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  • 昭和23年度|
  • 第5章 不当事項|
  • 第2節 所管別事項|
  • 第5 大蔵省|
  • (終戦処理費関係の分)|
  • 国有物件

官給材料の処理当を得ないもの


(420)−(436) 官給材料の処理当を得ないもの

 特別調達庁(同庁業務開始前は戦災復興院又は建設院)で主管する連合国軍家族住宅建設その他の工事の実施に当つては、その所要資材はおおむね官給を建前とし、工事を担当する各庁を通じて工事請負業者に引き渡していたものである。
 しかして、これら資材の官給に当つては工事が急を要するため、建設規模も十分に、は握できないままに交付しなければならなかつたり、工事中に設計変更があつたことなどの事情により多量の残材を生じているものもある。これらの処理につき本院会計実地検査の結果判明したものだけでも、資材の精算が適当でないもの、著しく遅延しているもの、有償官給代金の徴収又は現物返納にかわる弁償金の徴収が遅延しているものがあるなどその事例は左のとおりであるが、いずれも注意の周到を欠き、処理適当と認め難いものである。

(1) 資材の生産が適当でないもの

(420)  東京都で、昭和22年4月から23年8月までの間に施行した成増地区家族住宅建設関係工事のうち、第1期−第5期家族住宅及び附属公共建物の建設用資材として、株式会社竹中工務店外41名に官給した木材は総数量346,711石であつて、使用数量286,206石、減損20,274石、腐朽3,344石、業者の仮設工事用14,013石、返納22,874石と整理しているが、右減損及び腐朽材23,618石は官給総量の約7%に当つているばかりでなく、使用数量のうちには分損として79,221石が含まれており、その実際使用数量に対する割合は約38%の高率に当つている。
 しかして、分損材の大部分59,638石は業者が燃料などに使用したもので、これを無償官給として処理したのは処置当を得ない。

(421)  福岡県で、昭和21年11月三建工業株式会社に請け負わせた西戸崎兵舎新築工事用として木材8,032石を官給したものがある。そのうち886石を廃品及び未交付として処理していたが、実際は完全品を全量交付したものであるから、その処理につき注意したところ、その代価として466,842円の徴収決定をした。

(422)  大分県で、昭和22年12月梅林土木株式会社に家族住宅維持管理工事用として、木材1,305石を官給したが、維持管理業務契約を解除した23年11月までに234石を使用したのであるから、残高は1,070石のところ554石の不足を生じていたので、24年5月本院会計実地検査の際注意したところ、ようやく右554石について売渡の処置をとることとなつた。

(2) 官給材料の返納を遅延しているもの

(423)  終戦連絡北海道事務局で、昭和21年9月北海道配電株式会社に請け負わせ、12月完成した千歳地区電力供給用送変電設備増設工事用として各種電気機器等の官給を要するところ、実際必要のものは339,641円であつたのに対し、6,578,770円に相当するものを交付したばかりでなく、その差の6,239,128円に相当するものは、これを同会社の希望する場所に送付している状況であるのに、24年7月本院会計実施検査当時においてもまだ何らの処置を講じていない。

(424)  特別調達庁札幌支局で、北海道庁特別建設事務所が、昭和21年6月北海道配電株式会社に請け負わせ、22年9月完成した真駒内地区変電所新設工事用として電気資材4,071,219円を官給したが、使用残材1,438,898円は工事完成後1年半を経過した24年7月、本院会計実地検査当時まだ未処理のままこれを同会社で保管している状況である。

(425)  青森県で、昭和23年1月から7月までの間に、工藤建設株式会社に施行させた三沢地区家族住宅第5期建築工事用として、木材、硝子、ルーフイング等31点を官給したが、使用残材の返納を要するものが約128万円あるのに、工事完成後1年を経過した24年7月本院会計実地検査当時、なおその返納を了していない。
 右の外、同家族住宅第1、第2及び第3期工事の分についても、同様の事例で約70万円の返納を要するものがある。

(426)  東京都で、昭和21年6月から22年9月までの間に、清水建設株式会社に代々木地区家族住宅建築用として木材40,204石を官給したが、そのうち7,752石は使途不明となつているのに、23年8月工事費精算完了後24年11月に至つても、まだ、何らの処置を講じていない。

