとともに、政府出資金により認定子会社及び国大ファンドに出資を行い、国大ファンドのGPである認定子会社は、国立大学法人と連携して、互いに情報交換を行うことなどにより、国大ファンドを通じて、国立大学法人の研究成果を活用した対象事業者等への支援を行っている。

図表1-23 官民イノベーションプログラムの支援スキーム

図表1-23 官民イノベーションプログラムの支援スキーム 画像

b 国立大学法人から認定子会社及び国大ファンドへの出資等の状況

国立大学法人が出資できる範囲は、aのとおり、認定事業者が認定を受けた特定研究成果活用支援事業計画に従って実施する特定研究成果活用支援事業の実施に必要な資金の出資に限定されており、国立大学法人自らが対象事業者に直接出資することはできないことから、官民イノベーションプログラムの支援スキームでは、国大ファンドから対象事業者等に支援を行うこととなっている。そして、国立大学法人4法人は、政府出資金計1000億円のうち552億余円を認定子会社及び国大ファンドに対して出資又は出資約束しており、残りの447億余円については、28年度末現在利用していない。また、国大ファンドに対しては、国立大学法人4法人のほか、民間の金融機関等も出資している。認定子会社及び国大ファンドの名称、出資額等は、図表1-24のとおりである。

図表1-24 国立大学法人4法人における認定子会社及び国大ファンドの名称、出資額等

(単位:千円)
国立大学法人 平成24年度一般会計補正予算(第1号)により出資された政府出資金の額 認定子会社 国大ファンド 平成28年度末現在で利用されていない政府出資金の額
名称 設立年月 国立大学法人からの出資額 名称 設立年月
(存続期間)
国立大学法人からの出資約束額 認定子会社からの出資約束額 民間金融機関等からの出資約束額 国大ファンドのファンド総額(出資約束ベース)
  (A) (B) (C) (D) (E) (C)+(D)+(E) (A)-((B)+(C))
東北大学 12,500,000 東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社 27年2月 60,000 THVP-1号投資事業有限責任組合 27年8月
(10年間)
7,000,000 80,000 2,600,000 9,680,000 5,440,000
東京大学 41,700,000 東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 28年1月 90,000 協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合 28年12月
(15年間)
23,000,000 1,000 2,000,000 25,001,000 18,610,000
京都大学 29,200,000 京都大学イノベーションキャピタル株式会社 26年12月 70,000 イノベーション京都2016投資事業有限責任組合 28年1月
(15年間)
15,000,000 1,000 1,000,000 16,001,000 14,130,000
大阪大学 16,600,000 大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社 26年12月 70,000 OUVC1号投資事業有限責任組合 27年7月
(10年間)
10,000,000 10,000 2,500,000 12,510,000 6,530,000
100,000,000 290,000 55,000,000 92,000 8,100,000 63,192,000 44,710,000
(イ) 政府出資金による支援の状況

28年度末現在において国大ファンドが実施する対象事業者等への支援の実施状況は、図表1-25のとおりであり、国大ファンドの実支援額は計46億余円、ファンド総額に対する実支援額の割合は3.0%から14.0%となっている。また、国立大学法人東京大学の4件は、間接支援によるものであることから、支援約束額と実支援額に差があり、支援の進捗に応じて実支援額が積み増されることとなる。

図表1-25 国大ファンドにおける支援の実施状況(平成28年度末)

(単位:件、千円)
国立大学法人 国大ファンドのファンド総額
(出資約束ベース)
支援約束額 ファンド総額に対する支援約束額の割合 実支援額 ファンド総額に対する実支援額の割合
件数 金額 件数 金額
東北大学 9,680,000 5 1,357,078 14.0% 5 1,357,078 14.0%
東京大学 25,001,000 4 2,711,500 10.8% 4 764,389 3.0%
京都大学 16,001,000 11 1,299,590 8.1% 11 1,299,590 8.1%
大阪大学 12,510,000 10 1,185,476 9.4% 10 1,185,476 9.4%
63,192,000 30 6,553,644 10.3% 30 4,606,534 7.2%

そして、国立大学法人東北大学の国大ファンド以外の国大ファンドは、新たな対象事業者等に投資する期間(以下「新規投資期間」という。)を投資事業有限責任組合契約に定めている。それによると、新規投資期間が終了する時期は、図表1-26のとおりであり、29年3月末から最長で40年12月14日までの11年8か月の期間をかけて、新規投資案件の発掘を進めることとなっている。

図表1-26 新規投資期間が終了する時期等

国立大学法人 国大ファンドの設立年月日 投資事業有限責任組合契約に定める新規投資期間 新規投資期間が終了する年月日 平成29年3月末から新規投資期間終了までの期間 投資事業有限責任組合契約に定める存続期間 29年3月末から存続期間終了までの期間
東北大学 27年8月31日 定めがない - - 10年間 8年5か月
東京大学 28年12月15日 設立より12年間 40年12月14日 11年8か月 15年間 14年8か月
京都大学 28年1月4日 設立より5年間 33年1月3日 3年9か月 15年間 13年9か月
大阪大学 27年7月31日 設立より5年間 32年7月30日 3年4か月 10年間 8年4か月

また、政府出資金計1000億円のうち、29年9月時点で特定研究成果活用支援事業計画の認定を受けていない政府出資金計447億余円の活用については、別の国大ファンドを設立することが考えられるが、ファンド間の利益の相反を回避するなどの観点から、対象事業者が重複する複数のファンドを並行して運営することは一般的ではないとされているため、国立大学法人4法人は、別の国大ファンドを設立する場合には、当該国大ファンドで想定する対象事業者の事業分野や、既存の国大ファンドの新規投資期間の終了時期を考慮し、今後の使用見込等について十分に検討する必要がある。

そして、官民イノベーションプログラムを実施するために平成24年度一般会計補正予算(第1号)により出資された政府出資金計1000億円については、国が将来回収することを見込んでいるが、具体的な回収方法は法令に規定されていない。

このようなことから、文部科学省は、国立大学法人4法人が検討した結果、使用する見込みがない政府出資金が生ずる場合には、財政資金の有効活用の観点から、このような政府出資金を国庫に納付する手段についての規定がない国立大学法人法を改正するなど、国立大学法人4法人が保有する政府出資金の国庫納付が行えるようにする措置を検討する必要がある。

(ウ) 運営費交付金の使用状況

国は、国立大学法人4法人に対して、官民イノベーションプログラムの財源の一部として運営費交付金計200億円を交付しており、文部科学省は、当該運営費交付金の使途について、国立大学法人における産学連携体制の整備等に係る経費や事業化推進型共同研究の実施に必要な経費等に充当するものであるとしている。そして、この運営費交付金は、事業化推進型共同研究を推進することにより、国立大学法人の研究成果を活用した大学発ベンチャー企業を創出して、出資事業における対象事業者に結び付けることを目的としている。

25年度から28年度までに当該運営費交付金を用いた国立大学法人4法人における事業化推進型共同研究の実施状況についてみると、図表1-27のとおり、計11件の事業化推進型共同研究が実施され、そのうち3件が出資事業につながっている。

なお、国立大学法人東京大学は、事業化推進型共同研究の実施に当たり、学内公募を行ったものの、採択された案件がなかったことから、実施した件数は0件となっている。

図表1-27 事業化推進型共同研究の実施状況(平成28年度末)

(単位:件、千円)
国立大学法人 実施した事業化推進型共同研究 左の事業化推進型共同研究のうち国大ファンドから出資を受けた件数
件数 金額
東北大学 7 484,024 2
東京大学 0 - 0
京都大学 2 19,878 0
大阪大学 2 157,376 1
11 661,278 3

国立大学法人における第2期中期目標期間の最終年度である27年度までの前記の運営費交付金計200億円の使用状況は、図表1-28のとおりであり、国立大学法人4法人全体で、交付額の95.0%を占める190億余円が使用されていない状況となっていた。

そして、国立大学法人4法人は、運営費交付金の残額190億余円を第3期中期目標期間内(28年度から33年度までの6年間)に全額執行する執行計画を立てた上で、国立大学法人法第32条第1項の規定に基づき文部科学大臣の承認を受けて、第3期中期目標期間に繰り越していた。

国立大学法人4法人は、それぞれ28年度に繰越額の一部を執行する計画であったが、第3期中期目標期間である28年度における執行計画額及び実際の使用額をみると、図表1-28のとおり、国立大学法人東北大学は1億9015万余円、国立大学法人京都大学は1億1714万余円をそれぞれ使用していたものの、28年度の執行計画額に対する執行率は、それぞれ54.2%及び10.6%となっており、国立大学法人東京大学及び国立大学法人大阪大学は使用実績がなかった。

このため、28年度末現在、前記の運営費交付金計200億円のうち、93.5%を占める計187億余円が使用されずに国立大学法人4法人が保有している状況となっている。

図表1-28 第3期中期目標期間に繰り越した運営費交付金の使用状況

(単位:千円)
国立大学法人 運営費交付金の交付額 平成24年度から27年度までの使用額 第2期中期目標期間の使用額の割合 第3期中期目標期間への繰越額 28年度の執行計画額 28年度の使用額 28年度の執行計画額に対する執行率 28年度末残高 交付額に対する28年度末残高の割合
(a) (b) (b)/(a) (c) (d) (e) (e)/(d) (f) (f)/(a)
東北大学 2,500,000 664,212 26.5% 1,835,787 350,231 190,154 54.2% 1,645,633 65.8%
東京大学 8,300,000 18,220 0.2% 8,281,779 1,025,550 - 0.0% 8,281,779 99.7%
京都大学 5,800,000 124,735 2.1% 5,675,264 1,102,711 117,146 10.6% 5,558,117 95.8%
大阪大学 3,400,000 183,684 5.4% 3,216,315 16,621 - 0.0% 3,216,315 94.5%
20,000,000 990,853 4.9% 19,009,146 2,495,113 307,300 12.3% 18,701,845 93.5%

国立大学法人4法人は、前記の運営費交付金の交付額のほとんどを使用していない法人があること、第3期中期目標期間の初年度である28年度も執行計画額どおりの執行が行われていないことに鑑み、研究成果の実用化に向けた官民共同の研究開発の推進に資するものとなるよう、その必要性や必要額について十分に検討する必要がある。

オ 国の監督等の状況

官民ファンドは、支援の適正な実施を確保するなどのために、設置根拠法等において各官民ファンド運営法人の所管府省庁が監督等を行うことが原則となっており、官民ファンド運営法人に対する国の監督、評価等について、組織形態別にみると、次のとおりとなっている(図表1-29参照)。

(ア) 政府出資株式会社8法人

政府出資株式会社8法人は、それぞれの設置根拠法において、主務大臣が監督して、監督上必要な命令をすることができるなどと規定されている。そして、政府出資株式会社8法人のうち株式会社日本政策投資銀行以外の7法人は、取締役及び監査役の選任及び解任や予算の決定等には主務大臣の認可を要することが規定されている。一方、株式会社日本政策投資銀行は、完全民営化の方針の下、主務大臣の認可が必要な役員人事は代表取締役等の選定及び解職に限定され、予算の決定等に認可を要することとはなっていない。

また、主務大臣による事業年度ごとの業務の評価は、設置根拠法に主務大臣による評価に関する規定がない株式会社地域経済活性化支援機構及び株式会社日本政策投資銀行以外の6法人において行われている。

(イ) 独立行政法人2法人

独立行政法人2法人は、独法通則法において、業務全般に関する法人に対する国の監督に関する規定はないものの、業務運営が著しく適正を欠く場合、毎事業年度終了後の業務実績の評価結果に基づき必要がある場合等には、主務大臣が業務運営の改善等を命ずることができることとなっている。また、主務大臣が、法人の長を任命し、法人が達成すべき業務運営に関する目標を定めて、これを法人に指示し、法人は、当該目標の下で自主的に業務を運営することとなっており、主務大臣は、法人の業務実績を事後的に評価して、当該目標の期間の終了時点で業務等の全般的な見直しを行うことなどとなっている。なお、独立行政法人中小企業基盤整備機構及び国立研究開発法人科学技術振興機構の当該目標の期間は共に5年間であり、現行の期間は、前者が26年4月から31年3月まで、後者が29年4月から34年3月までとなっている。

(ウ) 国立大学法人4法人

国立大学法人4法人は、国立大学法人法において、業務全般に関しての法人に対する国の監督に関する規定はないものの、法令に違反する行為がある場合等には、文部科学大臣が必要な措置を講ずることを求めることができることとなっている。また、文部科学大臣が、法人の申出に基づいて学長を任命し、6年間に法人が達成すべき業務運営に関する目標を定めて、これを当該法人に示し、法人は、当該目標の下で自主的に業務を運営することとなっている。そして、国立大学法人の業務実績の評価は国立大学法人評価委員会が事後的に行うこととなっており、文部科学大臣は、当該評価を受けて、当該目標の期間の終了時点で業務等の全般的な見直しを行うことなどとなっている。なお、国立大学法人4法人の現行の当該目標の期間は、28年4月から34年3月までとなっている。

(エ) 基金設置法人2法人

基金設置法人2法人は、公募により選定されて、基金を設置するための補助金の交付申請を国に対して行い、国は、当該交付申請に対して交付決定をして、補助金を交付し、額の確定をしている。このように、基金設置法人2法人は補助金により基金を造成した補助事業者であるため、主務大臣等は、官民ファンドに関する業務の実施について、基金設置事業の交付要綱に基づき、必要な措置を命じ、又は必要な勧告、助言若しくは援助を行うことができることとなっている。なお、国が基金設置法人2法人の役員人事に関与することはない。

図表1-29 設置根拠法等に基づく官民ファンド運営法人に対する国の監督の内容

区分 官民ファンド運営法人 主務大臣 設置根拠法等に基づく国の監督の内容
政府出資株式会社8法人 株式会社産業革新機構 経済産業大臣 主務大臣は、設置根拠法の定めるところに従い監督し、設置根拠法を施行するため必要があると認めるときは、法人に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
株式会社地域経済活性化支援機構 内閣総理大臣等(注)
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 農林水産大臣
株式会社民間資金等活用事業推進機構 内閣総理大臣
株式会社海外需要開拓支援機構 経済産業大臣
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 国土交通大臣
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 総務大臣
株式会社日本政策投資銀行 財務大臣
独立行政法人2法人 独立行政法人中小企業基盤整備機構 経済産業大臣 業務全般に関する法人に対する監督の規定はない。
国立研究開発法人科学技術振興機構 文部科学大臣
国立大学法人4法人 国立大学法人東北大学 文部科学大臣 業務全般に関する法人に対する監督の規定はない。
国立大学法人東京大学
国立大学法人京都大学
国立大学法人大阪大学
基金設置法人2法人 一般社団法人環境不動産普及促進機構 国土交通大臣及び環境大臣 主務大臣は、基金設置法人に対し、事業実施要領の施行のために必要な限度において必要な措置を命じ、又は必要な勧告、助言若しくは援助を行うことができる。
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 環境大臣 環境省総合環境政策局長は、基金事業に関し、その適切な実施に必要な範囲で、基金設置法人に対し必要な措置を命じ、又は必要な勧告、助言若しくは援助を行うことができる。
(注)
株式会社地域経済活性化支援機構の主務大臣は、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣及び経済産業大臣である。

(2) 案件発掘、支援決定、モニタリング等の支援業務の実施状況

ア 支援基準等における政策目的等に関する基準及びリスク回避の取組

(ア) 個別案件の政策目的等に関する基準

(1)イのとおり、官民ファンド運営法人は、それぞれの設置根拠法等によって政策目的が定められており、その政策目的を実現するためにそれぞれ支援基準等が定められていて、当該支援基準等に基づく支援を行うために、支援決定までの案件発掘、デューデリジェンス等や支援決定後のモニタリング等の各時点における支援業務を適切に実施することが重要である。

官民ファンドの支援基準等は、官民ファンド運営法人が支援の対象となる事業者等を決定するに当たって従うべき基準を主務大臣等が定めるものであり、政策目的、民業補完、収益性等に関する基準が定められている。これらのうち、政策目的に関する基準についてみたところ、図表2-1のとおりとなっている。

図表2-1 官民ファンドの支援基準等における政策目的に関する基準(平成28年度末現在)

