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  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第8 農林省|
  • (農業共済再保険特別会計)|
  • 不当事項|
  • その他

農業共済保険事業の運営が適切でないもの


(1799)−(1969) 農業共済保険事業の運営が適切でないもの

 農林省で、昭和28、29両年度に北海道ほか45都府県および同農業共済組合連合会に対し、一般会計から農業共済事業事務費負担金4,812,534,762円(うち28年度分2,431,667,000円)、また、農業共済再保険特別会計から28、29両年産農作物および蚕繭の再保険金31,203,500,769円(うち28年度分18,608,768,232円)を支出している。

 本院においては、29年中、福島ほか8県、129市町村の農業共済組合について、主要農作物に対しては法律上義務加入となっている本旨に即し、共済組合の掛金の徴収が適期、適切に行われているか、また、共済金はその全額が組合員に正当に支払われているかに重点を置き、さらに、共済組合の保険金請求に際し被害の評価および府県農業共済組合連合会への被害報告は事実に即して行われているか、組合員に対する共済金の額は正しく決定されているかをあわせて調査したが、30年1月以降も引続き青森県ほか29府県、492の農業共済組合について調査したところ、その結果は昭和28年度決算検査報告(参照) に掲記したと同様に掛金の徴収が適切に行われている組合は少なく、共済金の支払のない無被害の年度においてはその大部分が未収のまま放置され、被害が発生して共済金支払の行われるときに初めて未収繰越掛金その他未収金を差し引いて徴収しその決済を行なっていたり、連合会の行なった修正に基き個人別支払額を決定しているように支払台帳を作成しているが、実際は組合の行う独自の損害評価に基きまたは被害3割未満の補償対象外の耕地をも含む全引受面積に対し均等割で支払ったり、共済金の一部を組合員に支払うことなく別途に保有して後年度分の掛金等の準備金としたり、農業協同組合出資金、農機具等の購入費、組合業務費、飲食費、組合役職員の個人的使途に充てたりしているものなど共済事業の運営および経理当を得ないものが多数あったほか、保険金を連合会に請求するにあたり、組合の損害評価額を上回る報告を行なって過大な保険金を受領したり、または引受一筆ごとの適正な損害評価をしないで達観により被害報告を行い保険金受領後これに合わせて損害評価野帳を作成したりしているものなどがあり、共済事業の根本をなす損害評価についても適正を欠く事例が見受けられたことは誠に遺憾である。

 右のような実情からみると、結局、本制度は農民から遊離し、保険が共済組合と上部機関との間で空転している感さえするものがあり、また、掛金は正当に徴収されておらず、他方、多額の共済金は末端組合で任意に操作されて全部または一部が組合員に配分されない実情であることは違法の処置であるばかりでなく、保険制度の基盤を根底からくつがえしているものといわざるを得ない。しかして、調査の結果判明したこれら共済金の経理当を得ないと認められるものは414組合1,982,030,324円(国庫負担分推定額13億8千9百余万円)に上っており、これを不当の態様別に示すと次表のとおりである。

府県名 調査共済組合数 調査済共済金額 共済金を組合員に全く支払わないもの 共済金の一部を組合員に支払わないもの(うち目的外に使用した額) 共済金を補償対象外の被害三割未満の耕地をも含めて配分しているもの
組合数 共済金額 組合数 共済金額 組合数 共済金額 組合数 共済金額

青森県

13

258,678,901



6

124,657,357
(3,473,948)

