ページトップ
  • 昭和26年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項及び是正事項|
  • 第4 大蔵省|
  • 不当事項|
  • (一般会計)|
  • 物件

鉄くず等の売渡に当り処置当を得ないもの


(111)−(117) 鉄くず等の売渡に当り処置当を得ないもの

(部)官業及官有財産収入 (款)官有財産収入 (項)官有財産売払代

 全国財務局で、昭和26年度中に売渡処分した鉄くず等は総量12万9千余屯価額17億8千1百余万円で、官有財産売払代の徴収決定済額45億4千7百余万円に対し39%に当つている。
 これを財務局別にみるに、中国、関東及び近畿の3局で総量の87%を占め、又、売渡先のおもなものは鉄鋼業者で、八幡製鉄株式会社外8会社に対するものが総量の42%に達している。
 右処分の状況を検査するに、売渡数量の確認が十分でなかつたもの、鉄くずの統制解除後の売渡に低価な旧統制額を適用したもの、材種の認定当を得ないものその他売渡価額が低価となつたものがあり、そのおもな事例をあげると次のとおりである。

(1) 契約数量超過分の代金の徴収に至らないもの

(111)  南九州財務局で、昭和26年6月及び27年3月、八幡製鉄株式会社外1会社に左のとおり日田市所在元小倉陸軍造兵廠日田製造所のくず化機械750屯を18,644,889円で売り渡したものがある。
 右売渡は、実貫契約になつていて、27年4月本院会計実地検査の際の調査によると、実際引渡数量が契約数量に比べ29屯価額743,848円超過していたので注意したところ、右超過数量に対する代金を前記会社から納入させることとしたが、10月末現在まだ徴収決定されていない。

所在地
(口座名)
売渡先 売渡年月 契約数量 売渡価額 実際引渡数量 差引超過数量 差引超過額

日田市

八幡製鉄株式会社
年月
26.6
27.3

402

9,939,741

411

8

212,087
元小倉陸軍造兵廠日田製造所

(同)
小倉製鋼株式会社 26.6
27.3
347 8,705,148 368 21 531,761
750 18,644,889 780 29 743,848

(2)地下ケーブルの売渡価額が低価に失したもの

(112)  近畿財務局京都財務部で、昭和26年4月、太陽工業株式会社に京都府与謝郡所在元第三十一海軍航空廠の地下ケーブル4,116米(10屯661)を3回に分割し、それぞれの予定価格が500,000円をこえないものであるとして、予算決算及び会計令臨時特例第5条第1項第7号の規定を適用し、随意契約により総額1,030,500円で売り渡したものがある。

 右は、同日同1人に対し売り渡したもので一括競争に付するのが妥当と認められるのに、契約に先だち前記会社に発掘を許可したため随意契約によらざるを得なくなり、ことさら分割して処分したもので当を得ない。しかして、その売渡価額算定の内容をみるに、構成素材である上故銅4屯、1号故鉛4屯、よう解用鋼くず2級品2屯について26年3月の市場価格を屯当り上故銅250,000円、1号故鉛200,000円、よう解用鋼くず2級品8,200円と認定し、この価格から業者のマージン25%及び発掘費16%並びに諸経費5%相当額を控除して、売渡価額を屯当り上故銅133,160円、1号故鉛106,530円、よう解用鋼くず2級品4,570円としたものであるが、この算定の内容のうち、(イ)上故銅、故鉛及びよう解用鋼くずについて認定した市場価格は、東京経済調査会の調査による4月上旬の大阪市場価格上故銅265,000円、1号故鉛310,000円、よう解用鋼くず2級品11,000円に比べ低きに失し、(ロ)業者のマージンは、大蔵省ではこの種埋設工作物を直接需要者に売り渡す場合は認めない取扱であるのに、本件に限りこれを認めており、(ハ)発掘費及び諸経費は屯当り39,446円としているが、同年5月財団法人京都市警察職員福利厚生会に売り渡した同種品については、発掘解体の条件がほとんど同一であるのに、その経費を屯当り10,000円と積算している状況で、これらの事例に徴すれば、本件売渡価額の算定は著しく低きに失したものと認められる。

 いま仮に、東京経済調査会調査の大阪市場価格を基準とし、これから発掘費及び諸経費として屯当り10,000円及び所在地から大阪市までの運賃として10,000円を認め控除しても本件価額は約225万円となり、これに比べ売渡価額は約122万円低価に当る状況である。
 なお、売渡物件は既に買受人に引渡済であるのに、代金の一部472,260円が27年10月末現在まだ収納されていない。

(3) 統制解除後の売渡物件に低価な旧統制額を適用したもの

(113)  中国財務局山口財務部光外1出張所で、昭和26年4月及び5月、八幡製鉄株式会社に鉄くず750屯を随意契約により8,093,004円で売り渡したものが左のとおりある。

