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  • 昭和27年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
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国有財産の管理当を得ないもの


(60)−(67) 国有財産の管理当を得ないもの

 国有財産のうち、普通財産は昭和23年ごろから特に売渡処分に重点が置かれ、ひいて管理については不十分と認められる事例が少なくないので、本院においても当局の注意を促してきたところであって、土地、建物等の管理については改善の跡が認められるが、なお使用料の徴収処置が緩慢であったものなどがある。また、旧軍用の機械器具等については、まだ管理が行き届きかね、民間業者に使用させていながら長期にわたってその使用料の徴収処置をしなかったため徴収困難をきたし、または現況についての調査を怠ったなどのため借受人によってほしいままに他に処分されたものがある。
 いま、本院会計検査の結果判明したおもなものをあげると次のとおりである。

60 ) 関東財務局で、昭和21年2月以降、井研工業株式会社に東京都北多摩郡府中町所在元陸軍機甲整備学校の旋盤、電動発電機等の機械器具117台を使用させているが、その使用料は22年度までの分188,633円を23年2月徴収決定しただけで全額収納未済となっているばかりでなく、その後現品の監査、使用料の徴収処置も講じないままであったが、その間において前記会社は、23年5月から27年2月までの間にほしいままに電動発電機等56台を約134万5000円で売却し、旋盤5台を貸し付け、送風機等23台は原因不明の亡失をきたしている状況であって、国有財産の管理著しく当を得ない。

61 ) 関東財務局で、昭和21年5月から23年10月までの間に、武田某に木更津市所在元第二海軍航空厰の機械17台(当局者の時価評価額約64円)を使用させ、同期間中の使用料として121,927円を徴収決定したが、全額収納未済となっているばかりでなく、その後使用者から23年11月ごろ返納の申出があったのに、現品を回収しないままでいるうちほしいままに他に処分されるに至ったのは国有財産の管理当を得ない。

62 ) 関東財務局で、昭和22年2月以降、株式会社小平工作所に、各種自動車再生修理および農器具製造の用に供するため、東京都北多摩郡小平町所在元東京陸軍兵器補給厰小平分厰の土地23,397坪、建物2,092坪(26年4月以降は土地12,791坪、建物1,040坪)および工作物一式を使用させているが、その使用料は22年度から24年度までの分394,578円を25年5月までに徴収決定したが、28年7月本院会計実地検査の際の調査によると、そのうち291,640円が収納されていないばかりでなく、25年度以降の分については徴収決定未済となっており、また、借受人は条件に違反して、23年4月ごろから順次に株式会社勝俣製作所ほか5名に建物356坪およびその敷地約1000坪をほしいままに使用させている状況であったので注意したところ、当局者は本件施設の大部分を借受人から返還させることとし、また、25年度から27年度までの使用料として906,363円を28年9月徴収決定したが、同月末現在まだ収納に至っていない。

63 ) 関東財務局横浜財務部で、昭和21年5月以降東洋通信工業株式会社に横須賀市所在元横須賀海軍工作学校の機械60台を使用させ、当初からの使用料として28年7月までに1,014,902円を徴収決定したが、全額収納未済となっているばかりでなく、その間において同会社はほしいままに右機械のうち、18台を大桜開拓農村工業農業協同組合ほか1会社に貸し付け、42台(当局者の時価評価額約95万円)を売り渡しているのに、長期にわたり放置していたのはその処置当を得ない。

64 ) 東海財務局で、昭和21年12月以降、中部電力株式会社に四日市市所在元第二海軍燃料厰山ノ手福利施設の変電所設備に属する機械器具一式(変圧器ほか18点212台)および柱上変圧器90台等を使用させているが、これらの物件は国有財産台帳にも記載されていないし、また、当初から27年度までの使用料概算230万円が徴収決定未済となっていたので注意したところ、10月台帳に記載を了したが、使用料の徴収については同月末現在まだその処置が執られていない。

65 ) 東海財務局で、昭和22年10月以降、株式会社三工製作所に元官設民営の愛知時計電機株式会社明徳工場所属の国有機械15台を使用させているが、一部について徴収決定した使用料26,298円を除き27年度までの使用料が徴収決定未済であるばかりでなく、軸研ま盤2台が所在不明となっていたので注意したところ、右機械は前記三工製作所によりほしいままに売却されたことが判明したので、28年10月弁償金635,800円および27年度までの使用料555,778円を徴収決定したが、同月末現在まだ収納に至っていない。

66 ) 東海財務局で、昭和23年6月以降、横井工業株式会社および株式会社青雲社に元名古屋陸軍造兵厰千種製造所ほか1箇所所属の工作機械27台を使用させているが、24年度以降の使用料が徴収決定未済となっているばかりでなく、前記機械のうち、横井工業株式会社は11台、株式会社青雲社は4台をほしいままに売却しているのに、うち7台分が28年8月現在求償未済となっていたので注意したところ、10月、27年度までの使用料561,421円および前記7台分の弁償金として時価相当額412,900円を徴収決定したが、同月末現在まだ収納に至っていない。

67 ) 中国財務局で、昭和21年4月以降、大阪鉄鋼線工業株式会社に使用させていた呉市所在元第十一海軍航空厰仁方龍王工員宿舎の建物21むね延3,618坪の管理および本件建物に関する請求権の行使について当を得ないものがある。
 右会社は、右建物のうち9むねについては使用開始後まもなく工場に改造し発生した撤去木材約500石を売却処分しており、また、23年9月、別に建物1むね356坪をほしいままに日本通運株式会社に倉庫として貸し付けていたものであるが、24年7月に至り、中国財務局は、大阪鉄鋼線工業株式会社に使用建物全部を価額9,192,058円で売り渡したところ、同会社が買受代金を納付しなかったので26年2月同局は売渡契約を解除している。しかるに、これより先25年1月、前記日本通運株式会社に貸付中の倉庫用建物はその使用人の失火により焼失したものであるから、焼失建物等についての求償権を行使すべきであるのに、長期にわたりそのままとしていたのはその処置著しく緩慢である。
 当局者は、本院の注意により28年11月に至ってようやく損害求償額として1,690,595円を徴収決定したが、全額収納未済となっているばかりでなく,同年6月までに弁償金として徴収決定した25年4月から28年3月までの使用料相当額1,436,817円も28年9月末現在まだ収納に至っていない。