7

120,998,368

13

245,655,725
岩手〃 16 130,973,082

11 59,948,240
(6,760,875)
3 22,878,124 14 82,826,364
宮城〃 14 149,505,846

2 23,832,750
(528,700)
5 27,816,745 7 51,649,495
茨城〃 17 94,617,432

5 22,908,243
(838,853)
12 63,173,277 17 86,081,520
群馬〃 16 65,969,058

2 9,684,000
(404,785)
8 26,778,622 10 36,462,622
千葉〃 15 98,308,145

6 34,362,194
(2,375,911)
4 21,131,381 10 55,493,575
新潟〃 16 59,626,056

5 17,066,541
(979,965)
2 5,381,282 7 22,447,823
石川〃 16 54,173,593

7 19,909,494
(3,301,024)
6 23,920,934 13 43,830,428
福井〃 16 118,426,727

7 42,951,910
(2,352,921)
7 49,756,224 14 92,708,134
山梨〃 14 42,526,465

10 18,696,397
(2,822,774)
4 17,145,297 14 35,841,694
長野〃 14 144,594,721

4 47,870,007
(828,473)
10 78,364,381 14 126,234,388
岐阜〃 13 39,107,894

11 30,814,368
(4,026,106)
2 2,140,853 13 32,955,221
愛知〃 7 16,467,828

3 7,339,758
(1,892,801)
2 5,779,128 5 13,118,886
三重〃 17 73,669,976

11 30,674,921
(3,617,357)


11 30,674,921
滋賀〃 14 82,597,267

7 47,012,902
(4,582,698)
6 23,378,797 13 70,391,699
京都府 1支部 86,014,667

1支部 74,193,625 4 10,552,590 1支部 84,746,215
15
11 (7,256,501) 15
大阪〃 16 86,701,968 1 3,294,773 13 63,554,194
(6,874,253)
2 14,215,878 16 81,064,845
奈良県 16 66,624,215

14 58,119,840
(17,505,010)
2 8,704,615 16 66,824,455
和歌山〃 14 78,899,384

12 56,885,465
(15,124,390)
2 12,800,020 14 69,685,485
鳥取〃 18 35,285,975

16 24,417,409
(4,619,541)
1 297,544 17 24,714,953
島根〃 19 59,611,351 1 971,628 11 36,754,014
(4,986,136)
3 1,640,662 15 39,366,304
広島〃 22 66,540,370 2 4,581,959 12 31,819,854
(3,629,821)
5 3,528,811 19 39,930,624
山口〃 15 47,776,227

1 1,388,335
(35,981)
4 13,319,167 5 14,707,502
香川〃 18 42,265,404

13 26,729,022
(8,898,031)
5 12,572,741 18 39,301,763
高知〃 20 64,933,286 4 5,060,586 12 43,074,277
(5,862,592)
4 6,738,524 20 54,873,387
福岡〃 32 169,392,676

21 118,982,490
(14,529,867)
10 38,739,804 31 157,722,294
佐賀〃 14 80,144,351

9 43,696,856
(2,745,565)
1 4,258,241 10 47,955,097
熊本〃 15 151,343,661

8 66,179,345
(6,193,983)
7 48,857,851 15 115,037,196
大分〃 26 146,641,764

16 82,537,234
(3,507,511)
5 20,003,963 21 102,541,197
鹿児島〃 14 47,465,652

1 1,083,468
(106,242)
6 16,103,044 7 17,186,512
合計 1支部 2,658,883,942 8 13,908,946 1支部 1,267,144,510 139 700,976,868 1支部 1,982,030,324
492 267 (140,662,615) 414

 以上の結果から考察すると、本制度は法の期待する正規の運営が実施されているとは認められない実情であるが、これは、損害率のは握が困難な農作物を対象とし、しかも、引受単位も個々の農家の一筆ごとの耕地であって、常襲被害地と無被害地があるにかかわらず、これを同一条件のもとに一律に掛金を決定するほかなく、無被害地の所有者等はその掛金が掛捨てとなる不平から掛金納入に非協力であり、また、その他の農家も掛金、賦課金等が高額で農家経済において税金に次ぐ重圧を加えているにかかわらず災害発生時の補償額、とくにその手取額がきわめて少ないため、本事業の目的である損失補償の実があがらない不満から制度に対する関心を薄め、結局、掛金の納入をきらう傾向を誘っており、末端市町村組合はこの矛盾、欠陥による未収掛金の補てんに苦慮し、なかには実際よりも過大な被害報告により取得した水増保険金をこれに充てるなどして組合経理の収支を合わせるような違法な経理を行うにいたるものもある状況である。このような実情のため被害報告の水増額は全国の共済組合の分を集計すると相当多額に上るものと推測されるばかりでなく、本特別会計は一般会計から年々多額の国庫負担金、共済組合事務費等の交付を受けているにかかわらず収支が全く不均衡で、制度開設以来約190億円の多額を一般会計から赤字補てんしており、国家財政に相当の重圧を加えている結果となっている。いま、検査の結果判明した組合の不当経理のうち、とくに不当と認められる共済金目的外使用が1組合当り20万円をこえるものをあげると別表第5のとおり171組合その目的外使用額145,480,833円になっているが、これら不当経理のうち代表的な事例をあげると次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第5に掲記した番号を示す。)。

