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  • 昭和25年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各団体別の不当事項及び是正事項

日本国有鉄道


第2 日本国有鉄道

 昭和25年度における日本国有鉄道の会計検査の結果判明した不当又は過誤と認めた事項、是正させた事項等は別項記述のとおりであるが、なお留意を要すると認められるおもな事項を概説すれば次のとおりでる。

(1) 当年度の営業収入等の収納状況はおおむね良好と認められるが、日本通運株式会社に対し後納運賃の延滞償金の一部を免除したり、又は日本交通公社に対し乗車券等の代売による収入金につき、公社取扱量の約40%に当る東京鉄道管理局分について25年6月以降所定の納期よりも1箇月の延納を認め、26年1月以降更にこれを2箇月にするなど処理が適切でないものがある。

(2) (イ)建設工事について見ると、東京操機工事事務所は、ブルトーザー、ターンナブル等の土木機械を保有し、これを使用して土木工事を直営する部門であるが、独自に工事指定を受けず、工事担当の他の部局がその指定された工事のうちで機械土工を有利とする工程があると認めるとき初めてその部分だけが同事務所に委託される取扱で、あたかも切投工事を請け負う業者のような立場にあるので、結局同事務所の関係した工事の後始末をまた他の機関が行わなければならず、その連絡の困難さから工事全体として不利をきたした事例が見受けられる。工事の大部分が機械土工によることが有利と認められる場合には、その工事全体を一貫して同事務所に指定するような運用が望ましい。
 なお、技術研究所は漸次現場進出の体制となつてきたが、25年度中の工事施行状況を見ると、工事担当部門では、その施行計画に当つてなお一層技術研究所を活用することが必要な事例があり、又、研究所もその研究成果を現場に活用して、公共企業体の経費の節減と収入の増大に役立つことが望ましい。

(ロ) 請負工事費の積算に当り、実績記録を検討し、これを利用することについては前年度においても注意してきたところであるが、25年度でも、信濃川工事事務所で、信濃川発電第3期水路ずい道掘さくその3及びその4工事の電気料金の積算に当り、その2工事の実績により積算の基礎資料を修正しないまま予定価格を19,866,700円(実績は13,086,559円)として積算した事例もあつて、なお一層その趣旨を徹底する必要が認められる。

(ハ) 工務施設のうち、工事区建物は、当該工事現場を監理するものであるから当該工事期間に償却される程度のものであるのが相当であり、場合によつては解体移築を考慮して設計すべきものと思料されるのに、当初から有姿のままで他の工事にも充てることとして耐久力をもつた建物を新築している事例がある。しかし、これらの工務施設は必ずしも工事終了後当初計画した他の工事に十分活用されていない状況であつて、工事ごとに、遊休化する虞のある建物が増加する事態については今後改善が望ましい。

(3) 直営工事の施行に当り、使用しない人夫を使用したこととして人夫賃を現金化し、これを他の工事に使用したり、又は未入手の工事材料を使用したこととして繰上決算したものがあり、請負工事の施行に当り認証以前に特定業者に施行させた修理工事を後日競争手続によつた契約のように処理したり、又、未完成のものを完成したこととして代金の全額を支払つたものがあり、あるいは工場で、自動車の直営修繕に当り、修繕しない車両を修繕したこととしてその経費で予定外の修繕を行つたり、又、車両修繕に要した人工を工場の間接工事に使用したこととして経理したり、又は部外修繕をしたこととして物品を購入したものなど、事実に合致しない経理をしている事例が見受けられる。これらのうちには予算の示達や事業計画の設定が事実の要求に該当しなかつたことに因るものもあると認められるが、経理の担当者においても特に真実にして適正な取扱を期する要がある。
 又、経理事務所に納付すべき請願工事の予納金を工事担当者が保管し、これを他の経費に使用したものや、委託工事代金の予納を受けながら、別に工事担当者が委託者から現金を預り、これを委託工事の経費に使用した事例がある。
 右の外、少額の工事で、現場機関の長が随意契約を行つているものについては、設計どおりに施行されなかつたり、工事に手抜きがあつたりしているのに、手直しも減額も行わず、請負費全額を支払うなど検収の不十分な事例が各所に見受けられ、工事現場監督の常駐しない小工事の検収は特に格段の注意が望ましい。

(4) 石炭の消費成績は、炭質の向上や消費節約の努力により逐年良好となつているが、石炭費は事業費の16%余を占めており、石炭の生産購入、輸送等についても次のとおり考慮を要するものがある。