官民ファンド運営法人 支援基準等の主な支援対象分野 主な政策目的に関する基準
株式会社産業革新機構 社会の課題に対応し付加価値を創造するオープンイノベーションの促進 次のいずれにも該当すること
  • 環境問題や国民経済における生産性の向上等の社会的ニーズに対応していること
  • 高い生産性の実現等の新たな付加価値の創出を行うことができる成長性を有していること
  • 国の次世代の国富の増加につながる革新性を有していること など
株式会社地域経済活性化支援機構 地域経済の活性化に資する事業活動の支援等
  • 有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っている中小企業者その他の事業者であって、債権放棄等の金融支援を受けて事業再生を図ろうとするものに対する再生支援等を通じた事業再生の支援であること
  • 地域経済の活性化に資する資金供給を行うサブファンドの業務を執行する関係会社の経営管理等を通じて、地域の事業者の収益性・生産性の向上等に資する支援であること
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 農林漁業者が議決権の過半数を有する6次産業化事業体(機構、サブファンドが有する議決権を除く。) 次に掲げる全ての事項を満たすこと
  • 農林水産物、バイオマスその他の農山漁村・農林漁業に由来する多様な地域資源を活用し、その価値を生かしていくこと
  • 2次産業・3次産業の分野において、農林漁業以外の業種の技術・ノウハウを活用しつつ、農林漁業と一体的に地域資源の価値を高めることを目指すものであること
  • 新たな価値を創造することにより、国内外で新たな市場を開拓していくことが期待されるものであること
  • 農山漁村の安定的な成長発展が見込まれるものであること
株式会社民間資金等活用事業推進機構 独立採算型等のPFI事業者 次のいずれも満たすこと
  • 民間の事業機会の創出及び民間主体の資本市場の確立を促進させるとの観点を踏まえつつ一定の公共性・公益性を持つこと
  • 公共施設等の整備等の事業において、公共施設管理者と民間事業者が協力し、民間の能力を積極的に活用することで効率的・効果的な事業を実現すること など
株式会社海外需要開拓支援機構 日本文化の特色を生かし、海外の需要の開拓を行う事業者 次のいずれも満たすこと
  • 日本文化の特色を生かし、海外の需要の開拓を行うことで、日本経済に新たな付加価値を付与できること
  • 事業展開において様々な企業・業種との連携を行うこと、日本の魅力を発信すること、未開拓の市場へ進出するなど市場開拓の先駆けとなること、中堅企業や若手クリエーターなどが海外展開する際の共同基盤を提供することなどの波及効果を少なくとも1つは有していること など
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 海外における交通事業及び都市開発事業を行う事業者 次のいずれも満たすこと
  • 国内の技術等を活用して、対象事業の海外市場への参入を促進すること
  • 事業の円滑な運営のために機構による支援が有効であると見込まれること・国の外交政策と調和がとれていること
  • 対象事業が環境社会配慮を有していること など
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 海外における通信・放送・郵便事業を行う事業者 次のいずれも満たすこと
  • 国内の技術等を活用し通信・放送・郵便事業に係るインフラの整備、運営等を行うこと
  • 機構の支援によって国内外における通信・放送・郵便事業の需要の拡大に通じること
  • 国の外交政策と調和がとれていること など
株式会社日本政策投資銀行(注) 企業の競争力の強化及び生産性又は収益性を向上させる事業活動 次のいずれも満たすこと
  • 事業者自らが有する十分に活用されていない技術、設備等の経営資源を有効に活用したり、新たな事業活動により経営を革新したりすること
  • 日本の地域経済の自立的発展に資するか、または国の経済全体の活力の向上及び持続的発展に資することなど
独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業者の事業活動の活性化
  • 創業段階にある中小事業者や新規事業展開を行い発展を目指すなどの中小企業者への支援を行うサブファンドであること
国立研究開発法人科学技術振興機構 科学技術振興機構の研究開発の成果を活用しようとする事業者 次に掲げるもののうちから選定すること
  • 機構から研究開発資金の提供を受け実施された研究開発の成果を実用化することを目的としていること
  • 機構が集約及び管理している知的財産の活用を目的としていること
国立大学法人東北大学 国立大学法人東北大学における技術に関する研究成果を事業活動において活用する事業者 次に掲げる要件を満たすこと
  • 国立大学法人東北大学における研究成果を活用して、新たな需要や市場といった社会的価値の創出を果たすこと
  • 国内及び東北大学の学術研究の更なる発展に寄与すること など
国立大学法人東京大学 国立大学法人東京大学における技術に関する研究成果を事業活動において活用する事業者 次のいずれも満たすこと
  • 国立大学法人東京大学における学術研究成果を活用して、社会の発展に寄与する事業を行うこと
  • 国内及び国立大学法人東京大学の学術研究の更なる発展に寄与する事業であること など
国立大学法人京都大学 国立大学法人京都大学における技術に関する研究成果を事業活動において活用する事業者
  • 国立大学法人京都大学における知を活用して、新たな需要や市場といった社会的価値を創出することが期待されること
  • 国内及び京都大学の学術研究の更なる発展に寄与すること など
国立大学法人大阪大学 国立大学法人大阪大学における技術に関する研究成果を事業活動において活用する事業者 次に掲げる要件を満たすこと
  • 国立大学法人大阪大学における研究成果を活用して、新たな需要や市場といった社会的価値の創出を果たすこと
  • 国内及び大阪大学の学術研究の更なる発展に寄与すること など
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境性能を有する不動産の開発及び改修事業を行う事業者
  • 改修後の建築物が現行の耐震基準に適合することが見込まれる改修事業に支援を行うサブファンドであること
  • 事業終了後の建築物が一定の環境性能基準を満たすことが見込まれる改修、建替え又は開発事業に支援を行うサブファンドであること
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地球温暖化対策のための事業を行う事業者 次に掲げる全てを満たすこと
  • 事業の実施により二酸化炭素の排出量が抑制され、又は削減されること
  • 事業を実施する地域の活性化に資すること など
(注)
株式会社日本政策投資銀行の競争力強化ファンドの支援基準等は同行の部署が作成した運用マニュアル(非公表)に基づく基準であるため、特定投資業務の支援基準等である特定投資指針(平成27年財務省告示第218号)に定められたもののみ記載している。図表2-2も同様である。

上記の支援基準等における政策目的に関する基準は、成長による富の創出、地域活性化等のほか、中小企業対策、農林水産業対策、日本企業の海外展開支援等に係る基準となっている。

また、官民ファンドは、上記の政策目的に関する基準を満たすものに限定して民間で取ることが難しいリスクを取ることによって民間投資を活発化させる役割を担うだけでなく、政府出資等が国の資金であることから収益性を確保することが求められている。官民ファンドの支援基準等、事業者等が満たすべき基準のうち、収益性に関する基準についてみると、図表2-2のとおりとなっている。

図表2-2 官民ファンドの支援基準等における収益性に関する基準(平成28年度末現在)

官民ファンド運営法人 主な収益性に関する基準
株式会社産業革新機構
  • 取得する株式等の処分によって資金を回収できる蓋然性が高いと認められる成長性を有していること
株式会社地域経済活性化支援機構 次の全てを満たすこと
  • 再生支援決定が行われると見込まれる日から5年以内に生産性向上基準及び財務健全化基準を満たすこと
  • 申込事業者に対する債権の買取りなどを行う場合に、支援決定が行われると見込まれる日から5年以内に当該債権等の処分が可能となる蓋然性が高いと見込まれること
  • 出資による支援を行う場合には、企業価値の向上により投下資金以上の回収が見込まれること など
株式会社農林漁業成長産業化支援機構
  • 支援対象事業の支援を適切に行い、出資期間を通じて出資全体の長期収益性確保に努めること
株式会社民間資金等活用事業推進機構
  • 効率的効果的な事業であり、支援開始後一定期間内に出融資等を行う資金の適切な回収が可能となる蓋然性が高いと見込まれること
株式会社海外需要開拓支援機構
  • 支援決定を行ってから一定期間内に株式等の譲渡その他の方法による資金回収が可能となる蓋然性が高いこと
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 次のいずれも満たすこと
  • 対象事業において適切な経営体制を確保する等の経営責任を果たし、長期的な収益が見込まれること、資金回収の蓋然性が高いこと
  • 外部要因等による撤退の際の株式等の処分方法について関係者間であらかじめ取り決めを行うこと など
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 次のいずれも満たすこと
  • 対象事業において適切な経営体制を確保する等の経営責任を果たし、長期的な収益が見込まれること、資金回収の蓋然性が高いこと
  • 外部要因等による撤退の際の株式等の処分方法について関係者間であらかじめ取り決めを行うこと など
株式会社日本政策投資銀行
  • 経営資源を有効に活用したり、経営の革新を行ったりすることで、生産性又は収益性の向上を目指していること
独立行政法人中小企業基盤整備機構
  • 内部収益率が3%以上の合理的な採算計画等が策定されているサブファンドであること
国立研究開発法人科学技術振興機構
  • 経営体制等が妥当であること、経営戦略や出口戦略等が妥当であること
国立大学法人東北大学
  • 国大ファンドの運営存続期間内に、株式の処分等によって資金の回収が可能となる蓋然性が高いと見込まれること
国立大学法人東京大学 ・国大ファンドの運営存続期間内に、株式の処分等によって資金の回収が可能となる蓋然性が高いと見込まれること
国立大学法人京都大学
  • 国大ファンドの運営存続期間内に、株式の処分等によって資金の回収が可能となる蓋然性が高いと見込まれること
国立大学法人大阪大学
  • 国大ファンドの運営存続期間内に、株式の処分等によって資金の回収が可能となる蓋然性が高いと見込まれること
一般社団法人環境不動産普及促進機構
  • 想定利回りが市場平均やリスクを踏まえ合理的な水準の案件に支援を行うサブファンドであること
  • 出資コミットメントから投融資回収までの期間は対象事業に応じて合理的な期間(原則10年以内)であり、対象事業の物件売却等の実現性が高い案件に支援を行うサブファンドであること など
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構
  • 事業の実現及び継続が可能であり、長期的に採算をとる見込みがあること

官民ファンド運営法人は、これらの政策目的や収益性等に関する基準に沿った支援となるよう案件発掘、デューデリジェンス等の支援業務を実施して支援決定を行っている。

(イ) 官民ファンド運営法人におけるリスク回避の取組

(1)ア(ア)aのとおり、国から官民ファンド運営法人に対する政府出資等の額が回収できない事態等が生ずることを回避するよう政府出資等を適切に管理する必要がある。特に、財政投融資特別会計(投資勘定)の出資は投資先から回収したリターンを再投資する仕組みであることから、官民ファンド運営法人は、対象事業者へ拠出した出資金等を確実に回収することに加え、官民ファンドの業務運営に要する経費を上回る収益を確保し、出資者である国に納付することが求められるものであり、支援した額を回収できないリスクの回避(以下「リスク回避」という。)に関する取組と収益性を確保することが求められる。

そして、官民ファンド運営法人は、案件発掘、デューデリジェンス、支援決定に至るまでの審議やモニタリング等の支援業務がリスク回避に取り組むために重要なものとなっている。さらに、官民ファンド運営法人における支援業務において、リスク回避のための具体的な取組についてみると、次のとおりとなっている。

全官民ファンド運営法人における取組として、ポートフォリオマネジメントが挙げられる。具体的には、民間で取ることが難しいリスクを負うことになる個別案件の支援決定の際に、主な事業分野、営業地域、取引先金融機関等が極端に偏ることがないよう分散投資を行うことにより、法人全体としては元本を確保するようリスク回避に取り組んでいる。

また、個別案件を抽出するなどして検査したところ、一部の官民ファンド運営法人において、次のようなリスク回避の取組が見受けられた。

① 出融資の仕組みについてみると、支援対象事業のみを行う特別目的会社に出融資してプロジェクトファイナンスを実施することにより、支援対象事業以外の複数の事業を行う事業者に出融資してコーポレートファイナンスを実施する場合よりリスクを限定的にしたり、官民ファンド運営法人がGP出資をすると事業者の経営破綻の場合に訴訟等を含めた全ての責任を負うことになるため、子会社を設立してGP出資を行わせたりしてリスク回避に取り組んでいる。

② 出資の手法についてみると、普通株式よりもリスクが低く配当等が優先的に配分される優先株式としたり、事業の進捗に応じて評価を行い段階的に支援を実行することにより、一括で支援を実行する場合よりもリスクが低くなるマイルストーン投資を行ったりしてリスク回避に取り組んでいる。

③ 出融資における契約条項についてみると、資金調達先や事業スキーム等の出融資の前提条件を大きく変更する場合に、当初設定した出融資から回収までの期間を待たずに契約内容について協議できる旨の契約条項を設定したり、財務状況が著しく悪化した場合に出融資を引き上げるなどの協議を行う旨の契約条項を設定したりしてリスク回避に取り組んでいる。

(ウ) 支援基準等との適合性に関する主務大臣等の関与

官民ファンド運営法人が行う直接支援における対象事業者又は間接支援におけるサブファンドに対する支援決定について、主務大臣等が支援基準等における政策目的等に関する基準に適合しているかを確認等することにより、政策目的に沿った支援となっているかを主務大臣等の立場で関与するなどしている。主務大臣等の関与の状況について、組織形態別にみると、次のとおりとなっている。

a 政府出資株式会社8法人

① 株式会社農林漁業成長産業化支援機構、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構及び株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構の3法人は、設置根拠法に基づき、対象事業者又はサブファンドに対する支援決定を行う場合には主務大臣の認可を受けなければならないこととなっている。そして、主務大臣は、支援基準に適合しているかなどについて審査している。

また、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構及び株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構による支援は、海外におけるインフラ等に係る事業という性質上、政府開発援助を含む我が国の外交・対外経済政策に沿って関係機関と連携しつつ行われる必要があることから、主務大臣は、認可に当たって外務大臣、財務大臣及び経済産業大臣との協議を行っている。

②株式会社産業革新機構、株式会社民間資金等活用事業推進機構及び株式会社海外需要開拓支援機構の3法人は、設置根拠法に基づき、対象事業者又はサブファンドに対する支援決定を行う場合には主務大臣に意見を述べる機会を与えなければならないこととなっている。そして、主務大臣は、支援基準に適合しているかなどについて意見を述べている。なお、株式会社産業革新機構においては、ベンチャー企業に対する支援を迅速に行うために、出資総額が10億円以下であることなどの一定の条件を満たしたものについては、事後の報告でよいこととなっている。

③株式会社地域経済活性化支援機構は、設置根拠法に基づき、対象事業者又はサブファンドに対する支援決定を行った場合には、速やかに主務大臣に報告しなければならないこととなっている。また、同機構は、設置根拠法には規定されていないものの、支援決定前に、所管府省庁に対して、支援候補案件に関する説明会を開催したり、説明資料を送付したりしている。そして、所管府省庁は、支援基準に適合しているか、地域経済の活性化に資する取組かといった観点から支援候補案件を確認しており、必要に応じて質問や助言を行っている。

④ 株式会社日本政策投資銀行の特定投資業務は、株式会社日本政策投資銀行法に規定された業務であり、同法に基づき定められた特定投資指針において、支援候補案件の資金供給の対象となる対象事業者又はサブファンド及び当該資金供給の内容の決定を行うに当たっては、その内容について主務大臣である財務大臣に報告することとなっている。また、同行の競争力強化ファンドは、従来、同行が取り組んでいる業務であるため、同行が行う他の投融資の決定と同様に、主務大臣に対して、法人業務全体として、毎年度、定期的に報告することとしている。

b 独立行政法人2法人

独立行政法人2法人は、対象事業者又はサブファンドに対する支援決定を行う場合に、主務大臣に対する事前又は事後の報告等を行うこととなっていない。ただし、所管省の職員が、独立行政法人2法人の支援決定のための評価を行う助言機関に必要に応じてオブザーバーとして参加し、政策目的に沿った支援が行われていることを確認し、必要に応じて意見を述べるなどしている。

c 国立大学法人4法人

国立大学法人4法人は、国立大学法人法に基づき、認定子会社又は国大ファンドに対して出資を行おうとする場合には、主務大臣である文部科学大臣の認可を受けなければならないこととなっている。

なお、国立大学法人4法人が出資を行うことができるのは、(1)エ(ア)aのとおり、強化法に基づき、特定研究成果活用支援事業計画を作成し、経済産業大臣及び文部科学大臣の認定を受けた者に限定されている。

d 基金設置法人2法人

一般社団法人環境不動産普及促進機構は、事業実施要領において、主務大臣に対して個別案件ごとの報告等を行うこととなっていない。

一般社団法人グリーンファイナンス推進機構は、事業実施要領に基づき、対象事業者又はサブファンドに対する支援決定を行った場合には、速やかに当該対象事業者の名称等を記載した書面を環境省に提出することとなっている。また、同省の職員が、必要に応じて、支援決定等を行う委員会にオブザーバーとして参加している。

イ 支援業務の実施体制

官民ファンド運営法人が設置根拠法等に定められた政策目的を達成するためには、各官民ファンド運営法人において、案件発掘、支援決定、モニタリング等の支援業務の運営が適切に行われていることが重要である。

官民ファンド運営法人において、支援業務の担当部署や支援業務に従事している者の状況は、図表2-3のとおり、おおむね投資部等の特定の担当部署を設置して支援業務を実施しているが、主要な支援業務である①案件発掘からデューデリジェンスまでの業務及び②モニタリングに係る担当者数等は、各法人の事業分野の特性や事業規模等により様々となっている。

図表2-3 主要な支援業務の担当者数等(平成28年度末)

(単位:人)
官民ファンド運営法人 主要な支援業務(①、②)に従事する担当者数等注(1)   (参考)
役職員数(法人全体)
担当者 担当部署名 常勤役員 非常勤役員 常勤職員 非常勤職員
株式会社産業革新機構 80 投資事業G、戦略投資G、ポストインベストメントG、経営管理G(法務担当、ポートフォリオ管理室) 5 7 109 0 121
株式会社地域経済活性化支援機構注(2) 232 営業企画部営業推進室、地域活性化支援部、資産管理部モニタリングチーム 7 7 314 0 328
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 30 統括部、投融資部、法務部、モニタリング室 4 8 38 1 51
株式会社民間資金等活用事業推進機構 13 投融資第一部、投融資第二部、財務管理部 2 5 16 3 26
株式会社海外需要開拓支援機構 42 投資戦略グループ、投資連携・促進グループ、投資管理部 2 7 61 0 70
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 31 企画総務部、事業推進部、管理財務部 2 6 36 2 46
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 14 投資戦略部、投資管理部 2 5 18 0 25
株式会社日本政策投資銀行注(3) 19 4 1,191 1 1,215
独立行政法人中小企業基盤整備機構 20 ファンド事業部 12 1 724 261 998
国立研究開発法人科学技術振興機構 12 起業支援室、監査・法務部(法務・コンプライアンス課)、産学共同開発部(業務管理グループ) 6 1 1,277 146 1,430
国立大学法人東北大学注(4) 9 投資部、管理部 2 5 9 0 16
国立大学法人東京大学注(4) 5 事業開発部、協創推進部、管理・総務部 1 4 4 0 9
国立大学法人京都大学注(4) 10 投資部、管理部 1 7 9 1 18
国立大学法人大阪大学注(4) 7 投資部 1 7 10 0 18
一般社団法人環境不動産普及促進機構 6 総務部、企画部 2 10 6 0 18
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 15 事業部(フロント担当、モニタリング担当) 2 6 19 1 28
注(1)
主要な支援業務とは、①案件発掘からデューデリジェンスまでの業務及び②モニタリングである。
注(2)
株式会社地域経済活性化支援機構の地域活性化支援部は、金融機関等が行う中小企業者等の事業再生に向けた取組や新事業・事業転換等を目指す企業の取組を支援する業務を行っており、その特性から、事業再生等の各業務で蓄積されたノウハウを地域金融機関に移転するため、同機構の担当者数には当該業務を実施するために雇用された高度な専門人材が多く含まれている。また、同部に所属する職員が他の担当部署においても支援業務を兼務している場合がある。
注(3)
株式会社日本政策投資銀行は、法人全体として投資業務を行っていて支援業務の担当部署を設けておらず、専任で支援業務を行う担当者はいないため「-」としている。図表2-4も同様である。また、(参考)における常勤役員には常務執行役員8人が含まれている。
注(4)
国立大学法人は、認定子会社について記載しており、図表2-4から図表2-9までも同様である。

ウ 支援決定に至るまでの支援業務に係る実施状況

官民ファンド運営法人における支援決定に至るまでの業務に係る実施状況は次のとおりとなっている。

(ア) 案件発掘の実施状況

直接支援に係る案件発掘についてみると、官民ファンド運営法人が金融機関からの相談、事業者からの依頼、国立大学法人からの紹介等を受けたり、事業者の訪問等の活動を行うことによって事業化の可能性のある案件を探索したりして案件の受付等を行い、このうち支援基準等に基づいた事業化される確度が高いと判断された案件を支援候補案件としている。

案件発掘について、特徴のある官民ファンド運営法人を挙げると次のとおりである。

株式会社地域経済活性化支援機構は、地域における総合的な経済力の向上を通じて地域経済の活性化を図ることなどの政策目的に基づき、特に地域金融機関と連携して支援を行っており、支援候補案件は、事業再生計画の実現に必要な金融機関の参加が前提となっているため、金融機関からの相談によるものが多くなっている。

株式会社海外交通・都市開発事業支援機構は、日本企業の海外インフラ市場での展開を通じ、経済の成長に寄与するための支援を実施しており、我が国の知識・技術・経験の活用や海外市場への事業者の参入を促進するため、海外展開に意欲のある事業者からの持込みによるもののほか、同機構が各国要人との面談や海外政府関係機関との協力覚書の締結等を積極的に行うなどして事業化の可能性のあるなどの案件を発掘している。