(1) 共済金の全部を組合員に支払わず、また、掛金も徴収していないため保険が農民から遊離し、組合と上部機関との間で空転しているもの

 〔1〕 大阪府泉北郡北池田村農業共済組合で、28年産水稲および麦共済金2,347,417円、29年産水稲および麦共済金947,356円計3,294,773円を被害3割以上の耕地に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は全く支払っていないばかりでなく掛金も全く徴収せず、共済金の全額を帳簿外に経理し、各種共済掛金、賦課金および災害見舞金や架空の証拠書類を作成するため購入した組合員名の印鑑299個の代金その他の支払に充てている状況で、同組合は設立当初からこのような経理を行い30年5月本院会計実地検査当時2,152,900円を預金で保有していた。(1867)

 〔2〕 島根県那賀郡今福村農業共済組合で、28年産水稲保険金335,185円、29年産水稲保険金539,280円計874,465円を県農業共済組合連合会から受領しているが、同組合は25年度以降農作物の被害について適正な損害評価を行わず、共済金を全く支払っていないばかりでなく掛金も全く徴収せず、保険金は県連合会に支払うべき保険料等と相殺されていて、組合の共済事業は全く停止している。(1902)

 〔3〕 広島県安佐郡安村農業共済組合で、28年産水稲および麦保険金1,154,479円、29年産水稲および麦保険金1,005,520円計2,159,999円を県農業共済組合連合会から受領しているが、同組合は26年度以降農作物共済事業について共済金を全く支払っていないばかりでなく掛金も全く徴収せず、保険金は同組合の存立を維持するだけのために交付されており、30年4月本院会計実地検査当時1,127,642円を預金および現金で保有していた。(1910)

 〔4〕 高知県安芸郡安田町農業共済組合で、28年産水稲および麦共済金1,529,753円、29年産麦共済金125,384円計1,655,137円を被害3割以上の耕地に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は全く支払っていないばかりでなく掛金も全く徴収せず、共済金の全額を無記名の当座預金に預け入れて帳簿外に経理し、各種共済掛金、賦課金その他一切の組合諸経費の支払財源に充てている状況で、同組合は設立当初からこのような経理を行い、30年5月本院会計実地検査当時3,103,251円を預金で保有していた。(1928)

(2) 共済金を補償対象外の被害3割未満の耕地をも含めた引受全面積に対して配分し、そのうちから未収掛金等を差し引いているもの

 〔1〕 茨城県稲敷郡東村十余島農業共済組合で、28年産水稲共済金5,932,440円、29年産水稲共済金570,920円計6,503,360円を被害3割以上の耕地に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際はそのうち6,142,682円を補償対象外の耕地を含めた引受全面積に対し均等割で配分し、これから未収掛金および賦課金計1,572,033円を差し引いて4,570,649円を部落代表に一括交付しており、共済金の残額360,678円は職員名義の貯金口座に預け入れて帳簿外に経理し、組合諸経費に充て、30年9月本院会計実地検査当時116,797円を預金で保有していた。(1814)

 〔2〕 和歌山県海草郡川永村農業共済組合で、28年産水稲および麦共済金1,449,456円、29年産水稲および麦共済金1,384,967円計2,834,423円(うち組合負担金179,646円)を被害3割以上の耕地に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は組合負担金のうち81,411円を負担しないで、共済金2,753,012円のうち1,902,413円を補償対象外の耕地を含めた引受全面積に対し均等割で配分しただけで、500,000円を翌年度水稲掛金準備金、217,642円を未収掛金、賦課金120,000円を組合事務費に充て、残額12,957円を帳簿外に経理している。(1889)

