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  • 昭和23年度|
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  • 一般会計 歳出

工事の設計及び施行に当り処置当を得ないもの


(524) 工事の設計及び施行に当り処置当を得ないもの

(第10部公共事業費 第1款公共事業費 第2項事業費)

 第一港湾建設部で、昭和23年度中に秋田港修築工事のうち、北防波堤工事費として20,232,304円を支出したものがある。

 本件工事は、23年5月から10月までの間に、廃艦伊唐(1,020屯)栃(1,260屯)及び竹(770屯)を1列に沈設して延長268米の防波堤を築造したものであるが、10月から24年3月までの間に波浪のため被害を受け、伊唐は艦首約8米と艦尾約24米が堤外に転動され、中央部は下甲板以下だけが残存し、栃は艦首約10米が折損流失し、中央部甲板もき裂を生じ、竹は艦首部約3分の1が折損して内側に移動し、中央部約3分の1は艦底及び各種タンクを残して分解散乱し、艦尾部約3分の1も下甲板以下だけが残存している状況である。

 当局者は、この破損の原因は沈設した場合の船殼自体の強度が弱かつたためであるというが、船殻自体に対しては既に鉄道技術研究所において調査研究を行つた結果、不安がないとの結論に達していたものであつて、本件に使用した廃艦の強度が特に弱かつたものとは認められず、破損原因はむしろ廃艦のように安定性のとぼしいものを防波堤とするには、基礎工事に十分の注意を払わなければならないのに、この点について注意が欠けていたことにあると認められる。
 すなわち、本件の基礎捨石工事を見ると、基礎幅16米5(設計21米)から22米6(設計27米)までの捨石をしているが、同港よりも波浪の低い小名浜港中防波堤(廃艦汐風を沈設したもの)の基礎幅設計が31米5であるのにくらべて十分でないばかりでなく、その捨石量は当初設計量17,000立米(その後の設計変更量15,900立米)に対し、鉄道輸送事情等のため実績は13,117立米に過ぎず、艦首及び艦尾の基礎とした方塊(3米2×2米×1米6)の据付量も設計量72個に対し、実績は45個に過ぎない状況であつて、基礎工事が十分であつたとは認められず、このため艦体の不同沈下をきたし、ひいて艦体の破損を生じたものと認められる。
 要するに、本件は廃艦沈設による防波堤を築造するに当たり、設計及び施工当を得ず、そのため完成後まもなく使用に耐えないほどの破損をまねいたものである。