株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構は、日本企業が海外で継続的にサービスを提供する事業を支援対象としており、主体となって海外事業を展開するパートナー企業との共同投資を行うなどしているため、同機構の案件発掘は、海外展開に意欲のある事業者からの依頼によるものが多くなっている。

東北大学、京都大学、大阪大学各国立大学法人の認定子会社及び国立研究開発法人科学技術振興機構は、事業者訪問等による案件が多くなっている。これは、東北大学、京都大学、大阪大学各国立大学法人及び国立研究開発法人科学技術振興機構の研究成果に係る関係者や研究論文を案件発掘の手掛かりにしていることによるものである。

また、間接支援に係る案件発掘については、一般的にはサブファンドのGPが行っている。

(イ) デューデリジェンスの実施体制及び実施状況

官民ファンド運営法人は、案件発掘において支援候補案件とした事業者等について、デューデリジェンスを実施し、その結果は、支援決定までの審議過程における検討資料として用いられている。

官民ファンド運営法人の直接支援における具体的なデューデリジェンスの実施状況についてみると、事業者等から事業内容に関する資料の提出を求めたり、経営者と面談したりすることにより、当該事業の実現可能性やリスク、政策目的に沿った事業であるかどうか、収益を見込むことができる事業であるかどうかなどの事項を検証し、更に重点的に調査するべき事項を整理して、支援決定に至る可能性が認められるかどうかを調査している。これに従事する担当者の専門性等の状況は、図表2-4のとおりとなっており、官民ファンド運営法人内部において実務経験者、有資格者、取引経験者等の担当者がデューデリジェンスを実施している。

図表2-4 デューデリジェンスに従事する担当者の専門性等の状況(平成28年度末)

(単位:人)
官民ファンド運営法人 区分注(2)
担当者
金融機関、経営者等の事業経験者、投資経験者等の ファンド実務経験者 公認会計士、弁護士、弁理士、不動産 鑑定士、中小企業診断士 等の有資格者 教授等の学識経験者、投資先事業分野の知見者、商社勤務等の取引経験者 その他
株式会社産業革新機構 73 65 4 2 2
株式会社地域経済活性化支援機構 231 156 75 0 0
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 28 19 6 2 1
株式会社民間資金等活用事業推進機構 13 10 1 0 2
株式会社海外需要開拓支援機構 40 32 4 0 4
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 27 24 0 0 3
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 14 6 1 7 0
株式会社日本政策投資銀行 - - - - -
国立研究開発法人科学技術振興機構 10 6 1 3 0
国立大学法人東北大学 9 6 0 0 3
国立大学法人京都大学 10 6 1 0 3
国立大学法人大阪大学 7 6 0 0 1
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 12 8 0 1 3
注(1)
案件発掘からデューデリジェンスまでの業務に従事する担当部署の担当者数を計上しており、主要な支援業務(図表2-3参照)に従事する担当者のうち、モニタリングの部署を設けている法人については当該部署の担当者数は除いている。
注(2)
区分欄は、実務経験者等が有資格者であるなどして複数の区分に該当する場合は、左側の区分を優先して計上している。

そして、官民ファンド運営法人は、図表2-5のとおり、必要に応じて、監査法人、法律事務所、コンサルティング会社等の外部専門家を利用したデューデリジェンスも実施しており、デューデリジェンスの種類別の業務委託契約等の実施状況は、財務・税務関係は9法人が、法務・知財関係は12法人が、事業・技術関係は8法人がそれぞれ外部専門家に委託して、デューデリジェンスを実施している。

図表2-5 外部専門家を利用したデューデリジェンスの実施状況(平成24年度~28年度)

(単位:件、千円)
官民ファンド運営法人 契約件数 デューデリジェンス費用 財務・税務デューデリジェンス
注(1)
法務・知財デューデリジェンス
注(2)
事業・技術デューデリジェンス
注(3)
株式会社産業革新機構 373 6,965,640
株式会社地域経済活性化支援機構 148 491,195
株式会社農林漁業成長産業化支援機構注(4) 9 5,121
株式会社民間資金等活用事業推進機構 3 22,662
株式会社海外需要開拓支援機構 41 128,564
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 18 161,399
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 3 38,575
株式会社日本政策投資銀行注(5)
国立研究開発法人科学技術振興機構 24 13,230
国立大学法人東北大学 17 5,808
国立大学法人京都大学 11 9,388
国立大学法人大阪大学 147 33,892
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構注(4) 62 138,757
856 8,014,236 計9法人 計12法人 計8法人
注(1)
財務デューデリジェンスは、財務諸表等の分析等であり、税務デューデリジェンスは、課税対策、税務リスク等の確認であり、いずれも監査法人が主な委託先となっている。
注(2)
法務デューデリジェンスは、反社会勢力調査、契約条項等の確認であり、知財デューデリジェンスは、特許調査等であり、いずれも法律事務所が主な委託先となっている。
注(3)
事業デューデリジェンスは、企業分析等の事業性評価であり、技術デューデリジェンスは、設計内容等の妥当性等の確認であり、いずれもコンサルティング会社が主な委託先となっている。
注(4)
株式会社農林漁業成長産業化支援機構及び一般社団法人グリーンファイナンス推進機構のデューデリジェンス費用の中には、サブファンドに支援決定する際のデューデリジェンスの費用が含まれている。
注(5)
株式会社日本政策投資銀行は法人全体として投資業務を行っていて、支援業務に係るデューデリジェンスの費用を区分して整理していないため実施状況を把握できない。

また、間接支援の対象事業者の選定においては、一般的には、サブファンドのGPが内部で検討し、必要に応じて外部委託によりデューデリジェンスを行っており、その結果をサブファンドにおける支援決定の過程で検討資料として用いている。

エ 支援決定の実施状況

官民ファンド運営法人は、支援決定機関において対象事業者やサブファンドに対する最終的な支援決定を行う際に支援基準等に定める基準を満たしているか審議を行い、支援決定を行っており、その支援決定の実施状況についてみると、次のとおりとなっている。

(ア) 支援決定機関の人員構成

官民ファンド運営法人の支援決定機関の人員構成等についてみると、図表2-6のとおり、官民ファンド運営法人12法人は、設置根拠法等に基づき、支援決定機関の委員に社外の実務経験者等を加えている。

また、独立行政法人2法人は、理事長が支援決定を行うこととなっているが、支援決定に当たっては、提案内容及び出資先としての適格性について総合的に評価等を行う社外の実務経験者等により構成される助言機関の意見を踏まえることとなっている。

このように、官民ファンド運営法人は、おおむね、独立した立場の社外の実務経験者等を委員に加えて審議し、又はこれらの者から助言を受けることにより、執行部を監視・牽制する仕組みを導入している。

なお、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構は、外部有識者等で構成される審査委員会の審議を経て、同機構の役職員で構成される支援決定機関(出資委員会)において支援決定を行うこととなっている。

図表2-6 支援決定機関の人員構成(平成28年度末)

(単位:人)
官民ファンド運営法人 支援決定機関の人員構成注(2) (参考)
助言機関の人員構成
人数計 社内の取締役等 社外の実務経験者等 人数計 社内の取締役等 社外の実務経験者等
株式会社産業革新機構注(1) 7 2 5
株式会社地域経済活性化支援機構注(1) 6 1 5
株式会社農林漁業成長産業化支援機構注(1) 7 2 5
株式会社民間資金等活用事業推進機構 5 2 3
株式会社海外需要開拓支援機構注(1) 7 2 5
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 7 2 5
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 6 3 3
株式会社日本政策投資銀行注(1) 8 8 0
独立行政法人中小企業基盤整備機構注(1) 1 1 0 9 0 9
国立研究開発法人科学技術振興機構 1 1 0 7 1 6
国立大学法人東北大学 5 2 3
国立大学法人東京大学注(1) 5 1 4
国立大学法人京都大学 7 2 5
国立大学法人大阪大学 5 1 4
一般社団法人環境不動産普及促進機構注(1) 10 2 8
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構注(1) 9 9 0
計16法人 計16法人 計12法人 計2法人 計1法人 計2法人
注(1)
間接支援に関しては、サブファンドに対する支援決定に係る審議を行っている。
注(2)
間接支援に関しては、サブファンドに対する支援決定に係る審議を行っている。

官民ファンド運営法人は、利益相反管理規程等の基準を整備しており、官民ファンド運営法人の役職員が対象事業者の役職員を兼ねている場合等に支援決定に関与することによる利益の衝突が生じないようにする措置を執ることを定めている。

具体的には、官民ファンド運営法人の支援決定機関の委員が対象事業者の役職員を兼ねている場合は、該当案件の審議時に退席させるなどの措置を執っている。

(イ) 支援決定に係る審議体制等

各官民ファンド運営法人の支援決定に係る審議体制等は、図表2-7のとおりであり、官民ファンド運営法人は、各法人の内部規程等に基づき、支援決定機関の審議に至るまでに、主要な支援業務の担当部署等が審議を行う投資部門会議等、役員等が審議を行う投資委員会等を設置している。そして、投資部門会議等、投資委員会等、支援決定機関の順に審議を行うなどしてこれらの会議体等の審議を経ることなどにより、支援決定に至るまでにおおむね複数回の審議が行われることとなっている。

図表2-7 支援決定に係る審議体制等

(単位:件)
官民ファンド運営法人 支援候補案件数 投資部門会議等
(支援決定機関の前々段階)
審議案件数 投資委員会等
(支援決定機関の前段階)
審議案件数 支援決定機関 審議案件数
株式会社産業革新機構注(2) 投資連絡会 1,193 投資委員会又はEV投資委員会 97 産業革新委員会又は代表取締役社長 97
株式会社地域経済活性化支援機構注(3) 124 経営会議 101 地域経済活性化支援委員会又は取締役会 101
株式会社農林漁業成長産業化支援機構注(4) 54 投融資検討会 54 農林漁業成長産業化委員会 54
株式会社民間資金等活用事業推進機構 21 経営会議 21 民間資金等活用事業支援委員会 21
株式会社海外需要開拓支援機構注(5) 178 投資事業戦略会議 178 投資委員会 43 海外需要開拓委員会 41
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 11 案件審査委員会 11 支援検討会議 10 海外交通・都市開発事業委員会 10
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 40 投資戦略会議 2 海外通信・放送・郵便事業委員会 2
株式会社日本政策投資銀行注(6) 経営会議又は投融資決定委員会 39
独立行政法人中小企業基盤整備機構注(7) 70 最終面接 70 理事長 70
国立研究開発法人科学技術振興機構 29 投資委員会 29 理事会議 12 理事長 12
国立大学法人東北大学 47 全社検討会 7 支援・投資委員会 6 取締役会 6
国立大学法人東京大学 30 代表取締役社長 1 支援・投資委員会 1
国立大学法人京都大学 150 支援・投資委員会 14
国立大学法人大阪大学 17 支援・投資委員会 11 取締役会 11
一般社団法人環境不動産普及促進機構 11 投資審査委員会 9 理事会 9
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構注(8) 56 出資委員会
(対処方針)
56 審査委員会 42 出資委員会
(出資決定)
31
注(1)
本図表は、平成25年1月から28年12月までの間において担当部署が整理した支援候補案件又は同期間において最初の会議体等で審議された案件を対象として、その後対象とした案件が28年度末までに次の段階以降の会議体等において審議された件数を記載している。なお、支援候補案件数は各官民ファンド運営法人が受付等をした案件のうち、確度が高いとしたものを記載している。
注(2)
株式会社産業革新機構の投資連絡会は、「情報共有を図り、より多くの知識と意見を集約して投資案件に関する議論を深める」趣旨で審議され、確度の高い案件から順に次の段階の審議へ移行している。また、ベンチャー企業に対する支援を迅速に行うために、出資総額が10億円以下の案件についてはEV投資委員会で審議し代表取締役社長において決定することとなっており、支援決定機関の前段階で審議された計97件のうち36件がこれに該当している。なお、図表2-6は、支援決定機関のうち産業革新委員会の人員構成を記載している。
注(3)
株式会社地域経済活性化支援機構は、上場企業や同機構の支援により地域における反響が大きいと考えられる事業者等への支援については地域経済活性化支援委員会、それ以外の支援については取締役会(代表取締役社長への委任を含む。)において決定している。また、同機構が直接行う再生支援の件数及びファンド出資の件数について記載している。なお、図表2-6は、支援決定機関のうち地域経済活性化支援委員会の人員構成を記載している。
注(4)
株式会社農林漁業成長産業化支援機構は、間接出資を行った対象事業者に対し更に同機構が直接融資を行う場合があるが、当該融資については本図表においては対象としていない。
注(5)
株式会社海外需要開拓支援機構は、審議の結果、事業者に再検討を求めたが、注(1)の期間内に事業者の対応が進まず、次の段階の審議へ移行しなかったため、件数の差が生じている。
注(6)
株式会社日本政策投資銀行は、投融資金額が高額な場合は経営会議、通常案件の場合は投融資決定委員会において審議している。また、経営会議において特に必要があるとする案件は取締役会において審議することとなっているが、平成28年度末現在においてその審議実績はない。なお、図表2-6は、支援決定機関のうち経営会議の人員構成を記載している。
注(7)
独立行政法人中小企業基盤整備機構の「最終面接」は、1次面接、2次面接等を経た後、同機構の新事業開拓出資事業に係る事務処理要領等に基づき実施され、理事長、副理事長、理事等により構成されるものである。
注(8)
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構の「出資委員会(対処方針)」は、出資取扱規程に基づき、支援候補案件の予備審査の結果が付議されるものである。

そして、各官民ファンド運営法人の会議体等において審議された案件数の推移をみると、審議案件の多くは、各段階の会議体等の審議を経て支援を実行することと決定されたり、審議の過程で事業の実現見込みなどの課題について事業者への再検討が求められたりしている状況である。また、東北大学、京都大学、大阪大学の各国立大学法人の認定子会社、国立研究開発法人科学技術振興機構、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構における審議案件数の一部において審議の結果、支援を実行しないことを決定した案件も見受けられる。

(ウ) サブファンドに対する支援決定

官民ファンド運営法人が間接支援を行う場合には、まず官民ファンド運営法人がサブファンドの業務を執行するGPを選定してサブファンドに対して支援決定した上で、サブファンドを組成する契約を締結することになる。そして、間接支援においても、直接支援と同様に政策目的に基づいた支援を適切に行うために、サブファンドにおける案件発掘やデューデリジェンス等の業務を執行するGPが十分な能力を有していることなどが求められる。

間接支援を行う官民ファンド運営法人9法人におけるGPの選定方法についてみると、6法人(産業革新機構、地域経済活性化支援機構、海外需要開拓支援機構、日本政策投資銀行各株式会社及び基金設置法人2法人)は、金融機関等から紹介を受けたり、官民ファンド運営法人が探索したりするなどして、GPの候補となったものを対象として審査を行い選定する方式(以下「総合方式」という。)によりGPを選定している。また、残りの3法人(株式会社農林漁業成長産業化支援機構、独立行政法人中小企業基盤整備機構及び国立大学法人東京大学の認定子会社)は、募集要項を公表して応募者から企画提案書等を提出させて審査を行って選定する方式(以下「応募方式」という。)によりGPを選定している。

総合方式を採用する6法人におけるGPの選定についてみると、GPとしての業務執行実績のある社を選定していたり、GPに業務執行実績のない場合は過去に運用実績を有する運用担当者を迎えてGPの候補として選定していたりしている。なお、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構の選定した6社のうち2社は、GPとしての業務執行実績がなく、運用担当者が運用実績を有していないものの、投資先の候補をあらかじめ特定の社に限定していて案件組成の業務を実質的に行う必要がないなどのものである。

応募方式を採用する3法人のうち、株式会社農林漁業成長産業化支援機構を除く2法人においては、総合方式と同様に、GPとして業務執行実績のある社を選定していたり、過去に運用実績を有する運用担当者を迎えてGPの候補として選定していたりしている。

また、株式会社農林漁業成長産業化支援機構は、「農林漁業成長産業化サブファンド募集要項」において、応募者から企画提案書等を提出させることとしており、24年度から28年度までの間に、説明会等を実施するなどして、企画提案書を提出した応募者52社について審査した上で、52社全てをGPとして選定して契約を締結している。

同機構は、応募者の要件について、同募集要項において「GPとして業務執行の実績を有している者、又は、円滑な業務執行が可能と機構が判断する者」等としており、また、GP審査基準(平成25年農林漁業成長産業化委員会決定)において、案件組成力、事業性審査力、経営支援実行力、信用力の四つの観点を示しており、これらの要件を満たすことを求めている。

選定されたGPの要件の充足等の状況をみると、応募時の企画提案書によると、52社のうち16社は、GPとしての業務執行の実績を有しておらず、さらに、このうちの14社は、運用担当者も過去に運用実績を有していないが、同機構は、LPとの連携等により一定の案件組成力等が期待できるなどとして上記の14社をGPに選定している。

オ モニタリングの実施状況

ガイドラインによれば、官民ファンド運営法人は、モニタリングの基準を設定し、支援を行った後、対象事業者の財務情報や経営方針等の企業情報を継続的に把握するモニタリングを適切に行うことが重要であるとされている。また、対象事業によっては、事業の開始に当たり、不動産の取得、建設工事等において法令上の届出等を要する場合があり、その手続等を確認するために支援決定後から実支援までの間においてもモニタリングを行う場合がある。

そこで、直接支援に係るモニタリングを行っている13法人において、主要なモニタリング項目の一つである売上高を例として、28年度末において1決算期以上経過した対象事業者122社の24年度から28年度までの売上高の実績値と事業計画値の累計額を対比すると、図表2-8のとおり、60社の実績値は事業計画値を上回っており、62社の実績値は事業計画値を下回っている。

図表2-8 売上高の実績値と事業計画値の累計額の対比

(単位:社)
官民ファンド運営法人 平成24年度から28年度までの累計額による対比
売上高の実績値が事業計画値を上回っているもの 売上高の実績値が事業計画値を下回っているもの
対象事業者数 割合 対象事業者数 割合
株式会社産業革新機構 10 21.7% 36 78.2%
株式会社地域経済活性化支援機構 8 100.0% 0 0.0%
株式会社農林漁業成長産業化支援機構注(1) 0 0.0% 2 100.0%
株式会社民間資金等活用事業推進機構 2 66.6% 1 33.3%
株式会社海外需要開拓支援機構 1 12.5% 7 87.5%
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 2 100.0% 0 0.0%
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構注(2)
株式会社日本政策投資銀行 24 100.0% 0 0.0%
国立研究開発法人科学技術振興機構 2 28.5% 5 71.4%
国立大学法人東北大学 3 60.0% 2 40.0%
国立大学法人京都大学注(2)
国立大学法人大阪大学 4 40.0% 6 60.0%
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 4 57.1% 3 42.8%
計 対象事業者の総数122 60 49.1% 62 50.8%
注(1)
株式会社農林漁業成長産業化支援機構は、間接出資を行った対象事業者に対し更に機構が直接融資を行う場合があるが、当該融資については本図表においては対象としていない。
注(2)
平成28年度末において1決算期以上経過した対象事業者がない株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構及び国立大学法人京都大学は「-」としている。

