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  • 昭和28年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第12 建設省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業に対する国庫負担金の経理当を得ないもの


(2036)−(2199) 公共事業に対する国庫負担金の経理当を得ないもの

(組織)建設本省 (項)河川等災害復旧事業費 ほか5科目

 地方公共団体が施行した災害復旧等の工事に対する国庫負担金(都市災害復旧事業費等に対する国庫補助金を含む。以下同じ。)は、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)等の根拠法規に基いて交付されたものであるが、本院において全国の工事現場47,636箇所のうち青森ほか7県を除く38都道府県につき11.8%に相当する5,644箇所を実地に検査したところ、架空工事、設計に対し工事の出来高が不足しているもの、設計が過大なもの、工事の施行が粗漏で補助の目的を達していないもの、災害復旧とは認められない改良工事を施行しているものなどが多く、国庫負担金を除外すべきことの判明したものが、北海道ほか36府県において、除外すべき額1工事10万円以上のものをあげると451工事138,957,098円に上っている。これを事項別に分類して示すと次表のとおりであるが、以上の結果から考察するとこの種不当工事は全国では相当多数に上るものと認められる。

類別
都道府県名
架空、二重査定、改良その他補助の対象としてはならない工事 工事の施行が粗漏で目的を達していないもの 工事の出来高が不足しているもの 工事の設計が過大なもの 事業主体が正当な自己負担をしていないもの
類別
都道府県名
工事の施行が粗漏なもの 工事の出来高が不足しているもの 工事の設計が過大なもの その他
工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額

北海道

1

318,400



10

2,285,918



2

936,000

11

3,942,548

5

2,124,425

3

485,840

32

10,093,131

北海道
岩手県 1 1,474,587

3 750,763





1 181,531

5 2,406,881 岩手県
宮城〃



1 134,064



1 185,136 2 300,934

4 620,134 宮城〃
秋田〃 2 541,444

3 1,280,610 1 175,979 3 2,192,973 12 2,196,129 1 154,660 4 842,987 26 7,384,782 秋田〃
山形〃



4 719,031



2 262,038



6 981,069 山形〃
福島〃

1 294,236 1 105,386









2 399,622 福島〃
群馬〃









1 115,830



1 115,830 群馬〃
神奈川〃



5 893,833



2 479,010

2 327,732 9 1,700,575 神奈川〃
新潟〃



4 640,721



4 758,324 9 1,782,992

17 3,182,037 新潟〃
富山〃

1 198,099 7 1,811,828



2 947,140 1 173,420

11 3,130,487 富山〃
石川〃

1 397,553 1 481,274

2 837,888 6 1,036,673 6 1,133,288 1 1,222,059 17 5,108,735 石川〃
福井〃 1 330,902







1 290,563

1 287,966 3 909,431 福井〃
山梨〃









1 321,470 4 615,594

5 937,064 山梨〃
長野〃













1 108,054 1 108,054 長野〃
岐阜〃 1 382,000 1 176,850 4 635,000



1 132,066 1 520,260 1 201,434 9 2,047,610 岐阜〃
静岡〃



2 458,232 1 110,722

5 637,705 2 322,193

10 1,528,852 静岡〃
愛知〃



2 917,299

2 274,804 12 13,318,726

5 1,256,570 21 15,767,399 愛知〃
三重〃

1 1,168,925 16 3,838,322 1 568,032

4 753,673

1 111,960 23 6,440,912 三重〃
滋賀〃

2 1,279,634 4 674,293









6 1,953,927 滋賀〃
京都府



6 1,171,631



11 1,642,273

1 195,755 18 3,009,659 京都府
大阪〃

1 173,991 4 939,329







1 168,399 6 1,281,719 大阪〃
兵庫県 1 188,440

4 498,916



1 102,051



6 789,407 兵庫県
奈良〃



2 254,648









2 254,648 奈良〃
和歌山〃 3 3,934,262 1 1,011,867 1 160,747

1 414,948 9 3,122,065 2 1,791,954 9 1,984,804 26 12,420,647 和歌山〃
島根〃



2 279,489

1 109,388 9 1,332,069 1 104,550 3 570,822 16 2,396,318 島根〃
岡山〃

1 125,396 2 626,480

1 128,731

2 701,795

6 1,582,402 岡山〃
広島〃

1 216,920 7 1,270,085



1 163,030



9 1,650,035 広島〃
山口〃 4 10,748,147

5 805,320 1 105,386

2 1,894,429



12 13,553,282 山口〃
徳島〃

1 100,330 2 329,126



6 829,044

3 395,557 12 1,654,057 徳島〃
愛媛〃



7 2,468,999

1 2,411,076 17 3,489,524 3 1,251,248

28 9,620,847 愛媛〃
高知〃 3 1,080,019

2 285,069

1 253,400 12 2,899,863



18 4,518,351 高知〃
福岡〃 4 2,370,246

2 314,647



14 2,634,117



20 5,319,010 福岡〃
佐賀〃



3 579,364





1 345,627

4 924,991 佐賀〃
熊本〃



9 2,965,348



5 2,602,304



14 5,567,652 熊本〃
大分〃



1 124,764



2 228,895 1 135,240 5 753,274 9 1,242,173 大分〃
宮崎〃



4 593,839



18 3,497,837 1 741,520 3 621,590 26 5,454,786 宮崎〃
鹿児島〃 1 170,810

2 391,828 1 134,067

6 1,992,457

1 211,420 11 2,900,582 鹿児島〃
合計 22 21,539,257 12 5,143,801 132 29,686,203 5 1,094,186 14 7,559,208 178 51,806,989 43 12,381,231 45 9,746,223 451 138,957,098 合計

