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  • 昭和27年度|
  • 第3章 政府関係機関の会計|
  • 第2節 各政府関係機関別の不当事項

日本国有鉄道


第2 日本国有鉄道

(事業損益について)

 日本国有鉄道の昭和27年度の決算をみると、16億5千3百余万円の損失となっていて、これを前年度の損失2億6千7百余万円に比べると13億8千5百余万円の損失増加となっているが、後述する補充工事引当金を新規に計上しなかったとすれば本年度においては6千1百余万円の利益を生じた計算である。

(財務諸表について)

 27年度決算は前記のとおり1,653,651,781円の損失となっているが、本院会計検査の結果その修正を要すると認められるものが左のとおりあり、これにより修正計算したとすれば27年度損失は1,826,812,035円となる。

決算箇所 過誤の内容 金額

釧路ほか26鉄道管理局

未収金の計上を漏らしたもの

3,717,760
東京鉄道管理局 未収金を過大に計上したもの △4,556,251
札幌ほか7鉄道管理局 作業資産の計上を漏らしたもの 54,625,511
青函ほか2鉄道管理局 作業資産を過大に計上したもの △4,926,315
釧路ほか6鉄道管理局 固定資産の計上を漏らしたもの 33,616,062
経理局 未払金の計上を漏らしたもの △346,381,692
東京鉄道管理局 収入に処理すべきものを仮受金としたもの 744,670
経理局 引当の必要がなくなった船舶修繕引当金をそのままとしたもの 90,000,000
差引 △173,160,254

なお、

(1) 27年度末において、補充工事による同年度中の財産増加額と同額の17億1千5百余万円を補充工事引当金(補充工事による財産増加額の特別償却)として整理しているが、このような処理は補充工事により生じた財産を1事業年度だけで全額償却する結果となり、固定資産に関する費用計算の期間均分の観点からみて再検討することが望ましい。

(2) 同年度中の財産除却額は5億9百余万円、財産除却に伴う発生品収入は9億2千5百余万円で、同年度末においてその差額4億1千5百余万円を未整理負債として留保しているが、このように収入支出を相殺した経理方法によるのは妥当な経理ではなく、その収入超過分については損益勘定へ振替経理することが望ましい。

(3) 同年度末に経理局において振替車両保守引当金を10億4千1百余万円、施設保守材料引当金を3億8百余万円計上しているが、26年度中におけるこれら引当金の消化状況についてみても、第3・四半期に至り地方部局にそれぞれこの引当金の実施計画額を示達し、年度末までに27年度修繕費予算に優先してようやく消化している状況に徴しても、設定基準に合理性がなく、年度末修繕費予算の繰越を目的としたこのような引当金については特に再検討することが望ましい。

(工場経理について)

 27年度の車両工場の経費は総額339億1千2百余万円で、このうち車両修繕に要した経費は213億7千6百余万円であるが、この修繕費に関する原価計算が明確でないものがあり、たとえば、改造工事を修繕工事として施行したり、指定修繕費に合わせるために材料費の計上額を故意に調整したり、数工場間で材料を融通しあったままその整理をしなかったりしていて、年度末未成品の計上額の算定方法も区々であり、原価計算制度の励行および現状に即した整備について一層の努力が望まれる。

 また、物品経理についても、帳簿外物品を保有して循環使用しているものや、発生品を受け入れていないものが従来も指摘したところであるが、なお見受けられる。

(志免鉱業所の工事予算の使用について)

 志免鉱業所の27年度工事予算は主として立坑地区の開発に対するもので、28年度までにおおむね完了するよう計画され実施されてきたが、一方、同所の出炭計画によると、本地区の出炭を漸次増加し、少なくとも数年後には年産200,000トンに達することを期待しているものである。

 この計画は、一応起業を終えてから後に採炭に移る方針に基くもので、当局者は、予定どおり炭層が賦存している場合は、多少の金利の損と維持費の損があるが、採炭に移ってからは採炭に集中することができる利点があり、もしこの方針によらなかった場合には、将来出炭量の増大した時期に余分のぼたを処理するための運搬上の困難、新たに掘進を開始するための経費の増加、掘進作業に対する通気の困難等が考えられるが、これらを避けることができるものであるとしている。しかし、断層しゅう曲等の存在によって予想どおり賦存のない場合を想察するときは(実際にも26年度になってから立坑地区の炭層が予想どおりでないことを発見し、その後ますます条件は悪化の傾向にあるものである。)、投資がその後判明する炭況とかかわりなく当初の計画どおり行われていることは過剰投資の危険にさらされるばかりでなく、将来予定どおり採炭することができたとしても、その間の金利と維持費はばく大なものとなる。したがって、本件投資についても少なくとも炭層が予想どおりでないことを発見した26年度以降の工事計画は相当修正すべき余地があったと認められる。