また、図表2-8において、売上高の実績値が事業計画値を下回っている62社の直近の決算期(28年4月から29年3月までに期末を迎える決算期)の営業損益の状況についてみると、図表2-9のとおり、8社において営業利益を計上しており、54社において営業損失を計上していた。

図表2-9 平成24年度から28年度までの累計額による対比において、売上高の実績値が事業計画値を下回っている62社の直近の決算期における営業損益の状況と損失発生の主な理由

(単位:社)
官民ファンド運営法人 直近の決算期に営業利益を計上しているもの 直近の決算期に営業損失を計上しているもの
対象事業者数 割合 対象事業者数 割合 主な理由(注)
株式会社産業革新機構 2 5.5% 34 94.4% 開発プロセスの遅れにより製品化及び受注時期が遅れたため
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 1 50.0% 1 50.0% 用地確保に時間を要し開業が遅れたため
株式会社民間資金等活用事業推進機構 1 100.0% 0 0.0% 該当なし
株式会社海外需要開拓支援機構 1 14.2% 6 85.7% 事業の立ち上がりに時間を要しているため
国立研究開発法人科学技術振興機構 0 0.0% 5 100.0% 製品の販売が計画に対し遅れたため
国立大学法人東北大学 0 0.0% 2 100.0% 初期設備投資等のため
国立大学法人大阪大学 1 16.6% 5 83.3% 製品の開発、納品遅れや海外販売が大きく遅れたため
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 2 66.6% 1 33.3% 事業者の法令違反により、自主的に設備稼働を停止したため
計 対象事業者の総数 62 8 12.9% 54 87.0%
(注)
「主な理由」欄は、複数の対象事業者が該当する場合で、それぞれ理由が異なる場合は、最も該当の多い理由を記載している。

そして、直近の決算期に営業損失を計上している54社についてその主な理由を確認したところ、図表2-9のとおり、製品開発や用地確保等の遅延等となっていた。

このうち、対象事業者が事業の開始に当たり必要となる法令上の手続を行わないまま工事に着手したことなどについて、官民ファンド運営法人のモニタリングが十分に行われていなかった事例が見受けられた。

<事例2> モニタリングが十分に行われていなかったもの

一般社団法人グリーンファイナンス推進機構は、平成26年度に、太陽電池発電所を設置し、売電を行う三沢くらしのさと株式会社(以下「三沢社」という。)に対する支援を決定し、工事に着手後、1億円を出資している。

また、同機構は、三沢社から、支援決定後から実支援までの間、施設等の建設・操業前に必要な法令上の手続は行われている旨の報告を受けていた。

しかし、検査したところ、本事業は28年度に営業損失を計上しており、その原因は、三沢社が電気事業法(昭和39年法律第170号)に基づく工事計画届出等の法令上の手続を行わないまま工事に着手し稼働させていたことについて、三沢社が監督官庁から是正を求められたため、稼働後に自主停止したことによる発電量及び売電量の減少であり、同機構が法令違反の状態の事業に出資していたことが判明した。同機構は、実支援の前に、本事業の実施に当たり、届出等の法令上の要件を具備する必要のある事業であることから、モニタリングの一環として、三沢社に契約書等に関する確約書を提出させて確認していたが、監督官庁が受理したという事実を確認するために届出等に係る書類の写しを徴取した上での確認はしていなかった。

このように、官民ファンド運営法人におけるモニタリングについては、支援決定後から実支援までの間において対象事業者が事業を実施するために行うべき法令上の手続があるなどの場合には、当該手続等に不備が生じないようその確認を適切に行うほか、支援を行った後においては、対象事業者の財務情報や経営方針等の企業情報を引き続き継続的かつ適切に把握する必要がある。

(3) 財務等の状況

ア 官民ファンド運営法人の財務諸表等

官民ファンド運営法人には多額の政府出資等が実行され、それらを原資に官民ファンドの業務が行われているが、当該政府出資等は官民ファンドの業務終了後に国が回収することなどを見込んでいるものである。そして、官民ファンド運営法人は、支援に伴い取得した株式等の有価証券を売却することなどにより支援のために拠出した出資金等を回収するが、一般的に、当該有価証券を取得価額を上回る額で売却等できれば有価証券売却益等の収益が生じ、支援で生じた投資損失等や官民ファンドの業務運営に要する経費等の費用を賄ってなお残余があれば、その事業年度については、利益が計上され、賄うことができなければ損失が計上される。こうした各事業年度の利益が損失を上回って繰り越されていれば、剰余金等はプラスとなり、剰余金等から適宜、配当等が行われる。そして、官民ファンドの業務終了後に、政府出資等の額に剰余金等のうち国に帰属する分を加えた額が、官民ファンド運営法人の残余財産の分配等により国庫納付されることになる。一方、損失が利益を上回って繰り越されていた場合には、剰余金等がマイナスとなり、そのうち国に帰属する分を政府出資等の額から減額した額が国庫納付されることになり、その減額が配当等を上回る場合には、国が政府出資等の額を全額は回収できない事態等が生ずることになる。

このように、官民ファンド運営法人の損失によって国が政府出資等の額を全額は回収できない事態等が生じないように、官民ファンドの業務が実施されているかなどを把握するためには、各官民ファンド運営法人が作成している財務諸表等や兼業法人における官民ファンドの業務とそれ以外の業務との区分経理等の状況を踏まえる必要がある。そこで、各官民ファンド運営法人における財務諸表等の作成や区分経理等の状況をみると、次のとおりである。

(ア) 財務諸表等の作成、監査等の状況

官民ファンド運営法人は、組織形態に応じて適用される法令等に基づき、財務諸表等を作成し、監査役等による監査等を経て開示している。

官民ファンド運営法人に適用される財務諸表等に関する主な法令等並びに官民ファンド運営法人が作成している主な財務諸表等及びそれらの監査等の状況を組織形態別にみると、次のとおりである(図表3-1参照)。

政府出資株式会社8法人は、会社法に基づき、会社計算規則(平成18年法務省令第13号)及び企業会計原則等に準拠した財務諸表等を作成している。また、独立行政法人2法人は、独法通則法に基づき、「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」」(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定)等に準拠して、国立大学法人4法人は、国立大学法人法に基づき、国立大学法人会計基準(平成16年文部科学省告示第37号)及び国立大学法人会計基準注解(平成15年3月国立大学法人会計基準等検討会議報告)等に準拠して、それぞれ財務諸表等を作成している。さらに、基金設置法人2法人は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(平成18年法律第48号)に基づき、公益法人会計基準(昭和52年公益法人監督事務連絡協議会)等に準拠して財務諸表等を作成している。なお、基金設置法人2法人は、損益計算書に代えて、正味財産増減計算書を作成している。

監査役又は監事による財務諸表等に対する監査は、会社法、独法通則法、国立大学法人法及び「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づき、全官民ファンド運営法人16法人で行われている。また、外部の独立した会計監査人による監査は、政府出資株式会社8法人においては会社法に基づき、独立行政法人2法人においては独法通則法に基づき、国立大学法人4法人においては国立大学法人法に基づき、それぞれ行われている。基金設置法人2法人は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」において会計監査人の設置が義務付けられている負債合計200億円以上の「大規模一般社団法人」に該当しないものの、一般社団法人環境不動産普及促進機構は、会計監査人の設置等に関する事項を定款に定めて会計監査人による監査を受けており、また、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構は、上記の事項を定款、諸規程等に定めていないが、任意で公認会計士による監査を受けている。

また、株式会社地域経済活性化支援機構は設置根拠法に基づき、独立行政法人2法人は独法通則法に基づき、国立大学法人4法人は国立大学法人法に基づき、それぞれ毎事業年度の終了後3か月以内に財務諸表等を主務大臣に提出して、その承認を受けなければならないこととなっている。

図表3-1 官民ファンド運営法人に適用される財務諸表等に関する主な法令等並びに作成している主な財務諸表等及び財務諸表等に対する監査等の状況(平成28年度)

区分 官民ファンド運営法人 財務諸表等に関する主な法令及び適用している会計基準 作成している主な財務諸表等 財務諸表等に対する監査 主務大臣による財務諸表等の承認
貸借対照表 損益計算書 正味財産増減計算書 監査役又は監事による監査 会計監査人による監査
政府出資株式会社8法人 株式会社産業革新機構 会社法
会社計算規則
企業会計原則等
   
株式会社地域経済活性化支援機構  
株式会社農林漁業成長産業化支援機構    
株式会社民間資金等活用事業推進機構    
株式会社海外需要開拓支援機構    
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構    
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構    
株式会社日本政策投資銀行    
独立行政法人2法人 独立行政法人中小企業基盤整備機構 独法通則法
独立行政法人会計基準及び独立行政法人会計基準注解等
 
国立研究開発法人科学技術振興機構  
国立大学法人4法人 国立大学法人東北大学 国立大学法人法
国立大学法人会計基準及び国立大学法人会計基準注解等
 
国立大学法人東京大学  
国立大学法人京都大学  
国立大学法人大阪大学  
基金設置法人2法人 一般社団法人環境不動産普及促進機構 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
公益法人会計基準等
   
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構(注)      
(注)
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構は、会計監査人の設置等に関する事項を定款等に定めていないが、任意で公認会計士による監査を受けている。
(イ) 財務諸表等における官民ファンドの業務の区分経理等の状況

官民ファンド運営法人には、1(2)のとおり、ファンド専業法人と兼業法人とがあり、ファンド専業法人の財務諸表等はそのまま官民ファンドの業務の財務状況を示しているが、兼業法人の財務諸表等は官民ファンドの業務とそれ以外の業務との区分経理の有無や区分経理等の方法によって把握できる情報が異なっている。区分経理を行い官民ファンドの業務の損益計算書又は正味財産増減計算書を作成している兼業法人については官民ファンドの業務に係る損益の状況を、同様に官民ファンドの業務の貸借対照表を作成している兼業法人については官民ファンドの業務に係る資産、負債及び純資産の状況を、それぞれ法人全体の状況と分けて把握することができる。また、区分経理を行っていないが、官民ファンドの業務についてセグメント区分を設けている兼業法人については、官民ファンドの業務に係る一部の財務情報を把握することができる。各官民ファンド運営法人における28年度の官民ファンドの業務に係る区分経理等の状況を組織形態別にみると、次のとおりである(図表3-2参照)。

a 政府出資株式会社8法人

政府出資株式会社8法人のうち株式会社日本政策投資銀行を除く7法人は、いずれもファンド専業法人であり、法人の財務諸表等がそのまま官民ファンドの業務の財務状況を示している。

一方、兼業法人である株式会社日本政策投資銀行は、競争力強化ファンドについては財政投融資特別会計(投資勘定)の貸付金に係る利息として累積利益の一定額を国庫納付するために利益相当額を計算する必要があるため、また、特定投資業務については株式会社日本政策投資銀行法附則第2条の19の規定により「特定投資業務に係る業務別収支計算書(単体)」として損益計算書の計数を公表することが求められているため、それぞれ損益計算の区分経理を行っている。なお、両官民ファンドに係る経費等については、法人全体の経費等の額を関連する資産額により案分するなどして計上している。

b 独立行政法人2法人

独立行政法人2法人は兼業法人であり、設置根拠法で定められた勘定ごとに財務諸表等を作成している。官民ファンドの業務については、2法人ともに一般勘定において他の業務とまとめて経理しており、財務諸表等において区分経理を行うこととなっていない。また、附属明細書のセグメント情報にも、出資事業等のセグメント区分を設けていない。

c 国立大学法人4法人

国立大学法人4法人は、全ての業務をまとめて法人全体の財務諸表等を作成しており、区分経理を行っていないが、26年度から附属明細書のセグメント情報に出資事業等のセグメント区分を設けており、官民イノベーションプログラムに関する業務収益、業務費用及び業務損益(損益計算書の経常損益に相当する。)並びに出資事業等に帰属する資産(以下「帰属資産」という。)を公表している。ただし、「国立大学法人会計基準」によると、官民イノベーションプログラムで取得する対象事業者の株式等の有価証券に係る損益相当額は、国立大学法人の損益計算書上の費用及び収益には計上せずに資本剰余金を直接増減することとなっている。このため、国立大学法人4法人は、貸借対照表の資本剰余金の増減項目である「損益外有価証券損益累計額」に当該有価証券に関する損益累計額を計上しており、当該年度に帰属する損益相当額については、セグメント情報の注記に「損益外有価証券損益相当額」として記載している。

また、官民イノベーションプログラムの財源として受け入れた政府出資金であっても、出資等に充てることなく保有している現預金については、セグメント情報において法人共通のセグメントに帰属する資産としており、出資事業等セグメントの帰属資産に含めていない。

d 基金設置法人2法人

基金設置法人2法人は兼業法人であり、耐震・環境不動産形成促進事業実施要領(平成25年国土動整第26号)等及び地域低炭素化出資事業実施要領(平成25年環政経発第1306052号)に従い、法人全体の財務諸表等のほかに官民ファンドの業務に係る特別の勘定を設けて、他の業務に係る経理と区分して経理を行い、貸借対照表及び正味財産増減計算書等の官民ファンドの業務に係る内訳表を作成している。

図表3-2 官民ファンドの業務に係る区分経理等の状況(平成28年度)

区分 官民ファンド運営法人等 ファンド専業法人 兼業法人
法人の財務諸表等が官民ファンドの業務の財務状況を示す 官民ファンドの業務を区分経理等している法人   官民ファンドの業務を区分経理等していない法人
区分経理等の方法
ファンド専業法人 政府出資株式会社8法人 株式会社産業革新機構      
株式会社地域経済活性化支援機構      
株式会社農林漁業成長産業化支援機構      
株式会社民間資金等活用事業推進機構      
株式会社海外需要開拓支援機構      
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構      
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構      
兼業法人 株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド   競争力強化ファンドの損益計算書を作成  
特定投資業務   特定投資業務の損益計算書を作成  
独立行政法人2法人 独立行政法人中小企業基盤整備機構      
国立研究開発法人科学技術振興機構      
国立大学法人4法人 国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム   財務諸表等のセグメント情報において出資事業等セグメントを設定  
国立大学法人東京大学   財務諸表等のセグメント情報において出資事業等セグメントを設定  
国立大学法人京都大学   財務諸表等のセグメント情報において出資事業等セグメントを設定  
国立大学法人大阪大学   財務諸表等のセグメント情報において出資事業等セグメントを設定  
基金設置法人2法人 一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業   財務諸表等の内訳表において官民ファンドの業務(耐震・環境不動産形成促進事業)に係る区分(特別の勘定)を設定  
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業   財務諸表等の内訳表において官民ファンドの業務(地域低炭素投資促進ファンド事業)に係る区分(特別の勘定)を設定  

イ 官民ファンドの業務に係る財務の状況

ア(イ)のとおり、官民ファンド運営法人16法人のうち独立行政法人2法人を除く14法人は、官民ファンドの業務に係る収益及び費用(国立大学法人4法人についてはセグメント情報の出資事業等セグメントの業務収益、業務費用及び損益外有価証券損益相当額。以下同じ。)が把握可能であり、当該14法人のうち株式会社日本政策投資銀行を除く13法人は、資産、負債及び純資産(国立大学法人4法人についてはセグメント情報の出資事業等セグメントの帰属資産及び貸借対照表の損益外有価証券損益累計額。以下同じ。)が把握可能である。そこで、これらの法人の官民ファンドの業務に係る財務の状況をみると、次のとおりである。

(ア) 官民ファンドの業務に係る利益又は損失の推移

24年度から28年度までの官民ファンドの業務に係る利益又は損失の推移は、図表3-3のとおりである。なお、国立大学法人4法人の官民ファンドの業務の多くは認定子会社が行っているが、出資事業等セグメントの業務損益にはその損益を含んでおらず、また、同セグメントに係る経費には運営費交付金等が充てられるため、実質的に損失は発生しないことから、図表3-3では、出資事業等セグメントの業務損益ではなく損益外有価証券損益相当額を官民ファンドの業務に係る利益又は損失とみなして分析を行っている。また、基金設置法人2法人においては、政府出資等としている国庫補助金を収益から除外して損益を把握するため、正味財産増減計算書の当期一般正味財産増減額及び当期指定正味財産増減額の合計額から受取補助金等(受取補助金から国庫補助金返還額を控除した額)を控除した額を官民ファンドの業務に係る利益又は損失とみなして分析を行っている。

24年度以降に官民ファンドの業務を開始した12法人(図表3-3の官民ファンド運営法人等の欄の下線を付した法人)は官民ファンドの業務開始から5年以内であり、財務状況等の評価を行うには早い段階であるものの、その利益又は損失の推移をみると、株式会社日本政策投資銀行が各年度に利益を計上していたが、それ以外の11法人は、おおむね各年度に損失を計上している。

株式会社日本政策投資銀行は、早い段階で各年度に利益を計上できた理由について、官民ファンドの業務開始以前から行っているファンド業務の延長として官民ファンドの業務を行っており、支援先に大企業が多いことなどによるとしている。一方、官民ファンドの業務開始からの期間が短いその他の官民ファンド運営法人で損失を計上しているものが多いのは、主として官民ファンドの業務は支援を行ってから回収までに相当の期間を要するため、事業を開始した当初は株式売却等に伴う収入がない一方で、法人の運営に係る事務費等が先行して必要となることによると考えられる。今後、支援が成功して、対象事業者からの配当や取得価額を上回る額での株式売却等により費用を上回る十分な収益が計上された場合には、その事業年度で利益が計上されることになる。

また、23年度以前から官民ファンドの業務を開始している株式会社産業革新機構及び株式会社地域経済活性化支援機構については、利益を計上した年度と損失を計上した年度が混在しており、利益又は損失を計上した理由についてみると、それぞれ次のとおりである。

株式会社産業革新機構は25年度に362億余円、株式会社地域経済活性化支援機構は24年度に1784億余円、26年度に123億余円と多額の利益を上げている。これは、株式会社産業革新機構の場合は、25年度に株式会社ジャパンディスプレイの株式の一部を売却したこと、また、株式会社地域経済活性化支援機構の場合は、24年度に日本航空株式会社の株式を売却したことや26年度に他の再生支援対象事業者の支援を終了したことに伴い株式を売却したことがその要因となっているなど、いずれも、特定の出資案件に係る株式の売却や支援の終了等によるものである。また、株式会社産業革新機構は、27年度に477億余円の損失を計上しているが、これは支援継続中の対象事業者について、時価の下落に伴う有価証券の減損処理を行い、損失を603億余円計上したことによるものである。

このように、両法人においては、支援を終了した案件で実現した利益又は損失や支援継続中の減損処理の有無等により、年度ごとの損益が大きく増減している。

図表3-3 官民ファンドの業務に係る利益又は損失の推移(平成24年度~28年度)

