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  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第13 建設省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 工事

工事着工時期の見通しもないまま多額の前金払をしたもの


 (2084) 工事着工時期の見通しもないまま多額の前金払をしたもの

(組織)建設本省 (項)安全保障諸費 

建設省および関東地方建設局で、昭和30年4月、日本電信電話公社および鹿島建設株式会社ほか29会社に日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定により駐留軍の使用に供する電信電話施設または建物等の工事費に対する前払金として692,409,750円を支出しているが、工事の具体的内容も明らかでなく、また、工事着工の時期の見通しもないまま多額の前払金を支払ったものである。

 右のうち529,295,000円は、28年10月取りかわした協定書に基き日本電信電話公社が駐留軍の都市中心部から周辺への移動に伴い実施する電気通信設備工事の代金の前払金として同公社に、また、163,114,750円は30年3月契約した岸根地区宿舎新営工事ほか1地区の工事費902,907,500円に対する前払金として鹿島建設株式会社ほか29会社に支払ったものである。しかし、右に関する契約等はいずれも29年度末にさし迫り締結したもので、日本電信電話公社が施行することとした工事は工事箇所だけがほぼ決定しただけで設計書も作成していない状況であったのに対し支払ったもので、年度内に着工が不可能であったことは明らかであり、現に、5月にいたりようやく一部の工事に着工したもので10月末においても全く着工していないものは 292,026,000円となっている状況であり、また、鹿島建設株式会社ほか29会社と契約した岸根地区宿舎新営工事等は敷地として予定した地区の用地提供についての決定が29年度内に解決する見通しさえなく、したがって工事に着手することができなかった状況であるのにこれに対し支払ったもので、9月末にいたるも用地を取得することができなかったものである。
 本件は、いずれもこのような状況であるのに対し、年度末にさし迫って取急ぎ多額の前金払をしたものでその処置当を得ない。