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  • 昭和28年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第4 大蔵省

(一般会計)


(一般会計)国有財産の管理および処分

 国有財産の管理および処分に関する昭和28年度の検査は、機械器具等の管理および処分、旧軍工しよう等の一括転用による処分、船舶共有持分の管理等に重点を置いて施行した。その結果は、概要次のとおりである。

(処分収入および利用収入について)

 全国10財務局の28年度における国有財産の処分収入および利用収入の徴収決定済額は101億3千8百余万円で、これに対し収納未済額が9億7千9百余万円あり、徴収決定済額の9%余に当っているが、既往年度分の28年度末における収納未済額8億8百余万円を合わせると収納未済額の累計は17億8千7百余万円に達する状況で、そのおもなものは船舶共有持分の一部償却額および金利等6億9千余万円、国有財産の使用料4億3千1百余万円、財産税等物納財産の処分収入2億4千2百余万円、土地および建物の売払代2億4千9百余万円等であり、このような結果となったのは、債務者の経営不振、当局者の徴収決定遅延等によるものと認められる。
 28年度分の使用料として同年度中に徴収処置を講じなければならなかったのにこれを翌年度に繰り越したものが5万6千余件6億4百余万円あったので、その処理の促進を要請したところ、財産税および相続税等の物納財産1億9千余万円を除くほかは29年9月末までにおおむね徴収決定を了したが、右物納財産については、当局者は使用料を徴収することによって売渡処分に支障をきたすことをおそれ、売渡処分の完了したものについてだけ売渡代金が納入される前日までの使用料を徴収決定する方針を採っている。
 このため、22年度から28年度までの分で約5億7100万円(29年7月末現在)あって、このように未納使用料が累積することは、かえって物納財産の利用者に買受を忌避させる結果を招来するなど今後の処理を一層困難ならしめるものと認められる。

(機械器具の管理および処分について)

 旧陸軍省、海軍省および軍需省の所管に属していた機械器具で、全国10財務局が28年度首において管理していたものは111万6千余個台帳価格(以下「価格」という。)12億余万円で、年度内に引継漏れの発見により7千余個価格3千余万円を増加し、売渡等により7万4千余個価格2億5千余万円を減少したので、差引同年度末現在額は104万8千余個価格9億8千1百余万円となっている。
 右に対する管理および処分について107箇所のうち63箇所を検査したところ、処分については、価格算定の一方法として指数計算を採用しているが、指数計算にたより過ぎる傾向を改め、実情を精査し精通者の意見をも徴して価格を決定する方針を採るようになり改善の跡が認められるが、管理については、なお不十分と認められる状況である。

(旧軍工しよう等の一括転用による処分について)

 旧軍工しよう等の各施設をそれぞれ一括して民間工場に転用するものとして、28年度中に随意契約により売り渡したもののうち1件1億円以上のものをあげると、左のとおり、株式会社神戸製鋼所ほか8会社分48億1千7百余万円ある。

口座名 所在地 売渡価額 売渡契約年月 売渡先

元大阪陸軍造兵廠播磨製造所

高砂市

1,414,611,000
年月
28,9

株式会社神戸製鋼所
元大阪陸軍造兵廠枚方製造所 枚方〃 942,850,780 〃〃
〃,10
株式会社小松製作所
元光海軍工廠 光〃 780,001,306 29,3 八幡製鉄株式会社
元名古屋陸軍造兵廠高蔵製造所 名古屋〃 583,736,678 28,9 大同製鋼株式会社
元第一海軍技術廠支廠 横浜〃 371,376,583 29,3 東急車輛株式会社
元光海軍工廠 光〃 251,449,868 28,12 武田薬品工業株式会社
元第三海軍燃料廠 徳山〃 199,534,151 29,3 昭和石油株式会社
元横須賀海軍工廠造兵部 横須賀〃 161,696,892 〃〃 東京芝浦電気株式会社
元横須賀海軍軍需部
元横須賀海軍工廠造兵部
112,024,316 〃〃 大洋漁業株式会社
4,817,281,574

 本院は、これらの個々のものについて契約締結に至るまでの経緯、特に売渡対象物件の選択の自由の有無および評価の内容の当否等について検査したところ、土地、建物、機械等の各要素別にみると適確な評価とはいい難いものもあるが、施設の一括転用を条件とする処分であり、収益性、市場性等から総合的に勘案すると、その売渡価額が適正を欠いたかどうかは容易に決定し難いところであって、これらについてはなお検査を続行する。

(共有船舶の管理について)

 船舶公団の解散に伴い、同公団の所有していた共有船舶307隻に対する持分120億8百余万円は、船舶公団の共有持分の処理等に関する法律(昭和25年法律第237号)により25年10月国に引き継がれ、26年度までは大蔵省が、また、27年度以降は各財務局が船主との共有契約の条項に基いて持分の管理に当り、一定の利益がある場合等に徴収決定した持分の償却額および金利の回収に努めているが、海運界不況の影響を受けてその収納成績ははなはだしく不良である。
 いま、その状況をみると、28年度首において265隻その持分108億2千1百余万円あるが、同年度において徴収決定した額は7億7千2百余万円で、海運界の不況による各共有船舶の収支決算の不良に基き前年度の14億2千4百余万円に比べて半減している。
 また、収納未済額は3億5千2百余万円に達し、これに既往年度分の収納未済額3億3千8百余万円を加えると収納未済額の累計は6億9千余万円の多額を示している。
 本院が、船舶共有持分の管理および償却ならびに金利の回収の状況を検査した結果によると、管理が行き届かないのと、海運界の不況を反映して船主側に共有契約違背の事実が少なくなく、たとえば船体保険契約を締結していないもの、船主の共有持分を国に無断で譲渡しまたは抵当権を設定しているものがあったほか、当局の取扱においても、船主の不信行為により国に不利をきたしているものに対する処理において欠けるところがあり善処を要するものと認められる。