 現に、28年5月本院会計実地検査当時において、はたして予想どおり採炭することができるかどうか疑問であり、賦存状態を確実には握しているのはその約1割の地域にすぎず、立坑地区の27年度末投下資本11億9千5百余万円のうち同所の計算によっても4億6百余万円のものがまだ採炭に利用されていない状況である。

(土地、建物の部外使用について)

 土地、建物(高架下を含む。)を部外に使用させている状況をみると、承認前に使用させているもの、使用させながら料金を決定していないもの、料金を決定しながらこれを徴収決定していないもの、料金を改訂しないで放置しているもの、料金の低価なもの、料金の収納を遅延しているもの、契約に違反して転貸しているのに解約していないものなどその処置当を得ないと認められるものが多い。

 その原因は、固定財産、特に高架下の管理に関する規定に不備な点があり、料金の決定について担当局所によって統一がないこと、担当者の不慣れ、事務の緩慢等のため固定財産管理が規定どおり励行されていないことなどに因るものと認められる。

 従来これらの使用料については、旅客貨物等本来の収入のように重要と考えていない傾向があるが、これも重要な収入であるからその増収および収入確保に一段の配慮が望ましい。

(受託工事費の予納について)

 日本国有鉄道が工事を受託する場合は工事費を予納させることになっているもので、事務費等については少なくとも1箇月分を前月末までに、また、請負工事費については、契約見込金額を契約に先立って現金で納付させるべきものと認められるが、27年度に受託した株式会社鉄道会館のく体工事等においてこの処置を遅延し、請負工事契約後請負代金支払までの間に現金を納付させているものがあり、日本国有鉄道に不測の損失を招くおそれがあるから、こうしたことのないよう配慮すべきものと認められる。

 また、受託工事費予納金を収納するにあたり、出納機関でない箇所で現金を収受し、これを出納機関に引き継いだものが東京工事事務所および関東地方自動車事務所だけでも27年度中に3億5千1百余万円あるが、当初から出納機関が収受すべきものである。

(工事用資材の交付について)

 工事用資材のうち、用途に普遍性のあるものは交付材料とするのが通例となっているのに、工事実施部局で、これら資材を工事請負業者持ちとしたため材料交付の場合に比べて材料費は高価となる傾向があるばかりでなく、これに割り掛ける材料取扱等の間接諸経費も増大し、不経済となっているものがあり、この現象は、27年度においては電気工事にその傾向が見受けられるので、電気工事担当部局は一段と資材調達部局との連絡を十分にしてなるべく多くの資材を円滑に交付して施行するよう配慮することが望ましい。

(物品の調達管理について)

(1) 死過蔵品の整理に関しては、従来しばしば注意してきたところであるが、27年度当初死過蔵品整理計画が立てられ、11億3千余万円に上る死過蔵品を同年度中に部内利用と売渡により一掃することを企図したが、結果においては部内利用1億8千6百余万円、売渡5億5千4百余万円で28年度へ3億9千余万円を繰り越し、売渡差損は1億4千2百余万円となっている。

 本来、期間を定めて大量の売渡をすることは、売急ぎとして価格を引き下げるばかりでなく、買受人の資力の関係もあり、また、買受人が先安を見越すため一時に多量を売り渡すことは困難となるので、陳腐化等によって不用となった物品はできるだけ早期に漸次売り渡すことが望ましい。

 なお、物品管理については、亡失き損防止ばかりでなく物品の活用に対する留意が必要であり、できる限り購入に代えて在庫品利用を促進させるとともに、使用部局とも随時連絡して使用見込を確かめ、使用見込のない滞留品は、迅速に処分手続を執って死過蔵品の蓄積を未然に防ぐよう処置すべきである。

(2) 27年度中に自動車営業所で使用した揮発油10,460,754リットル、軽油9,017,680リットルは、本庁調達品であってその大部分が用品庫に納入され、更に自動車営業所に転送されていて、このため汽車運賃を別としても約1,000万円の仲継荷役の経費を要している状況である。しかし、同年度石油製品購入契約特約条件によると、納入者と協議のうえ自動車営業所へ直送させることができ、しかも用品庫構内貨車乗渡しと同一の単価によることができることとなっていて、各営業所はおおむね貨車1両分程度を貯蔵することができるのであるから、石油製品納入指定の場合は、努めて直接自動車営業所へ納入させるよう配慮すべきであると認められる。

 なお、セメントについては、おおむね直接使用箇所に納付させてはいるが、まだ前記同様二段輸送となっているものが見受けられ一層の配慮が望ましい。

(3) 同年度中にまくら木保管料として137万余円を日本通運株式会社ほか1会社に支払っているが、右は、検収済のまくら木で貨車積込前のものを同会社に保管させて、これが亡失した場合は、同会社に代品をもって弁償させまたは日本国有鉄道の指定した賠償金を支払わせることとしたものであるが、社会情勢が不安定でまくら木の亡失事故が多かったころは別としても、社会情勢が安定した現在では集積場所(大部分は駅構内)でのまくら木亡失により賠償させた事例もないのであるから、この取扱はもはや存続の理由を失ったものと認められる。