出張所 所在地
(口座名)
売渡年月 数量 売渡価額 単価 売渡時の市場価格


光市
(元光海軍工廠)
年月
26.4

400

4,659,704



14,000
12,000

24,000
23,000
岩国 岩国
(元岩国陸軍燃料廠)
〃5 350 3,433,300
14,000
8,200
12,000

から
まで
24,000
21,000
23,000
から
まで
750 8,093,004

 右は、26年2月改訂の鉄くずの統制額屯当りよう解用鋼くず1級品12,000円、同2級品8,200円、上銑くず14,000円を基準とし、これから切断、集積、輸送等の経費を控除して売渡価額を決定したものであるが、右価格統制は同年4月1日から解除されたのであるから、売渡契約当時の市場価格を採用すべきであるのに著しく低価な旧統制額を適用して処分している。
 右に関し、当局者は、本件売渡は26年3月末に決定されたが、たまたま契約の締結が遅延したもので、売渡決定時の統制額を適用したというが、3月当時の実際取引価額は統制額をはるかに上回り、4月1日から統制解除必至の情勢にあつたのであるから、3月末に取急ぎ売渡の決定をする必要はなかつたものと認められる。
 いま、売渡当時の市場価格よう解用鋼くず1級品屯当り23,000円、同2級品21,000円、上銑くず24,000円を採用し、当局者の計算方法にならい価額を計算すれば1630余万円となり、これに比べ売渡価額は820余万円低価に当る状況である。

(4) 材種別規格の認定当を得ないもの

(114)−(116)くず化を条件として処分する国有の機械器具等は、賠償解除の機械器具、鉄骨建物、工作物等であるが、市中の回収くずと異なり、発生くずも大部分は上故銑又はよう解用鋼くず1級品以上であると認められるのに、本院会計実地検査の際の調査によると、これら鉄くずの発生量について、上級品を過少に、下級の並故銑又はよう解用鋼くず2級品を過大に見積り処理したため、売渡価額の低価となつたものがあり、そのおもなものをあげると次のとおりである。

(114)  中国財務局山口財務部及び同財務部岩国出張所で、昭和25年8月から12月までの間に、八幡製鉄株式会社に山口県玖珂郡所在元岩国陸軍燃料廠の鉄くず600屯を1,273,515円で売り渡しているが、同局がよう解用鋼くず1級品と認定したものは99屯であるのに、会社は買入後506屯を同1級品として整理している状況で、売渡価額は約29万円低価に当る計算である。

(115)  北九州財務局長崎財務部佐世保出張所で、昭和25年8月から26年7月までの間に、八幡製鉄株式会社に佐世保市所在元佐世保海軍工廠外1箇所の機械器具等4,214屯を27,781,737円で売り渡しているが、同局が並故鉄と認定した172屯を会社は買入後上故鉄として受け入れ、又、同局がよう解用鋼くず2級品とした685屯に対しては、会社は667屯を同1級品、15屯を同2級品、2屯を級外品として受入整理している状況で、売渡価額は約100万円低価に当る計算である。

(116)  北九州財務局小倉出張所で、昭和26年3月、小倉製鋼株式会社に小倉市所在元小倉陸軍造兵廠の鉄くず等149屯を2,480,602円で売り渡しているが、同局の認定が上故銑26屯、並故鉄21屯、よう解用鋼くず1級品40屯、同2級品56屯、その他6屯となつているのに対し、会社は買入後鉄くずは全部を上故鉄、よう解用鋼くずは1級品91屯、2級品8屯、級外品2屯、その他6屯として受入整理している状況で、売渡価額は約20万円低価に当る計算である。

(5) 当初契約外の物件を当初契約の数量に附加して低価に売り渡したもの

(117)  近畿財務局京都財務部で、昭和26年6月、株式会社原田鋳造所外1名に宇治市所在元東京第二陸軍造兵廠宇治製造所のくず化機械器具82屯(価額3,040,750円)を売り渡し、その実貫の結果生じた超過数量分として別に103屯について同年7月及び8月に代金1,026,970円を追加徴収決定したものがある。
 右103屯は、当初の売渡物件として指定された以外のもので、たまたま同一構内に散在していたものを警察予備隊が協力して清掃集積したものであるから、別途に売渡契約すべきであつたのに、これを当初契約数量の超過分として取り扱つたのは当を得ない。
 又、その価格についてみるも、数量に増減のある場合は契約代金の内訳単価で精算する旨の条項が当初契約に定めてあつたが、この条項を適用して本件清掃くずを級外品の屯当り単価7,000円及び10,000円で精算している。しかし、右内訳単価は、総額について競争入札に付した際の買受人の見積単価であり、これをそのまま精算単価とする取扱は当を得ないもので、現に、級外品は、当時の市場価格が屯当り15,000円程度で、鋼ダライ粉でさえ9,500円から10,000円程度であつた状況である。
 いま仮に、本件を別途契約により当時の市場価格で処分したとすれば約160万円となり、これに比べ追徴代金は約58万円低価に当る状況である。
 なお、追徴代金中、株式会社原田鋳造所の分500,650円は27年10月末現在まだ収納されていない。