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  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第13 建設省

(一般会計)


(一般会計)

 建設省の支出した河川改修、道路改良等の直轄工事、災害復旧国庫負担工事および安全保障諸費支弁の工事等に要した経費は1228億6百余万円であり、115億1千7百余万円を翌年度に繰り越しているが、そのうち安全保障諸費の繰越額は66億4千7百余万円に上っている。

(直轄工事について)

 各地方建設局管下各工事事務所等177箇所のうち4千9箇所についてその実地を検査した結果、工事費の積算が当を得ないため不経済な結果をきたしたもの、共同送電施設の経費割当にあたり処置当を得ないものがある。
 しかして、近時多目的ダムの事業量が増大し、工事中のものは北海道を除き15箇所でその支出額は46億1千9百余万円に上っているが、うち6箇所27億5千4百余万円についてその実地を検査した結果、これらのうちには国の経費だけで購入した機械を共同事業に使用した場合はその使用料の計算を行うべきであるのにこれを怠っているもの、工事の施行に伴う人権費等および完成後のダムの管理費は共同で負担すべきであるのに国が全額負担しているものなどがあり改善を要する事項が見受けられる。多目的ダム建設当初においてはこれらの事項について検討の困難性があったとしても、相当の経験を経た今日においてはすみやかに適正な処置を講ずることが望ましい。

(公共事業に対する国庫補助の経理について)

 地方公共団体が施行する国庫補助工事等に対しては従来に引続き災害復旧に重点を置き検査を実施したところ、不当事項は前年度に比べ相当減少してはいるが、なお、国庫補助を除外すべき額1工事10万円以上のものだけでも231工事8千6百余万円に上っている。
 しかして、公共事業関係補助工事の不当事項については、工事完成後の検査ではその是正が困難な場合が多く、むしろ工事完成前に査定の内容を検査し、早期に注意してその是正を促すことが効果的であると認め、主として29年発生災害について早期に検査を行なったところ、二重査定、災害便乗、設計過大となっているものが多数見受けられ、建設省においては本院の注意により工事費において2億6千5百余万円(28年発生災害分3千8百余万円を含む。)を減額是正することとなった。

(昭和28年度決算検査報告掲記事項の事後処理状況について)

 昭和28年度決算検査報告において、指摘した不当工事のうち、国庫補助を除外すべき額1工事20万円以上のものは164件であるが、このうち当局において国庫補助を返還または減額することとしたものは52件、この処理に代えて手直しまたは補強することとしたものは101件、一部を返還または減額し、一部を手直しまたは補強することとしたものは10件である。
 しかして、右のうち返還または減額することとしたもの62件のうち、30年9月末現在61件については返還または減額の命令を発しており、そのうち45件については処理済となっている。また、手直しまたは補強することとしたもののうち、静岡県ほか15府県について、国庫補助金を除外すべき額1工事20万円以上のもの75箇所につきその施行状況を30年2月から3月までの間に原地について検査したところ、工事が完成していたものは20箇所にすぎず、29箇所は工事中であり、また、残余の26箇所は未着工であって、そのうちには検査当時まだ着工の予定もないものがあった。工事中の29箇所のうちには、検査があることを知り急きょ着工したとみられるもの、使用資材を検収したにすぎないものあるいは出来高が20%にも満たないものが見受けられた状況である。しかして、右検査当時工事中または未着工となっていた55箇所のうち、30年9月末現在工事を完成した旨報告のあったものは32箇所となっている。

(安全保障諸費について)

 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定により駐留軍が都市の中心部から移動する場合従来使用していた建物等の代替施設工事の施行に27年度から29年度までの間に250億9千9百余万円(29年度分117億9千8百余万円)を支出しているが、このうちには工事着手の見通しもないまま多額の前金払をしているものがあり、また、道路等の補助工事については34都道府県に対し27年度から29年度まで126億余万円を交付しているが、このうち8都県補助交付額67億3千1百余万円について検査を実施したところ、本費支弁を適当と認められない工事を施行しているものなど処置当を得ないと認められるものがあった。