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  • 昭和28年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第8 通商産業省|
  • (緊要物資輸入基金特別会計)|
  • 不当事項|
  • 物件

石綿の輸入にあたり処置当を得ないため国に損害を与えたもの


(1896) 石綿の輸入にあたり処置当を得ないため国に損害を与えたもの

 通商産業省企業局で、昭和27年2月から7月までの間に、輸入業者であるグりーンヒル加藤商会ほか4会社から高級石綿246.56トン価額65,981,085円を見とおしを誤って購入したため、結局、29年5月末現在で10,273,359円の政府損失を生じているものがある。
 右は、当時民間輸入契約成約済であった石綿1,375トンのうち246.56トンについて、前記輸入業者5会社と石綿加工業者日本アスベスト株式会社ほか3会社との間で売買契約締結済であったが、石綿加工業者4会社の資金事情が悪化して引取が不可能となったとして同省で緊要物資輸入基金特別会計法(昭和26年法律第58号)第4条の規定により前記のように購入したものであるが、業者の資金事情の悪化を救済する趣旨で基金を運用したのは適切な処置とは認められない。
 しかして、本件購入にあたっては、石綿加工業者4会社からは、通商産業省が購入して後6箇月以内にこれを引き取る旨の念証を徴し、また、輸入業者からは、石綿加工業者が引き取らなかった場合は輸入業者において引き取り、通商産業省に対しては一切迷惑をかけない旨の引取誓約書を提出させていたのであるのに、特需の発注減少に伴う市況の軟化から関係業者は買もどしに対する熱意を失い、結局、27年7月から29年5月までの間に石綿加工業者4会社に対して226.84トンを54,120,169円で売り渡し、前記のように諸掛りを含めて10,273,359円の損失を生じたもので、国がその損失の全部を負担するに至ったのは本件購入の経緯からみても当局者の処置が適当であったとは認められない。
 なお、29年5月末日現在関係業者の引取がないまま19.72トンが在庫となっている。