(427)  東京都で、昭和21年6月から22年10月までの間に、株式会社浅沼組外3名に請け負わせた横田地区家族住宅建設工事用として官給した材料のうち、第四種電線26,093米、板硝子4,500平方尺外121品目の残材を生じているのに、工事完成後2年を経過した24年11月に至つても、まだ、何らの処置を講じていない

(428)  愛知県で、進駐軍家族住宅工事協力会に請け負わせ、昭和22年6月完成した名古屋市中区所在家族住宅工事に対し官給した木材のうち、過渡となつているものが6,410石あるのに、24年11月に至つても、まだ回収されていない。

(429)  福岡県で、昭和21年7月から22年12月までの間に、株式会社池田組外5名に請け負わせた芦屋地区家族住宅建設工事用として木材32,380石を官給したが、そのうち8,541石は残材として各業者から返納を要するものであるのに、500石を腐しよく材として廃棄処分し、2,747石を不適格材として池田組に売り渡している外、残余については何らの処置がとられていない。

(3) 官給材料の売渡価格が適当でないもの

(430)  京都府で、家族住宅新築第1期及び第2期工事用として官給した木材の使用残材3,703石を、昭和24年2月清水建設株式会社外4名に第3期工事用仮設材として507,750円で売り渡したが、その売渡価格は石当り150円及び50円で、業者が右の第3期工事費精算書に計上した仮設材の価格石当り500円から430円までであるのにくらべ著しく低価である。

(431)  兵庫県で、株式会社竹中工務店外9名に請け負わせた六甲地区家族宿舎建設工事用として木材22、593石を官給したものがある。
 そのうち2,429石は返納を要するものであるのに、既に現物がなかつたので昭和24年4月特別調達庁大阪支局はこれを前記業者に380,287円で売り渡したが、そのうち2,110石については薪の公定価格の8割又は6割に決定している。しかし、本件残材は官給後多少時日の経過はあつても、その大部分を薪以下の価格で売り渡すべき事由があつたとは認められない。

(432)  広島県で、中国配電株式会社広島支店に請け負わせた江田島地区家族宿舎用送配変電設備工事及び広地区家族宿舎用電力供給設備工事の官給材料の残材裸硬銅撚線外5品目は、工事完成後引き続き同会社において保管していたものであるが、工事完成後1年余を経た昭和23年8月工事施行当時の価額により786,173円で同会社に売り渡している。
 しかし、本件は売渡当時の価額1,560,729円で売り渡すべきものである。

(4) 官給材料の売渡代金の徴収を遅延しているもの

(433)  神奈川県及び特別調達庁横浜支局で、昭和23年1月から8月までの間に、株式会社竹中工務店外52名に対し本牧及び根岸地区家族住宅建設工事仮設材その他用に、木材20,444石を10,727,351円で売り渡すこととして引き渡したものがあるが、24年11月に至つてもまだ売渡手続をとつていない。

(434)  特別調達庁横浜支局で、昭和23年12月明楽工業株式会社が施行した横浜第2号地区第4期家族宿舎新築工事費の精算を了したが、24年8月施行した本院会計実地検査の結果によると、暖房資材の回収を要するものなどがあつたので注意したところ、11月に至りようやくその代金相当額1,315,297円の徴収手続を了した。

(435)  神奈川県で、昭和21年2月から23年6月までの間に施行した本牧外5地区家族住宅新築工事の官給材料のうち、未使用で返納を要するのに現物がないため現金で弁償させることにしたものが数量、金額の確定した分2,321,162円、その確定しない分約800万円に達する。
 このうち確定した分は23年12月までに判明したのに、24年11月に至つてもまだ徴収の処置をとつていないし、又確定しない分についても大部分の工事は22年5月までに完成しているのに、その数量、金額さえ明らかになつていないものである。

(436)  鹿児島県で、九州配電株式会社鹿児島支店に請け負わせた鹿屋地区家族住宅電力供給設備工事用として有償官給した変電及び配電設備用資材の代金210,044円を、昭和23年8月工事費支払のときに微収すべきであつたのに失念していたので、24年5月本院会計実地検査の際注意したところ、6月国の歳入に納付した。