 〔3〕 福岡県浮羽郡浮羽町大石農業共済組合で、28年産水稲および麦共済金4,433,839円、29年産水稲共済金684,724円計5,118,563円を被害3割以上の耕地に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際はこのうち4,590,058円を補償対象外の耕地を含めた引受全面積に対し均等割等で適宜に配分し、残額528,505円を架空の大石共子名義で大石農業協同組合預金口座に預け入れて帳簿外に経理し、同組合の操作資金として運営している状況で、28年11月から30年8月までの間に約250万円を操作して、組合業務費、食糧費、雑費等に充てている。(1939)

(3) 共済金の一部を組合員に支払わないで、帳簿外に保有し、これを目的外の農業協同組合出資金、農機具購入費、飲食費等に使用しているもの

 〔1〕 滋賀県高島郡新旭町饗庭農業共済組合で、28年産水稲共済金5,404,418円を被害3割以上の耕地251町3反に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は損害評価書と異なる被害面積176町7反を基礎として2,632,076円を被害割、563,210円を減収石数割、563,210円を引受全面積563町2反に対し均等割で計3,758,496円を配分し、これから未収掛金等114,614円を差し引き、3,643,882円を組合員に支払っているだけで、共済金の残額1,645,922円は帳簿外に経理し、そのうち927,233円を29年産水稲共済掛金その他各種掛金に充て、279,260円を飲食費、雑費に、230,124円を見舞金等に使用しており、30年3月本院会計実地検査当時96,032円を預金で保有し、113,273円は使途不明となっていた。(1855)

 〔2〕 京都府農業共済組合連合会天田支部で、管下福知山市ほか24農業共済組合に対し28年産水稲保険金52,593,461円を被害3割以上の耕地1,420町1反を対象として交付したこととしているが、実際はそのうち10,131,058円を補償対象外の耕地を含めた引受全面積2,756町5反に対し均等割で配分しているばかりでなく、保険金の交付に際しては3,941,696円を差し引き、このうち2,663,754円を調整資金として上夜久野村ほか1農業共済組合に交付し、残額1,277,942円は別途蚕繭保険金387,533円と合わせ計1,665,475円を同支部の操作資金として帳簿外に経理し、そのうち同支部の会議費、雑費等に872,475円を支払い、30年3月本院会計実地検査当時500,000円を支部職員個人名義の定期預金、287,500円を当座預金とし、5,500円を現金で保有していた。
 なお、右調整資金2,663,754円のうち1,496,947円の交付を受けた上夜久野村農業共済組合では、28年産水稲共済金776,580円と合わせ計2,273,527円を一括して帳簿外に経理し、そのうち283,000円を28年産水稲の引受全戸数566戸に対し戸数割、414,000円を引受全面積207町に対し均等割、776,580円を部落ごとの被害程度を勘案した部落割で計1,473,580円を各部落代表者の貯金口座に振り込み、共済金の残額799,947円は帳簿外に経理し、そのうち567,947円を29年産水稲共済掛金に充て、187,000円を軽二輪車購入費に、45,000円を接待費、慰労費等に使用している。(1857)

