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  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
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不適格な不凍液を検収したもの


(28) 不適格な不凍液を検収したもの

(組織)防衛庁 (項)保安庁

 防衛庁調達実施本部で、陸上幕僚監部の要求により、昭和29年8月および9月、一般競争契約により日新産業株式会社から不凍液81,588キログラムを単価183円から192円総額15,152,914円で購入しているが、納入された現品は仕様書と著しく相違している。

 本件不凍液は、寒冷時において自動車のエンジン冷却水に添加し、その凍結を防止する用途に使用するもので、仕様書によるとその成分はエチレングリコール93%以上、比重は摂氏20度において1.1から1.2あることを要し、凍結点はそれぞれの濃度において所定の温度以下でなければならないこととなっている。

 しかるに、30年5月、本院会計実地検査の際、当局が任意抽出した現品3かんの試料について凍結試験を実施した結果によると、仕様規格所定の量よりも多量を使用しなければ所定の温度における凍結防止が不可能であり、また、29年10月から30年7月までの間、当局および北海道大学で数回行なった分析試験の結果によっても、エチレングリコールは65%程度にすぎず、購入規格より著しく低いばかりでなく比重を高めるために添加したと認められる相当量の糖分があることが判明した。本件不凍液の検収は、検査担当官を工場に出張させ、抜取方式により試料を抽出し、仕様書に規定した規格試験を行なった結果合格したというのであるが、その際納入される現品の容器に封印等の処置をとらず各部隊あて納入者から送付させているので、工場における検査が適確に行われたとしても、各部隊に実際に納入された現品の品質は保証されないものであるのにそのまま納入されたものであって、受領部隊では効果を確保するため多量に使用した結果16,264キログラムの不足をきたし、29年12月、日本自動車株式会社ほか2会社から16,160キログラム3,668,320円を購入することを余儀なくされた状況である。

 なお、29年8月および9月、一般競争契約により前記日新産業株式会社ほか1会社から携帯燃料21,457個を561,125円で購入しているが、本院が30年7月から9月までの間に福山、練馬両駐とん部隊の在庫品669個について調査したところ、両会社製品とも50%から90%程度のかんが漏えいまたは発錆している状況であり、また、練馬駐とん部隊で外見上完全なものをも含めて在庫品12個を抽出し炊飯試験を実施したところ、規格の27分以内で炊飯することができたものは皆無であるばかりでなく、燃焼時間も規格の47分に及ばない状況である。このように1年程度で実用に耐えなくなったのは容器の仕様および検収が適当でなく、保管中に内容物が漏えいしたためと認められ処置当を得ない。