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  • 昭和24年度

審査事項


第9章 審査事項

 国の会計事務を処理する職員の会計経理の取扱に関し、利害関係人からの審査の要求があり、昭和25年1月から12月までの間に本院においてその判定をしたものが3件、審理中審査要求者が取り下げたものが8件ある。右3件はいずれも愛知県における失業保険保険料の納付に関するものでほぼ同様の事案であるが、うち1件の概要は左のとおりである。
 新興窯業株式会社が、愛知県労働部失業保険徴収課雇大住某のために23年6月失業保険保険料相当額4,405円56をへん取されたところ、24年3月失業保険特別会計愛知県歳入徴収官及部某から更に保険料を納付すべき旨督促を受けたのに対し、さきになされた大住某に対する支払によつて国に対する保険料納付義務が消滅したものと認めて同会社から審査を要求したものである。
 右の事実について審理したところ、大住某は出納職員又はその補助者として現金領収につきその担当を命ぜられたことはなかつたのであるが、保険料の徴収決定及び収納に伴う事務の一部を補助しており、納入告知書を携行し、その権限を越えて保険料の納付を求めたのは、民法第110条及び第478条の適用がある場合に準ずべきものと認められる。
 しかして、大住某についてはその身分証明書も呈示され納付義務者側も既に面識があつて、同人が失業保険保険料徴収に関する事務を処理する職員であることを知つていた上、交付した領収証書についても、一見しては真偽のわからない程度に正規の領収証書の様式を備えており、その他あらかじめ電話連絡もあり、大住某の風さい態度等についても疑わしい点もなかつたのであるから、納付義務者が同人を信じて保険料を交付したことに過失があるとは認められない。
 したがつて、本件保険料の納付義務は前記民法の諸規定の精神等に準拠し既に消滅したものとして取り扱うべきであると判定し、25年9月審査要求者及び歳入微収官にそれぞれ通知した。