 〔3〕 奈良県天理市二階堂農業共済組合で、28年産水稲共済金6,329,054円を被害3割以上の耕地243町に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は損害評価書と異なる被害面積25町を基礎として398,600円を被害割、2,601,400円を引受全面積620町に対し均等割で計3,000,000円を組合員に支払い、1,450,925円を29年産水稲共済掛金、賦課金および基金に充て、共済金の残額1,878,129円は帳簿外に経理していた。また、28年産麦共済金2,936,815円を被害3割以上の耕地239町7反に対し支払ったこととしているが、実際は27年産水稲共済金3,871,480円を合わせ計6,808,295円のうち2,078,000円を水稲および麦の引受全面積延1,144町に対し均等割で支払い、1,841,468円を28年産水稲および29年産麦共済掛金等に充て、共済金の残額2,888,827円は帳簿外に経理していた。
 しかして、同組合は前記の帳簿外に経理した4,766,956円に業務勘定剰余金87,586円を合わせ計4,854,542円のうち、456,550円を組合長渉外費、役員手当等に、368,560円を連合会への寄付金に、244,500円を防除機具購入費に、358,616円を同組合諸経費に104,400円を建物共済掛金に充て、30年3月本院会計実地検査当時3,491,498円(利子を含む。)を定期預金または普通預金で保有していた。(1872)

 〔4〕 奈良県北葛城郡当麻村農業共済組合で、28年産水稲および麦共済金2,173,274円を被害3割以上の耕地に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際はその全額を別途組合長名義の預金口座に預け入れて帳簿外に経理し、そのうち損害評価書と異なる被害面積20町6反を基礎として101,637円を被害割で支払っているだけで残額2,072,637円は組合諸経費の操作資金に充てている。
 しかして、同組合は28年度掛金、賦課金等を組合員から全く徴収しないで、右保留金を適宜に掛金、組合経費等に充てているが、27年10月から29年9月までの間だけでも帳簿外に経理した総額は3,925,772円に上り、そのうち196,494円を共済金として支払い、1,491,541円を掛金、賦課金等に充て、150,000円を奨励金として部落に交付し、30,000円を同組合の経費に使用し、2,065,281円を預金で保有していた。(1878)

 〔5〕 鳥取県東伯郡東郷町花見農業共済組合で、28年産水稲共済金3,070,087円を被害3割以上の耕地78町6反に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は損害評価書と異なる被害面積44町1反を基礎として1,347,720円を被害割で、889,715円をその他の引受全面積177町8反に均等割で配分し、これから2,031,182円を組合員に支払っているだけで共済金の残額1,038,905円は帳簿外に経理し、そのうち107,505円を水稲、建物の共済掛金および賦課金に、40,000円を動力噴霧機購入費に、108,181円を同町農業協同組合賦課金に充て、198,882円を役職員会食費等に使用し、334,337円を同町農業協同組合の事業益金に繰り入れ、250,000円を無記名定期預金で保有していた。また、29年産水稲共済金2,180,762円を被害3割以上の耕地91町6反に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は損害評価書と異なる被害面積52町8反を基礎として859,811円を被害割で、17,058円を特別割増金として、また、956,671円をその他の引受全面積169町に対し均等割で配分し、これから未収掛金等123,344円を差し引き1,710,196円を組合員に支払っているだけで、共済金の残額347,222円は同町農業協同組合が保有していた。(1898)

 〔6〕 島根県仁多郡八川村農業共済組合で、29年産水稲共済金887,346円を被害2割以上の減収石数148石に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は全く支払わないで共済金の全額を帳簿外に経理し、312,456円を水稲、建物の共済掛金および積立金に充て、140,926円を農業協同組合から購入した農薬、食糧等の買掛金の決済その他業務費の補てんに充てたほか83,964円を評価委員、青年団員の手当、飲食費に使用し、残額350,000円は定期預金で保有していた。また、28年産水稲共済金1,464,274円を減収石数256石に対し支払ったこととしているが、実際はそのうち769,237円を総基準収量4,700石に対し均等割で、107,025円を被害のあった7名に適宜被害割で支払っただけで、共済金の残額588,012円は帳簿外に経理し、そのうち188,006円を掛金、防災賦課金、業務費等に、また、155,000円を防除機具の購入費およびその補助に充て、57,000円を飲食費に使用し、188,006円を定期預金で保有していた。(1904)