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人等 設置日等 平成
24年度
25年度 26年度 27年度 28年度
株式会社産業革新機構 21年7月17日 △9,794 36,216 △8,347 △47,715 1,349 △28,292
株式会社地域経済活性化支援機構 21年10月14日 178,433 △1,088 12,369 △4,715 △5,325 179,673
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 25年1月23日 △119 △727 △1,004 △1,165 △1,530 △4,547
株式会社民間資金等活用事業推進機構 25年10月7日 △244 △528 △281 66 △988
株式会社海外需要開拓支援機構 25年11月8日 △567 △1,537 △1,490 △2,255 △5,850
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 26年10月20日 △286 △1,121 △1,328 △2,736
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 27年11月25日 △182 △543 △725
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 25年3月12日
(事業開始日)
0 371 346 200 9,377 10,296
特定投資業務 27年6月29日
(事業開始日)
618 1,194 1,813
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム 27年2月23日 △11 △130 △198 △340
国立大学法人東京大学 28年1月21日 - △22 △184 △206
国立大学法人京都大学 26年12月22日 △19 19 △375 △375
国立大学法人大阪大学 26年12月22日 △18 △136 △238 △393
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 25年3月29日 △246 △224 △35 △112 △619
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 25年6月20日 △115 △258 △322 △284 △981
注(1)
国立大学法人4法人は、セグメント情報に注記されている損益外有価証券損益相当額を官民ファンドの業務に係る損益とみなして記載している。なお、図表3-4では損益外有価証券損益相当額をサブファンド関連費用とみなして記載している。
注(2)
一般社団法人環境不動産普及促進機構は耐震・環境不動産形成促進事業、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構は地域低炭素投資促進ファンド事業に関する正味財産増減計算書の当期一般正味財産増減額及び当期指定正味財産増減額の合計額から受取補助金等(受取国庫補助金から国庫補助金返還額を控除した額)を控除した額を官民ファンドの業務に係る損益とみなして記載している。
注(3)
株式会社地域経済活性化支援機構の設置日等は、前身の法人である株式会社企業再生支援機構の設立日を、国立大学法人4法人の設置日等は、認定子会社の設立日を記載している。
注(4)
独立行政法人2法人は区分経理を行うこととなっておらず、利益又は損失の把握ができないため記載していない。
注(5)
設置日等より前の年度(国立大学法人4法人はセグメント情報開示前の年度)は斜線を引いている。
注(6)
官民ファンド運営法人等の欄の下線を付した法人は、平成24年度以降に官民ファンドの業務を開始した法人である。
(イ) 官民ファンドの業務に係る収益及び費用等の状況
a 官民ファンドの業務に係る収益及び費用の状況

図表3-3の官民ファンド運営法人14法人における28年度の官民ファンドの業務に係る収益及び費用の状況は、図表3-4のとおりである。なお、直接支援では、支援に伴い取得した株式等の有価証券の売却額を売上とし、売却した有価証券の帳簿価額を売上原価としている法人もあるが、図表3-4では横断的な比較のために有価証券の売却額と帳簿価額との差額を有価証券売却益又は有価証券売却損とする表示方法に統一している。一方、間接支援では、官民ファンド運営法人が出資したサブファンドから対象事業者に対する出資等を行い、その対象事業者に対する出資等から生じた損益やサブファンドの運営に要した経費等を出資割合に応じて官民ファンド運営法人が収益及び費用に計上することになっている。官民ファンド運営法人の間接支援に係る収益及び費用の決算上の表示に関しては様々な方法が認められているが、図表3-4では横断的な比較のために全サブファンドの収益及び費用の差額をサブファンド関連収益又はサブファンド関連費用とする表示方法に統一している。

官民ファンドの業務に係る収益を10億円を超えて計上している官民ファンド運営法人は、株式会社産業革新機構及び株式会社日本政策投資銀行の2法人となっており、残りの12法人は収益が10億円を下回っている。

一方、10億円を超える費用を計上している官民ファンド運営法人は、10億円を超える収益を計上している上記2法人のほか、株式会社地域経済活性化支援機構、株式会社農林漁業成長産業化支援機構、株式会社海外需要開拓支援機構及び株式会社海外交通・都市開発事業支援機構の計6法人となっている。

そして、28年度に利益を計上している官民ファンド運営法人は、株式会社産業革新機構、株式会社民間資金等活用事業推進機構及び株式会社日本政策投資銀行であり、これらの3法人は、収益のうち、有価証券売却益、サブファンド関連収益、受取配当金及び受取利息が比較的多額に上っていることにより収益が費用を上回っているが、残り11法人はこれらの収益が少ない一方で、事務費等が恒常的に発生することにより損失が生じている。なお、支援継続中に対象事業者の経営状況が事業計画等から外れ、財務状況の悪化により、有価証券の持分相当額等の実質価額が、取得価額の50%を下回るなど著しく低下した場合に、実質価額の回復可能性が見込めなければ、官民ファンド運営法人は減損処理を行い、有価証券評価損を計上する。また、有価証券の実質価額が著しく低下している状況には至っていないものの、ある程度低下した場合や、著しい低下であっても回復可能性が見込めると判断した場合に、投資損失引当金を計上している法人もある。株式会社産業革新機構は投資損失引当金戻入額を128億余円計上(図表3-4では、投資損失引当金繰入額の欄に△128億余円と表示)しているが、これは、過年度に同引当金を計上した対象事業者の財務状況が改善したとして、同引当金を取り崩して当該有価証券の評価額を引き上げたことによる。

図表3-4 官民ファンドの業務に係る収益及び費用の状況(平成28年度)

(単位:百万円)  
官民ファンド運営法人等 収益
有価証券売却益 サブファンド関連収益 受取配当金 受取利息(貸付金) 受取利息(社債) その他の収益
株式会社産業革新機構 821 - 1,746 340 - 1,316 4,224
株式会社地域経済活性化支援機構 - - - 46 40 551 637
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 - - - 5 - 175 180
株式会社民間資金等活用事業推進機構 - - - 462 81 9 553
株式会社海外需要開拓支援機構 - - 3 - - 13 17
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 - - - - - 1 1
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 - - - 0 - 0 0
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 12,497 455 22 310 - 538 13,823
特定投資業務注(4) - - 1,149 873 2,023
国立大学法人東北大学注(2) 官民イノベーションプログラム - - - - - 41 41
国立大学法人東京大学注(2) - - - - - 20 20
国立大学法人京都大学注(2) - - - - - 14 14
国立大学法人大阪大学注(2) - - - - - 40 40
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 - 137 - - - 3 140
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 35 - 10 - - 1 47
官民ファンド運営法人等 費用 利益又は損失
投資損失等 諸経費
有価証券売却損 サブファンド関連費用 有価証券評価損 投資損失引当金繰入額 貸倒引当金繰入額 事務費 特別損失、法人税等のその他の費用
株式会社産業革新機構 - 1,764 6,056 △12,880 - 4,431 3,503 2,875 1,349
株式会社地域経済活性化支援機構 - 570 - - - 5,380 10 5,962 △5,325
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 - 569 - - 49 926 166 1,711 △1,530
株式会社民間資金等活用事業推進機構 - - - - - 468 18 487 66
株式会社海外需要開拓支援機構注(4) 464 - - - 1,736 72 2,272 △2,255
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 - - - - - 1,299 30 1,330 △1,328
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 - - - - - 492 51 543 △543
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド - - - - - 261 4,184 4,446 9,377
特定投資業務 - 50 - - - 260 517 828 1,194
国立大学法人東北大学注(2) 官民イノベーションプログラム - 198 - - - 188 - 386 △344
国立大学法人東京大学注(2) - 184 - - - 20 - 205 △184
国立大学法人京都大学注(2) - 375 - - - 116 - 491 △477
国立大学法人大阪大学注(2) - 238 - - - 53 - 292 △251
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 - - - - - 252 - 252 △112
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 - 14 - - - 317 - 332 △284
注(1)
サブファンド関連収益及びサブファンド関連費用は、サブファンドへの出資に関する評価損益及び分配金である(国立大学法人4法人を除く。)。
注(2)
国立大学法人4法人は、セグメント情報に注記されている損益外有価証券損益相当額をサブファンド関連費用とみなして記載している。また、その他の収益及び事務費には、セグメント情報における出資事業等セグメントの業務収益及び業務費用を記載している。
注(3)
一般社団法人環境不動産普及促進機構は耐震・環境不動産形成促進事業、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構は地域低炭素投資促進ファンド事業に関する正味財産増減計算書の当期一般正味財産増減額及び当期指定正味財産増減額のうち受取国庫補助金及び国庫補助金返納額以外の収益及び費用を記載している。
注(4)
株式会社日本政策投資銀行の特定投資業務の受取配当金、受取利息(貸付金)及び受取利息(社債)は個別に把握できないため、まとめて記載している。また、株式会社海外需要開拓支援機構の有価証券売却損は、支援を終了した直接支援の1件に係るものであり、記載することにより特定の支援案件の収支が明らかになるため、サブファンド関連費用とまとめて記載している。
注(5)
平成24年度から28年度までの官民ファンドの業務に係る収益及び費用の状況は別表1参照
b 官民ファンドの業務に係る事務費等の状況

官民ファンド運営法人の費用の構成をみると、国立大学法人4法人以外の官民ファンド運営法人については、事務費及び特別損失、法人税等のその他の費用(以下、これらを合わせて「諸経費」という。)が費用の大半を占めている。国立大学法人4法人については、官民ファンドの業務の多くを認定子会社が行っており、認定子会社の費用は、投資事業有限責任組合契約でGPへの管理報酬で賄われることになっていて、当該報酬はサブファンドの運営に要した経費として図表3-4のサブファンド関連費用(国立大学法人の決算上は損益外有価証券損益相当額)に含まれることから、サブファンド関連費用が多く、事務費(国立大学法人のセグメント情報における出資事業等セグメントの業務費用)は比較的少なくなっている。

28年度の官民ファンドの業務に係る事務費の内訳は、図表3-5のとおりであり、事務費の内訳が区分できる13法人中11法人(図表3-5の官民ファンド運営法人欄の下線を付した法人)において、人件費が最も多額の費用項目となっている。

人件費の計上額が最も多い官民ファンド運営法人は、36億余円を計上している株式会社地域経済活性化支援機構である。官民ファンド運営法人の職員数は法人によって様々であるが、同機構は、官民ファンドの業務の一環として、事業再生等の各業務で蓄積されたノウハウを地域金融機関に移転するなどの業務のために高度な専門能力を有した多くの人材を雇用する必要があるとしており(同機構の職員数については、図表2-3参照)、そのため、他の法人と比べて職員数が多くなっている。同機構の人件費を資産規模との対比でみても、図表3-6のとおり、資産10億円当たりの人件費が3123万余円と13法人から国立大学法人4法人を除いた9法人の平均(630万余円)と比べて多くなっている。

次に人件費の計上額が多い官民ファンド運営法人は、18億余円を計上している株式会社産業革新機構であるが、図表3-6のとおり、資産10億円当たりの人件費は181万余円と9法人の平均(630万余円)と比べて少なくなっており、資産規模との対比でみると比較的少額となっている。

資産10億円当たりの人件費は、図表3-6のとおり、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構が3807万余円と最も多く、資産規模との対比でみると最も多額となっている。同機構は27年度に設立された法人であり、27、28両年度財政投融資特別会計(投資勘定)の当初予算においてそれぞれ200億円が計上されていたものの、28年度末までの政府出資金は官民ファンドの業務の原資として受け入れた18億余円及び31億余円の計50億余円にとどまっていた。一方、28年度末の職員数は、今後の実支援に伴う資産規模の拡大を前提にした職員数となっており、このことが同機構の資産10億円当たりの人件費が多い主な要因となっていると考えられる。

図表3-5 官民ファンドの業務に係る事務費の内訳(平成28年度)

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人 人件費
注(1)
旅費交通費 デューデリジェンス費用 委託費・支払報酬・手数料
(デューデリジェンス費用以外)
地代家賃 租税公課(法人事業税(資本割)、消費税、事業所税等) 減価償却費 その他の費用
株式会社産業革新機構 1,828 193 471 119 532 1,023 66 196 4,431
株式会社地域経済活性化支援機構 3,666 328 333 269 351 53 89 288 5,380
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 552 36 1 56 81 117 8 72 926
株式会社民間資金等活用事業推進機構 263 4 1 26 50 85 6 29 468
株式会社海外需要開拓支援機構 946 81 50 53 180 285 45 93 1,736
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 599 107 153 88 106 99 29 115 1,299
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 258 30 7 22 30 41 13 89 492
国立大学法人東北大学 95 9 - 31 - - 16 35 188
国立大学法人東京大学 19 0 - 0 - 0 - 0 20
国立大学法人京都大学 21 5 2 65 - - 3 16 116
国立大学法人大阪大学 39 1 - 2 3 - 5 1 53
一般社団法人環境不動産普及促進機構 77 1 33 109 10 0 12 7 252
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 170 10 40 47 32 2 0 14 317
注(1)
人件費には法定福利費等が含まれている。
注(2)
株式会社日本政策投資銀行は、事務費の内訳を区分していないため、本図表に記載していない。
注(3)
官民ファンド運営法人欄の下線を付した法人は、人件費が最も多額の費用項目となっている法人である。

図表3-6 官民ファンド運営法人の資産10億円当たりの人件費(平成28年度)

(単位:千円)
官民ファンド運営法人 人件費総額(A) 総資産額(B)
注(1)
資産10億円当たりの人件費
(C)=(A)/(B)×1,000,000
株式会社産業革新機構 1,828,144 1,005,340,990 1,818
株式会社地域経済活性化支援機構 3,666,361 117,392,268 31,231
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 552,826 27,504,636 20,099
株式会社民間資金等活用事業推進機構 263,664 39,098,461 6,743
株式会社海外需要開拓支援機構 946,461 64,665,030 14,636
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 599,179 22,460,918 26,676
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 258,351 6,785,479 38,074
国立大学法人東北大学 95,542
国立大学法人東京大学 19,640
国立大学法人京都大学 21,602
国立大学法人大阪大学 39,113
一般社団法人環境不動産普及促進機構 77,788 29,405,483 2,645
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 170,457 13,530,886 12,597
計(平均)注(2) 8,539,134 1,326,184,154 6,306

図表3-6 官民ファンド運営法人の資産10億円当たりの人件費 画像

注(1)
総資産額は、図表3-8の資産の合計からその他有価証券評価差額金を控除した額を記載している。また、国立大学法人4法人については、官民イノベーションプログラムに係る政府出資金として受け入れた現預金残高が総資産額(帰属資産)に含まれておらず、他の法人と比較できないため記載していない。
注(2)
計(平均)に記載している「資産10億円当たりの人件費」は、国立大学法人4法人を除いた9法人で算出している。

また、人件費の次に多額の費用項目となっている租税公課(法人事業税(資本割)、消費税、事業所税等)についてみると、図表3-5のとおり、株式会社産業革新機構は10億余円、株式会社農林漁業成長産業化支援機構は1億余円、株式会社海外需要開拓支援機構は2億余円と多額の租税公課を計上している法人がある一方で、国立大学法人4法人及び基金設置法人2法人は、租税公課をほとんど計上していないなど、法人によって計上額の差が大きくなっている。そして、租税公課の計上額の内訳をみると、ほとんどが法人事業税(資本割)であった。法人事業税(資本割)は、地方税法(昭和25年法律第226号)に定められた「資本金等の額」が1億円を超える法人が「資本金等の額」に税率を乗じて算定した額を事務所や事業所を設けた場所の都道府県に納税するものであるが、法人事業税(資本割)の各法人の課税状況等は、図表3-7のとおりであり、法人の組織形態等によって非課税であったり、軽減措置が講ぜられたりしているため、法人によって計上額の差が大きくなっている。

図表3-7 官民ファンド運営法人の法人事業税(資本割)の課税状況(平成28年度)

官民ファンド運営法人 法人事業税(資本割)の課税の有無 平成28年度税負担軽減措置の有無 税負担軽減措置等の根拠法令 税負担軽減措置等の内容
株式会社産業革新機構
株式会社地域経済活性化支援機構 地方税法附則第9条第11項 課税対象となる「資本金等の額」を20億円とすることで、1年当たり約1億1千万円の税負担が軽減されている。注(2)
株式会社農林漁業成長産業化支援機構
株式会社民間資金等活用事業推進機構 地方税法附則第9条第20項により、29年4月1日から34年3月31日の間に開始される事業年度について税負担軽減措置が行われることとなっている。このため、同期間に課税対象となる「資本金等の額」は20億円とされ、1年当たり約9500万円の税負担が軽減される見込みである。注(2)
株式会社海外需要開拓支援機構
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構
株式会社日本政策投資銀行 注(1)
独立行政法人中小企業基盤整備機構 地方税法第72条の2 法人事業税(資本割)は非課税となっている。
国立研究開発法人科学技術振興機構
国立大学法人東北大学
国立大学法人東京大学
国立大学法人京都大学
国立大学法人大阪大学
一般社団法人環境不動産普及促進機構
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構
注(1)
株式会社日本政策投資銀行は、平成20年に株式会社化されてから25年度末まで法人事業税(資本割)を一定割合控除する特例措置が認められていた。
注(2)
税負担の軽減額は、東京都における平成28年度の税率(0.525%)を用いて算定している。
(ウ) 官民ファンドの業務に係る資産、負債及び純資産の状況等

官民ファンドの業務に係る資産、負債及び純資産が把握可能な官民ファンド運営法人13法人(全16法人から株式会社日本政策投資銀行及び独立行政法人2法人を除いた13法人)の官民ファンドの業務に係る28年度末の資産、負債及び純資産の状況は、図表3-8のとおりである。

図表3-8 官民ファンドの業務に係る資産、負債及び純資産の状況(平成28年度末)

