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  • 昭和28年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第7 農林省|
  • (一般会計)

(一般会計)


 昭和28年度において農林省の支出した経費は一般会計1490億8千3百余万円、食糧管理ほか9特別会計7177億7千7百余万円となっているが、一般会計のうち国が直轄により施行する土地改良、開拓、干拓等の事業および機械の整備等に使用したものは92億9百余万円であり、また、地方公共団体等の施行する事業に対する国庫補助金は253費目の多種類を数えその額も726億7百余万円で、そのうち土地改良、地盤沈下対策、漁港修築、林道開設および災害復旧等公共事業関係は54費目500億7千8百余万円となっている。

 各農地事務局の施行した直轄工事については、農業水利、開拓、干拓等の工事を施行する84事業所のうち35事業所の会計実地検査を実施したが、直営工事において工事費等から架空の人夫賃、材料購入費等の名義により支払に立て、多額の資金をねん出してこれを手元に保有し、ほしいままに労力費、材料購入費、機械器具費に使用していたり、請負工事において工事の現場監督および検収が不十分なため工事の施行が粗漏で手直しを要するものや、工事の出来高が不足しているのに設計どおり完成したものとして請負代金の全額を支払ったものがあるほか、請負工事費の積算にあたり現地の調査が不十分であったり、所要歩掛りの検討に慎重を欠いたため積算過大となっているものなどが、別項(930−951) に記載したとおり多数見受けられた。

 地方公共団体および農業協同組合等が施行した土地改良、地盤沈下対策、漁港修築、林道開設および災害復旧等の補助工事については、従来検査の結果事業主体が正当な自己負担をしないばかりか、なかには国庫補助金以下の工事費で工事を完成しているものが多数発見されている実情にかんがみ特に市町村が施行した工事に重点を置き全国の工事現場71843箇所のうち6%に相当する4366箇所を実地に検査したが、その結果、工事の出来高が不足しているもの、設計が過大なもの、工事の施行が粗漏で補助の目的を達していないものなどが多数に発見され、国庫補助金除外額1工事10万円以上のものだけでも1907工事国庫補助金5億8千9百余万円に上り、かつ、その大部分86%に当る1654工事はいずれも事業主体が正当な自己負担をしていないものであって、そのうちには国庫補助金以下で工事を完成し、国庫補助金に剰余を生じたこととなっているものが多数ある。

 公共事業関係補助工事の不当事項は従来検査の結果によれば災害復旧工事がその大部分を占めており、そのうち工事の出来高が不足しているものについては工事完了後に行う検査において是正改善を行わせることもできるが、その他の設計過大、災害便乗等は工事完成後の検査ではその是正が困難であるばかりでなく、28年に発生した災害はきわめて膨大であり、かつ、その国庫補助も高率を適用されることとなったので、工事完了前に査定内容を調査して早期に是正させることとし、査定額が特に多額な和歌山県ほか15府県の5万5千9百余箇所工事費査定額561億8千余万円のうち2億3千6百余箇所310億8千余万円について調査を行なったが、その結果は、二重査定、改良その他災害復旧の対象としてはならないもの、および設計過大となっているものが多数認められたので当局者に注意したところ、1万6千7百余箇所について工事費87億1百余万円が減額是正された。

 また、公共事業関係以外の国庫補助金は199費目総額225億2千8百余万円の多きに上っているが、本年は右補助事業のうち、国庫補助金が団体あるいは各種組合等を経由して末端の事業施行者に交付される農村振興、農産物増産助成、農作物病虫害防除等の経常的補助および28年に発生した冷害、凍霜害、風水害に対する災害対策補助会計133費目総額100億7360余万円を選び、280余の市町村および各種組合を実地に調査したが、その結果は国庫補助金の一部または全部が事業施行者に交付されることなく市町村等で補助の目的と相違する使途に使われていたり、また、国庫補助金がそのまま停滞していたり、更に補助金額が零細なため配分に困難を生じ補助の効果があがらなかったものなどが多数見受けられたほか、一般的な傾向として事業主体が正当な自己負担をしていないため事業量の不足しているものがきわめて多い状況で、これら国庫補助金の経理当を得ないと認められるものが、調査の結果判明したものだけでも1千余件2億4千余万円に上っている。