(イ) 志免鉱業所で、25年7月から26年1月までの間に産出した洗粉炭の分析カロリーは各月平均6,300カロリー以上で、総平均6,328カロリーとなつている。
 しかして、同鉱業所における洗粉炭の保証品位は6,200カロリーとなつていて、部分的には6,200カロリー以下のものがあつても、平均6,200カロリーならば日本国有鉄道の要請に応ずることができるものといわなければならない。
 したがつて、前記の期間中ももし平均6,200カロリーで選炭したとすれば、2%選炭収率が増加し、出炭量において計算上約4,500屯増加となるものであるから、原炭の種類によつては選炭上の困難はあるとしても、このように長期にわたつて各月平均6,300カロリー以上の出炭となつた事態に対しては一層の配意が望ましい。

(ロ) ピツチれん炭は、戦後塊炭代用としてその購入量も逐年増加し、25年度は90余万屯に及んでいて、その消費効率は石炭に対し7%から10%程度良好であるとして、購入価格は同一カロリーの塊炭価格の7%から10%相当額を加算したものとなつているが、れん炭使用の実際について見ると、重量列車、勾配線区等の重作業に使用する分についてはともかく、その他の一般運転使用分については右と同一の効率を予定することは困難と認めるべきもので、現に、日本国有鉄道調査に係る指定線区の成績は5%であることが判明しているが、結局全量から見ては石炭に対しておおむね割高な計算となる。又、全れん炭業者が採算上引き合う価格で全数量を購入しているので、銘柄による良否や発熱量による効率の開差はしんしやくされていない結果となつている。25年度においては各期の石炭入札数量は購入予定量を3割余から8割も上回つていた状況であるから、日本国有鉄道が輸送上れん炭使用を採算上有利と認める限度内の数量に基いて品質と業者を選択したならば、この購入価格は全般的に見て低減の余地があつたと認められる。

(ハ)臨港貯炭場納により購入する石炭は船荷証券面の数量により受渡をする立前となつており、又、海送による保管転換石炭についても秤量受渡が行われないため、用品庫、機関区等で過剰炭を簿外に保有し、あるいは帳簿上保有しながら貯炭がこれに伴わない結果をきたしている実情であり、海送炭の秤量受渡については若干の経費の増大を伴うとしてもなお考慮の余地がある。
 右の外、検収設備が不十分なため、購入炭銘柄のうち相当数が未検収のまま受け入れられている事例や、仕様書の規格と相違するものについて値引、排却等の処置をとつていない事例もあり、石炭の検収は必ずしも十分とはいい難い。

(ニ)海送による保管転換石炭等の積卸荷役は、延約400万屯に及ぶ全量を1業者が請け負うことを条件として24年4月以降公開競争入札に付しているため、日本国有鉄道事業用炭の荷役を目的として設立された日本海陸運輸株式会社以外には入札参加者がなく、同会社に17年度以降一手にこれを請け負わせているが、全国の事業用炭荷役を1業者に請け負わせることを必要とする強い事由は認められないばかりでなく、同会社はその取扱量の約半数を地元港湾荷役業者に下請させている状況であるから、広く各港湾荷役業者にも入札の機会を与え、実質上の公開競争入札により石炭荷役費の低減を図るのが相当と認められる。

(5) 車両局及び自動車局管下の工場における発生品の管理は、25年度本院会計実地検査の結果によれば、一般に不十分であつて現品と帳簿は符合していない状況であつた。
 右は、事故誘発の虞もあるので発生現場において日日の発生報告を作成し、又、しゆう集現場においてしゆう集報告を作成し、これを照合する処置をとる必要があると認め26年8月注意したところ、この趣旨により改善の手段が講ぜられた。

(6) 自動車局管下の工場及び自動車営業所で、自動車修繕に必要な部品の入手が遅れ、ひいて自動車修繕日数が増加し、自動車の運行成績が悪化することをおそれ、部品入手の方法として日本国有鉄道部外との間にみだりに交換したり、借用したり、又、修繕車相互の部品取はずし、付換、逆施行の手もどり等をする事例がある外、自動車修理について労務の繁簡の差が著しいのを使用人工を書面上調整して、事実に合致しない経理を行つているものなどがあつた。
 右については、修繕部品が必要に応じ早急に入手できるような体制をとることが望ましい。