 〔7〕 熊本県阿蘇郡産山村農業共済組合で、28年産水稲および麦共済金4,956,984円を被害3割以上の耕地149町4反に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は27年産水稲および麦共済金573,839円と合わせ計5,530,823円とし、うち3,568,959円を適宜に配分し、このうち未収掛金、賦課金等977,717円を差し引き2,591,242円を組合員に支払っただけで、共済金の残額1,961,864円のうち100,000円を寄付金として受け入れて防除機具2台の購入費および事務費に、88,365円を過年度未収金の補てんに充て、1,773,499円は共済金過払返れい金25,150円と合わせ計1,798,649円を帳簿外に経理し、そのうち297,967円を追加共済金、共済組合事務費等に充て、736,800円を同村農業協同組合に対する出資金に、234,082円を同農業協同組合の欠損補てん金に、316,000円を授精所建築費に、100,000円を動力撒粉機購入費に、51,000円を中学校観測機購入費に、50,000円を同農業協同組合役員の視察費に使用し、残額12,800円を預金で保有していた。(1956)

 〔8〕 大分県日田郡栄村中川農業共済組合で、28年産水稲および麦共済金1,678,144円、29年産水稲共済金898,151円計2,576,295円を被害3割以上の耕地に対し損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は組合独自の方法により2,115,387円を支払っただけで、共済金の残額460,908円は帳簿外に現金で保有し、そのうち80,100円を組合役員の慰労費に、83,251円を組合諸経費に充て、297,557円は組合職員の個人的使途に使用している。(1969)

(4) 組合が損害評価額を上回る申請をして過大な保険金を受領し、これを組合員に配分しないで組合諸経費等に使用しているもの

 〔1〕 愛知県南設楽郡作手村農業共済組合で、28年産水稲保険金を県農業共済組合連合会に対し請求するにあたり、実際の組合評価は被害3割以上の耕地87町共済金1,233,592円であるのに、これを160町9反2,524,314円と金額において2倍以上に水増しして報告を行い、同連合会から同額の決定を受け実際の損害以上の保険金2,271,883円を受領しているばかりでなく、共済金2,318,926円(右の保険金に1割以内の共済組合負担金を加えたもの。以下同じ。)を同連合会の査定どおり160町9反に対し支払ったこととしているが、実際はそのうち1,233,726円を当初の組合評価どおり87町に対し支払っただけで、共済金の残額1,085,200円は帳簿外に経理し、そのうち511,956円を家畜診療所建設費に、166,000円をオートバイ購入費に、151,000円を撒粉機購入費に使用し、209,201円を病虫害防除費として部落に分配し、47,043円は預金で保有していた。(1843)

 〔2〕 和歌山県那賀郡田中村農業共済組合で、28年産水稲保険金を県農業共済組合連合会に対し請求するにあたり、実際の組合評価は被害3割以上の耕地161町3反共済金3,737,529円であるのに、これを370町14,678,260円と金額において約4倍に水増しして報告を行い、同連合会から149町4反5,813,886円と決定を受け実際の被害以上の保険金5,232,497円を受領し、また、29年産水稲保険金を請求するにあたっても、組合評価は被害3割以上の耕地57町3反共済金1,710,870円であるのに、これを134町6反5,556,138円と過大に報告を行い、同連合会から99町4,044,558円と決定を受け、実際の被害以上の保険金3,640,102円を受領しているばかりでなく、28年産水稲共済金5,457,353円、29年産水稲共済金3,901,803円計9,359,156円を同連合会の決定どおりの被害面積に対し支払ったこととしているが、実際は損害評価書と異なる被害面積を基礎とした被害割等で4,992,972円を配分しただけで、共済金の残額4,366,184円は帳簿外に経理して職員名義の預金として保有していた。
 右のほか、同組合は、28年産麦共済金1,446,202円および29年産麦共済金192,708円計1,638,910円を損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は28年産分のうち781,430円を引受全面積に、31,000円をとくに被害のあった1町5反に均等割で配分しただけで、29年産分は全く支払うことなく共済金の残額826,480円は帳簿外に経理している。
 なお、同組合は設立当初から掛金等を徴収しておらず、他方、共済金の全部または一部を組合員に支払わないで、職員名義の預金として帳簿外に経理し、掛金、賦課金、組合業務費、会議費を支出しているほか、役職員の慰労費等にも多額を使用している状況で、30年5月本院会計実地検査当時1,851,705円を普通預金で、1,000,000円を定期預金で、100,000円を現金で保有していた。(1892)