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人 資産
支援に伴い取得した資産 その他の資産 合計
株式及び出資金 貸付金 社債 その他の営業資産
株式会社産業革新機構 1,700,222 30,000 45,052 - 1,775,274 76,883 1,852,157
株式会社地域経済活性化支援機構 12,341 2,913 1,000 - 16,254 101,179 117,434
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 4,168 1,122 - - 5,291 22,213 27,504
株式会社民間資金等活用事業推進機構 1,901 24,478 1,260 - 27,639 11,459 39,098
株式会社海外需要開拓支援機構注(1) 32,033 - - - 32,033 33,878 65,911
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 10,841 - - - 10,841 11,601 22,442
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 1,200 100 - - 1,300 5,485 6,785
国立大学法人東北大学注(2) 2,169 - - - 2,169 62 2,232
国立大学法人東京大学注(2) 778 - - - 778 - 778
国立大学法人京都大学注(2) 2,193 - - - 2,193 32 2,226
国立大学法人大阪大学注(2) 2,676 - - - 2,676 29 2,705
一般社団法人環境不動産普及促進機構 6,378 - - - 6,378 23,027 29,405
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 2,747 - - 684 3,431 10,099 13,530
官民ファンド運営法人 負債計 純資産
資本金等 損益外有価証券損益累計額 繰越利益剰余金等 その他有価証券評価差額金
政府出資等 民間出資
株式会社産業革新機構 751,232 286,000 14,010 - △45,901 846,816 1,100,925
株式会社地域経済活性化支援機構 1,373 15,925 10,159 - 89,933 42 116,061
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 149 30,000 1,902 - △4,547 - 27,354
株式会社民間資金等活用事業推進機構 20,086 10,000 10,000 - △988 - 19,011
株式会社海外需要開拓支援機構 1,215 58,600 10,700 - △5,850 1,246 64,695
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 252 19,000 5,945 - △2,736 △18 22,190
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 104 5,022 2,385 - △725 - 6,681
国立大学法人東北大学注(2) 12,500 - △340 △136 - 12,023
国立大学法人東京大学注(2) 41,700 - △206 19 - 41,513
国立大学法人京都大学注(2) 29,200 - △375 △101 - 28,722
国立大学法人大阪大学注(2) 16,600 - △393 14 - 16,221
一般社団法人環境不動産普及促進機構 24 30,000 - - △619 - 29,380
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 46 14,465 - - △981 - 13,484
注(1)
株式会社海外需要開拓支援機構においては、社債の引受けを行った支援先が1件のみであり、社債の貸借対照表計上額(個別引当金控除後)を記載することにより特定の支援先の財務状況等が明らかになるため、社債は株式及び出資金に含めて記載している。
注(2)
国立大学法人4法人においては、資産には出資事業等セグメントの帰属資産を、繰越利益剰余金等には出資事業等セグメントの業務損益の累計額に各法人が把握している平成25年度以前の損益を加減した額を記載している。負債計はセグメント情報等で開示されていないため斜線を引いている。
注(3)
基金設置法人2法人においては、政府出資等には国庫補助金の受取累計額から返還累計額を控除した純額を記載している。繰越利益剰余金等には当期一般正味財産増減額及び当期指定正味財産増減額の累計額から政府出資等を控除した額を記載している。
注(4)
株式会社日本政策投資銀行の競争力強化ファンド及び特定投資業務並びに独立行政法人2法人については、官民ファンドの業務に係る資産、負債及び純資産が把握できないため、本図表には含めていない。
注(5)
官民ファンド運営法人欄の下線を付した法人は、支援に伴い取得した資産の計より、その他の資産の計上額が多い法人である。
注(6)
平成24年度末から28年度末までの官民ファンドの業務に係る資産、負債及び純資産の状況は別表2参照
a 資産

官民ファンド運営法人の資産を、支援に伴い取得した資産とその他の資産に区分してみたところ、7法人(図表3-8の官民ファンド運営法人欄の下線を付した法人)は、支援に伴い取得した資産に比べて、その他の資産の計上額が多くなっている。その他の資産には、官民ファンドの業務での支援に充てていない現預金等が含まれている。

上記7法人のうち、株式会社地域経済活性化支援機構は、事業を開始した21年度から28年度までに計上した利益により繰越利益剰余金を899億余円計上している。そして、その他の資産には、この繰越利益剰余金に相当する現預金等が含まれているため、その他の資産1011億余円は資本金等260億余円を上回っている。会計検査院は、このことについて、平成26年度決算検査報告に特定検査対象に関する検査状況として「株式会社地域経済活性化支援機構による事業再生支援業務の実施状況等について」を掲記して、その所見において、解散するまでの間に必要と見込まれる投融資額及び経常経費の額を適時に精査して、残余金が生ずることとなる場合には、当該残余金を国庫へ納付することなどを検討することなどを記述した。

一方、同機構を除く6法人については、官民ファンドの業務開始が24年度以降で支援を終了した案件がほとんどなく、繰越利益剰余金もないため、同機構とは異なり、その他の資産のほとんどが資本金等を原資としたものとなっている。

上記6法人のうち、基金設置法人2法人は、前年度の国庫補助金交付額のうち支援決定がなされなかった額を使用見込みの低い基金として国庫に納付するなどしている。一方、株式会社農林漁業成長産業化支援機構は、資本金等が319億余円であるが、支援約束額411億余円に対して実支援額が65億余円と、支援決定時に見込んだ支援は進んでおらず、その他の資産が多くなっている。株式会社海外需要開拓支援機構は、対象事業者に対する出資等の実績がないサブファンドがあることなどからその他の資産が多くなっているが、当該サブファンドにおいては、29年度に出資が実行されている。また、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構及び株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構はそれぞれ26年度及び27年度に設立されて、28年度末では実支援件数がそれぞれ5件及び1件と少ないが、29年度に新規の案件発掘を行ったり、28年度に支援約束を行った案件について29年度に支援を実行したりしている(官民ファンド運営法人における支援の実績については、(1)イ(ウ)支援の実績を参照)。

なお、国立大学法人4法人は、官民イノベーションプログラムの財源として受け入れた政府出資金のうち、出資に充てずに保有している現預金を出資事業等セグメントの帰属資産に含めていないため、当該現預金は図表3-8のその他の資産に含まれていない(国立大学法人4法人における政府出資金等の状況については、(1)エ 官民イノベーションプログラムにおける政府出資金等の状況を参照)。

b 純資産

官民ファンドの業務に係る資産、負債及び純資産が把握可能な官民ファンド運営法人13法人のうち国立大学法人4法人は損益外有価証券損益累計額がマイナスとなっており、国立大学法人4法人以外の9法人のうち株式会社地域経済活性化支援機構を除く8法人は繰越利益剰余金等(注8)がマイナスとなっている(以下、これらのマイナスを「繰越損失等」という。)。ただし、上記8法人のうち株式会社産業革新機構は、繰越損失等を上回る有価証券の含み益をその他有価証券評価差額金として計上したことにより、純資産の計が資本金等を上回っている。一方、上記13法人から株式会社産業革新機構及び株式会社地域経済活性化支援機構を除く11法人は、24年度以降に官民ファンドの業務を開始しており、当初は株式売却等に伴う収入がない一方で事務費等の支出は先行して必要となることなどから、28年度末の時点で純資産の計が資本金等を下回っている。

(注8)
繰越利益剰余金等  政府出資株式会社8法人のうち株式会社日本政策投資銀行を除く7法人においては貸借対照表の繰越利益剰余金、基金設置法人2法人においては毎年度の正味財産増減計算書の当期一般正味財産増減額及び当期指定正味財産増減額の累計額から政府出資等(国庫補助金の受取累計額から返還累計額を控除した純額)を控除した額

このような状況は、今後、支援が成功して対象事業者からの配当や取得価額を上回る額での株式売却等により十分な利益が計上された場合は徐々に解消されていくことになるが、仮に官民ファンドの業務終了時においても純資産の計が資本金等の額を下回っており、その下回った額以上の配当等がない場合は、国が政府出資等の額を全額は回収できない事態等が生ずることになる。

したがって、上記の官民ファンド運営法人11法人は、そのような事態に至ることを回避するために、繰越損失等を解消するまでの計画等を策定する必要がある。しかし、28年度末時点で、繰越損失等を解消するまでの計画等を策定している官民ファンド運営法人は、株式会社民間資金等活用事業推進機構及び一般社団法人グリーンファイナンス推進機構の2法人のみで、他の9法人は計画等を策定していない。

上記2法人のうち、株式会社民間資金等活用事業推進機構は、公表等はしていないが、融資契約の元利金回収計画等に基づいて繰越損失等を解消する損益計画を作成しており、28年度についてはおおむね計画どおりの実績となり、初めて単年度ベースで黒字に転換している。また、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構も、公表等はしていないが、37年度までの諸経費見込額及び28年度末時点の支援約束額に対する回収見込額を算出した上で、回収見込額によって支援約束額及び諸経費見込額を賄う計画を作成しており、28年度末の支援実績等と比較した進捗状況を把握している。

なお、株式会社農林漁業成長産業化支援機構は28年度末時点で計画等を策定していないが、幾つかの前提に基づいた複数の収支シミュレーションの試算は行っていた。そして、実支援額が同機構の中期経営計画と比較して十分とは言い難いことなどから、29年6月の第8回幹事会に同機構による試算を基に農林水産省食料産業局が提出した「農林漁業成長産業化支援機構における今後の収支の見通し及び新規業務等について」で、他の8法人に先駆けて、官民ファンドの業務終了までに見込まれる諸経費や目標支援額を設定し、投資額に対する回収額等の比率(以下「投資倍率」という。)を、諸経費を賄うために必要とする水準で算出し公表している。同機構が算出した官民ファンドの業務終了時(44年度末)までに必要とする投資倍率は約1.9倍(約190%)であるが、同機構は24年度に官民ファンドの業務を開始したところであり、28年度までの支援終了に伴う株式売却等の実績がいまだに少ないことなどから、同年度までの投資倍率の実績は83.6%となっている(図表3-9参照)。

そして、上記の「農林漁業成長産業化支援機構における今後の収支の見通し及び新規業務等について」を踏まえて、29年12月の第9回幹事会において、全ての官民ファンド運営法人16法人が、官民ファンドの業務終了時までの実投資額、回収額等、運営経費、同時期までに官民ファンドの業務の収支見通しがゼロ又はプラスとなる投資倍率等の見込みを報告しており、その内容が公表されている。その中で、株式会社農林漁業成長産業化支援機構は、改めて官民ファンドの業務終了時(44年度末)までの投資倍率を約1.6倍(約160%)と見込んでいる。

28年度末時点で繰越損失等が生じており、純資産の計が資本金等を下回っている官民ファンド運営法人は、最終的に国が政府出資等の額を回収できるように、繰越損失等を解消するまでの計画又は投資倍率等について目標としての妥当性を確保するために必要な見直しを継続的に行い、その目標の達成に向けて官民ファンドを運営し、進捗状況を的確に把握して、必要な施策を講じていく必要がある。

ウ 支援案件の損益等の状況

官民ファンド運営法人は、(1)ア(ア)のとおり、官民ファンドの業務に充てるための政府出資等7812億余円及び民間出資等2201億余円を受けており、受け入れた資金を原資に、対象事業者に対して支援を行っている。対象事業者に対する支援は、政策的必要性からリスクを取って運用するものであるが、一方で、国の資金であることにも十分配慮した運用を行い、収益性を確保することが求められている。28年度末時点は、官民ファンドの業務開始から間もなかったり、支援継続中の案件が多かったりするなど、損益の評価を行うには早い段階ではあるが、官民ファンドの支援案件の損益の状況をみると、次のとおりである。

なお、以下では、官民ファンドの業務の出資に係る損益の状況を網羅的に把握するために、国大ファンドをサブファンドとみなして、国立大学法人の官民ファンドの業務は間接支援として分析を行っている。

(ア) 支援案件の損益の状況

官民ファンドの業務開始から28年度末までの支援案件の損益は、図表3-9のとおりとなっている。支援継続中の案件については、保有有価証券評価額等を28年度末の時価等により算定しており、時価等は今後大きく増減する可能性があるため、確定した損益ではないが、官民ファンド運営法人16法人が運営する14官民ファンドから、支援の実績が直接支援1件のみである株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構を除いた15法人が運営する13官民ファンドの合計でみると、支援に伴う支出額が1兆9473億余円であるのに対して回収額と支援中の案件に係る保有有価証券評価額等の合計は3兆5416億余円となっていて、支出額を1兆5943億余円上回っている(投資倍率は181.8%)。また、官民ファンド単位でみると、9法人が運営する6官民ファンドにおいて、回収額と保有有価証券評価額等の合計が支援に伴う支出額を下回っており、損失となっている。

図表3-9 官民ファンドの業務開始から平成28年度までの官民ファンド別の支援案件の損益

(単位:件、百万円)
官民ファンド運営法人等 件数 支出額(A)
注(1)
  回収額等と支出額の差額
((B)+(C)-(A))
投資倍率
(((B)+(C))/(A))
回収額(B)
注(1)
平成28年度末保有有価証券評価額等(C)
注(2)
回収額等
(B)+(C)
株式会社産業革新機構 114 815,973 284,447 1,779,827 2,064,274 1,248,300 252.9%
株式会社地域経済活性化支援機構 81 505,682 833,587 15,416 849,004 343,322 167.8%
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 78 6,552 76 5,404 5,480 △1,072 83.6%
株式会社民間資金等活用事業推進機構 9 29,929 3,025 27,909 30,935 1,005 103.3%
株式会社海外需要開拓支援機構 17 31,031 669 25,902 26,572 △4,459 85.6%
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 5 10,859 - 9,018 9,018 △1,841 83.0%
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 1
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 12 127,897 93,101 49,406 142,508 14,611 111.4%
特定投資業務 29 145,278 1,692 144,791 146,484 1,205 100.8%
独立行政法人中小企業基盤整備機構 246 253,442 122,598 125,303 247,902 △5,540 97.8%
国立研究開発法人科学技術振興機構 12 904 - 619 619 △285 68.4%
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム 1 2,478 - 2,134 2,134 △343 86.1%
国立大学法人東京大学 1 894 - 688 688 △206 76.9%
国立大学法人京都大学 1 2,499 - 2,123 2,123 △375 84.9%
国立大学法人大阪大学 1 3,003 - 2,608 2,608 △394 86.8%
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 6 7,086 1,036 6,407 7,443 356 105.0%
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 20 3,855 439 3,446 3,886 30 100.7%
634 1,947,370 1,340,675 2,201,010 3,541,685 1,594,314 181.8%
注(1)
支出額には実支援額のほか、支払手数料等を含み、回収額には有価証券売却額、債権回収額のほか、受取配当金、受取利息等を含む。
注(2)
平成28年度末保有有価証券評価額等は、出資に伴い取得した有価証券については、時価があるものについては時価により、時価がないものについては出資先の28年度末純資産持分相当額による(優先株式や出資額での買取保証があるなどの場合は、当該条件を考慮した額としている。)。また、株式以外の資産については、貸借対照表計上額(個別引当金控除後)を評価額としている。
注(3)
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構は直接支援を行っている対象事業者が1件のみであり、記載することにより特定の対象事業者の財務状況等が明らかになるため、同機構の欄は斜線を引いており、集計から除いている。
注(4)
本図表は、図表3-11図表3-12を合計したものである。

官民ファンドの業務に係る支出には、支援に伴う支出(図表3-9の支出額)のほか、諸経費に係る支出がある。そして、イ(ウ)bのとおり、官民ファンド運営法人16法人が、官民ファンドの業務終了時までの官民ファンドの業務の収支見通しがゼロ又はプラスとなる投資倍率等の見込みを公表しており、各官民ファンド運営法人は、その見込みを達成すれば官民ファンドの業務終了時点で全ての支出を上回る額が回収されるなどとしている。そこで、損益の評価を行うには早い段階ではあるが、28年度末までの支援に伴う支出額に諸経費を加えた全ての支出額を回収するために必要な投資倍率(以下「必要投資倍率」という。)と28年度までの投資倍率の実績とを比較すると、次のとおりとなっている。

官民ファンド運営法人16法人から、支援の実績が直接支援1件のみである株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構並びに官民ファンドの業務に係る諸経費を運営費交付金で賄うことができる独立行政法人2法人及び国立大学法人4法人を除く9法人が運営する10官民ファンドを対象として、28年度末までの必要投資倍率((支援に伴う支出額+諸経費)÷支援に伴う支出額)をみたところ、図表3-10のとおり、支援に伴う支出額の159.9%から100.7%の額を回収する必要があるが、6法人(図表3-10の官民ファンド運営法人等欄の下線を付した法人)が運営する6官民ファンドは、投資倍率(28年度までの実績。(回収額+28年度末保有有価証券評価額等)÷支援に伴う支出額)が必要投資倍率を下回っている。

図表3-10 支援に伴う支出額及び平成24年度から28年度までの諸経費の回収に必要な額及び必要投資倍率の試算

(単位:百万円)
官民ファンド運営法人等 支援に伴う支出額(A)
注(1)
諸経費(平成24年度から28年度までの累計)(B) 支援額及び諸経費の回収に必要な額(C)=(A)+(B) 必要投資倍率
((C)/(A))
投資倍率(28年度までの実績)
注(1)
株式会社産業革新機構注(2) 518,097 61,153 579,250 111.8% 252.9%
株式会社地域経済活性化支援機構注(2) 459,422 150,131 609,553 132.6% 167.8%
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 6,552 3,928 10,480 159.9% 83.6%
株式会社民間資金等活用事業推進機構 29,929 1,784 31,714 105.9% 103.3%
株式会社海外需要開拓支援機構 31,031 5,459 36,491 117.5% 85.6%
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 10,859 2,749 13,609 125.3% 83.0%
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 127,897 5,858 133,755 104.5% 111.4%
特定投資業務 145,278 1,141 146,420 100.7% 100.8%
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 7,086 1,038 8,125 114.6% 105.0%
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 3,855 1,006 4,862 126.0% 100.7%
1,340,011 234,251 1,574,260 117.4% 195.0%
注(1)
支援に伴う支出額(注(2)を除く。)及び投資倍率(28年度までの実績)は、図表3-9の「支出額」及び「投資倍率」を記載している。
注(2)
株式会社産業革新機構及び株式会社地域経済活性化支援機構は平成23年度以前から支援を行っているが、両法人の支援に伴う支出額は24年度以降の支出額を集計している。ただし、株式会社地域経済活性化支援機構の諸経費の大部分は、日本航空株式会社株式の売却益等に係る法人税等(24年度)であり、支出額と諸経費を対応させるため、同株式の取得等に伴う支出は24年度以前であるが支援に伴う支出額に含めている。
注(3)
官民ファンド運営法人等の欄の下線を付した法人は、投資倍率(28年度までの実績)が必要投資倍率を下回っている法人である。

投資倍率は、対象事業者の経営状況や財務状況等が改善すれば上昇し、必要投資倍率は、支援額が増加したり、諸経費が減少したりすれば下落するなど、今後の状況によって変動するが、上記の6法人は、最終的に、投資倍率が必要投資倍率を上回るように官民ファンドを運営していく必要がある

(イ) 直接支援及び間接支援の損益及び支援先の分類別出資損益の状況

官民ファンドの業務開始から28年度までの直接支援及び間接支援の損益及び支援先別の損益の状況は、次のとおりとなっている。

a 直接支援

直接支援の実績がある官民ファンド運営法人10法人が運営する11官民ファンドのうち、直接支援が1件のみである株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構を除く9法人が運営する10官民ファンドの合計をみると、図表3-11のとおり、支援に伴う支出額が1兆6150億余円であるのに対して、回収額と28年度末保有有価証券評価額等の合計が3兆2192億余円となっており、支出額を1兆6042億余円上回っている。一方、官民ファンド単位でみると、10官民ファンド中4官民ファンドにおいて回収額と28年度末保有有価証券評価額等の合計が支援に伴う支出額を下回っており、損失となっている。支出額は、株式会社産業革新機構の7756億余円が最も多くなっているが、同機構の28年度末保有有価証券評価額等は1兆7415億余円と支出額を大きく上回っており、回収額2837億余円と合わせて1兆2495億余円の利益となっていて、10官民ファンドの利益計1兆6042億余円の大部分を占めている。