 この種不当事項については、既に昭和26、27年度決算検査報告において多数指摘したところであるが、本年度は、市町村が施行した工事について、全面的にその工事の実施状況と工事費精算額の当否をあわせて重点的に検査した結果、表面上は競争入札等により工事を実施設計額と同程度の額で請け負わせて施行したこととして国庫負担金の交付を受けているが、実際はこれより低価に請け負わせ施行し、正当な自己負担をしていないものがあり、このように実際上の工事費が不当に少額となったため工事の出来高が不足したり、工事が粗漏で災害復旧の目的を達していないものが多く、なかには工事完成後まもないのに再び被災したものも見受けられる。一方、実施設計が現地に適合せず、その結果積算が過大となっているのに同設計額をもって請け負わせたこととし、実際は国庫負担金相当額程度で工事を施行し自己負担を免かれているものも多い。特に28年発生災害については、災害復旧特別措置により高率の国庫負担率が適用され、これにより事業主体の負担を軽減する処置が講ぜられたにもかかわらず、前記のようになお事業主体が正当な自己負担をせずかえって国庫負担金に剰余を生じているものがあり、また、工事施行の面においても相当のかしが見受けられているのはまことに遺憾である。

 しかして、検査の結果明らかになった不当事項451工事のうち、国庫負担金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると別表第5のとおり164件101,396,667円ある。
 これら不当事項の防止対策については、別項農林省所管(参照) に記述したと同様に、建設省についても昭和27年度決算検査報告に記述したとおりであるが、従来、災害復旧査定上の欠陥により、本院において事後に発見する不当事項が多数に上っていた実情にかんがみ、査定の内容を早期に是正して不当事項の発生を防止するため、別項記載(参照) のとおり28年発生災害に対し従来どおりの事後検査にあわせて早期に調査を行なったところ、二重査定、災害便乗、設計過大等の事態となっているものが多数発見され、建設省においては本院の注意により工事費において20億5千余万円を減額是正することとなった。
 しかして、前記不当事項451工事のうち、代表的な事例を説明すると次のとおりである。

(1) 秋田県山本郡響村が1,404,000円(国庫負担金1,003,860円)で施行した村道田代線災害復旧は、道路100メートルに法長5メートルで路側練石張を施行したこととしているが、実際は上流部48メートルに石垣を法長1.7メートルで施行し、下流部38メートルは応急的な柳かごおよび詰くい工を施行したにすぎず、しかも上流部練積石垣は根入れが不足しているため胴木が抜け出し全面的にはらんでいるなど工事が著しく粗漏で工事費は国庫負担金を下回る550,000円で足り、同村はその負担したとしている400,140円を全く負担していないばかりでなく453,860円の剰余を生じ、この剰余金は村の一般経費に充てられている。(粗漏工事、事業主体負担不足)

(2) 愛知県幡豆郡横須賀村が27,211,200円(国庫負担金23,059,924円)で施行した村道中部幹線ほか6災害復旧は、道路および護岸計3,048メートルの石垣8,908平米を施行したものであるが、石垣は裏込ぐり石をほとんど施行することなく、また、法長も不足しているため5,246平米を施行したにすぎず、工事費は国庫負担金を下回る12,885,968円で足り、同村はその負担したとしている4,151,276円を全く負担していないばかりでなく10,173,956円の剰余を生じ、剰余金のうち4,827,832円で査定外にから積石垣1,773平米を施行している。(出来高不足、設計過大、事業主体負担不足)

(3) 三重県が3,950,000円(国庫負担金3,747,769円)で施行した上野市服部川28年災害復旧は、堤防144メートルの練石張790平米を控36センチメートルまたは45センチメートルの雑割石を使用して施行したこととしているが、実際は控25センチメートル程度のものを使用し、また、胴込コンクリート、裏込れきとも施行量が設計の3分の1にも及ばず工事が著しく粗漏となっている。なお、本件工事は、本院の指摘により手直し中、29年9月手直し未了分が再度災害を受けて流失している。(粗漏工事)