 〔3〕 福岡県糸島郡前原町前原農業共済組合で、28年産水稲保険金を県農業共済組合連合会に対し請求するにあたり、実際の組合評価は被害3割以上の耕地395町7反、共済金3,890,346円であるのに、これを806町3反13,475,760円と金額において3倍以上に水増しして報告を行い、同連合会から412町7,981,680円の決定を受け実際の被害以上の保険金7,183,512円を受領しているばかりでなく、共済金7,387,223円を同連合会の決定どおり412町に対し支払ったこととしているが、実際はそのうち3,874,489円を当初の組合評価どおり395町7反に対し支払っただけで、共済金の残額3,512,734円は帳簿外に経理し、預金利息18,578円を合わせ3,531,312円のうち2,187,386円を29年産水稲掛金および賦課金に、52,502円を共済金に、840,000円を防除衣袴購入費に、439,224円を農薬購入費補助に充て、12,200円は生産組合長61名の手当に使用している。また、29年産水稲保険金を請求するにあたっても、実際の組合評価は被害3割以上の耕地194町7反共済金1,275,794円であるのに、これを422町4,918,488円と過大に報告し、同連合会から180町3反2,121,120円と組合評価額を上回る決定を受け実際の被害以上の保険金1,909,008円を受領しているばかりでなく、共済金2,121,120円を同連合会の決定どおり支払ったこととしているが、実際は30年8月本院会計実地検査当時にいたるもその全額を組合員に支払うことなく預金で保有していた。
 右のほか、同組合は、28年産麦共済金3,982,973円および29年産麦共済金458,486円計4,441,459円の支払にあたっても211,663円を補償対象外の耕地830町に対し配分しており、また、26年産水稲共済金4,065,000円のうち1,538,250円は帳簿外に経理し、そのうち562,414円を27年産水稲の補償対象外の耕地に対し支払い、245,711円を各種掛金完納奨励金に、175,541円を防除対策費に、200,000円を職員給料立替金の補てんに充てるなどしている。(1937)

 〔4〕 大分県日田郡大山村農業共済組合で、28年産水稲保険金を県農業共済組合連合会に対し請求するにあたり、実際の組合評価は被害3割以上の耕地36町5反共済金1,407,009円であるのに、これを47町5反1,981,617円と水増しして報告を行い、同連合会から45町3反1,897,856円と決定を受け実際の被害以上の保険金1,708,070円を受領しているばかりでなく、共済金1,757,362円を同連合会の決定どおり45町3反に対し支払ったこととしているが、実際は補償対象外の耕地を含めた引受全面積163町5反に対し1,484,002円を均等割で配分し、そのうち未収掛金等92,161円を差し引き1,391,841円を各部落ごとに一括交付し、共済金の残額273,360円は帳簿外に経理し、210,000円を組合職員の生活費、役員慰労費等に充て、63,360円を組合経費に使用していた。また、28年産麦保険金の請求にあたっても、実際の組合評価は被害3割以上の耕地60町6反574,834円であるのに、これを108町5反1,020,028円と水増しして報告を行い、同連合会から67町3反683,410円と組合評価を上回る決定を受けているばかりでなく、共済金624,969円を同連合会の決定どおり67町3反に対し支払ったこととしているが、実際は557,847円を引受全面積139町3反に均等割で配分し、これから未収掛金等157,118円を差し引き400,729円を組合総代に一括交付し、共済金の残額67,122円は組合において帳簿外に経理し、13,646円を業務費に充てたほか、53,476円は役職員、損害評価委員慰労費に使用している。
 右のほか、同組合は、29年産水稲共済金858,739円の支払いにあたっても、818,842円を引受全面積に対し均等割で配分し、そのうち未収掛金等177,819円を差し引き641,023円を支払っただけで、共済金の残額39,897円は部落常会慰労費その他に使用している。(1967)