直接支援の内訳をみると、出資の支出額は1兆2375億余円で、回収額と28年度末保有有価証券評価額等の合計2兆8157億余円が支出額を上回って、1兆5782億余円の利益が生じており、直接支援の利益1兆6042億余円のほとんどを占めている。

また、貸付け、債権の買取り及び社債の引受けの支出額は3559億余円であり、回収額と貸付金等残高の合計が3819億余円と支出額を上回っており、計259億余円の利益が生じている。

その他の支援は、収益分配請求権及び信託受益権の取得といった出融資以外による支援であるが、支出額は215億余円であり、ほぼ同額が資産として貸借対照表に計上されており、僅かに利益が生じている。

図表3-11 官民ファンドの業務開始から平成28年度までの直接支援の損益の状況

(単位:件、百万円)
官民ファンド運営法人等 件数 支出額(A)
注(1)
  回収額等と支出額の差額
((B)+(C)-(A))
投資倍率
(((B)+(C))/(A))
回収額(B)
注(1)
平成28年度末保有有価証券評価額等(C)
注(2)
回収額等
(B)+(C)
株式会社産業革新機構 105 775,697 283,710 1,741,539 2,025,249 1,249,552 261.0%
株式会社地域経済活性化支援機構 41 495,313 832,972 6,666 839,639 344,326 169.5%
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 26 2,496 7 2,371 2,378 △117 95.3%
株式会社民間資金等活用事業推進機構 9 29,929 3,025 27,909 30,935 1,005 103.3%
株式会社海外需要開拓支援機構 14 29,802 669 24,778 25,447 △4,354 85.3%
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 5 10,859 - 9,018 9,018 △1,841 83.0%
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構注(3) 1
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 10 122,045 92,518 44,055 136,574 14,528 111.9%
特定投資業務 25 144,685 1,692 144,329 146,021 1,336 100.9%
独立行政法人中小企業基盤整備機構 0 - - - - - -
国立研究開発法人科学技術振興機構 12 904 - 619 619 △285 68.4%
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム 0 - - - - - -
国立大学法人東京大学 0 - - - - - -
国立大学法人京都大学 0 - - - - - -
国立大学法人大阪大学 0 - - - - - -
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 0 - - - - - -
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 16 3,283 436 2,909 3,345 62 101.8%
注(4) 264 1,615,017 1,215,033 2,004,197 3,219,230 1,604,213 199.3%
  うち、出資注(5) 194 1,237,510 1,036,863 1,778,888 2,815,751 1,578,240 227.5%
うち、貸付け、債権の買取り及び社債の引受け 91 355,991 178,166 203,796 381,962 25,970 107.2%
うち、その他の支援注(6) 5 21,514 3 21,513 21,516 1 100.0%
注(1)
支出額には実支援額のほか、支払手数料等を含み、回収額には有価証券売却額、債権回収額のほか、受取配当金、受取利息等を含む。
注(2)
平成28年度末保有有価証券評価額等は、出資に伴い取得した有価証券については、時価があるものについては時価により、時価がないものについては出資先の28年度末純資産持分相当額による(優先株式や出資額での買取保証があるなどの場合は、当該条件を考慮した額としている。)。また、株式以外の資産については、貸借対照表計上額(個別引当金控除後)を評価額としている。
注(3)
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構は、直接支援が1件のみであり、記載することにより特定の対象事業者の財務状況等が明らかになるため、同機構の欄には斜線を引いており、集計から除いている。
注(4)
件数計は、出資、貸付け、債権の買取り、社債の引受け及びその他の支援のそれぞれの件数から、重複する支援先の件数を除いたものである。
注(5)
当初は貸付け等による支援であったが、資本に転換されたものについては出資(直接支援)としている。
注(6)
その他の支援は、支援先が個別プロジェクトから一定の収益を得た際等にその一部の分配を求めることができる収益分配請求権及び支援先の事業が信託財産となっている信託受益権を取得することによる支援である。
注(7)
直接支援の支出額、回収額及び平成28年度末保有有価証券評価額等を別表3 「イ 財務の状況 ④平成28年度末までの支援の損益の状況」に示している。
b 間接支援

間接支援の実績がある官民ファンド運営法人12法人が運営する10官民ファンドの合計でみると、図表3-12のとおり、支援に伴う支出額が3323億余円であるのに対して、回収額と28年度末保有有価証券評価額の合計が3224億余円となっており、支出額を98億余円下回っている。官民ファンド単位でみると、10官民ファンド中8官民ファンドにおいて回収額と28年度末保有有価証券評価額の合計が支援に伴う支出額を下回っており、損失となっている。支出額は、独立行政法人中小企業基盤整備機構の2534億余円が最多であるが、回収額と保有有価証券評価額の合計は2479億余円で、55億余円の損失があり、間接支援全体の98億余円の損失の過半を占めている。これについて、同機構は、損失の大半が同機構の前身である中小企業事業団が出資したサブファンドで生じたものであるが、同事業団は国内のファンド制度の黎明期である10年度から出資を開始し、20年度に発生した世界的な金融危機(リーマンショック)等の大きな影響を受けたために多額の損失が生じたとしている。

図表3-12 官民ファンドの業務開始から平成28年度までの間接支援の損益の状況

(単位:件、百万円)
官民ファンド運営法人等 件数 支出額(A)
注(1)
  回収額等と支出額の差額
((B)+(C)-(A))
投資倍率
(((B)+(C))/(A))
回収額(B)
注(1)
平成28年度末保有有価証券評価額(C)
注(2)
回収額等
(B)+(C)
株式会社産業革新機構 9 40,276 736 38,288 39,025 △1,251 96.8%
株式会社地域経済活性化支援機構 40 10,368 615 8,750 9,365 △1,003 90.3%
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 52 4,056 68 3,033 3,101 △954 76.4%
株式会社民間資金等活用事業推進機構 0 - - - - - -
株式会社海外需要開拓支援機構 3 1,229 0 1,124 1,124 △105 91.4%
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 0 - - - - - -
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 0 - - - - - -
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 2 5,851 583 5,351 5,934 82 101.4%
特定投資業務 4 593 - 462 462 △130 77.9%
独立行政法人中小企業基盤整備機構 246 253,442 122,598 125,303 247,902 △5,540 97.8%
国立研究開発法人科学技術振興機構 0 - - - - - -
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム 1 2,478 - 2,134 2,134 △343 86.1%
国立大学法人東京大学 1 894 - 688 688 △206 76.9%
国立大学法人京都大学 1 2,499 - 2,123 2,123 △375 84.9%
国立大学法人大阪大学 1 3,003 - 2,608 2,608 △394 86.8%
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 6 7,086 1,036 6,407 7,443 356 105.0%
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 4 572 3 537 540 △31 94.4%
370 332,353 125,642 196,812 322,454 △9,898 97.0%
注(1)
支出額はサブファンドへの出資累計額であり、回収額はサブファンドからの分配金累計額である。
注(2)
平成28年度末保有有価証券評価額は、出資を行っているサブファンドの28年度末純資産持分相当額による。
注(3)
間接支援の支出額、回収額及び平成28年度末保有有価証券評価額を別表3 「イ 財務の状況 ④平成28年度末までの支援の損益の状況」に示している。
c 支援先の分類別出資損益

(ア)並びに(イ)a及びbのとおり、官民ファンド全体でみると、支援に伴う支出額計1兆9473億余円の大半は、出資に伴う支出額計1兆5698億余円(直接支援計1兆2375億余円及び間接支援計3323億余円を合わせた額)である。また、出資(直接支援)の投資倍率は227.5%となり1兆5782億余円の利益が生じており、出資(間接支援)の投資倍率は97.0%となり98億余円の損失が生じている。そこで、当該利益及び損失が生じた主な支援先の状況をみたところ、次のとおりとなっていた。

各官民ファンドの政策目的(図表1-4参照)を参考にして、会計検査院において、①過大な債務を負っている事業者等に対する再生支援、②ベンチャー企業等に対する支援、③革新性のある新事業展開等に対する支援及び④その他、政策に沿った事業に対する支援の四つの分類を設け、個々の支援先がどの分類に該当するかについて、各官民ファンド運営法人から回答を受けて、その分類別の出資損益の状況をみたところ、図表3-13のとおり、ベンチャー企業等に対する支援では、投資倍率が、出資(直接支援)は83.4%、出資(間接支援)は90.1%と、直接支援、間接支援ともに四つの分類の中で最も低くなっている。そして、出資(間接支援)における投資倍率は、出資(直接支援)よりは高いものの、出資(間接支援)の損失額は、132億余円と出資(直接支援)の損失額3億余円より多くなっている。

ベンチャー企業等に対する出資は、株式公開等により出資額を大きく上回る額で株式を売却できる可能性もあるが、逆に支援途中での経営破綻や事業失敗による低価格での株式の売却等、出資額を大きく下回る回収しかできないリスクも高いとされており、現状では、保有有価証券評価額(支援継続中の案件の含み損益を反映した額)を考慮しても利益を出すに至っていない。

一方で、過大な債務を負っている事業者等に対する再生支援では、株式会社地域経済活性化支援機構における日本航空株式会社の株式売却等に伴う利益により、革新性のある新事業展開等に対する支援では、株式会社産業革新機構が保有する有価証券に生じた多額の含み益等により、出資(直接支援)での投資倍率は、それぞれ187.2%、253.9%と高くなっている。

図表3-13 官民ファンドの業務開始から平成28年度までの支援先の分類別出資損益の状況

(単位:百万円)
支援先の分類 出資(直接支援) 出資(間接支援)
支出額
(A)
回収額
(B)
平成28年度末保有有価証券評価額(C) 回収額等と支出額の差額
((B)+(C)-(A))
投資倍率
(((B)+(C))/(A))
支出額
(D)
回収額
(E)
28年度末保有有価証券評価額(F) 回収額等と支出額の差額
((E)+(F)-(D))
投資倍率
(((E)+(F))/(D))
過大な債務を負っている事業者等に対する再生支援 371,463 692,680 2,753 323,970 187.2% 44,753 29,486 14,313 △953 97.8%
ベンチャー企業等に対する支援 2,228 1,859 △369 83.4% 134,774 56,759 64,729 △13,285 90.1%
革新性のある新事業展開等に対する支援 818,957 343,080 1,736,381 1,260,504 253.9% 116,569 36,059 87,005 6,494 105.5%
その他、政策に沿った事業に対する支援 44,860 1,102 37,892 △5,865 86.9% 36,255 3,337 30,764 △2,154 94.0%
1,237,510 1,036,863 1,778,888 1,578,240 227.5% 332,353 125,642 196,812 △9,898 97.0%
(ウ) 28年度までに支援を終了した出資損益の状況

(イ)cのとおり、出資による支援は官民ファンド運営法人による支援の大半を占めており、支援継続中であれば今後の対象事業者の経営状況等により官民ファンドの回収額や出資損益等が変動するが、支援の終了に伴って保有する株式等を全て処分した場合には、その時点で当該支援案件に係る官民ファンドの損益は確定する。そこで、各官民ファンドの業務開始から28年度末までに実行された出資のうち、28年度までに支援を終了した実績の状況をみると、株式会社産業革新機構、株式会社地域経済活性化支援機構、株式会社農林漁業成長産業化支援機構、株式会社海外需要開拓支援機構、株式会社日本政策投資銀行の競争力強化ファンド、独立行政法人中小企業基盤整備機構、一般社団法人環境不動産普及促進機構及び一般社団法人グリーンファイナンス推進機構の8官民ファンドにおいて実績がある。これらの支援を終了した出資案件に係る確定した損益等の状況は、次のとおりである。

すなわち、支援を終了した出資案件数は、官民ファンドの業務開始からの年数が比較的長い官民ファンドの件数が多く、図表3-14のとおり、出資(直接支援)では、全43件のうち株式会社産業革新機構が26件、株式会社地域経済活性化支援機構が13件となっている。出資(間接支援)では、全108サブファンドのうち独立行政法人中小企業基盤整備機構が102サブファンドとなっている。

出資損益については、出資(直接支援)では全案件から支援を終了した案件が1件のみである株式会社海外需要開拓支援機構及び一般社団法人グリーンファイナンス推進機構を除く合計で、支出額の計4934億余円に対して回収額が計8613億余円となっており、計3679億余円の利益(投資倍率は174.5%)となっている。このうち、株式会社産業革新機構は、出資全体では利益となっているが、件数ベースでみると全案件26件のうち19件で回収額が支出額以下となっている。一方、株式会社地域経済活性化支援機構は、同様に出資全体では利益となっており、回収額が支出額以下となっているのは全案件13件のうち3件である。このように、回収額が支出額を下回る件数に差が生じているのは、株式会社産業革新機構は、事業再編や革新性のある新規事業等に対する支援を行っており、その出資先である対象事業者に出資から事業化や量産化に至るまで長期間を要する設立後間もない企業が多いのに対して、株式会社地域経済活性化支援機構は、主に過大な債務を負っている事業者等を対象として、債権者間で合意された再建計画等に沿った再生支援を行っていることが背景にあると考えられる。

出資(間接支援)では支出額の計763億余円に対して回収額が計626億余円となっており、計136億余円の損失(投資倍率は82.0%)となっている。このうち、独立行政法人中小企業基盤整備機構は、137億余円の損失が生じており、全102サブファンドのうち74サブファンドにおいて回収額が支出額以下となっている。同機構は、ア(イ)bのとおり、官民ファンドの業務を区分経理することとなっていないため、財務諸表等では官民ファンドの業務において上記の損失が生じていることが把握できない。

図表3-14 官民ファンドの業務開始から平成28年度までに支援を終了し確定した出資損益の状況

(単位:件、百万円)
官民ファンド運営法人等 (B)-(A)の状況 出資(直接支援)
件数 支出額(A)
注(1)
回収額(B)
注(1)
回収額と支出額の差額(B)-(A) 投資倍率(B)/(A)
株式会社産業革新機構 全案件 26 68,508 101,652 33,144 148.3%
プラスの案件   7   39,090   95,232   56,142 243.6%
ゼロ又はマイナスの案件 19 29,418 6,420 △22,997 21.8%
株式会社地域経済活性化支援機構 全案件 13 370,366 692,680 322,314 187.0%
プラスの案件   10   363,885   687,372   323,486 188.8%
ゼロ又はマイナスの案件 3 6,480 5,308 △1,172 81.9%
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 0 - - - -
株式会社海外需要開拓支援機構注(2) 全案件 1
株式会社日本政策投資銀行注(2) 競争力強化ファンド 全案件 2 54,559 67,057 12,497 122.9%
プラスの案件   1      
ゼロ又はマイナスの案件 1
独立行政法人中小企業基盤整備機構 0 - - - -
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 0 - - - -
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構注(2) 地域低炭素投資促進ファンド事業 全案件 1
43 493,434 861,390 367,955 174.5%
官民ファンド運営法人等 (B)-(A)の状況 出資(間接支援)
件数 支出額(A)
注(1)
回収額(B)
注(1)
回収額と支出額の差額(B)-(A) 投資倍率(B)/(A)
株式会社産業革新機構 0 - - - -
株式会社地域経済活性化支援機構 全案件 1 5 5 0 100.3%
プラスの案件   1   5   5   0 100.3%
ゼロ又はマイナスの案件 0 - - - -
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 全案件 4 24 - △24 0.0%
プラスの案件   0   -   -   - -
ゼロ又はマイナスの案件 4 24 - △24 0.0%
株式会社海外需要開拓支援機構 0 - - - -
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 0 - - - -
独立行政法人中小企業基盤整備機構 全案件 102 75,773 62,071 △13,701 81.9%
プラスの案件   28   27,439   37,822   10,382 137.8%
ゼロ又はマイナスの案件 74 48,333 24,249 △24,083 50.1%
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 全案件 1 576 621 45 107.9%
プラスの案件   1   576   621   45 107.9%
ゼロ又はマイナスの案件 0 - - - -
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 0 - - - -
108 76,379 62,699 △13,680 82.0%
注(1)
出資(直接支援)の支出額には実支援額のほか、支払手数料等を含み、回収額には有価証券売却額のほか、受取配当金を含む。出資(間接支援)の支出額はサブファンドへの出資累計額であり、回収額はサブファンドからの分配金累計額である。
注(2)
株式会社海外需要開拓支援機構、株式会社日本政策投資銀行及び一般社団法人グリーンファイナンス推進機構はプラスの案件及びゼロ又はマイナスの案件について、支援を終了した出資(直接支援)がそれぞれ1件のみであり、記載することにより特定の対象事業者の財務状況等が明らかになるため、当該箇所には斜線を引いており、株式会社海外需要開拓支援機構及び一般社団法人グリーンファイナンス推進機構は、支出額、回収額、回収額と支出額の差額及び投資倍率の集計から除いている。

エ 28年度末に支援継続中の出資案件の状況

(ア) 28年度末に直接支援継続中の出資案件の状況

官民ファンドの業務開始から28年度末までに支援が行われて、28年度末に直接支援継続中の出資案件のうち、28年度末の純資産持分相当額が減損の検討を要する水準である出資額の50%以下の支援件数は、図表3-15のとおり、全14官民ファンド合計で151件中69件(全体の45.6%)となっている。そのうち、株式会社産業革新機構は79件中51件、国立研究開発法人科学技術振興機構は12件全てで出資額の50%以下となっている。

株式会社産業革新機構は、28年度末保有有価証券評価額等が支出額を大きく上回っているため、直接支援全体でみると利益が生じている状況であるが(図表3-11参照)、同機構で過半数の対象事業者の純資産持分相当額が出資額の50%以下となっている主な要因は、ウ(ウ)のとおり、同機構の対象事業者の多くは、出資から事業化や量産化に至るまで長期間を要する設立後間もない企業であり、特に研究開発段階にあるベンチャー企業では、研究開発の成果を実用化するまでに売上がなく費用のみが先行して発生する場合が多いためと考えられる。また、国立研究開発法人科学技術振興機構で全ての対象事業者の純資産持分相当額が出資額の50%以下となっている主な要因についても、出資先である対象事業者に研究開発の成果を活用しようとするベンチャー企業等が多いことから、創業からしばらくの期間又は新規事業が軌道に乗るまでの期間は収入が少ない厳しい経営状況が続き十分な収益が上がっていないためと考えられる。

また、支援を受けるに当たり、対象事業者は、事業資金の調達、研究開発成果の早期の実用化や売上に結びつける販路開拓等の経営上の課題を抱えており、支援を行ってから当初数年間は損失が生じて、純資産が減っていく厳しい経営状況が続くことは出資時から想定されているが、28年度末までに、対象事業者の経営状況が事業計画等から外れているなどとして、官民ファンド運営法人で株式等の有価証券について減損処理を行ったり、投資損失引当金を計上したりした件数は、上記の69件中12件となっている。