(4) 和歌山県が施行した水軒川災害復旧は、28年6月から29年3月までの間に、直営で護岸747メートルを施行し、工事費8,729,992円(国庫負担金6,285,594円)を要したこととしているが、実際は6,826,222円で足りたものであるのに人夫賃に付掛けして1,903,770円をねん出し、うち1,151,003円を29年8月までの間に県土木出張所職員の手当、常よう人夫賃に充て、29年9月本院会計実地検査当時残金752,767円を預金で保有していたものである。
 また、福岡県においても右と同様、県道北野御井線28年災害復旧を工事費3,428,000円(国庫負担金3,095,400円)で完成したこととしているが、実際は1,982,945円で足りたものであるのに運搬費、人夫賃等に付掛けして1,445,055円をねん出し、これを国庫負担対象外の道路修繕工事の常よう人夫賃および石材等の経費に充てている。(改良その他国庫負担の対象としてはならない工事)

(5) 和歌山県有田郡箕島町が12,190,000円(国庫負担金11,239,180円)で施行した町道逢井線28年災害復旧は、ずい道延長403メートルに崩落した硬岩2,525立米を爆破のうえ取り除いたこととしているが、実際はうち345立米は砂れきであって爆破の必要がなく、搬出だけですんだため工事費は10,400,000円で足り、同町はその負担したとしている950,820円を全く負担していないばかりでなく839,180円の剰余を生ずることとなっている。(設計過大、事業主体負担不足)

(6) 山口市が4,200,000円(国庫負担金3,006,050円)で施行した干見折川災害復旧は、25年9月被災した同川左岸堤防400メートルを復旧したこととしているが、実際は堤防にはほとんど被害が認められず、本堤防上の在来幅員2.5メートルの市道を5.5メートルに拡幅改良し28年3月災害に名をかり新設された百間橋(昭和27年度決算検査報告参照) と国道第2号線とを連絡する最短路線にしようとしたものである。
 また、同市が施行した市道石津橋26年災害復旧は20,212,851円の工事費に対し、その全額を国庫負担の対象として国庫負担金14,321,021円を交付しているが、本件橋りょうは25年災害復旧として市単独負担分11,095,000円を含め22,972,000円で施行中わずか2,677,234円の出来高(ほかに未使用で災害を受けない資材3,482,235円)のところ26年9月再度被災し、同一のものを再び採択したものであるから、25年災害復旧の施行条件である市単独負担分を考慮して国庫負担の対象を決定すべきであったのに工事費の全額を国庫負担の対象としたため3,613,766円が超過交付となっている。(改良その他国庫負担の対象としてはならない工事)

(7) 山口県大津郡油谷町(旧向津具村)が3,485,500円(国庫負担金3,147,406円)で施行した渡船災害復旧は、26年10月在来就航船が沈没したこととして23トンの渡船を新造したものであるが、実際は同船は引続き海上輸送を行なっていて沈没したものではないのに、沈没した他船の写真により査定を受け、旅客収容能力が少なく老朽した在来船に替え新たに船を建造したものである。(改良その他国庫負担の対象としてはならない工事)
 また、同町(旧菱海村)が6,745,000円(国庫負担金5,815,475円)で施行した泉川災害復旧は、護岸802メートルの練積石垣2,264平米を施行したこととしているが、実際は根入れが不足し1,987平米を施行したにすぎないばかりでなく、胴込コンクリート、裏込ぐり石も設計に比べ3割程度不足しているため工事費は国庫負担金を下回る5,396,000円で足り、事業主体はその負担したとしている929,525円を全く負担していないばかりでなく419,475円の剰余を生じたこととなっている。(出来高不足、事業主体負担不足)

(8) 松山市(旧愛媛県温泉郡興居島村)が2,550,000円(国庫負担金2,411,076円)で施行した釣島海岸災害復旧は、堤防201メートルにから積石垣2,165平米を施行したこととしているが、実際は根入れが全延長にわたって著しく不足し1,628平米を施行したにすぎず、その後の波浪によって表石垣は全面的に砂上に露出し、一部は崩壊しているなど工事が著しく粗漏で工事費は国庫負担金を下回る1,856,272円で足り、事業主体はその負担したとしている138,924円全く負担していないばかりでなく554,804円の剰余を生じたこととなっており、これを別途由良小学校釣島分校校庭整地工事費に充てている。(粗漏工事、事業主体負担不足)

(9) 宿毛市(旧高知県幡多郡宿毛町)が996,000円(国庫負担金697,200円)で施行した町道昭和野地線災害復旧は、道路50メートルの路側線積石垣400平米を復旧したこととしているが、被災の事実が認められず、工事も全く施行していない。(架空工事)

(10) 鹿児島県姶良郡隼人日当山町(旧隼日当山町)が7,229,600円(国庫負担金6,644,002円)で施行した西光寺川災害復旧は、護岸869メートルにから積石垣2,806平米を施行したこととしているが、実際は法長が不足し2,532平米を施行しただけであり、また、根固工は長さ2メートルの詰ぐいを使用したこととしているのに1.5メートル前後のものを施行したにすぎないため、工事費は国庫負担金を下回る5,883,900円で足り、同町はその負担したとしている585,598円を全く負担していないばかりでなく760,102円の剰余を生じており、これを町の一般経費に充てている。(出来高不足、事業主体負担不足)