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  • 昭和23年度|
  • 第7章 出納職員に対する検定

有責任と検定した主なものの概要


第2 有責任と検定した主なものの概要

(1) 大阪鉄道局管内天王子管理部で、出納員雇卜部某が事務官山本某外1名とともに寺田町駅外27箇所の俸給、給料等の派出払を命ぜられ、昭和23年3月1日管理部経理課において現金仕訳中、卜部出納員は正当受領者の代理者と称してきた者に保管金59,688円を詐取されたものがある。

 右の事実について審理したところ、本件は派出払をしないで管理部窓口で支払つたばかりでなく、諸給与領収証にはあらかじめ正当受領人の照合印を押させることになつていたのであるが、本件の場合はあらかじめ提出させた領収書にはその照合印がないままに支払うことにしていたのであるから、電話照会又は鉄道乗車証等の所属身分を証明するものの呈示を求めるなど正当受領者であるかどうかを確認する方法があつたのに、単に制服制帽を着用して認印を持参したことにより漫然と信用し、又現金受領者が現金受領と引き換えに提出すべき布袋を現金受領後差し出した事実があつたにもかかわらず、これに対し何らの疑を挾むことなく支払をし遂に詐取されるに至つたもので、出納員として善良な管理者の注意を怠つたことに因るものと認め、24年12月卜部出納員に対し弁償の責任があると検定した。

(2) 運輸省札幌地方施設部で、出納員雇佐藤某が故中村某に対する退官手当の派出払を命ぜられ、これを携行して旅行途中昭和23年11月8日函館駅桟橋待合室において51,922円を亡失したものがある。

 右の事実について審理したところ、佐藤出納員は前記現金の外数点の身のまわり品を収めたボストンバツグを、何ら安全な処置をとることなく多数の乗客が列をなしている場所においたまま、単に同行者があるという安心感から漫然と新聞購入のため列を離れ遂に亡失するに至つたもので、出納員として善良な管理者の注意を怠つたことに因るものと認め、24年12月佐藤出納員に対し亡失した51,922円のうち24年9月までに弁償済にかかる21,500円を除き、30,422円についてなお弁償の責任があると検定した。

(3) 熊本逓信局管内博多郵便局で、出納員逓信事務官国友某及び同事務員大庭某、伊勢田某が現金支払事務に従事中、昭和22年1月16日から5月31日までの間において保険金支払に当り、正当受取人に直接交付しないなど違則の取扱をしたため計146件55,033円93を亡失したものがある。

 右の事実について審理したところ、大庭出納員は保険金の支払に当つて窓口受付主任岡田某が受取人を欺いて支払に関する正規の手続をなさず現金の払渡を請求したのに対し、その取扱が違則であり受領証の印影が正当受取人のものだけでなく、大部分は岡田某が所持する2個の印章を使用したものであることの情を知り、又は岡田某の求めに応じ自らその印章を用いて書類を整え、現金の払出をなすなどその取扱が当を失し、又伊勢田、国友両出納員は正当受取人に現金を交付せず岡田事務員の求めに応じ漫然同人に現金を交付していた結果計146件55,033円93を亡失するに至つたものである。右のうち4件2,903円80については伊勢田出納員の取扱にかかるものであるが本人において全額弁償済であり、135件48、964円83についてい大庭出納員の取扱にかかり、7件3,165円30についてはその取扱期間中に国友出納員が大庭出納員の離席のため事務を代行することもあり、両者のいずれがその損害を与えたか不明になつているもので、共同の責任に属するものといわなければならない、従つて本件亡失は、いずれも出納員として善良な管理者の注意を怠つたことに因るものと認め、24年12月大庭出納員は、その亡失した48,964円83のうち、24年9月までに岡田事務員及び本人の弁償済にかかる計8,954円81を除き、40,010円02につきなお弁償の責任があり、又右大庭、国友両出納員はその亡失した3,165円30につき連帯してなお弁償の責任があると検定した。