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  • 昭和27年度|
  • 第3章 政府関係機関の会計|
  • 第2節 各政府関係機関別の不当事項|
  • 第3 日本電信電話公社(電気通信事業特別会計を含む。)|
  • 不当事項|
  • 工事

工事の設計当を得ないもの


(1806) 工事の設計当を得ないもの

(項)建設改良工事費

 日本電信電話公社建設部で、昭和28年3月工事費総額、79,245,767円で大崎、大森両局間中継線増設工事(線路、土木)を施行しているが、設計の粗漏に因り認証までに長期間を要し完成が遅延したため、これと一体をなして初めて開通の運びとなるべき蒲田、川崎両局間の市外電話回線が既に別途工事(関東電気通信局施行、工事費16,176,852円)で完成していたにもかかわらず、本件工事の完成した28年7月まで約7箇月間遊休となっている。

 右工事は、東京、横浜間に市外電話回線を増設するため、新規に東京、川崎間に400回線を布設する工事の東京都内部分線路として大崎、大森両局間に400対市内ケーブル2条12キロメートルを布設するものであって、東京、川崎間の電話は全部大崎局を経由することとなり、大崎、大森両局間の中継線が布設されなければ蒲田、川崎両局間の市外電話回線が布設されても開通の運びとならないものであるのに、蒲田、川崎両局間の工事だけが先行して27年9月着工、12月完成し、本件工事は28年1月認証、3月着工と著しく遅延し、年度内進ちょく率は0%で28年7月完成した状況で、その後大崎、川崎両局間の開通工事を施行し、9月開通をみたものである。

 東京、川崎間の電話については、当初(26年度末)荏原、大森両局間の距離を3.5キロメートルと計算し、本区間に中継線工事を施行して在来の大崎、大森両局間の市内中継回線をこれに収容替し、その跡に大崎、川崎両局間の回線を収容することとして計画していたところ、右計画によって着工する段階に至り初めて荏原、大森両局間の距離を実測したところ、計画による3.5キロメートルは実際には約5キロメートルであることが判明し、直接大崎、大森両局間に中継線を増設するのが経済的であり、また、大崎、大森両局間の所要増設回線数を27年7月調査したところ、720回線を必要とすることが判明し、前記のとおり荏原、大森両局間中継線に収容替して大崎、大森両局間の回線をあけるとしてもその限度は660回線であって、差引60回線は回線不足となり、前記荏原、大森両局間中継線工事を施行したうえ更に大崎、大森両局間にも中継線工事を施行しなければならないとの結論に達したため、当初の計画を変更したことに因り前記のように本件工事は遅延したものである。しかし、当初の計画にあたり、荏原、大森両局間中継線の距離を実際に測定し、また、その当時大崎、大森両局間の所要回線数を調査すれば右のような事情は判明したものであって、これにより本件工事を設計施行したとすれば、前記蒲田、川崎両局間市外電話線路工事と同時に着工し完成することができたものと認められる。

 いま、仮に蒲田、川崎両局間市外ケーブルの完成時の27年12月本件工事も完成するよう設計施行したとすれば、両工事の完成後開通工事に2箇月を要するとしても28年2月には開通の運びとなったもので、本回線の開通によって東京、横浜間はそれだけ回線増加となり、同回線1日当り1回線の収入実績平均約2,000円から計算するときは、同回線数の半分の200対がか働したとしても7箇月遅延分の収入額は約8400万円となり、関東電気通信局管内の総収支率によって推算すれば約3100万円の収益となる。

工事の設計当を得ないものの図1