図表3-15 平成28年度末に直接支援継続中の出資案件のうち、28年度末の純資産持分相当額が出資額の50%以下の支援件数等

(単位:件)
官民ファンド運営法人等 平成28年度末において支援継続中の出資(直接支援)件数(A) 28年度末の純資産持分相当額の出資額に対する割合 割合
(C)/(A)
50%を超える支援件数
(B)
50%以下の支援件数注(1)
(C)
株式会社産業革新機構 79 28 51(11) 64.5%
株式会社地域経済活性化支援機構 5 5 0 0.0%
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 2 2 0 0.0%
株式会社民間資金等活用事業推進機構 2 1 1(0) 50.0%
株式会社海外需要開拓支援機構 12 10 2(0) 16.6%
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 5 5 0 0.0%
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 1
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 7 5 2(0) 28.5%
特定投資業務 13 13 0 0.0%
独立行政法人中小企業基盤整備機構 0 0 0 -
国立研究開発法人科学技術振興機構 12 0 12(1) 100.0%
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム 0 0 0 -
国立大学法人東京大学 0 0 0 -
国立大学法人京都大学 0 0 0 -
国立大学法人大阪大学 0 0 0 -
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 0 0 0 -
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 13 12 1(0) 7.6%
151 81 69(12) 45.6%
注(1)
( )内は平成28年度末までに減損を行ったり、投資損失引当金を計上したりした件数で内数である。なお、対象事業者の財務状況が改善したとして、投資損失引当金を全額取り崩したものについては件数に含めていない。
注(2)
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構の支援継続中の出資件数は1件であり、記載することにより特定の対象事業者の財務状況等が明らかになるため、同機構の件数等には斜線を引いており、集計から除いている。

各官民ファンド運営法人は、上記を踏まえて、対象事業者の事業が軌道に乗り財務状況が改善していくように、引き続き対象事業者の事業の状況を適時適切にモニタリングした上で、必要に応じて、業務改善に関する助言を行ったり、取引先や金融機関の紹介を行ったり、専門家の派遣を行ったりするなど、必要な手段を諸経費についても考慮しつつ講じていく必要がある。

(イ) 28年度末に間接支援継続中のサブファンドの損益の状況

サブファンドの損益は、初年度からの累計額がサブファンドの貸借対照表の当期損益累計額として計上されている。そして、組合員が支払った出資金の合計額である受入出資金累計額から組合員に支払われた分配金累計額を差し引いたものに当期損益累計額を加えたものが、サブファンドの純資産額となる。

28年度末においてサブファンドへの出資がある官民ファンド運営法人12法人が出資するサブファンドの、28年度決算における当期損益累計額の状況は、次のとおりである。

各官民ファンド運営法人が出資するサブファンドの28年度決算で計上されている全サブファンドの純資産額の合計をみたところ、当期損益累計額がプラスとなっているのは、図表3-16のとおり、株式会社産業革新機構、独立行政法人中小企業基盤整備機構及び一般社団法人環境不動産普及促進機構の3法人であり、残りの9法人は当期損益累計額がマイナスとなっている。

図表3-16 サブファンドの純資産額の状況(各官民ファンド運営法人が出資する全サブファンドの平成28年度決算に計上されている純資産額の合計)

(単位:サブファンド、百万円)
官民ファンド運営法人等 平成28年度末のサブファンド数 全サブファンドの純資産額の合計 当期損益累計額の受入出資金累計額に占める割合
(C)/(A)
受入出資金累計額(A) 分配金累計額(B) 当期損益累計額(C) (D)=(A)-(B)+(C)
株式会社産業革新機構 9 66,886 454 4,052 70,484 6.0%
株式会社地域経済活性化支援機構 39 34,967 4,441 △3,213 27,312 △9.1%
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 48 7,287 117 △1,874 5,295 △25.7%
株式会社海外需要開拓支援機構 3 2,696 - △965 1,730 △35.8%
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 2 8,656 1,644 △223 6,788 △2.5%
特定投資業務 4 1,554 - △10 1,544 △0.6%
独立行政法人中小企業基盤整備機構 144 473,021 140,586 29,889 362,324 6.3%
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム 1 2,420 - △470 1,949 △19.4%
国立大学法人東京大学 1 972 - △224 747 △23.0%
国立大学法人京都大学 1 1,600 - △400 1,199 △25.0%
国立大学法人大阪大学 1 3,753 - △401 3,351 △10.7%
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 5 7,216 339 345 7,223 4.7%
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 4 3,237 23 △251 2,962 △7.7%
262 614,270 147,608 26,251 492,914 4.2%
注(1)
受入出資金累計額には、官民ファンド運営法人の出資金のほかに民間事業者の出資金が含まれているため、当期損益累計額等は各官民ファンド運営法人の財務諸表等への影響額とは異なるが、出資割合に応じて官民ファンド運営法人の損益に影響している。
注(2)
官民ファンド運営法人が出資を実行したサブファンドを集計対象としている。

そして、官民ファンド運営法人が出資しているサブファンドごとに算出した当期損益累計額の受入出資金累計額に占める割合の分布を示すと、図表3-17のとおりとなり、「0%未満、△20%以上」に属するのが122サブファンドと最も多く、この122サブファンドを含めて損失を計上しているのが214サブファンドとなっていて、全259サブファンドの82.6%を占めている。官民ファンド運営法人ごとにみて、全サブファンド合計で当期損益累計額がプラスとなっている株式会社産業革新機構、独立行政法人中小企業基盤整備機構及び一般社団法人環境不動産普及促進機構においても、「0%未満、△20%以上」に属するサブファンドが最も多く、損失を計上しているサブファンドが利益を計上しているサブファンドよりも多いなど、その傾向はおおむね同様である。サブファンドの多くが損失となっている中で、サブファンドから出資を受けている対象事業者が株式公開を果たすなど、出資額を大幅に上回る回収ができた一部のサブファンドが利益を確保しており、これが当期損益累計額がプラスになっている要因であると考えられる。

図表3-17 サブファンドごとの当期損益累計額の受入出資金累計額に占める割合の分布

(単位:サブファンド)
官民ファンド運営法人等 △100%未満のサブファンド数 △80%未満、△100%以上のサブファンド数 △60%未満、△80%以上のサブファンド数 △40%未満、△60%以上のサブファンド数 △20%未満、△40%以上のサブファンド数 0%未満、△20%以上のサブファンド数 0%以上、20%以下のサブファンド数 20%超、40%以下のサブファンド数 40%超、60%以下のサブファンド数 60%超、80%以下のサブファンド数 80%超、100%以下のサブファンド数 100%超のサブファンド数
株式会社産業革新機構 0 0 0 0 2 5 1 1 0 0 0 0 9
株式会社地域経済活性化支援機構 1 0 2 1 9 24 2 0 0 0 0 0 39
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 2 7 2 9 14 14 0 0 0 0 0 0 48
株式会社海外需要開拓支援機構 1 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 3
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 2
特定投資業務 0 0 0 0 0 4 0 0 0 0 0 0 4
独立行政法人中小企業基盤整備機構 0 3 8 4 23 65 16 7 6 1 1 7 141
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
国立大学法人東京大学 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1
国立大学法人京都大学 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1
国立大学法人大阪大学 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 0 0 0 0 0 3 2 0 0 0 0 0 5
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 1 0 0 0 1 1 1 0 0 0 0 0 4
5 10 12 14 51 122 22 8 6 1 1 7 259
(注)
独立行政法人中小企業基盤整備機構の3サブファンドは設立後間もないため決算書が作成されておらず、本図表のサブファンド数には含まれていない。そのため、同機構の計は、図表3-16のサブファンド数と異なっている。

オ KPIによる収益性の確保に関する評価の状況等

ウのとおり、官民ファンド運営法人は、官民ファンドの業務に充てるために受け入れた政府出資等が国の資金であることにも十分配慮した運用を行い、最終的に国が政府出資等の額を回収できるように官民ファンドを運営する必要がある。そして、運用目標の達成状況等について官民ファンド運営法人が収益性のKPIを設定し、その評価を行っているかについては、定期的に幹事会で検証を行うことになっている。

各官民ファンド運営法人の法人全体のKPIのうち、収益性のKPIの設定についてみると、官民ファンド運営法人16法人が収益性のKPIを設定しており、受け入れた資本金等を上回る資金を株主に返還することを目標とするなど、成果目標を1.0倍超等としている。そして、図表3-18のとおり、株式会社地域経済活性化支援機構等の8法人が運営する9官民ファンド(図表3-18の官民ファンド運営法人等の欄の下線を付した官民ファンド)は、利益剰余金がプラスとなっているかなどを基準とした成果目標を設定しており、成果目標の測定上、回収すべき支援に要した経費に官民ファンドの運営に要する諸経費を含めることを前提としている。一方、上記の8法人以外の8法人のうち、運営費交付金で官民ファンドの業務に係る諸経費を賄うことがない株式会社産業革新機構及び株式会社民間資金等活用事業推進機構が運営する2官民ファンドは、出資等回収累計額が出資等累計額を上回るかどうかを基準とした成果目標を設定しており、諸経費の回収を考慮していない。

図表3-18 法人全体の収益性のKPIの設定、評価等の状況(平成28年度下期)

官民ファンド運営法人等 収益性のKPIに係る成果目標等 支援に要した経費の測定範囲に諸経費を含まない官民ファンド 成果目標の測定期間が単年度の官民ファンド 平成28年度下期までに実績の評価・公表が行われていない官民ファンド 各官民ファンドの28年度下期評価実績(Aは達成、Bは未達成、Nは評価できず)
成果目標の測定方法 成果目標
株式会社産業革新機構 EXITした全案件について、出資等回収累計額(受取配当金等を含む)÷出資等累計額 1.0倍超     A
株式会社地域経済活性化支援機構 (資本金+利益剰余金増減額)÷資本金 1.0倍超       A
株式会社農林漁業成長産業化支援機構 機構の株主に対する投資倍率であるが、具体的な算定方法は未定 1.0倍超     注(1) N
株式会社民間資金等活用事業推進機構 EXITした全案件について、出資等回収累計額(受取配当金等を含む)÷出資等累計額 1.0倍超   N
株式会社海外需要開拓支援機構 純資産÷資本金等 1.0倍超       B
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 機構の総収入累計額÷総支出累計額 1.0倍超     N
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 機構の総収入累計額÷総支出累計額 1.0倍超     N
株式会社日本政策投資銀行 競争力強化ファンド ファンド全体の累積利益 プラス       A
特定投資業務 ファンド全体の累積利益 プラス       A
独立行政法人中小企業基盤整備機構 (当該事業年度の有価証券計上額+当該年度中の分配額)÷(前事業年度の有価証券計上額+当該事業年度の出資額) 1.0倍超   A
国立研究開発法人科学技術振興機構 EXITした全案件について、出資等回収累計額(受取配当金等を含む)÷出資等累計額 1.0倍超   N
国立大学法人東北大学 官民イノベーションプログラム EXITした全案件について、出資等回収累計額(受取配当金等を含む)÷出資等累計額 1.0倍超   N
国立大学法人東京大学
国立大学法人京都大学
国立大学法人大阪大学
一般社団法人環境不動産普及促進機構 耐震・環境不動産形成促進事業 国庫補助金返還額÷国庫補助金受取額(国が投入した資金に対する回収額の比) 1.0倍超       N
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 地域低炭素投資促進ファンド事業 EXITした全案件について、出資等回収累計額(受取配当金等を含む)÷(出資等累計額+事務費) 1.0倍超     N
注(1)
株式会社農林漁業成長産業化支援機構及び一般社団法人環境不動産普及促進機構では、個別案件に関するKPIで、個別案件の状況について総括的な進捗・達成状況を公表している。
注(2)
独立行政法人2法人及び国立大学法人4法人は、諸経費を運営費交付金で賄うことができるため斜線を引いている。
注(3)
官民ファンド運営法人等の欄の下線を付した官民ファンドは、成果目標の測定上、回収すべき支援に要した経費に官民ファンドの運営に要する諸経費を含めることを前提としている官民ファンドである。

株式会社産業革新機構及び株式会社民間資金等活用事業推進機構は、資本金等及び政府保証借入金等により資金を調達しているが、出資等回収累計額が出資等累計額のみを上回ることを成果目標とした場合、仮に成果目標を達成できたとしても、諸経費を賄えないことがあることから、資本金等及び政府保証借入金等の全額を回収し、政府出資等を国庫に返納できるかを判断するためのKPIとしては適切でないと考えられる。

したがって、株式会社産業革新機構及び株式会社民間資金等活用事業推進機構は、収益性のKPIに係る成果目標の測定方法について、諸経費を踏まえたものにしたり、利益剰余金を基準としたりするなど、諸経費の負担を考慮した上で、政府出資等の全額を国庫に返納できるかどうかを判断できるようにする必要がある。なお、株式会社産業革新機構は、29年12月の第9回幹事会において、成果目標の測定方法を間接経費の負担を考慮したものに見直したことを報告している。

また、収益性のKPIに係る成果目標の測定期間についてみたところ、官民ファンド運営法人15法人は官民ファンドの業務開始以降の累積で測定しているが、独立行政法人中小企業基盤整備機構は、運営する官民ファンドについて、直近の運用実績を適切に把握し、投資運用方針の妥当性を判断するためとして、当該年度の単年度の損益の実績のみを測定して評価していた。

そして、同機構は、28年度下期の収益性のKPIの評価結果をA(目標の進捗率又は達成状況が水準以上)としているが、同機構が10年度の業務開始から28年度までに出資した246件の案件の回収額等は、支出額を55億余円下回っている。また、そのうち28年度までに支援を終了した102件の案件の回収額は、支出額を137億余円下回っている(図表3-12及び図表3-14参照)。

このように、単年度の評価のみではそれ以前に生じた損失が考慮されず、長期的な収益性が確保されているかどうか判断できないことから、政府出資等の全額を回収して国庫に返納できるかどうかを判断することができないため、収益性のKPIに係る成果目標の測定においては、他の官民ファンド運営法人でみられるように、官民ファンドの業務開始以降の出資等累計額を使用するなど、官民ファンドの業務開始以降の実態を適切に示す測定方法とする必要がある。

また、設立以来、法人全体の収益性のKPIの評価を実施していない官民ファンドが、11法人が運営する8官民ファンド(図表3-18の「28年度下期までに実績の評価・公表が行われていない官民ファンド」に○を付した官民ファンド)ある。

そのうち、株式会社農林漁業成長産業化支援機構は、個別案件のKPIの総括的な進捗・達成状況として「既にEXITを行っている個別事業体の投資倍率は約1.1倍」といった情報を公表し、また、一般社団法人環境不動産普及促進機構は、28年度下期に清算結了を迎えたサブファンドを対象に、「平成29年3月末時点において、投入した国費に対する回収額の比は1.08倍となっておりKPIを上回っている」といった情報を公表している。

そして、法人全体の収益性のKPIの評価を実施していない11法人が運営する8官民ファンドのうち上記の2法人を除く6官民ファンドは、個別案件のKPIにおいても、「EXITが終了した投資案件が出た時点で記載する予定」などとしており、収益性の確保が図られているかどうか判断できる情報は公表されていない。

しかし、支援を終了した案件が1件もない場合でも、株式会社海外需要開拓支援機構は、主務大臣による業務の実績評価(「平成27年度株式会社海外需要開拓支援機構の業務の実績評価について」(経済産業省))において、「現段階で下方修正した事業は存在せず、適切に事業を実施していると評価できる」と収益性に関する認識を示しており、仮に、支援を終了した投資案件が1件もない場合でも、何らかの情報開示が可能なこともあると考えられる。

法人全体の収益性のKPIについて評価を実施していない官民ファンド運営法人は、評価を実施していない理由として、支援を終了した案件がないか又は少なく、評価が困難であるためとしているが、これらの官民ファンドには支援期間として10年以上の長期間を予定しているものもあることから、収益性に係る情報が長期間公表されないおそれがある。

したがって、支援を終了した案件がないか又は少ないため、法人全体の収益性のKPIの評価が困難であるとする8官民ファンドのうち、個別案件のKPIにおいても収益性の確保に関する情報を公表していない6官民ファンドについて、官民ファンド運営法人は、単に評価不能とするだけではなく、前記個別案件のKPIにおいて進捗・達成状況に係る情報を公表している例や、支援を終了した投資案件が1件もない場合でも収益性に関する何らかの情報開示を行っている例を参考にして、検証報告の収益性のKPIの補足情報として支援継続中の案件の財務状況等を記載するなど、情報の秘匿性に留意しつつ、積極的に収益性について情報提供を行っていく必要がある。

カ 支援に係る情報開示の状況

官民ファンド運営法人は、支援について、国民に対して説明責任を果たすために情報開示が求められている。ガイドラインでは、支援決定時における適切な開示に加えて、実支援後においても、当該支援について適切な評価、情報開示を継続的に行い、国民に対しての説明責任を果たしているかといった検証項目が設けられている。

対象事業者にとって、支援に関する情報は営業上重要な情報であることなどから、官民ファンド運営法人は、支援に際して、対象事業者や官民ファンド運営法人と協調して出資等を行う民間事業者との間で守秘義務契約等を締結しており、契約相手方の同意がない場合は、第三者に対して情報開示できないこととなっている。このため、官民ファンド運営法人は、契約相手方の同意が得られた範囲で、法人のホームページや幹事会の公表資料「投資案件一覧表」等において支援決定した個別案件の概要等の情報開示を行っている。

一方、支援中の個別案件について評価額の情報開示を行っているのは独立行政法人中小企業基盤整備機構及び国立研究開発法人科学技術振興機構のみとなっている。その他の法人のうちファンド専業法人や官民ファンドの業務とそれ以外の業務との区分経理を行っている兼業法人は、法人全体としての官民ファンドの業務の財務状況を財務諸表等において把握することができるものの、支援中の個別案件ごとの評価額を把握することはできない。また、支援を終了した案件がある官民ファンド運営法人で個別案件ごとの損益額について情報開示を行っている法人はない。

このように、個別案件ごとの支援中の評価額や支援を終了した時の損益額の情報開示がほとんど行われていない理由について、官民ファンド運営法人は、上記の守秘義務契約等にもよるが、支援中又は支援を終了した後の対象事業者等の経済活動に悪影響が及ぶことを避けるためなどとしている。

しかし、官民ファンドを運営するための財源の多くが政府出資等であり、繰越損失等が生じていたり、支援案件の損益がマイナスになっていたりするなど、28年度末に損失が生じている官民ファンド運営法人がある。

したがって、官民ファンド運営法人は、国民に対する説明責任を果たす観点から、個別の案件であっても、多額の減損損失や支援を終了した時の多額の損失により政府出資等に重要な影響が生ずるおそれがあるなどの場合には、情報の秘匿性に留意しつつ、当該個別の案件の損失についても可能な限り情報開示を行っていく必要がある。